いしうらまさゆき の『愛すべき音楽よ』(ブログ〜CD&レコードレビュー)

2017-06-25 Livingston Taylor / Safe Home(Chesky / 2017)

markrock2017-06-25

[] Livingston Taylor / Safe Home(Chesky / 2017) 19:06

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今年の3月リリースでしたか。買おう買おうと思いつつ、気付けば6月も終わりになって。2000年代に入ってからの作品はWhistling Dog MusicとCheskyからリリースされているけれど、今回はジャズのCheskyから。1993年『Good Friends1997年InkもCheskyからのリリースで、どちらもカバー中心のライブ感ある作りだったけれど、今回もその路線。ジャケが割と低予算風で粗い感じってのも共通している(笑)。あれ、と思ったのは2015年の録音だったこと。リヴのアコギ、シェリー・バーグのピアノ、デイヴ・フリンクのベース、そしてパーカッションにあのバシリ・ジョンソンが入っているんですね。そして今作は一押しの女性シンガー・ソングライターのチェルシー・ベリーのお披露目盤的な意味合いがあるみたい。ホームページhttp://www.chelseaberry.com/)を覗くとクリス・スミザーもその才能を賞賛している。優しい歌声でリヴの個性とぶつかり合うことはない。音楽生活50周年記念盤にあってリヴの音を若返らせくれた。

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1991年『Our Turn To Dance』に入っていた”I Must Be Doing Something Right”のセルフカバーが冒頭に配置されていて、その他チェルシーにヴォーカルを委ねた”Louie Is Blowing the World Away”(ルイ・アームストロングに捧げた曲)や”Answer My Prayer”(キャロル・ベイヤー・セイガーとの共作で2009年の『Last Alaska Moon』収録曲)、”Shouldn’t Have Fallen for You”を除く10曲がお得意のカバーで。ほっこりするのはやはりチェルシー・ベリーとデュエットする”Penny Lane”。ケニー・ランキンのヴァージョンなども想像しつつ聴いたけれど、しっかりリヴ色を出している。オズの魔法使いのメドレー”Merry Old Land of OZ/Over The Rainbow”では後半、リヴ3枚目のアルバムのタイトル曲だった”Over The Rainbow”をチェルシーに任せていて。改めて思うけれど、ミュージカルもののドリーミーなタッチが兄ジェイムスとはまた違ったリヴの個性なのかなと。中でも『ピーター・パン』の”Never Never Land”は凄く良かった。『アニーよ銃をとれ』の”Anything You Can Do”のリヴ&チェルシーの掛け合いも○。そしてラストの”Bye Bye Love”と”Try To Remember”はフォーキーなリヴが大好きなファンの期待を裏切らない。エヴァリーズの”Bye Bye Love”はデイヴィ・グレアムの”Anji”のサビのギターフレーズをアレンジしたイントロがくっ付いているなど、ブルージーに展開していて。”Try To Remember”はフォーク世代にとってはブラフォーということになるけれど、リヴはスロウなピアノでしっとりと。

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しかしさすがのリヴもお爺ちゃんになったなあと思ったり。まだ66歳ではあるんですが(1950年生まれ、ちょうど私の父と同い年なんですね…)、この『Safe Home』のジャケットを見ていると、「じゃあ行って来るね」「気をつけて帰って来てね(Safe Home)」…という何気ないやり取りの中に「あと何回プレイできるのかなぁ…」という寂しさみたいなものが感じられなくもないような…

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今までのリヴ・テイラーのレビューはこちらを(http://d.hatena.ne.jp/markrock/searchdiary?word=livingston%20taylor)。

2017-06-23 Shaun Harris / Same(Capitol / 1973)

markrock2017-06-23

[] Shaun Harris / Same(Capitol / 1973) 11:16

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フリート・フォクシーズの新作を聴いていたら、なんだか無性に聴きたくなってきたのがハーツ&フラワーズの1968年のキャピトル盤『Of Horses, Kids, and Forgotten Women』(ラリー・マレイ、デイヴ・ドーソン、そしてバーニー・リードン!)とショーン・ハリス1973年のキャピトル盤『Shaun Harris』。どちらもキャピトル産・カリフォルニアン・ポップの伝統ともいえるコーラスが印象的なカントリー・ロック盤。

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ただ一筋縄ではいかないのはショーン・ハリス盤。ショーンはウェスト・コースト・ポップ・アートエクスペリメンタル・バンドのベーシストだった人。ウェスト・コースト・ポップ・アートエクスペリメンタル・バンドは60年代後半、サイケデリック・ロック全盛期に結成され、ショーン&ダニーのハリス兄弟と共にオズモンズ、ショーン・キャシディ、レイフ・ギャレットといったティーン・ポップのプロデュースで後に当てまくるマイケル・ロイドが在籍していた。ロイドはCCMの名プロデューサー、クリス・クリスチャンとコットン・ロイド・クリスチャンを組んでもいた(これも最高!)。個人的にはマイケル・ロイドと名のつくレコードはマイク・カーブ、トニー・ロメオ、ダニー・ジェンセンといった辺りと共にクレジット買いで相当集めたけれど。

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このショーン・ハリスの唯一盤もショーンと共にマイケル・ロイドがプロデュースを手がけ、バックはハル・ブレイン、ジム・ゴードンキャロル・ケイ、ジョーオズボーン、ディーン・パークス、ラリー・ネクテル、マイケル・オマーティアン…というレッキング・クルーの面々。一聴してビーチ・ボーイズ・ライクなコーラスが映える”Love Has Gone Away”には本家ブルース・ジョンストンが参加していて。その他の曲も全編ハリス兄弟による多重コーラスを駆使しつつ、イーグルス・ミーツ・ビーチ・ボーイズなカントリー・ソフト・ポップを聴かせてくれる。A面ラストの”Canadian Ships”という曲、幻想的・サイケなムード、物悲しいメロディに分厚いコーラスと弦が被せられて…そう、フリート・フォクシーズを聴いていて頭をよぎったのはこの音なのだった。

ちなみにショーンの父はアメリカン・クラシック作曲家ロイ・ハリス、母はカナダピアニスト作曲家のジョハンナ・ハリス。本盤を彩るオーケストレーションはそうした素養を感じさせてくれもする。


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2017-06-20 Gus Cannon / Walk Right In (Stax / 1963)

markrock2017-06-20

[] Gus Cannon / Walk Right In (Stax / 1963) 00:34

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懸案だった部屋の掃除を少しずつやりながら(レコードと本で動けなくなっていた)、ガス・キャノンのスタックス盤『Walk Right In』を聴いている。ガス・キャノンといえばフォーク・リヴァヴァル期にこぞって演じられた”Walk Right In” (エリック・ダーリングのルーフトップ・シンガーズのヴァージョンが有名)のオリジネイターだ。メンフィスで活躍したガス・キャノンキャノンズ・ジャグ・ストンパーズのヴァージョンはジャグ・バンド全盛期の1929年にリリースされている。ルーフトップ・シンガーズ版のリヴァイヴァルが1962年だったから、この1963年のスタックス盤はそれを受けてのリリースだろう。コレが正真正銘のホンモノですよ、っていう。

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思えばガス・キャノン1883年の生まれ。亡くなったのは1979年(私の生まれた年でした!)だから、ずいぶんと長生きだった(96歳)ことになる。同い年の人って誰だろうと思って1883年生まれを調べてみると、美食家の北大路魯山人とか二・二六事件の理論的指導者だった北一輝とか。これでもイメージがわかないかもしれませんが(笑)、おばあちゃんフォークシンガーのイメージのエリザベス・コットンでさえ1895年生まれ、ミシシッピジョン・ハート1892年生まれ…ですから、ガス・キャノンはさらに年上だったことになる。ガスの生まれはミシシッピで、クラークスデイル近郊に移り住みバンジョーを習得(最初のバンジョーはギターのネックで手製だったとか)。音楽的にはブルーズの父であるW.C.ハンディのバンドのフィドル奏者ジム・ターナーに影響を受けている。バンジョージョー名義での1927年の初レコーディングではブラインド・ブレイクがバックでギターを弾いているみたい。うーん、ただただ歴史を感じるけれど、同時代的に俯瞰すればそうした接点も頷ける。

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リヴァイヴァル期のガスの単独作は本盤のみであり、しかもR&B色の強いメンフィスのスタックスから出たフォーク作ということでレア盤化してしまい、あまり省みられることがなかったのが悲しい。80歳の時のレコーディングだけれど、歌声やバンジョー演奏は力強い。1920〜30年代に同じく一世を風靡したメンフィス・ジャグ・バンドの中心人物ウィル・シェイド(1898年生まれ)とミルトン・ロビーがそれぞれジャグとウォッシュボードを担当。”Walk Right In”の自演版とともに、ミシシッピジョン・ハートが”Ain't No Tellin'”として1928年にレコーディングしている” Make Me a Pallet on Your Floor”が入っているのが嬉しい。後者は高田渡名曲”仕事さがし”のメロディに引用されている。”乗るんだよ電車によ 乗るんだよ電車によ 雨の日も風の日も 仕事にありつきたいから”…。ちなみこれはガス・キャノン盤からさらに40年後、2003年の息子・高田漣との共演ライブ高田渡高田漣 27/03/03』のヴァージョンが最高で。

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2017-06-19 Folk Roots, New Routes フォークのルーツへ、新しいルートで

markrock2017-06-19

[] Folk Roots, New Routes フォークのルーツへ、新しいルートで 02:16

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Monchicon! 清水祐也監修の『Folk Roots, New Routes フォークのルーツへ、新しいルートで』シンコー・ミュージックムック)がお店に並び始めた。私も日本のフォーク中心(あとはディノ・ヴァレンティなど)にレビューを書かせてもらっている。目印となる表紙はノンサッチから新作『CRACK-UP』をリリース直後のフリート・フォクシーズ(http://fleetfoxes.co/crack-up)。新作には「大台ケ原(ODAIGAHARA)」なんていう日本の地名を冠した曲もあったり、私自身謎解きのように聴いていたものだから、巻頭のインタビューで200%理解が深まった(元ドラマーのファーザー・ジョン・ミスティのインタビューもある!)。リリース元のノンサッチといえば、かつてはフォークや民族音楽で有名やエレクトラ傘下、現在はワーナー傘下で在りし日のバーバンク美学継承されているレーベルだ。なんとMonchicon!(モンチコン)にはノンサッチ社長のインタビューが掲載されていた(http://monchicon.jugem.jp/?eid=2174)。

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そう、『Folk Roots, New Routes フォークのルーツへ、新しいルートで』を監修した清水祐也くんが手がけているMonchicon!(モンチコン)(http://monchicon.jugem.jp/)はその界隈で知らぬ者はいない国内屈指のインディーロック情報サイト。2012年にDU BOOKSから『モンチコンのインディー・ロック・グラフィティ―The First Annual Report Of Monchicon』2014年2015年シンコー・ミュージックからCROSSBEAT Presents CON-TEXT』 Vol.1とVol2が出版されているけれど、そのいずれも音楽・映画を始めとした幅広いサブカルチャー知識がミュージシャンの脳内と共振するようなつくりになっている。

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今回の『Folk Roots, New Routes フォークのルーツへ、新しいルートで』はご存知デイヴィ・グレアム&シャーリー・コリンズ1965年の名盤から採られたもの。現代の新世代のフォークと1960〜70年代の手垢のついたフォークを断絶させていたのは単にファンの意識だったのかもしれない。驚くほどに新世代のフォーク・ミュージックとかつてのフォーク・ミュージックとが繋がっているとわかる…50数年前のデイヴィ&シャーリー盤のタイトルがそれを雄弁に語り、今も私たちを新しい境地へといざなってくれるなんて…素敵じゃないか!

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日本のポピュラー・ミュージックに造詣が深く、(ホソノをレスペクトする)デヴェンドラ・バンハートと細野晴臣予定調和を拒むような対談(最高!)も収録されていて。それにしても大きな物語が機能していた1950〜90年代頃まで、日本のポピュラー・ミュージックは常にアメリカイギリスを参照枠とし、そこにいかに早く接近しコピーできるかどうかに「ホンモノ」としての価値があった。しかし21世紀に入り、今度はアメリカイギリスの若者が、日本というフィルターを介した(憧れの)米英音楽表象を面白がるようになっていて。この「ホンモノ」の転倒劇、「時代が一回りした」と簡単に言えるものでもないのですが。

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その意味でいうと、誌面でも紹介されているように、10月に米シアトルレーベルLight In The Atticからリリースされる70年代日本のフォークのコンピレーション『Even A Tree Can Shed Tears: Japanese Folk & Rock 1969-1973』(https://lightintheattic.net/releases/3178-even-a-tree-can-shed-tears-japanese-folk-rock-1969-1973)なんてのは抜群に面白いセンス。灯台下暗しのような再発見も、音楽の楽しみのひとつだと思う。

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2017-06-01 スティーヴ・タイレルとバリー・マン

markrock2017-06-01

[] スティーヴ・タイレルとバリー・マン 00:33


気付けば6月に入りまして。哲学本作りに殆どの時間を注力している日々。締め切りも延びているから頑張らないといけない。日本・西洋・東洋と基本文献はほぼ網羅したいと思ったので原典を一から読んでいるけれど、ものすごく時間がかかる。とりわけ自分の得意としない哲学者の本をずっと読むのって、余り好きでもないミュージシャンのレコードをずっと聴くような辛さもある。その一方、好きな人について語ると色々と言いたい事が湧き出てきて、結局は時間がかかってしまう。日本でいうと丸山眞男は改めて凄いと思い知りました。そしてまた50年前の日本も今と全く変わっていないということを再認識した次第。


あと先月は古くからの友人の監修で新世代のフォーク・ミュージックについてのムックが出るとのことでレビューを幾つか書かせてもらった。こちらは大好きな日本のフォークの聴き直しが出来て、楽しかったなぁ。細野晴臣とデヴェンドラ・バンハートのインタービューも入るそう。芽瑠璃堂さんのHPでもインフォメーションが出ていました。また詳細がわかれば。

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そう、7月にバリー・マン&シンシア・ワイルの『プライヴェート・トレジャーズ(Original Demos, Private Recordings And Rarities)』(http://merurido.jp/item.php?ky=VSCD3954)っていうレア音源集が出るそうじゃないですか!これは流石に楽しみ。個人的にはバリー・マン、ジミー・ウェッブ、ポール・ウィリアムスってのがソングライターの神様。ジミー・ウェッブといえば先日『The Cake And The Rain』っていう1955〜73年のウェッブの全盛期のキャリアを含む回顧録が出版された。ちびちび読んでいるけれど、何よりビックリしたのが巻末のディスコグラフィ。ソングリストはまあいいとして、映画やミュージカルへの提供曲リストが付いていて。サントラも出ていない(フィルムもあるのかないのか?)全く知らない映画もあって、脱力しました。個人的にはウェッブのキャリアを執念深く追いかけてウェッブ関連作も含めて集めてきたんですが、もうこれは叶わない…と思いました(笑)。

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で、バリーの方は並み居るヒット曲の90年代までの自演。一部デモ・シンガー(なんとジェイムスイングラム)が歌うものも。初回限定のボーナス・ディスクというのも凄くて、速攻で予約してしまいました。バリーのシンガーとしての実力は折り紙つき。ハンソンの”I Will Come To You”は流石に入っていないようだったけれど、これもデモが存在するのなら聴いてみたかった。

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ということで今日はスティーヴ・タイレル『That Lovin’ Feeling』で我慢しよう。ちなみにスティーヴは元々歌手志望だった。手元にフィリップスから1963年に出たシングル「A Boy Without A Girl/Young Boy’s Blues」がある。これは元はテキサスのヒューイ・P・モーの短命レーベルCapri Recordsからリリースされたもの。”Young Boy’s Blues”はフィル・スペクターとドク・ポーマスの共作名義でベン・E・キングが歌った曲。スティーヴは結構力んで黒っぽく熱唱している(ただ歌声は若いといえば若い)。その後スティーヴは裏方に転じ、セプター・レコードのA&Rを務めてB.J.トーマスやディオンヌ・ワーウィックを、ニュー・デザインではバリー・マンの『Lay It All Out』を、そしてベル・レコードではマーク・ジェイムスを手がけた。スティーヴがシングルを出したCapriはB.J.トーマスの初ヒット” I'm So Lonesome I Could Cry”を出していて、そんなことからセプターのA&R時代のスティーヴが権利を丸ごと買い取ったみたい。

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さてそんなスティーヴは燻し銀の歌声が90年代に突如再評価され、ジャズの世界でヒット作を沢山出した(以前のレビュー参照→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20080815)。真正のジャズ・ボーカル・ファンには受けが悪かったのを覚えているけれど、私はスワンプを聴く様な気持ちで聴いて最高だと思いました。スティーヴのアルバムは日本盤がしばらく出ていたけれど(バカラックのカバー集も日本盤が出た)ブリル・ビルディングのヒット・ソングをリメイクした2015年『That Lovin’ Feeling』は業界の状況を反映してついぞ邦盤が出ずじまいで。

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しかし内容は素晴らしく、キャロル・キングの”Jazzman”に”Up On The Roof ”、本家ビル・メドレーと歌うライチャスの”You’ve Lost That Lovin’ Feelin’”、ニール・セダカと歌う”Laughter In The Rain”もある。”Laughter In The Rain”は不肖わたくしも2015年のアルバムのタワレコ限定のボーナス・ディスクでカバーしました。で、貴重なのがバリー・マンと一緒に熱唱する”On Broadway”。すこぶる良い出来で。他にも”Any Day Now”、”There Goes My Baby”、”Stand By Me”、”Groovy Kind Of Love”、”Be My Baby”、”Chapel Of Love”、”Just a Little Lovin’(Early In The Morning)”…と黄金期のポップス・ファンのツボを突く選曲。数曲ではマイク・フィニガンが渋いバック・ボーカルをつけていて。

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B.J.トーマスとデュエットしているバリー・マンの名曲”Rock and Roll Lullaby”はB.J.トーマスの2013年のアルバム『The Living Room Sessions』に入っていたものと同音源。こちらのB・Jのアルバムはポップ・カントリーでお馴染みのカイル・ラーニングがプロデュースしている。B・Jのホームページから買ったらサインが付いていた。B・Jってもうカナリのお爺ちゃんだけれど、ハンサムだし衰えず声が良いからか、ホームページプロマイドとか売ってたりするんですね。全米のオバサマ方を今もメロメロにさせているのかしら、と。

2017-05-06 ジェフ「スカンク」バクスター在籍のバンド、アルティメット・スピナ

markrock2017-05-06

[] ジェフ「スカンクバクスター在籍のバンド、アルティメット・スピナッチ。 22:31

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スティーリー・ダンからドゥービー・ブラザーズを渡り歩いたジェフ・バクスター。ギター上手過ぎですね。ブルースをベースにしたアメリカ的なギター・スタイルは個人的にはドツボです。初期スティーリー・ダンのReelin’ In The Yearsでデニー・ダイアスとユニゾンで弾くのもいいですよね(レコーディングはエリオット・ランドールですね)。マイケル・マクドナルドが入ってきたドゥービー・ブラザーズで不貞腐れながらギターを弾く姿なんかも思い出されます。その後やめちゃいますけれど。共和党員で現在軍事評論家っていうアメリカのロッカーにしては少々不気味な経歴も、この人ならわからなくもない感じ。

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デビューはアラン・ローバーが手がけたボストンのサイケ・ガレージ・バンド、アルティメット・スピナッチ。ひどいバンド名だけれど、ローバーに改名させられたみたい。ファースト収録曲は日本盤シングル(『僕の旅路』)も出ていたみたい(http://www.punkblowfish.com/TheUltimateSpinach.html)。

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MGMから3枚のアルバムを残していて、メンバーチェンジを経た1969年の3枚目にジェフが参加。楽曲はメンバーのテッド・マイヤー主体だけれども、リードギターやボーカルバンドで大活躍し、バンドを乗っ取るような形になっている。よって、オリジナル・メンバーのヒッピー・ガール、バーバラハドソンという紅一点がほとんど目立たなくなっていて(フォーキーなReasonsがやたら場違いに響く)。というか、聴き続けていると、ジェフのギターの気持ちよい音しか聴こえなくなって来る。才能が突出しているというのはこういうことなんだな、と。たぶんテレキャスかな?ギターの音が心地よい。楽曲的には唯一のジェフ・バクスター曲”Daisy”というのが、疾走感のあるガレージ・ロックで最高!そして、白人ドゥ・ワップのリフレクションズの(Just Like) Romeo & Julietのロック・カバーが最高で。スティーヴン・ビショップもカバーしているけれど、本当に良い曲。

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2017-04-19 ディランと、禅と

markrock2017-04-19

[] ディランと、禅と 23:46



先日書いた佐藤龍一(龍)さんのレビュー&ディスコグラフィー。龍さんのフォロワーの方々が沢山リツイートしてくれたりで、いつになく物凄く読まれていてビックリした。流石龍さんだな〜と。先日の龍さんのライブにはタイ在住のミッキー・カーチスさんが遊びに来たとかで、そのツーショットも何とも渋かった。

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さて、ディランの新譜『Triplicate』がやっと注文していたドイツから到着。発売からしばらく経ってしまったけれど…ただ最近は早く聴く、なんてことに余り関心がなくなってしまった。世の中のスピードが速すぎるから。なんか情報が多過ぎて鬱陶しいですよね。情報収集が億劫になると、面倒だから安上がりなメディアに頼りますでしょ、そうなると人々の思想は画一化してきてしまう。そうした傾向は、ここ数年でよりひどくなっているような印象があって。たぶん、人間そのものの定義が変容してきているんだと私は思っています。気付かないうちに脳にチップ埋められちゃってるんじゃないか、という(笑)。といいますのも、最近誰が書く文章を読んでも心が揺さぶられない。私が今書いてる文章なんかもその典型かもしれないけれど。インターネットの記事は特にそうかな。何の商売のための文章か深読みする方がまだ面白い、という。心揺さぶられない理由をちょっと考えてみると、何やら、私が考える人間本性に到達していない感じがしてしまうからで。よくある誰かの気の利いたストーリーとしてケーハクに消費されているといいますか。そもそも人間ってカナリ複雑でよくわからないものだと思うんですよね。でも、わからないと気持ちが悪いからなのか、考えてもわからない人間に貴重な時間を使いたくないからなのか、人間自体がすごくわかりやすくなってきている。端的に言って「変な人」が減っている、という。

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前置きが長くなったけれど、私にとっての「変な人」代表は「ボブ・ディラン」その人。うーん、私にとっては一番好きなミュージシャンだから、「変な人」だなんて言いたくはないけれど(笑)ノーベル文学賞受賞を拒否したっていうニュースが当初あったじゃないですか。実際は拒否っていうより沈黙を貫いただけなんだけれど、このニュースに対するメディア世間の反応を見たとき、やばいな、と思ったんです。「ノーベル賞をあげるって言うのに、なぜ貰わないのか」っていうムード。もらわない「変な人」は受け容れられない…わからないものに出会って、戸惑って、それを好意的に受け取る余裕がない…そんな画一的・全体主義的ニュアンスを感じたんですよね。トリックスター的「変な人」を理解する術をもはや失ってしまったんでしょうか。あるいは、ディラン受賞おめでとう!みたいな単なる賛美が一方にはあって。どうおめでたいのか、誰も説明できない。実際「風に吹かれて」しか聞いたことない、みたいな。おいおい…文学や学問、芸術が消える時代ってこんなものなんでしょうか?批評不在の時代とはかくも…

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人間に与えられた言葉を、もっと豊かに使わないといけないと思う。このディランのアメリカン・スタンダード集の新作(通算38作目)は「3枚組」そして「30曲」。アメリカン・スタンダード集としても「3枚目」。それぞれのディスクのタイトルは「’TIL THE SUN GOES DOWN」「DEVIL DOLLS」「COMIN’ HOME LATE」。だからタイトルは「3枚組」という意味の『Triplicate』。すさまじいボリュームだけれど、ディランが詩・言葉を大切に歌っていることが伝わってくる。ポピュラー音楽は詩とメロディと、シンガーとミュージシャン、ミックス、ジャケット…といった総合芸術なのだった。やっぱりこうじゃなくっちゃ、という。そしてディランの歌は、どうしちゃったの、というくらいに上手すぎるでしょう。ジャズ詩大全』なんか読むとわかるけれど、スタンダードの詩って、メロディとのマッチングも含めて時代を超えた普遍性がある。俳句に近い、行間を読ませるような、必要最低限のラインで、想像力の余地を残している。一般的にいってジャズ・シンガーって上手すぎるから、ややもすると、歌詞の微妙でブルーな感情を、明るく歌い飛ばしちゃう所がある。その辺のニュアンスをディランはじっくり歌い込んでいて。”As Times Goes By”とか”Day In, Day Out””Sentimental Journey””The Best Is Yet To Come””Stardust”…なんていう「ド」が付くほどのスタンダードではあるけれど、ディラン流の解釈があるから全くもって飽きることがない。輸入LPで入手したけれど、ダウンロード・カード付きで、180gアナログの音はとにかく太くて、凄くよかった。ギターにディーン・パークスが加わっているのもちょっと新鮮なような。ミックスはアル・シュミットで、プロデュースは自身の変名ジャック・フロスト。

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自作の新曲が聴きたかった…と考えておられるファンもいるかもしれないけれど、もはやそういう境地ではないとも思う。自作曲にミュージシャン個人の思いが篭められているはず…という私小説的、ある意味近代的なポピュラー音楽のあり方を意図的にズラしていることを読み取って欲しい。というか、あらゆる定義をズラすのがディランだから。これって、私の解釈だと禅的なんですよね。ディランのインタビューは禅の公案集を読んでいる感じ。「答えは風に吹かれている」なんてのも、「外にいる風を掴まえてこい」なんていう公案みたいですよね。今回の『Triplicate』だって、他人の曲、自分の曲なんていう分別はなく、私も世界も、あなたとディラン、シナトラ…などという対立のない、ほぼ悟りの境地にたゆたうような感じで。ずーっと一つの音楽を聴いていると、誰の音楽を聴いていたのかわからなくなる瞬間ってありますよね。これこそが音楽と自分が溶け合い、自分が音楽そのものになりきる、無分別の悟りの境地に近いような。この『Triplicate』にはそんな気持ちになれる瞬間が幾度もある。かといってそんな気持ちになろう、と思って聴いてはいけないんですが。

LP1:‘Til The Sun Goes Down:

01 I Guess I’ll Have to Change My Plans

02 September of My Years

03 I Could Have Told You

04 Once Upon a Time

05 Stormy Weather

06 This Nearly Was Mine

07 That Old Feeling

08 It Gets Lonely Early

09 My One and Only Love

10 Trade Winds

LP2:Devil Dolls:

01 Braggin’

02 As Time Goes By

03 Imagination

04 How Deep Is the Ocean

05 P.S. I Love You

06 The Best Is Yet to Come

07 But Beautiful

08 Here’s That Rainy Day

09 Where Is the One

10 There’s a Flaw in My Flue

LP3:Comin’ Home Late:

01 Day In, Day Out

02 I Couldn’t Sleep a Wink Last Night

03 Sentimental Journey

04 Somewhere Along the Way

05 When the World Was Young

06 These Foolish Things

07 You Go to My Head

08 Stardust

09 It’s Funny to Everyone But Me

10 Why Was I Born

2017-04-09 佐藤龍一(龍)さんのニュー・アルバム『LEGACY OF LOVE』

markrock2017-04-09

[] 佐藤龍一(龍)さんのニュー・アルバム『LEGACY OF LOVE』 23:34

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レックレコード所属・元「竜とかおる」の…という枕詞でいまだに紹介してしまうのも申し訳ないのだけれど、佐藤龍一さんの3月20日発売のニュー・アルバム『LEGACY OF LOVE』が到着!何度も聴き返しているけれど、好楽曲・好アレンジで綴られた渾身の力作だと思う。個人的には「ミュージシャンは老いてなお進化し続ける」ことを実証する現役先輩ミュージシャンとして尊敬している。全力で歌い、弾きまくるライブは一見の価値がある。その龍さんといえば、近年はツイッターフォロワーなんと5万4000人!私も昨年たまたま会った20歳くらいのデザイナーの女性の方が何気にフォローしていると何かの話でわかったりして。ミュージシャンとして、というだけではなく、現役クリエイターとして刺激を受ける言葉の数々が散りばめられているからだろう。また最近では、戦争体験者でいらっしゃった御実父を94歳で亡くされ、入院されてからのそのドキュメントを多くの方が見守っていた。さらに葬儀では御父上の好きだった江差追分をかけようとしたら止められた…というJASRAC関連の問題がメディアの多方面で取り上げられ、話題になった。

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個人的には2011年に元ピピ&コットの金谷あつしさんのプロデュースで出したファースト・アルバム『蒼い蜜柑』の1曲目”パノラマ”と、4曲目の”真実”を龍さんにアレンジして頂いたのが忘れられない。デビュー盤の1曲目ですからね。今でもこのアルバムの1曲目のイントロが好きだと言って貰えるのは龍さんのお蔭です。クラプトン!と思ってしまったぐらい艶かしいエレキ・ギターのソロも最高で。ギターやベース・打ち込みまで、マルチな才能をもっていらっしゃる。歌入れレコーディングの日には生でブルースハープを入れてもらったのも思い出です。

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さて、この『LEGACY OF LOVE』は自身のレーベルMIOTRON RECORDSからの初リリース。1990年頃にNYのジャズ・クラブ"VILLAGE GATE"で、演奏を聴きながら紙ナプキンに走り描きされたというジャケのイラストがとても良い。予約特典にはポストカードとバッジも付いていた。

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今のところ、流通はあえてしておられないとのことで、ライブ会場あるいはホームページから購入可能になっている(http://seesaawiki.jp/w/miotron/)。全12曲で、ライブの弾き語り風味もありつつ、バンド・サウンドによる迫力あるアレンジが聴きものだ(龍さん自身の演奏に加え、安井歩氏がベース・キーボードなどで参加している)。ライブでの人気曲で、自伝的内容の”なけなしのジョニーのくせに”はブルージーなアコギの弾き語りとみせかけて、レゲエ・アレンジで初っ端からぶっ飛んでしまう。”愛っていったいなんなの”はギターの上手さも光っていて。アンビヴァレントな恋愛感情を歌った”嫌いになりたい”は往年のフォーク・サウンドで落ち着く。好きですね。”青空ファンク”は前作『LOST&FOUND』の”ファンキートレイン”を髣髴とさせつつ。龍さん・生田敬太郎さん・とみたいちろうさんはエレックファンキー三勇士だと思っています(笑)。龍さんのブルージー感覚で言えば、チャー&金子マリがいたスモーキー・メディスンのレパートリーで龍さん作詞・作曲の”R&R列車(ロックンロール・トレイン)”も忘れてはいけません。龍さんとアマチュア時代にバンドを組んでいた、とみたいちろう(現Mojo)の1976年『STEP TO MY WAY』にはとみた&龍の共作とともに、この“R&R列車”(バックはスモーキー・メディスン)が収められている。ところで、とみたいちろうさんは”俺とおまえと大五郎””パッ!とさいでりあ””セガサターン、シロ”といったCMソングや私の世代だと戦隊モノ科学戦隊ダイナマンでもお馴染み。

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しかし、龍さんといえばデビューの時から才能を買われていた「詩」がいつも印象にあるのだけれど、このアルバムの詩に充満するのはやはり「愛」かな。何しろタイトルは「愛の遺産」。失ってから、時間・空間的そして精神的距離を取って、生きていて初めて気付く愛の相貌。つかめそうでつかめないものなんだけれど…それは龍さんの亡くなられた御両親や奥様のことももちろんあると思うけれど、そうした個人的な経験を超えたところにある愛の普遍性に打たれてしまった。「ひとは何故に生まれ 愛しあうのだろうか 永遠のその果てに 何を見るのだろうか」(”還らざる河”)…龍さんの地点に達していてさえも、見ることができないものを、僕みたいな青二才が捉えられるわけがない。それでも”百億年の夢”にある「逝かないで どうか生き延びて」からは、生の肯定的なメッセージを受け取ることができた。始めの話に戻るけれど、「ミュージシャンは老いてなお進化し続ける」ことを実証する龍さんの生き様に、生きることの素晴らしさを感じずにはいられない。



さて今度は、龍さんのキャリアを辿っていこう。1972年、キャニオンレコードから伊藤薫とのデュオ「龍+1」名義の「オニオニ島失踪事件の唄/競馬場のある街はずれに」でデビュー。グラム・フォーク風なファッション!コミック・ソングのタッチでありつつ、ロック・マインドがそこかしこにあるのが龍さんらしくて面白い。2011年の編集盤『エレック ゴールデン☆ベスト〜コミックセレクション〜』で聴くことができる。

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その後、「竜とかおる」と改名し、1974年にエレックレコードよりアルバム『ひとつのめぐり逢いをリリース。エレックというと「フォーク」という範疇で決めてかかってしまうけれど、”その頃の僕”などにはソフト・ロックのテイストがあって、ドリーミーで独特の美学が感じられる。そしてLPで聴くとレコーディングの音の良さもわかる。龍さんの詩と伊藤薫さんの楽曲のコンビネーションは見事だった。伊藤薫さんの女性的なハイトーン(実は初めて聴いたとき女性だと思い込んでいた)と、震えるような龍さんのボーカルにも個性がある。”ちぎれそうな声で”や”流れ星の伝説”は名曲。シングル・オンリーの楽曲では1974年の「エミリア」がある。


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1974年にデュオ解散すると、1975年に「龍」名義のソロ・アルバム『あわせ鏡』をエレックレコード(TOYBOX)よりリリース。” ちぎれそうな声で”の再演もあり、力強い弾き語りが堪能できる。ライナーでは永島慎二の文と絵が印象的。永島慎二フーテンは私も大好きです。10分に及ぶタイトル曲が白眉。後の短歌絶叫・福島泰樹さんとのコラボを思わせる世界観が既に完成している。

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1975年にはモデルのエルザのトリオからリリースされたHalf & Halfスーパーバイザーとして参加(裏ジャケに龍さんのメッセージあり)。”唄は私の小さな人生”の詩・アレンジ・唄、真理アンヌ作詩の”父よ”ではギター一本の伴奏を務めている。このアルバムは荒木和作&やまだあきらやダッチャ、かんせつかずとか、トリオ・ショーボートものが再発されたときに、そのセンスの良さで話題になったフィーメール・ボーカル盤。エルザの事務所ゲドリック商会に龍さんと薫さん、三上寛さんがいたみたいで、一緒にツアーもやっていたそう。結構強烈な組み合わせ。どんなライブだったんだろう。ライブ音源の”唄は私の小さな人生”で想像してみたり。

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さらに1976年には短歌・現代詩とのセッションが始まり、東京キッドブラザーズのミュージカル『ひとつの同じドア』の音楽を手がけている。さらに、四人囃子の茂木由多加のプロデュースでSCANDALをリリース予定だったがオクラ入りし…その後世界30ヶ国を放浪。日本では失踪の噂が流れたという…。いやはやこの辺りの話がスゴイですね。ところで茂木由多加のプロデュースのSCANDAL、いつかどこかで再発できないものなんでしょうか。1976年のシングル『最後のジルバ/夕焼け事件』でその一端を聴くことは可能。

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それにしても、”最後のジルバ”では歌詞に合わせて高速チャールストンになったり、ジャズになったり…というめくるめくキーボード・アレンジにただただ驚くばかり。日本のフォークとロックの力関係が逆転する端境期が私の見立てでは1978年。ギターと鍵盤の力関係と言い換えてもいいんだけれど。だから、1976年でこの音は先を行き過ぎている。茂木由多加さんという人は本当に天才だったんだろう。そしてまた、このアルバムがリリースされていたならば、龍さんのキャリアもまた違ったものとなっていたのではないだろうか。ちなみに1978年にキティからリリースされた茂木由多加さんのソロ・アルバム『デジタル・ミステリー・ツアー』はA面にビートルズ『Magical Mystery Tour』のA面の”I Am the Walrus”以外の5曲を当時最新のキーボード・サウンドでカバーしているという異色作。

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あと、短歌・現代詩とのコラボレートで言うと、短歌絶叫の福島泰樹さんとのコラボはとりわけ阿吽の呼吸が凄まじい。吉祥寺曼荼羅では長らく短歌絶叫ライブをやっておられる。龍さんの情感を帯びたアコギと福島さんから吐き出される現代詩が絡み合う様はかなりアヴァンギャルドだと思う。1982年砂子屋書房からリリースされた『曇天』は「福島泰樹+龍」名義。ライブの緊張感がそのまま詰め込まれている。龍さんの力強いボーカルが映える”バリケード”は特に印象深い。あの時代の想いも感じつつ。CDでは1996年『転調哀傷歌』もよく聴いた。

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そして2008年、32年ぶりにリリースされたソロ・アルバムが前作『LOST & FOUND』(SOUNDforte)だった。近年の旺盛なライブ活動から今回の新作に繋がる現在の佐藤龍一の音楽が詰まっている好盤。

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ちなみに、竜とかおる時代の盟友・伊藤薫さんは欧陽菲菲の”ラヴ・イズ・オーヴァー”を作詩・作曲し、人気作曲家となった。谷村新司もカバーした”Too Far Away”や自身の”君への道”など、バラードの美しさは秀逸。TOYBOXからリリースされた1976年『アルバム―かおる―』は未CD化だが、バイバイ・セッション・バンド〜一風堂土屋昌巳がアレンジを手がけていた。

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その頃のとみたいちろうのシングル『ハイエナデキシーブルース/さよならマギー土屋昌巳アレンジだった(”さよならマギー”は龍さんの詩)。その他、1986年に『君への道』、1994年に『少年へ…』をリリース。

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2013年には松原健之とのデュエット・シングル『悲しみの雨/秋の手紙』がリリースされ、翌2014年には歌謡曲のソングライターとして作った楽曲(”ラヴ・イズ・オーヴァー”含む)のセルフカバー『SHADOWS〜今残したい伊藤薫の10曲』をリリースした。そうなると、ファンとして期待したいのは再結成ですよね。オフコースふきのとうファンの気持ちは同じだと思うけれど。だって、あの古井戸加奈崎芳太郎さん&チャボさん)だってまさかの再会ライブがあったじゃないですか!そんなことも、頑張って日々を生きていれば、いつの日か、あるんじゃないかと期待しつつ…。

2017-04-06 加川良、教訓気鯆阿ながら…

markrock2017-04-06

[] 加川良、教訓気鯆阿ながら… 00:57


いやはや、また更新が空いてしまった。なんだかんだ一年がかりになっているけれど、哲学関係の本を作っている。9割は書けたのだけれど、あと1割に意外と時間がかかっている。この辺は音楽制作と同じでキリがないから、どこかであきらめて作業を止めなければいけないのだけど。あとは予定通り出せるかどうか…という不安もありつつ。



そんなこんなで音楽を聴いていないわけでは全くないけれど、暖房のないレコ部屋も過ごしやすくなってきて、レコードを聴く時間も増えてきた。3月末には吉祥寺HMVレコードストアがオープンしたり。面白いですね。こんな時代にLPを聴こうとする人はしっかりいて。90〜00年代のDJブームに産湯を浸かった30〜40代に加え、10〜20代のお客さんも結構いたのがなんだか嬉しかった。90年代には中古レコ屋でレコをトントン落として、「レコードの扱いがなってない!」とか怒っているリアルタイムのアナログ・ファンが沢山いたけれど、そのレコードトントンの人達がカムバックして、今アナログ人気を盛り上げているんですから、そんなに目くじら立てちゃいけないってことです。流石に今はトントンやってる人いませんでした(笑)。

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で、加川良さん。闘病中との噂は聞いていたけれど69歳、早すぎる。昨日はショックを受けました。大きく言って団塊チルドレンの私にとっては「フォークの父」が亡くなったような…高田渡さんの時もショックだったけれど。吉田拓郎1971年中津川フォーク・ジャンボリーの”人間なんて”で岡林からお株を奪った頃、吉田拓郎加川良はフォークの二大アイドルだったわけで。

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URCやエレックからスター達はメジャーに吸収されていったわけだけれど、ソニーに行って後にフォーライフを作った吉田拓郎加川良は対照的だったような気もする。でもどちらもロックをルーツに持っていた(加川良GSをやっていたと何かで聞いたような)せいか、単なるフォークの枠に囚われない音楽性が魅力だった。そういえば吉田拓郎『元気です』収録の”加川良の手紙”の一節「あの日、君が…ホワイトジーンなら もっと、かっこよかったと思います」も印象的だった。ぼくはこれを初めて聞いたとき加川良を知らなかったから、どんな人か想像をたくましくしたりして。

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URC『教訓』1971年)、『親愛なるQに捧ぐ』1972年)、『やぁ。』1973年)の初期3枚は死ぬほど良かった。2枚位持っていても良い位に思えました(笑)。

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”下宿屋”、”伝道”、”流行歌”とかね。それでもやっぱり”教訓機匹な。なぎら健壱の”教訓供匹犬磴覆い任垢茵この”教訓機匹呂爐し吉祥寺のライブハウスで、フォーク歌手の松田亜世くんと、ギター・バンジョー抱えて一緒に歌った思い出も。”教訓機匹蓮CDではカットされている”働らくな”が収録されたLP『教訓』で聴かなきゃいけません。はっぴいえんども加わっていて、頭からシッポまで嫌いなところを探す方が難しい好盤。

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ベルウッド時代の『アウト・オブ・マインド』(1974年)には吉田拓郎強姦冤罪事件のドキュメント、”2分間のバラッド”があり、テイチクのブラックレコードから出した『駒沢あたりで』(1978年)はレイジーヒップのバッキングで南部サウンドを聴かせてくれた。”女の証し”が凄いんだよね。中島みゆきも愛聴したという女言葉の名曲

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ブラックレコードから出た『南行きハイウェイ1976年)も石田長生プロデュースの良いアルバムだった。あとは、小椋佳と共作した東京キッドブラザーズ『十月の黄昏の国』1975年)とか、80年代にはNEWSレコードから『プロポーズ』(1981年)、ベルウッドから村上律とのデュオ・ライブ盤『A LIVE.』(1983年)があったり。

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90年代は個人的にはリアルタイムになるんですが、やっぱり1996年のRYO KAGAWA WITH TE-CHILI名義の『ROCK』ですよね。コレには衝撃を受けました。藤井裕、有山じゅんじ、ロジャーという面々でロックバンドを組んで、”戦争しましょう””教訓機鼻錨粗察鼻表の証し”など過去の名曲グランジ風ロック・サウンドをバックに、神懸かりのようなボーカルで聴かせてくれる。ハードなバカでかい音に全く負けない加川良のボーカルって一体なんなんだろうと思ってしまいました。コレ、今こそ再評価されるべきでは?フォークファンも挑戦して欲しい一枚。1993年『2』というのも遡って買いました。

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下北沢のラ・カーニャ斉藤哲夫さんとの対バンを見たのも忘れられない。”ビール・ストリート”とか歌ってくれたような。生で聴けば、レコードやCD以上に味のあるボーカルで。そのボーカルは、思いの篭った言葉を伝えるためにあるんだと思いました。故・岡本おさみさんのトリビュート盤で歌っていた細野晴臣作曲の”ウイスキー色の街で”を聴いた時も、本当に歌の上手い人だと感じたけれど。

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ペダルスチールのすぎの暢さんと加川良さんのアコギのステージも素晴らしかった。すぎの暢さんのペダルスチールの音は、それこそサニー・ランドレスのギターみたいな音圧で。『ユーズド・エンド』というライブ盤も良く聴きました。サイトでCD買ったら、加川良さんの字で宛名が書かれていました。

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思い出せば思い出すほど、聴けば聴くほど…ですが、加川良さんが歌っていたことを思い出しながら…。



「悲しいときにゃ、悲しみなさい、気にすることじゃ ありません」(『伝道』)

2017-03-03 ムッシュ・フォーエヴァー

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[] ムッシュ・フォーエヴァー 01:43

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ムッシュかまやつが亡くなったとの報、ショックが大きい。今日も一日、どよーんとした気分で過ごしてしまった。ムッシュの何から何まで好き、っていう人いますよね。きっと同じような気持ちの人がいるはずだと思う。あのテンションコードだらけの弾き語り、唯一無二だった…もう一度聴きたかった。

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ツイッターでは深夜にワイン飲んでるとか、ステーキたいらげたとか、それにミッキー・カーチスが突っ込みを入れる、っていうやりとりが。いやはや老いてなお元気だなと感心していたのだった、闘病生活に入る前までは。

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飄々とした本当の粋人だったと思う。テイチク時代のカントリー、ロカビリーGS・スパイダース、ニュー・ロック、フォーク、そして90年代以降のリヴァイヴァルもあったでしょう。戦後日本のポピュラー音楽の歴史そのもののような、しぶといミュージシャンだった。時代感覚ですよね。GSグループサウンズ)から(ニューロックもあったけれど)、吉田拓郎に飛びつく嗅覚って凄いと思う。産湯のカントリーとフォークの音楽性の近似があったにしても。

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とはいえ旧制高校バンカラ風味の「我が良き友よ」のB面にタワー・オブ・パワー参加の「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」ですから、そのバランス感覚は普通ではなかったわけで。ある意味ゲーノー界的な嗅覚なんだけれど、商業主義的というよりはセンスで選んでいる感じ。キャンティ文化にも関係しつつ、西洋文化を一番早く摂取できる立ち位置で、何よりオシャレであり続けた。ユーミンの幻のデビュー・シングル「返事はいらない」のプロデュースもムッシュだったし。

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1996年でしたか、高校生の時にNHKの公開録画で観たのが最初。玉置浩二と二人で出演していた。確か急にキャンセルになった沢田研二の代役だったはず。でも自分でいいのかな〜なんて言いながらもお客さんを喜ばせる、息の合った素晴らしいステージを見せてくれて。20代のときにはムッシュが大好きな友人と江古田マーキーでのライブを観に行ったけれど、とても良くって。ちょうどムッシュがキンクストリビュート盤に参加していた頃だった。その頃ぼくもマーキーで何度かライブを演っていたんだった。で、ムッシュのライブは、アルフィー解雇された!とか言っていたドラマーのグリコと二人で(アルフィーはムッシュのバックを演っていた)。キンクスとかストーンズなんかも、肩の力を抜いて演っちゃうんですよね。かるーくジャムる感覚で。終演後はもちろん出待ちしましたよね。

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その二年後ぐらいに吉祥寺のボガ(中川イサト『お茶の時間』のジャケットになっている喫茶店の現店舗)で隣にムッシュが座っていた、ということもあった。あまりの衝撃に「ムッシュですよね?」と問いただしてしまったが、見間違えようもなく、ムッシュ以外の何者でもなかっただろう。

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近作では2009年のブルーズ・ザ・ブッチャームッシュかまやつ名義の『ロッキン・ウィズ・ムッシュ』が最高だった。永井ホトケ隆やコテツが参加したバンドとの共演作。

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編集盤では2006年にウルトラ・ヴァイヴが作ったゴールデン☆ベストがとにかく良音・センス良すぎる好編集盤だと思う。製作スタッフのクレジット見ていたら、小学校の後輩だった嵐山光三郎の息子さんの名前がありました。

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オリジナル・アルバムではかまやつひろし・アルバムNo.2 どうにかなるさ』が全曲カバーしたいくらい大好き。「喫茶店で聞いた会話」、とかね。ムッシュ・フォーエヴァー…


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2017-02-04 72歳のジェフ・ベック

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[] 72歳のジェフ・ベック 11:05

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好きで長らく聴き続けていたけれど、ライブを見に行ったのは初めてだった。ジェフ・ベック「ジャパン・ツアー2017」、1月31日の東京国際フォーラム公演。いつまでもあると思うな〜式の話で。72歳ですからね。会場は親父ロックファンの群、群、群…。しかも喫煙所なんか、相当いかつい雰囲気でした。まぁ、一緒に行ったオヤジ・ロックバンドのメンバー連も、駅で立ってるだけでたいてい職務質問されるんですが。でもライブ会場の雰囲気は、なんとなく奥ゆかしいというか穏やかそのもので、ジェフの性格を表している様な感じも。

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昨年出た新作『Loud Hailer』の流れのツアーということで、新曲中心の割合貴重な選曲だった。二人の20代女性ミュージシャンとの共演。クイーンのロジャー・テイラーのバースデイ・パーティで出会ったというギタリストカーメンヴァンデンバーグと、シンガーのロージー・オディ(カーメンとバンド、ボーンズを組んでいる)を交えて(リズム隊はロンダ・スミス[B]とジョナサン・ジョセフ[Ds])。

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少々単調な気もしたけれど、ロージーアジテーション的な拡声器パフォーマンスは、ロックという音楽が何者だったのかを思い出させてくれる。開演前に客席に拡声器片手に登場したとき、お客さん無反応だったのがちょっと悲しかったけれど。新作聴いとらんのかい、っていう。冒頭のThe Revolution Will Be Televised はギル・スコット・ヘロンの「革命はテレビ中継されない」っていうThe Revolution Will Not Be Televisedを引用したもの。「革命もテレビ中継される、でも誰も関心をもたない」っていう痛烈な現代情報社会への皮肉ですね。Angelのスケールを意識的に取り入れたジミヘントリビュートScared For The Childrenも素晴らしかったし、Live In The Darkも一聴して耳に残る曲。『Loud Hailer』はまさにLive In The Dark な2016年という不穏な時代を掴み取る現代性があったと思うし、キャリアを総括するような、ジェフの多様なサウンドの型が詰まっている良作だった。

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ジェフのギターは快調。ツアーで日々演奏しているわけだから、東京の初日は腕鳴らし程度で流しているような軽みもあったけれど。とはいえ流石です。ベタベタに耳タコレベルなCause We've Ended As Loversを聴いた瞬間に身体に流れる電流ですよね、グッと来ちゃうんですから。ロニー・マックのLonnie On The Moveもあったし、Beck's BoleroやらSuperstitionやら、代表曲を絶妙に網羅していて。個人的にはボニー・ドブソン〜ティム・ローズという流れでジミヘンにイメージが繋がるMorning Dew『Truth』収録)やサム・クックA Change Is Gonna Comeを朗々と歌い上げたボーカリストのジミー・ホール(Flashで名を挙げた)もいかにもジェフ好みだなあと思った。イギリス的なブラック・ミュージックの感性というか。ジミー自身はアメリカ出身てかアラバマサザン・ロック・バンド、ウェット・ウィリーのメンバーだけれども。ジェフやクラプトンもそうだけれど、イギリス的なアメリカ音楽への距離感や感性って面白いですよね。妄想が入っている部分があって。日本も似たようなところがある。

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開演前のSEからして、ロックンロールR&Bのオンパレードで、レス・ポールトリビュートなんかもありましたが、ロックに原点回帰しているようにも思えたり。このご時勢、俺がやらなきゃ誰がやる的な。とはいえ、ジェフらしいな、と思ったのは『Wired』『Blow By Blow』期の楽曲でした。最も革新的な音を作っていた時期だった、ということなのだ。でも、今回のプレイヤー的に、再現は厳しいのかな。ヤン・ハマーマックス・ミドルトン的なキーボーディストも必要だし。

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『Wired』ジャケ違いだけれど、音も違っていたことに最近気がついた。プレス時期の差かもしれないけれど。

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ちなみにこれは家宝。10年位前だったか、タジ・マハールやジミー・ウェッブなんかと一緒にチャリティに参加していたときのもの。しかし誰もそのチャリティの存在に気付かず、20ドルで終わってしまったという。嬉しいような悲しいような、複雑な気持ちになった。

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会場にはベック本の広告も。

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1.The Revolution Will Be Televised

2.Freeway Jam

3.Lonnie On The Move

4.Live In The Dark

5.The Ballad Of The Jersey Wives

6.You Know You Know

7.Morning Dew

8.A Change Is Gonna Come

9.Big Block

10.Cause We've Ended As Lovers

11.O.I.L.

12.Thugs Club

13.Scared For The Children

14.Beck's Bolero

15.Blue Wind

16.Little Brown Bird

17.Superstition

18.Right Now

encore#1

19.Goodbye Pork Pie Hat

20.Brush With The Blues

21.A Day In The Life

encore#2

22.Going Down

2017-01-28 イーグルスのファーストを。

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[] イーグルスのファーストを。 11:10

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先日JDサウザーを聴いていたら、イーグルスのファーストを思い出した。JDと一緒にデュオ、ロングブランチ・ペニーホイッスルを組んでいたグレン・フライは大きな野望をもっていて、最高のメンバーを集めて世界一のバンドを作る、と公言していたらしい。

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昨年、グレンの共作者、イーグルスのソングライターだったジャック・テンプチン(Already GoneやPeaceful Easy Feelingを書いている)が来日公演で言っていた。メンバーもシャイローからドン・ヘンリー、ハーツ&フラワーズ〜ディラード&クラーク〜フライングブリトーズのバーニー・リードン、ソウル・サヴァイヴァーズ(プアー)〜ポコ〜リック・ネルソンのバックバンド、ストーン・キャニオン・バンドのランディ・マイズナーという確かに最高の布陣で。ドンのドラムスは客観的にイマイチだけど、演奏・歌唱・コーラスも最高。でも彼らは正直良い曲が書けなかった。それでもグレンは相当目利き、というかカネの匂いのする才能を嗅ぎ出す嗅覚があった。周囲の才能のあるソングライターの曲をかっさらっていった感じ。JDサウザーしかり、ジャック・テンプチンやロブ・ストランドランドしかり。ポコ繋がりでティモシー・シュミットもよくぞ連れてきた。たぶん印税で一生仕事しなくても生きていける位、イーグルスレコードが売れたから、皆文句言わなかったと思うけれど。

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このイーグルスのファーストも、明らかに人の曲をかき集めて作った感じ。Take It Easyはご存知ジャクソン・ブラウンの曲だった。ディラード&クラークで取り上げられていたバーニー・リードンとジーン・クラークの共作Train Leaves Here This Morningとともに、両面の1曲目に光り輝いている。前述のPeaceful Easy Feelingもある。Witchy Womanみたいなドン・ヘンリーらしい重たいビートの暗いロックは後期のサウンドを想像させて。でも、快活なカントリー・ロックがやはり気持ち良い。カリフォルニアウェストコースト・ロックの象徴的アルバムが、グリン・ジョンズ制作のイギリス録音だった、という辺りも興味深い。当時のライブ映像を見ると、力量・キャリア的にもバーニー・リードンが突出しているのがよくわかる。

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Earlybirdなんかは明らかに初期の代表曲でしょう。バンドの中央でガンガン演奏していて。エレキ、アコギと楽器を持ち替えつつ、バンジョーだって巧みだったし。後にグレン・ドンの双頭体制で追い出されてしまうけれど。


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ファーストの初期プレス、アサイラム・白レーベルの盤は見開きのゲイト・フォールド・ジャケになっていて、裏ジャケにメンバー4人の姿は無い。手元にあるのはアメリカ盤。後のプレスとはアートワークが違っている。内ジャケもサイケデリックなタッチで、60年代の残り香を感じさせる。そして、音もこれまた違うから驚いてしまう。リマスターなんて言葉が出てくる前の1990年位の輸入盤CDをそれこそ長年聴いて来て、後にアサイラム水色レーベルLPを買って,それをオリジナルだと思い込んで聴いていたんだけれど…一体今までの音は何だったんだ、と思ってしまった。むちゃくちゃブリブリ言っている音。コーラスや楽器の分離の良さに太いベース…ドラムスが迫ってくるようだし。スモーキーなエコー感も違う箇所があったりと発見が多い。

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こちらは後のプレスの裏ジャケ。CDのアートワークもこちらを踏襲している。

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昨年グレンが亡くなったとき、グラミー賞で、イーグルスと紹介もされず突然トリビュート・ステージが行われたのを思い出した。Take It Easyを演っていた。アメリカ人じゃなくても見ればわかる、っていう。でも、音楽業界も変わって、おじいちゃんになったヒッピー達が演奏する風景は、いささかタイムスリップしたようで、場にもそぐわないようで、時代が変わった、と思わせられるものがあって。リード・ボーカルは作者ジャクソン・ブラウン、泣きながら歌っているように見えた。わけがわからないけれど、ぼくももらい泣きしてしまった。ドン・ヘンリーはしゃしゃり出ず、下手くそなドラムスに徹していて。昨年新作ソロを久々に出した長髪ティモシー・シュミットも流石に老けたなあと。70歳のランディ・マイズナーも見たかったけれど、ステージには現れず。フェアウェル・ツアーなんかを支えていたギタリストのステュアートスミス、そしてプレイヤーとして非力なバンドの演奏力を確実に高めていたジョー・ウォルシュに加え、バーニー・リードンが加わっているのが、なんだかホロっときましたよね。グレンが亡くなる数年前、もう体調悪かったのかもしれないけれど、突然イーグルスはバーニーを加えて初期の曲を交えたステージを演っていた。バーニーの頭はスキン・ヘッドになっていて。でもテレキャスで往年のTake It Easyのソロをレコードの通りに弾くんですよね。なんか妙に感動してしまった。ドンによるとこれでイーグルスはおしまいだそうだ。グレンの息子を加えてのリユニオンはあるかも、とか嘘か真か言ってるらしいけれど。まあ、ぼくたちのイーグルスはもうおしまいということになってしまった。

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ちなみにバーニーは2003年に、グリン・ジョンズの息子イーサン・ジョンズをプロデューサーに迎えて初の単独ソロ『Mirror』をリリースしている(レビューは→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20090301)。

2017-01-27 ピーター・アンダース幻のプロデュース作

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[] ピーター・アンダース幻のプロデュース作 21:58

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アンダース&ポンシアのピーター・アンダースが昨年亡くなった。余り話題にならず、寂しい死だったような気もする。晩年にリリースしたCD『So Far』(レビューは→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20110306)のプロモーションのために作られたホームページhttp://peteranders.net/)はなかなか愛があった。CDにはエルヴィスに提供した曲の印税小切手なんかがアートワークに含まれていて。年をとるまでそれを誇りにしていたんだなあ、と思ったり。ちなみに左のCDは64曲入りの謎の2枚組コンピ。

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さて、ピーター・アンダース1970年にプロデュースを手がけたレコードがあることは余り知られていない。たぶん日本にはリアルタイムで入ってこなかったはず。同じイタロ系のシンガー、ディック・ドマーニのアルバム『Dick Domane』でMap Cityからのリリース。Map Cityはイタロ・マフィアが絡んでいて、アルバム再発は難しいなんていう話も。Map Cityでディック・ドマーニはブルージェイズというグループを組んでいて、1枚のアルバムやシングル(アンダースのプロデュース)を出している。Map Cityはボビー・ブルームのシングルも出していたり。あとはマルディ・グラズやイエスタデイズ・チルドレンのアルバムとか。

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で、このディック・ドマーニ盤はサイケデリック色があるので、アメリカではサイケやガレージの括りで評価されているみたいだけれど、普通にアンダース的なイタロ・ポップとして聴ける作品。ブライアン・ギャリのシングルとか、ドン・シコーニとか、その辺が好きであれば好物な音。アメリカのイタロ系でちょいロックに行った音は、歌のいなたいバタ臭さとサウンドのバランスがなかなかクセになる。シュガーローフのジェリー・コルベッタもそう。収録曲のうちHang Onはブルージェイズのシングルそのものだから、アルバム用に曲が足りなくてねじ込んだのだろう。

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ディック・ドマーニは1973年RCAからホワイト・ウォーターというバンドで唯一作『Out Of The Darknessをリリースしている。こちらはヴィニ・ポンシアのプロデュース、ということで、アンダース&ポンシアにプロデュースしてもらった幸運な人、ということになる。こちらは結構ファンキーでソウルフルな仕上がり。その後も音楽活動を続けて、自主盤をリリースしたりもしていたみたいだけれど、公式HPも閉じちゃってるみたいだし、現在ご存命なのかもわからない。

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そんなこんなでアンダース&ポンシア関係を色々と出して聴いている。ピーターの1972年、ファミリー・プロダクションから出たソロ『Peter Anders』(レビューは→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20070126)。売れる前のビリー・ジョエルピアノで参加している。ビリーのファースト『Cold Spring Harbor』はファミリー・プロダクションからでているけれど、回転数が間違っていたり、散々なデビューでしたが、オリ盤の音は良かった(→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20130508)。プロデューサーのアーティー・リップは発見したビリーに粘着して、その後相当搾取するわけです。ソロデビューの恩人とはいえ、ビリーは嫌だったろうなぁ。

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『Peter Anders』1976年にタイガーリリーから収録曲を微妙に変えて再発されている。(レビューは→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20110108)。

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そもそも始まりは『アンダース&ポンシア ポップ・ワークス』。プロデュースした長門芳郎さんのパイドについては→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20150818を。

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アンダース&ポンシアのデビューはドゥ・ワップのヴァイデルズ。Mr.Lonelyはとても良い曲。

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イノセンスとトレードウィンズ、甘酸っぱい過ぎるポップ・サウンド!

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こちらのちょいスワンピーなアンダース&ポンシア盤もなかなか。リチャード・ペリーのプロデュースで、バックはレッキング・クルー。

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ヴィニ・ポンシアはキッスやリンゴ・スターなどを手がけて、大プロデューサーになっていくわけです。アンダース&ポンシア気分のポップ・マインドを感じられるのはザ・ムーヴィーズ1976年『The Movies』かな。ヴィニのプロデュース。



関連でトニー・ブルーノのレビューは→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20161127を!

2017-01-22 マーク・コーンのレコード

markrock2017-01-22

[] マーク・コーン(Marc Cohn)のレコード 22:41



ここの所、物書きに没頭していて、音楽には辿り着きつつも、なかなかブログに辿り着けなかった。積まれた本と格闘という感じ。そして、何より、レコード&書庫部屋に暖房がないというのが一番大きいかな。とにかく冷えます。隣の部屋の暖気をもらってなんとか。冷たい部屋でふと正気にかえる時もある。

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さて、今日はマーク・コーンを聴いている。大統領就任式の日の彼のツイッターを見ていたら素直に、悲しい!と書いてあった。去年『Careful What You Dream: Lost Songs and Rarities』http://marccohn.net/)というレア・トラック集を出したんだけれど、アメリカ国内のみCD販売があり、国外販売もいずれ、とHPにある。でも、待てど暮らせど国外からの購入環境が整わない。ダウンロードなら買えるんだけれど。Walking In Memphisでグラミーを獲って一世を風靡した彼でも、国外ファン層は限られているし、現状はシビアなのかもしれない。

ウェスト・コースト・ロック界のリベラリスト達が90年代に一押ししていたのがシンガー・ソングライターのマーク・コーンだ。1991年のファーストにはジェイムス・テイラーが参加した。1992年のバルセロナオリンピックの公式CDに収録されていたOld Soldierは、デヴィッド・クロスビー1993年のソロ『Thousand Roads』ナッシュ、マークのハーモニー付きで歌われたし(先日紹介したデヴィッドの新作にもマークとの共作があった)、ジャクソン・ブラウンのアルバム『Naked Ride Home』にコーラスで参加していたこともあった。そう、アート・ガーファンクル1997年のチルドレン・ソング集『Songs From A Parent To A Child』にはマークのThe Things We've Handed Downが取り上げられている。

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ぼくはすごく小さい頃アメリカに住んでいて、現地の学校でマーク、と呼ばれていた。自分のことを「まーくん」と言っていたから、マークになったんだと思う(笑)。そんなわけでマークという名前の人には妙に親近感がある。そして、1959年生まれ、32歳という遅咲きのデビュー。ぼくも初めてCDを出せたのが32歳だったから、勝手に妙な親近感を持っているというわけ。そう、大学生のとき、今はなき高田馬場のDISC FUNにて(最近当時のレコード袋を発掘した)、店外の野ざらしのCDの中に、マークのサイン入CDがあった、なんてことも。業界関係者がやたらサンプル盤を流出させていた店だったから、マークはプロモーション来日していたのかも。

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最近ネットで調べていたら、1991年のファーストまではLPヨーロッパではリリースされていたようだ。1992〜4年頃が、LP・CD・MD・カセットとメディア百花繚乱だったギリギリの時代かな。それ以降のLPはDJユースになる。そんなこんなで最後の時代のLPを入手してみたところ…おお!!感無量と言うか、とにかくいつになく新鮮に響いた。ジャケットのポートレイトはCDジャケより大写しになっていた。

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結構アナログに響く音で、ピアノの響きがとりわけすごく良い。今聴くと、ブルース・ホーンズビイのピアノ・ロックを参照しているようにも聴こえる。

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一方、1993年セカンド『Rainy Season』はCDのみのリリース。シングルカットされた曲のみ、レコードでリリースされていて。このアルバムは丸ごとアナログで聴いてみたかったから、ちょっと残念。手元にあるシングル盤はアルバム中一番好きなWalk Through This Worldという曲。2012年にジョー・コッカーもカバーした。シングル盤の音自体はというと、この辺の時代からアナログ向けの音と言うより、そもそもデジタルなCDリリースを前提とした音って感じがします。バンドサウンド自体は王道アメリカン・ピアノ・ロックなんですが。これはCDと変わりはないですね。いやー、それにしても、この曲を下敷きにして作った曲もあるんですが、時効ということにして下さい…。

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プロデュースはベン・ウィッシュ。翌年にマーティン・ジョセフというシンガー・ソングライター『Being There』というアルバムをプロデュースしていて、これがまた大名盤。アレッシー兄弟も何気なくコーラス参加している。このアルバムやマークのファーストでギターなどを弾いて大活躍しているのがジョン・リヴェンサール。奥さんはジョニー・キャッシュの娘ロザンヌ・キャッシュ。この人の音作りは90年代を象徴する、洗練されたシンガー・ソングライターの音だったと思う。ショーン・コルヴィンとか、ロドニー・クロウェルとか。マークが参加したものもあったし、とにかくよく聴いた。

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マークはファーストを出す前に、出身のオハイオ州クリーヴランド賛歌のシングルを1986年に地元でリリースし、1987年にはアンドリュー・ロイド・ウェーバーの『Starlight Express』(レビューは→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20050509)のサントラでボーカルを取っている曲がある(リッチー・ヘブンスが歌う曲もある)。

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ニルソンのトリビュート・アルバムでTunn On Your Radioを歌ったりというのもありました。これはカセットをロンドンで買った記憶がある。

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三作目の1998年『Burning the Daze』でアトランティックと契約が切れて(2006年にベスト盤が出た)、その後は2005年にライブ盤『Marc Cohn Live 04/05』が、2008年にはデッカと契約してアルバム『Join the Parade』(レビューは→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20071111)をリリース。これがまた素晴らしくて。ザ・バンドを聴いたときのイノセントな感動が伝わってくるListening To Levonが最高だった。カーラジオから流れてきたリヴォン・ヘルムの歌声に心を奪われ、ガールフレンドの話は耳に入らなくなっちゃった、なんて曲。

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そして2010年には影響された70年代のシンガーソングライター名曲カバー集『Listening Booth: 1970』(レビューは→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20100913)をリリース。その曲目を見て、この人を嫌いになるわけがない、と思いました。あと、2013年のジミー・ウェッブの『Still Within The Sound Of My Voice』(レビューは→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20130921)ではアート・ガーファンクルのAnother Lullabyで共演していたりも。

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それにしても、20年近く日本盤が出ていないせいか、日本で余り語られていないのは寂しい。2005年にはスザンヌ・ヴェガとのツアー中、コロラド州デンバーでカージャックに遭い、弾丸が目の近くに命中し、九死に一生を得るという惨事もあった。トラウマで心を病んだりということもあったようで、一時期リリースが少なくなったのはそれが理由だったのかもしれないな、と思っていた。いつか生で見れたら…という夢だけは叶わずとも、持ち続けていたい。

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謎のライブ盤(海賊盤?)も一時期よく見かけた。インタビューCDはプロモーション用のもの。Walk Through This Worldの2枚組マキシシングルにはOld Soldierや未発表曲も含まれている。

2017-01-16 David Crosby / Lighthouse (GroundUP Music /2016 )

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[] David Crosby / Lighthouse (GroundUP Music /2016 ) 22:51

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うわあ!これは最高傑作!!毎回そう思うけれど、今度は段違い。息を飲んでしまった。もう聴きましたか?昨年2016年10月にリリースされたデヴィッド・クロスビー(http://www.davidcrosby.com/)の新作ソロアルバム『Lighthouse』。発売前から注文した輸入LPダウンロード・コード付)だけれど、再入荷未定とかで大分待たされてしまった。もしかして、結構向こうでも数が出ているのかも。てか、75歳にしてこの最高傑作って凄くないですか!

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正直一番聴きたかったデヴィッド・クロスビーかもしれない。今までの作品で言えば1971年のファースト『If I Could Only Remember My Name』の雰囲気に限りなく近い。バッキングの主体がデヴィッドのリアルな生アコギなんですよ。死ぬほど良い音。変則チューニングのギター、ハーモニー、そしてマイケル・リーグの演奏する12弦やアコギがシンプルに絡む。基本二人で作ったアルバム。結構プログレッシブな展開の曲もあって、耳を奪われる。もちろんここにナッシュの客演があれば…と妄想しなくも無いけれど、クロスビー曲だけ集めて聴いているようなクロスビー・ファンにはこっちの方が良いかも。声もすごく出ている。1989年の復活盤にしても、アルバムに散漫な駄曲が少なからず入っていたクロスビー、曲としての統一性は、ヤクが抜けてからのほうがもちろん良い。だけど、その妖しげな魅力が半減したようで、ちょっと物足りないところもあった。

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ちなみに、ぼくがリアルタイムで聴いたデヴィッドのソロは1993年『Thousand Roads』で、フィル・コリンズ、ドン・ウォズ、グリン・ジョンズ、フィル・ラモーンらが手がけたボーカル・アルバムの趣きだったけれど、これは本当によく聴いた。ジミー・ウェッブやマーク・コーン、スティーヴン・ビショップの曲もあって。その後、CPRやクロスビー&ナッシュの近作も本当に素晴らしくて、ジョニ・ミッチェルの洗練と同じ所に辿り着いていくのだな、と思ったものだけれど。でも、音が足されれば足されるほど、失われている何かもある。

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前作2014年『Croz』(レビューは→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20140428)は、CPRの延長線上にある洗練された音で、今までで最高の仕上がりかな、などと思っていたんだけれど、今回の『Lighthouse』は完全にそれを超えている。実子で前作のプロデューサーだったジェイムス・レイモンドもちょっと悔しいんじゃないかな。

妻のジャンが冒頭のThing We Do For Loveを、そして、ぼくが曲作りのモデルにしているくらい大好きなシンガー・ソングライター、マーク・コーンがPaint You A Pictureの詩を手がけていたり。他にもジャズ・シンガーのベッカ・スティーヴンス(http://www.beccastevens.com/)やトロントの女性シンガーソングライター、ミシェル・ウィリス(http://www.michellewillis.ca/)がBy The Light Of Common Dayで共演しているなどゲスト参加もある。彼女ら二人は昨年末のデヴィッドの新作お披露目ツアーにも参加したみたい。それで、何と言ってもプロデューサーのマイケル・リーグ。ジャズやロックをベースにしたテキサスジャムバンド、スナーキー・パピー(Snarky Puppy)のリーダー。バンドからはピアノのビル・ローレンスも参加している。で、プロデュースのきっかけはファースト『If I Could Only Remember My Name』の大ファンでアプローチしたことにあるそうだ。すぐに一緒に曲が作れて…という話みたい。きっとクロスビーの刺激にもなったはず。しかしドラッグ禍で廃人同然になったミュージシャンが、ここまで復活したことに、人間の可能性にまで思いを馳せてしまうような…。

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『Lighthouse』のアナログは分厚い重量盤。雑なアメリカ盤だから、新品でもちょっと歪んでいたりして、この辺の個体差があるのはいつも通り。音にはほぼ影響ありませんでした。アコギ主体の音ゆえ、アナログで聴くのがなかなか良い。何といっても、ジャケットが気に入った。アナログサイズでも美麗な灯台アートワーク。そう、アメリカ議会を批判する”Capitol”という曲も息子ジェイムス・レイモンドのサウンドクラウドhttps://soundcloud.com/jamesjraymond/david-crosby-capitol)にアップされている。

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