大怪獣ガメラ ★★★★

大怪獣ガメラ
1965 スコープサイズ 78分
DVD
脚本■高橋二三
撮影■宗川信夫 美術■井上章
照明■伊藤幸夫 音楽■山内正
特殊撮影■築地米三郎
監督■湯浅憲明

■久しぶりに観たけど、これは改めていい映画だね。大人のガメラ対策とこどもの成長のドラマが、ちゃんとかみ合っていることに今回気づいたよ。北海道の灯台のシーンはオーソドックスな合成づかいがうまくいっているし、全般に無駄な特撮カットは撮らず、コンテに沿って必要なカットだけを効率的に撮ろうという意思が感じられる。

大映ならではのコントラストの強めで、黒味の多いモノクロ撮影がカラー化以降のガメラとはまた異なる味わいぶかさ。船越英二と浜村純という名優二人による大人のガメラ対策の場面は、老け役を意識してか妙なところに台詞の間をとったりするのだが、これは子供にわかりやすようにとの配慮かも。いつもは市川組とか増村組で早口台詞に慣れた船越英二が、少しいつもと違う感じ。浜村純にいたっては、漫画的な老博士メイクに凝り過ぎで、浜村純の良さがわからないぞ。

■一方、北海道でのカメとの別れの場面はそれだけでも確実に昭和の少年をキュンとさせる名演出だが、母親を早くに亡くし、転校が多くて友達もできず、カメしか友達がいない少年が、ガメラとの交流を通じて、強く大きな男に素朴な憧れを抱き(母親のイメージが混じっている気もするが)、さらに壮大なZプランやそれを支える大人の科学者たち活躍を知って、科学者になるという具体的な人生の指針を発見してゆくという少年の成長ドラマになっている。しかも子役の内田喜郎の素直な個性が嫌味なく、無理なくそれを感じさせる。

■さらに、それが性的なメタファーとして描かれている点がユニークであって、男の子の成長をビジュアルに納得させる。ガメラは男の子の性器そのものの延長線上にある巨大な男根に対する憧れに見えるし、Zプランの火星ロケットはさらにそれをはるかに凌駕する巨大さで屹立する真の大人の男の男根に違いない。ガメラに執着していた少年はその巨大さに一瞬に圧倒され、ガメラに清々しく別れを告げ、科学者になることを夢見るのだ。

■その心変わりの速さは子供ならではのものであるが、驚愕のZプランの大特撮を見せられた観客の気持ちの代弁でもあるだろう。大きいことはいいことだ!ガメラより遥かに巨大なロケットを建造する人類の科学力が一番凄いのだということをビジュアルで納得させる高橋二三&湯浅憲明ならではの天才的な発想。

■川崎のコンビナートの場面はもっと合成カットが必要だし、大島のZ計画基地の威容が全画(でも一工夫あるのが湯浅憲明!)というのも寂しいが、特撮と本編の結合はなかなか見事なもので、東宝のゴージャス感と異なり、大映映画らしい場末感も含めて非常に味わい深い映画。

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