インシディアス 序章 ★★★☆

Insidious: Chapter 3
2015 スコープサイズ 97分
DVD

■1作目を観て、なんで幽霊屋敷ものがクライマックスでダークファンタジーになっちゃうだ!と原理主義的に大いに批判していた本シリーズ、しかし、もともとの原題は「彼方」というもので、そもそもはあちら側を直接描くことが趣旨という企画だったのだ。本作はシリーズ3作目で、いわゆるプリクエル映画。監督は脚本を書いて、出演もするリー・ワネルが務めるわけですが、これはなかなかの傑作ですよ。本シリーズが目指した方向性がはっきり確認できる。そして出演者こそ異なるものの『死霊館』シリーズとも、その指向性がほとんど重なり合っている。

リー・ワネルジェームズ・ワン路線は、恐怖というよりもコケ脅しに命をかけたギミック映画を活劇に昇華させた点に意義があるのだが、本作はそのエッセンスが一番純粋に煮詰まった映画だ。中盤、ヒロインをサディスティックに攻め上げるショック演出のつるべ打ちは、わかっていてもぎょっとするし、観客もヒロインと同じく心理的に追い詰められる神経的な疲弊感を共有することになる。ほんとにこれ以上脅かすのは勘弁してくれよと言いたくなるところで、お話は絶妙にモードチェンジして、コミカル要素を導入する。このあたりの構成も絶妙。ゴーストバスターズとして自分が登場するわけね。

■しかして、クライマックスは「彼方」での霊媒のおばあちゃんが悪霊や悪魔に対して大立ち回りを演じて、絶大なカタルシスをもたらす。その劇的構成は極めて単純で、活劇映画のエッセンスがきわめてシンプルに提示される。心理的負荷とその解放という単純な原理が最大限に機能する。魂の世界である「彼方」では肉体的には劣るおばあちゃんだって、無敵の精神力を発揮できるのだ。その痛快さたるや!

■監督はジェームズ・ワンではないが、リー・ワネルの演出は全く劣っていない。コケ脅しには違いないのだが、本当に彼らがやりたいことは魂の活劇の方にあり、その前提となる心理的負荷をじわじわとくる恐怖感ではなく、ある意味精神的な拷問に近いショック演出によっているのだ。コケ脅しをここまで的確に使いこなした映画はなかなか無いよね。


© 1998-2024 まり☆こうじ