2023年ベストシネマ(旧作)
旧作ベスト。すべて今年上映+配給された作品で初見・再見問わず。正直順位にあまり意味はないです。シャンタル・アケルマンなら全作品最高!と言いたくなるし、オタール・イオセリアーニもバフティヤル・フドイナザーロフも同じくです。ジャン・ユスターシュ特集は見てるとはいえ、行けなかった...。
2023年はオタール・イオセリアーニ映画祭、バフティヤル・フドイナザーロフ特集のパンフレットに関わらせていただき、とても光栄でした。どちらも元々好きな映画作家ですが、関わることでより深く知っていくきっかけになるわけで。あらためてオタール・イオセリアーニのご冥福をお祈りします。
『ゴーストワールド』が再公開されたとか感無量です。二年前に書いた記事なのですが、まだ読んでいただけているようで、とても嬉しいです。『のら猫の日記』、『ゴーストワールド』~『アステロイド・シティ』まで、スカーレット・ヨハンソンへのリスペクトが止まりません。『ゴーストワールド』との二本立て企画で熱望するのは『のら猫の日記』かも!あと過小評価されている『アートスクール・コンフィデンシャル』。
『美女と野獣』について考えている時間も幸せでした。より深く知ったというより、あんまり凄さを分かってなかったなと反省しました。ティム・バートンやギレルモ・デル・トロのようなゴシックな映画、ジャック・リヴェットやレオス・カラックスのようなヌーヴェルヴァーグの系譜だけでなく、たとえばウェス・アンダーソンの映画を考える際にも、『美女と野獣』はめちゃくちゃ有効です。いろんな映画の源流になってるんだなあ...と。
そして『ひなぎく』や『書かれた顔』といった、自分にとって特別な映画について書けたのは心から幸せでした。感慨深い。『イルマ・ヴェップ』については、こんなに好きだったんだ!と自分で驚きました。以前見たときとは少し違った見方、広がった見方をするようになりました。旧作の“再発見”は、そこが面白い。年齢を重ねたり、その時代に横たわる問題意識によって、映画の別の側面が見えてくることがあります。
1.『アル中女の肖像』(ウルリケ・オッティンガー/1979)
2.『ひなぎく』(ヴェラ・ヒティロヴァー/1966)
3.『エドワード・ヤンの恋愛時代』(エドワード・ヤン/1994)
4.『家からの手紙』(シャンタル・アケルマン/1977)
*以下は同じくシャンタル・アケルマン特集第二弾の上映作品
5.『書かれた顔』(ダニエル・シュミット/1995)
6.『イルマ・ヴェップ』(オリヴィエ・アサイヤス/1996)
7.『蝶採り』(オタール・イオセリアーニ/1992)
8.『ルナ・パパ』(バフティヤル・フドイナザーロフ/1999)
9.『ロアン・リンユイ/阮玲玉』(スタンリー・クワン/1991)
次に2023年の公開と関係ない映画のリスト。同じく初見・再見問わずですが、初見が多いかも。関わる作品のリサーチで見たものが多いです。『それでも私は生きていく』に引用された『The Wonderful Lies of Nina Petrovna』等。そしてついについに見ることのできたジュリエット・ベルトの最後の監督作品。思いのほかベルト本人が出演しています。ベルトの監督作品は4作品コンプリ!すべてが傑作でした。
1.『Damia: Concert en velours noir』(ジュリエット・ベルト/1989)
2.『カオス・シチリア物語』(ヴィットリオ&パオロ・タヴィアーニ)
3.『カンヌ映画通り』(ダニエル・シュミット/1982)
4.『Pytel blench』(ヴェラ・ヒティロヴァー/1962)
5.『The Wonderful Lies of Nina Petrovna』(ハンス・シュワルツ/1929)
6.『Ghost Dance』(ケン・マクマラン/1983)
7.『Les années 80』(シャンタル・アケルマン/1983)
8.『アニエス・vによるジェーン・b』(アニエス・ヴァルダ/1988)
9.『Swimming to Cambodia』(ジョナサン・デミ/1987)
10.『The Staggering Girl』(ルカ・グァダニーノ/2020)
11.『Primrose Hill』(ミカエル・アース/2007)
2023年はジェーン・バーキンがいなくなった一年でもありました。かつて『アニエス・vによるジェーン・b』の中でジェーンは「いつか家族の映画が撮りたい」と語っていました。その願いはアニエス・ヴァルダの『カンフー・マスター』を経由して、ジェーン自身によるセルジュ・ゲンズブールのドキュメンタリー作品、そして真に“家族の映画”といえるシャルロット・ゲンズブール監督作品『ジェーンとシャルロット』で結実します。この作品にはシャルロットにしか撮ることのできない絶対性があります。とても美しい作品。あらためてジェーン・バーキンを追悼します。
2023年ベストシネマ
2023年はCINEMOREで31本、otocotoで5本、劇場用パンフレット5本他、作品公開時のコメント、キネマ旬報等に寄稿させていただきました。ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーやジャック・ロジエの特集あたりで、あまりの特集上映の多さに「原稿書くのが追いつけない...!」となってしまったのが若干無念なのですが、それ以降無理のない範囲でペースを保てたかな?と満足しています。終わってみれば、とても充実した一年でした。ご反応いただけるの、本当に本当に嬉しいです。感謝しています。
さて、2023年のベストリスト。めちゃくちゃ豊作な一年でした。1位は直前までどちらにしようか迷いましたが、記事を書くにあたって改めてスチールを見たら、この映画に嗚咽のように泣いてしまった体験、あのとき胸の中で爆発した感情が昨日のことのように感じられたので、この作品に。CINEMOREさんに寄せた記事にも、とても思い入れがあります。2位の作品は歴史的な作品だと思ってますけどね。スケジュールの都合などで記事にできなかった作品もありますが、自分の記事と併せて紹介します。
1.『aftersun/アフターサン』(シャーロット・ウェルズ)
2.『ファースト・カウ』(ケリー・ライカート)
3.『アステロイド・シティ』(ウェス・アンダーソン)
4.『枯れ葉』(アキ・カウリスマキ)
5.『別れる決心』(パク・チャヌク)
6.『EO イーオー』(イエジー・スコリモフスキ)
7.『首』(北野武)
8.『サタデー・フィクション』(ロウ・イエ)
9.『栗の森のものがたり』(グレゴール・ボジッチ)
10.『遺灰は語る』(パオロ・タヴィアーニ)
以上、ベスト10。クローネンバーグは昨年のリストに入れたので。
とはいえ今年は本当に好きな作品が多くて、以下の作品も心から愛しています。麗しのストロベリー=スザンナ・サン!『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』の評判を自分の周りではあんまり聞かないのだけど、えええ!めちゃくちゃ素晴らしい作品だと思うのだが!この作品にはロマンがある。
・『レッド・ロケット』(ショーン・ベイカー)
・『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』(ポール・キング)
・『ソウルに帰る』(ダヴィ・シュウ)
・『それでも私は生きていく』(ミア・ハンセン=ラブ)
・『白鍵と黒鍵の間に』(冨永昌敬)
そして否の多かった『バビロン』、大好きです!この若造が!みたいなこと言う方もいらっしゃるようですが、むしろ「チャゼル、かわいいやつめ!」が自分の率直な感想です。チャゼルの作品では、ぶっちぎりで好きです。ほか『トリとロキタ』とか『ベネデッタ』とか、たくさんありますね。
2023年のベスト・アクトは『TAR/ター』のケイト・ブランシェットと『春画先生』の北香那です。北香那さん、わーお!と感動してしまい、トークイベントまで行ってしまったのもよい思い出。
旧作についてはエントリを分けます。取り急ぎ。ではまた次回。みなさまよいお年を!
【追記】インスタに自分の書いた記事をまとめ中。
https://www.instagram.com/maplecat_eve/