markdadaoの日記

真空管アンプ用トランス、スマホ用衝撃吸収フィルム、RC、政治経済、読後感想など

真空管ギターアンプの出力トランス

有名なブランド品の真空管ギターアンプの出力トランス(OPT)を調べてみた。Marshall, Fender, Vox, Egnatorなどのアンプに搭載されているOPTは、低価格を強いられてか材料素材の悪さとコイルの手抜きなどが見受けられる。真空管オーディオの世界では何十万、何百万とするアンプに内蔵されるOPTは特性を求めるのではなく、如何に高く売ろうかと外観などに金をかけているように見受けられるものもある。
ギターアンプの安く作られたOPTは、その材料の悪さと製造の手抜きにより、歪が大きくなる。また、ロックのギタープレーヤーは歪によるドライブした音を求める。従って、成熟していないギタープレーヤーはそれなりに満足をしていたのではないだろうか?
しかし、耳が肥えてきたギタープレーヤーやプロのトッププレーヤーは、従来の歪は音楽ではなく騒音であると見抜いてきたと思われる。あるプレーヤーはうちのOPTが搭載したアンプでは、「休符がわかる」と言う。これは従来のアンプで歪んだ音を弾くと、音が連続して休符が感じられなくなるからだ。従って私達は出力の歪はアンプ内の回路で発生させ、OPTは入力に入った音声信号を忠実に出力側に伝えることをコンセプトとしている。

私達の作るOPTの主な特色は以下の通りである。
1.コア材質と挿入枚数:良いコア材を使わないと、良いトランスが出来ないと考える。鉄芯材の透磁率μが小さくて、飽和磁束密度Bmが低いと、出力管が信号出力を出力トランスに加えようとした時に、出力管は出力トランスに無効電流を供給することになる。この為通常使用状態で、真空管に余計な負担がかかり、出力管の寿命を縮めることになりかねません。従って方向性ケイ素鋼板を使用し、直流磁化させないため、複数枚の組み方でコアを挿入する。MarshallのJTM45の純正OPTは無方向性ケイ素鋼板を使用しており、私達の半値以下の材料を使い制作も1枚組と作業を簡易化しているのに製品単価は私達より高価である。
2.巻線方法:プッシュプル(P-P)の場合平衡度を高める必要があり、2つの真空管を同じ動作をさせる必要がある。不平衡となるとバランスしていない信号が発生し、余分な歪が発生する。従って、平衡を高めるために1つのOPTの内部に左右上下に巻かれた構造を作り、入力信号をそのまま出力信号に変える。
3.OPTを柔らかく作る:OPTを固く作ると、その機械的反発が信号に混じり詰まった音になる。従って心をこめて優しく巻き、ソフトに絶縁すると自然な音が出やすくなる。結果として高域特性が良くなり減衰を抑える。それは銅線間が広くなることで静電容量が小さくなるためだ。
P-P回路の信号レベルでは低域特性はもともと出やすいので、コア挿入枚数で抑えつつ、高域特性を広げることで低域から高域まで安定した出力が実現できる。このためプロのギタープレーヤーは出音が増加し、トーンが0から10までコントロールが出来るようになり、和音で弾いた歪も音楽として使え、さらに耳の良いプレーヤーからは、音の艶や低域の固さと高域のマイルドさを認識してもらえる。
このほか様々なノウハウが秘められたOPTですが、更に改良して楽器の一部として音楽シーンに参加できるようになりたいと考えております。
協力:トランス事業 - 変圧器・トランス・フィルムのアテネ電機