いしうらまさゆき の『愛すべき音楽よ』(ブログ〜CD&レコードレビュー)

2016-07-29 Dan Penn / Nobody’s Fool

markrock2016-07-29

[] Dan Penn / Nobody’s Fool ( Bear Family[Re-issue] / 1973 [2016]) 00:13

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ダン・ペンのフェイム未発表曲集第2弾に合わせて、ファースト・ソロ『Nobody’s Fool』LPリイシューが実現した。ドイツの良心的リイシュー・レーベル、ベア・ファミリーより。ベア・ファミリーと言えば最近『Rock・A・Billy Dynamiteというナント40枚組!のCDボックスを取り寄せたところだった。ちなみにそちらは正直一生かかっても聴き込めない程のシロモノで。エルヴィス、エディ・コクランみたいな定番から絶対誰も知らないような超ローカルなロカビリアンまで、これでもかと詰め込んだボックス。音もアナログに近い凄く良い音で、大興奮していた所。

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さて、話を戻してダン・ペンの方。オリジナルを持っている場合はリイシューは手を出さない、という個人的ルールがあるんだけれど、こちらのリイシューLPに手を出したというのはそう、オリジナル『Nobody’s Fool』が高すぎて買えなかった…というわけで。幻の名盤とか言われているモノも、海外から取り寄せると、近年では信じられないくらい安く手に入ることもある。だけれども、この『Nobody’s Fool』アメリカでもムチャクチャな値段が付いてます。てか、そもそもオリジナルのプレスが相当少ないのではないかな。カットされたシングルの方がまだ手に入りやすかったり。まあ今回のリイシューによって、手放す人もいるだろうから、少しは手頃なオリジナルが出回ることもあるかもしれない。

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私はCDでリイシューされた輸入盤を長らく愛聴してきた。1996年にRepertoireから再発されたものと、Marvelas Recordという海賊盤風のリイシューCDが手元にあった。後者はフェイムから公式シングルになった2枚の内1枚、”Close To Me”と”Let Them Talk”が含まれている。このアルバムの内容を地味だとかいう人もいるけれど、この抑制されたソウル・フィールは代替不可能!そして後のダン・ペンを考えると結構派手な音も入っていると思いますよ。アメリカシンガー・ソングライターものやカントリー、サザン・ソウル愛する人にとっては、これ以上のモノはない、と思えるの1枚なのではなかろうか。

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アナログは分厚く、プレスも実にしっかりしている。見開きのゲイトフォールド仕様。肝心の音も良かった!楽器の一音一音がクッキリと、ボーカルの息遣いもリアルで。しかし改めて、エルヴィスみたいな白い黒人の音。同時代のニュー・ソウルのような攻撃的な部分もなく(強いて言うなら黒人差別に抗議した”Skin”がそんなタッチだけれど)、こうした白人ソウルがゆくゆくはAORの洗練に辿りつく、ということも理解できる。共作しているドニー・フリッツも久々に聴きたくなってきた。

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ドニーもそうだったけれど、90年代以降の録音も素晴らしい。そう、ダン・ペン&スプーナー・オールダムの共演ライブ、DVD付の新装盤が出ていたけれど、目玉のDVDは家宝に出来るレベルで素晴らしかった。店によっては輸入盤が2000円しないという、かなりのお買い得盤なので、DVD目当てで買い直してみる価値はあると思う。

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2016-07-23 永六輔その世界

markrock2016-07-23

[] 永六輔その世界 14:26



永六輔大橋巨泉が相次いで亡くなったと聞いてなんだか淋しい気持ちになった。戦後民主主義とか普遍的価値としての自由多様性を許容する幅…そんな気風を体現していた人達だと思うから。ユーモア感覚も含めて。日本と亜米利加の間で、テレビという新興のメディアで時代を作り、ときに時代そのものをおちょくってみたり。テレビ創成期の放送作家の質は凄かったと思う。1930年代初頭生まれ、同世代早稲田の流れですよね。永、巨泉青島幸男中村八大野末陳平野坂昭如…という。野末さん以外はこの世にもういない。さらに、現政権現代日本への立ち位置も含めて、戦争体験者、戦前戦後の変わり身を経験した者にしかわからない感覚もあったような。これは想像力の問題だと思うので、わからない人にはわからないのかもしれない。もちろん私も経験者ではないから実のところはわからない。



永さんの先祖が江戸時代中国から渡来したお坊さん永(ヨン)さんだった、ということも、何だか彼の立ち位置を示すものでありそうだ。日本に対して、どこかヨソモノのような立ち位置を持ちつつも、それからずっと日本に根ざして住んできたわけですから、そんじょそこらの東京人とは違う、江戸っ子を自負する側面もあるという。まあ縄文弥生まで遡りますと、現在日本に住む人の9割以上が現在の中国朝鮮半島からの渡来人であったわけですから、ことさら日本にこだわるのもどうかとは常々思うんですが、この自由な立ち位置から学ぶべきものはある。



そんな彼の作詞した”上を向いて歩こう”が、坂本九の歌で1963年に全米No.1を記録し、それが現在、高度経済成長期の日本を代表する楽曲として消費されて、ノスタルジーをかき立てるどころか、ナショナリズムをも慰撫していることを彼はどう捉えていたのだろうか。まあ悪い気分はしなかったと思うけれど。

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てなわけで、六八九コンビで一世を風靡した永六輔の自演盤『六輔その世界 生きているということは』を。1974年、永が40を回った頃のリリース。全作詞永六輔、全作曲・編曲中村八大。”こんにちは赤ちゃん”を朗々と歌う永自身のボーカルはお世辞にも上手いとは言えないけれど(とはいえ下手でもない)…木訥としたタッチはオリジナル歌手とは違った味わいがある。”黒い花びら〜黄昏のビギン〜恋のカクテル”の名曲メドレーも。田辺靖雄梓みちよが歌った”いつもの小道で”は永と由紀さおりで歌う。タイトル曲(”生きているということは”)は時代を反映してかフォーク風だけれど、自作自演歌手の登場で歌謡曲から引退したという永ながら、シンガー・ソングライターとして対抗した曲のようにも聴こえる。「生きているということは 誰かに借りを作ること 生きているということは その借りを返してゆくこと」なーんてフレーズ、いいですね。他にも過去音源も含めつつデューク・エイセス(”幼ななじみ”など)、ジェリー藤尾(”遠くへ行きたい”)、坂本九(”上を向いて歩こう”)が加わる一方で、永本人のDJでの軽妙なトークや、淀川長治の教えから生まれた”嫌いな人には逢ったことが無い”(スタンダード風!)では淀川さん自身の語りも入っていたり。”たこ酢で一杯”はウェスタン・スウィングっぽいコミック・ソングでゴキゲン。

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ちなみに坂本九もひっぱり出してきたけれど、九ちゃんのベスト・ヒット・パレード』東芝のペラジャケでなんだか好きだ。リリースは1970年かな。私が小学校の頃は”レットキス”でレクリエーションとかやったんですよね。吉本のリメイクもあった”明日があるさ”、”幸せなら手をたたこう”、”見上げてごらん夜の星を”、そしてパラダイス・キング時代の”悲しき六十才”、”すてきなタイミング”…1960年代前半の典型的なアメリカン・ポップスの音ですね。

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あとこちらは”上を向いて歩こうSUKIYAKI)”が世界的にヒットした時にリリースされたSUKIYAKI AND OTHER JAPANESE HITS。手元にあるのはドイツ・オリジナル盤だから、ドイツでもリリースされていたということだ。「坂本」じゃなくて「坂木九の唄う 日本のヒット歌集」となっているのは面白い。2曲目が「ツンツン節」なんだけれど、この辺りは流石にエキゾチックに聴かれたんじゃないだろうか。ずっこけたかもしれないけれど。

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ちなみに坂本九1979年に六八九コンビの再結成盤『689』をリリースしている。こちらは2011年のCD化の際にかつての作品を含めて2枚組コンプリート盤がリリースされた。この再結成盤は結構期待して聴いたのだけれど、悪くはないが…という印象だった。

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『6輔+8大 14ヒット(永六輔中村八大傑作集)』水原弘”黒い花びら””黄昏のビギン”、坂本九上を向いて歩こう”、ジェリー藤尾”遠くへ行きたい”、デューク・エイセス”おさななじみ”、坂本スミ子夢で逢いましょう”辺りの大名曲をオリジナル歌唱でまとめて楽しめる好盤。

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あと、コレはいわゆるミューザク的なムード盤だけれど『ウナ セラ ディ東京 上を向いて歩こう 星降る公園』というレコードには中村八大クワルテットの演奏する”上を向いて歩こう”(鈴木邦彦編曲)が収録されている。妙に弾んでポップなアレンジがちょっと面白い。他にも永六輔関連盤と言うと、高石ともやと一緒にやった宵々山コンサートとか、レコードに記録されたものも他にもあるけれど、それはまたどこかで。

在りし日の…

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2016-07-18 芹澤廣明の世界

markrock2016-07-18

[] 芹澤廣明の世界 22:20


先日チェッカーズの初期作品を唐突にレコードでまとめて手に入れて。初期3枚、『絶対チェッカーズ!!』『もっと!チェッカーズ1984年『毎日!!チェッカーズ1985年)は抜群に良かった。「白いマリンウォッチプレゼント」とかいうチラシが入っていて、コレは時代を感じるなぁ。中身はというと、結構音作りがコントロールされていて、作品としてのまとまりがある。1980年代と言えばツッパリ・フィーヴァーもありつつの、フィフティーズのロケンロール回帰現象があったわけだけれど。チェッカーズも今なら、そうしたエイティーズ・ロックンロール・リヴァイヴァルのひとつとして楽しむのが良い。”ギザギザハートの子守歌”とか”涙のリクエスト”とか、今聴くと笑っちゃうくらいなんだけど、一日中鼻歌を歌ってしまうくらいの強烈なインパクトがあることは否めない。そんな彼らの船出にあたり、作曲・サウンドプロデュースを担当していたのが芹澤廣明その人。じきにチェッカーズのメンバーのオリジナル志向とぶつかって、ケンカ別れしちゃうのかな。芹澤さんからすれば、オレのお陰で売れたのに、独り立ちしようだなんて…って感じだったんだろう。アイドルのデビューから自立のプロセスで結構あるある、なお話。いまだに藤井フミヤが”ギザギザハートの子守歌”を歌えないのもそうした理由だとかなんとか。

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芹澤廣明といえば、清須邦義も在籍していたGSのザ・バロン出身。よく考えてみるとチェッカーズ提供曲にしても、代表曲の一つである岩崎良美の”タッチ”にしてもGS風味が感じ取れる。その後ステージ101のオーディションに合格し、メンバーとなってキャリアは進展。NHKの番組だったステージ101は、メンバーによる多くのアルバムをリリースしていて、日本のソフトロックと呼べるそのクオリティが、今も音楽ファンに注目されている。メンバーには清須邦義、塩見大治郎、ピコの愛称で知られる天才・樋口康雄、後にアニソンで有名になる串田アキラ(後に芹澤作曲のキン肉マンのテーマ”キン肉マンGo Fight!”を歌う)、牧みゆきなどがいた。

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その中で人気を博したのが後の芹澤廣明河内広明)と若子内悦郎。二人は「ワカとヒロ」(この頃は河内広明名義)のデュオとしてもレコードを出している。1972年東芝EMIエキスプレスレーベルからリリースされたヤング101東海林修アレンジで70年代の洋楽カバーに少々のオリジナルを含めたソフトロック好盤。1973年東芝EMIからリリースされた『聞き違い』はオリジナルとカバーからなるニューロックなテイストの名盤だ。

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その後芹澤廣と改名して、サザンがデビューする頃のビクターinvitationから2枚のソロ『Changes』(1978年)、『ジャパニーズ・センチメンタル』1979年)をリリース。甲高くてひんやりとしたボーカルに、GSロック風から歌謡曲風、フォーク風、カントリー・ロック風…と器用なソングライティングが光っている。見た目もフィフティーズのリーゼント、キザでワルぶった感じだけど、音作りも含めて独自の美学をもっている。六文銭の及川恒平が多くの作詞を手がけているのも注目すべき。『ジャパニーズ・センチメンタル』の方はAORっぽいプロダクションになっている。

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でもこの2枚、私が入手したのもサンプル盤だけれど、おそらく余り売れなかったはず。その後は裏方に転じ、1982年に作詞家の売野雅勇と組んだ中森明菜の”少女A”が大ヒットして人気作家コンビとなった。そしてそのコンビで曲を作ったチェッカーズがドカンとバカ売れし、時代の寵児となったわけだ。芹澤のワルっぽさ、不良っぽさの系譜が回り回って、時代の趨勢とフィットしていく様が今にしてよくわかる。



ちなみに”タッチ”の主題歌が大ヒットした岩崎良美のアルバムhalf time』も芹澤プロダクション。あとは『タッチ』『ナイン』の挿入歌では芹澤自身が何曲も歌っている。誰かコンピレーション作ってくれないかな。あと、2001年には芹澤自身による”タッチ”のセルフカバーもあった。

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あと芹澤廣明名義のソロでは1987年にポニー・キャニオンから『Million Stars』をリリース。チェッカーズもの、”Song for U.S.A.”、”雨に消えたソフィア”、” ジュリアに傷心(ハートブレイク)”のセルフカバーが素晴らしい。情念の入り込まないクールなボーカルに独特の個性を感じてしまう。シンガー・ソングライターとしての作品をもっと聴いてみたかった。

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2016-07-17 Eric Clapton / I Still Do

markrock2016-07-17

[] Eric Clapton / I Still Do (Bushbranch/Surdog / 2016) 00:25


今年の忘れ得ぬ来日公演に行った流れで紹介しようと思い、張り切って予約までして入手したものの、日々増殖するレコードに埋もれて、やっと封を切ったという…いやはや、いけません。ジェフ・ベックの新譜を聴いて、クラプトンのことを思い出した次第。そう言えばジェフの方、個人的には抜群にロックで良かった!とはいえ色々賛否もあるようだけれど、もはや此処まで来ると、今回は駄目だとかあーだこーだ言ってる暇ないですからね。もう70過ぎてますから。赤ちゃんみたいなもので「笑った!」とか「立った!」とかそういう次元で感動しないといけません(失礼!)。結局自分の抱いている全盛期のイメージに被りつつ、ちょっと現代的だったりしないと満足しないファンというのは一定数いるものだけど。でもとうに70も過ぎて、たぶん本人はそんなことを期待されても困る…という感じなのではないかな。

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クラプトンもまさにそんな感じで。いつになくリラックスしてマイ・ウェイを貫いている。2枚組LPで入手したけれど(ダウンロード・カード同封)、通常LPの33回転ではなく、シングル盤の45回転仕様になっており、一瞬トレースして焦った。A〜D面にそれぞれ3曲ずつ12曲。音を良くしようと言う意図がわかる。冒頭A面の3曲、リロイ・カーの”Alabama Woman Blues”、JJケイルの”Can’t Let You Do It”、90年代的なコンテンポラリー・アコースティック・ポップ路線の”I Will Be There”(ポール・ブレイディのカバー)からして、全てのファンを満足させる作り。今までのスタイルを自然に並べた感じで。ちなみに”I Will Be There”には、アコギ&ボーカルで共演する”Angelo Misterioso(アンジェロミステリオーソ)”なる人物がクレジットされていて、かつて”Badge”を共作したジョージ・ハリスンの変名” L'Angelo Misterioso”を類推させるネーミングだけに、ジョージの未発表音源なのでは?なんていう憶測も流れたけれど。実際は日本公演において同曲で共演したエド・シーランであるようだ。何でもエドのレコード会社がその仕上がりを気に入らなかったようだ。エドはエリックをレスペクトしているから、変名で参加したのだろう。

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ちなみにバンドはアンディ・フェアウェザー・ロウやクリス・ステイントン、ポール・キャラック、ダーク・パウエルといった先日の来日公演メンバーにサイモン・クライミーらも加わって。来日公演でマンドリンアコーディオンを従来のロック・サウンドに加えて、異常な目立ち方をしていたダークだから、本作に加わってそのサウンドが再現されていると期待したけれど、そこは肩すかしをくらった。そこまで目立っておらず残念。あの来日公演のブルーグラスを思わせるクラプトン・サウンドは結構貴重だったかも。

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その他、自作の”Catch The Blues”が良い雰囲気だったり、スキップ・ジェイムス!やロバジョンを挟んで、ザ・バンドのようにも聴こえるボブ・ディランの”I Dreamed I Saw St.Augustine”があったり(コレが個人的にはベストかな)。そして”I’ll Be Alright”、コレは聴いていて気が付いたけれど、公民権運動アンセムだった”We Shall Overcome”の原曲ですね…ちなみにプロデュースは泣く子も黙る名匠グリン・ジョンズということで。ジャケットの写真からアナログな機材を使ってある意味贅沢にレコーディングされていることがわかる。歌詞は本人の意向で掲載無し。現代は情報過多な時代じゃないですか、その一方、人々は情報量そのものに価値を見出さなくなってきている。「それが何?調べれば今すぐわかることだけど。」っていう。これが昨今絶賛進行中の情報革命というパラダイム・シフトにあたるわけで。従来情報量を売りにしていた部分も多々あった音楽評論を、誰も有り難がらなくなってきた現状も、その辺に理由があると思っている。だけど、今回のクラプトンみたいに、歌詞はなし、ゲスト参加も変名で秘密、みたいなやり方もちょっと面白いなと思ったり。ちょっとググってみてもわからない、そんな時にこそ想像力の翼が羽ばたき出す…なーんて。

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2016-07-15 The Rides / Pierced Arrow

markrock2016-07-15

[] The Rides / Pierced Arrow(429Records / 2016 ) 23:07


おっ!と思ってしまった。アナログの方が出音が良かったときはちょっと感動する。スティーヴン・スティルスがCS&Nとは別に作ったトリオ、The Ridesの2作目(前作『Can’t get Enough』のレビューはこちらに→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20130917)。CDはすでにボーナス・トラック入りの日本盤もリリースされていて、それも買って何度か聴いていたけれど。アナログの音が何とも良い感じだったから。王道すぎるぐらいのアメリカン・ロックだから、フィットするに決まっているけれど。

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ティルス以外のメンバーの一人は若手ブルーズギタリスト、といってもすでに今年で38歳のケニー・ウェイン・シェパード。そしてもう一人は大御所キーボーディスト、バリー・ゴールドバーグ。フォーク・ロック期のディランとの活動や、エレクトリック・フラッグ、そしてアル・クーパーにマイク・ブルーム・フィールド、今回再び組んだスティルスとのスーパー・セッションなど、ニュー・ロック期の最重要ミュージシャンの一人だ。ベースはCS&Nのツアー・サポートをやっていたケヴィン・マコーミック。3人の共作およびケヴィンを加えた4人の共作が10分の6。とはいえ実際メロディ・ラインやメイン・ボーカルから考えて、どうにもスティルス色は強いんだけれど。ケニー主体で作った”By My Side”は90年代以降のCS&NやCPRの色もあって、そういったスティルスがハモりやすそうな曲をケニーが作ってあげる辺りのレスペクトが、素敵だなと。親子くらい年の差があるわけだから。

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ジェリー・ゴフィンとバリーとの共作でR&Bスタンダードとなった”I’ve Got To Use My Imagination”のケニー歌唱も激シブな仕上がりで。ジェリー・ゴフィンの自演版もなかなかだったけれど。B面に行くと、ゲストでファビュラス・サンダーバーズのキム・ウィルソンがブルーズハープで加わった”Game On”とか、バッファロー時代の楽曲を思わせるスティルスの”Mr.Policeman”がツボだった!ラストはウィリー・ディクソン作のスタンダード”My Babe”。CDのボーナス・トラックにはスティルスの新曲とポール・バターフィールド・ブルース・バンドの”Born In Chicago”(もはやホワイト・ブルーズの古典…)、そしてジミー・リードのカバーということで、そちらも見逃せないモノばかりだったけれど、レコードのまとまりとしてはボーナス抜きの10曲がシンプルでやっぱり、気持ちいい。



それにしてもほとんど新曲ばかりの新譜が出てくるとは思わなかった。一時期はどうなるかと思ったスティルスも、老いてなお盛ん、71にして枯れたくないっていう気概がちょっと凄いなと思ったり。

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LPのプレス自体は新品なのに普通に擦り傷があったり、アメリカ盤ならではの荒っぽい感じもあるけれど(笑)、往年のジャズファンみたいにロックを聴く人もまさかいないでしょう。アンプのツマミを緩めて、バカでかい音でガツンと鳴らすのが最高に良い。ダウンロード・カードは付属していなかったけれど、3人のサイン入りの盤というのが相当数出回っているみたいで、アナログはそちらを手に入れてみた。最近フィジカルCDの売り上げが落ちているからだろうけれど、アメリカを中心に、相当サイン盤を売っているミュージシャンが増えている。でも、そもそもダウンロードじゃないブツの良さはこういった所にあったわけだから。

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そう、最近アナログを手に入れたオウ・ゴー・ゴー・シンガーズ。バッファロー・スプリングフィールド結成前の、若き日のリッチー・フューレイとスティーヴン・スティルスの記念すべきデビュー盤だ。スティルス歌唱の” High Flying Bird”は何々シンガーズ、といった当時の数多のお利口さんフォーク・グループの範疇を超えたブルーズ・マインドに驚かされる。当時19歳。これも贔屓目抜きで、CDよりアナログの方が音が良かった。たぶんそこまで手の込んだリマスターがなされていなかったからだろうけれど。いずれにしても、ここから52年の時を思いつつ…新作を聴くのも感慨深い。

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2016-06-30 Cheryl Ernst / Always Beginning

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[] Cheryl Ernst / Always Beginning ( Bell /1973 ) 21:58

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ベル・レコードから1973年にリリースされた女性SSWシェリル・アーンストの唯一作。プロデュースとアレンジはボーンズ・ハウ。シェリル60年代後半からハウの音楽出版社Hello There Musicに雇われていた。何と言っても冒頭の組曲”Fantasia Suite/Long And Sleepless Nights”が一人フィフス・ディメンション様相で素晴らしい。ボブ・アルシヴァーのオーケストラ・アレンジがソフト・ロックのお手本のようで。日本の赤い鳥のソフトロック作にもアルシヴァーのアレンジがあった。



弾むような演奏を聴かせるのは、ルイ・シェルトンやハル・ブレインといった面子。ヒッピーガールの雰囲気だけれど、曲はそこまでダウナー&サイケデリックではなく、その辺りの明るいポップ・センスがボーンズ・ハウに好まれたのだろう。2曲はハウの元でやはりソングライターとしての腕を磨いていたジェフリー・コマナーの曲。今にすれば、全てシェリルのオリジナルで揃えても良かった気がするけれど。ちなみにジェフリーの曲はフィフス・ディメンションのアルバムなどに取り上げられたのだが、シェリルは、というと、ソングライターとしての才能を嘱望されていた割には、他アーティストへの提供曲は少なく、むしろSSWとしてリリースしたこの作品が唯一作となってしまったのは残念だ。もちろん、キャロル・キングジョニ・ミッチェルローラ・ニーロにしろ、時代は職業作曲家というより、シンガー・ソングライターにシフトしていたからなのだろうけれど。1970年にはダイアナ・ロス初のソロ・アルバムのセッションで”The Interim”が取り上げられるも、アウトテイクになってしまったみたい。エクスパンデッドCDに入っているけれど、一聴の価値がある。

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とはいえ、ハウの手引きで紹介されたジャズピアニスト、ジミー・ロウルズとの共作があった。ジミーと言えば、シンガーのバックではカーメン・マクレエとの『The Great American Songbook』やホーギー・カーマイケルの『Hoagy Sings Carmichael』などで知られている。シェリルは作詞家として呼ばれ、ジミーと”Looking Back”を作った。手元には1978年のキャロル・ストーンのレコーディングがある。

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ボーンズ・ハウのプロデュース作の棚を漁っていたら、女優ケリーガレットの1976年のアルバムに"He Moves Me"というシェリルの曲があった。なかなかファンキーな感じの曲。このアルバムにはハル・ブレインやマイク・メルヴォインなどが参加していた。

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2016-06-22 ロックの未来、人類の未来

markrock2016-06-22

[] ロックの未来、人類の未来 23:33



色々意見があろう所をあえて、突っ込むけれど。2016年フジロックに政治を持ち込むな、みたいな意見があったという先日のニッカンスポーツの記事(http://www.nikkansports.com/entertainment/news/1666182.html)。シールズの奥田氏やジャーナリスト津田大介氏が出演することに噛み付いた人がいるとか。こうした記事すら眉唾で読んではいるけれど、久々にあきれてしまった。善意共同体ではもはや無くなっているフェイスブックのコメント欄などは、余りに極端すぎるので馬鹿馬鹿しく、見ないようにしているけど(万物斉同だと思っているので…)、今回ばかりはと覗いてみると、政治的な音楽なんか聴きたくない、みたいな、ナイーブさを装いつつの典型的な左翼アレルギーみたいな感じで。



いやしかし、ですよ。モノを作って世に問う人間が命がけで社会に何かを問いかけようとすることが、既にある種の政治性を帯びているということに何らかの自覚はないのだろうか。表現の仕方は直截・隠喩色々だろうけれど。例えばマドンナレディー・ガガ、あるいはタモリという存在そのものにだって政治性はある。ましてや今回焦点になっているのはロック・ミュージックですからね。「カウンター・カルチャーとは?」とか「ウッドストックに至るロックの歴史」なんぞをわざわざ説明しなきゃいけない時代になってきたと言うことなのか?「No Nukes」というイベントがありまして…とか。そんなことすら直感的にわからないくらい、感性が鈍ってしまったのか…

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まあ色々絶望的な時代の気分を象徴していると思う。そう、先日思想家内田樹さんが新聞に書いていたけれど、高度成長期までは互いを成長させるために好まれた「議論」というものは近年、相手に深い知識を与えることになるため、好まれなくなったと。自由競争・自助努力・自己責任を重視する昨今の新自由主義を勝ち抜き、利益を得るためには、相手議論をすることは損になる、ということなのだろう。先細りになる有限資源を奪い合い、少しでも多く分け前をもらうために、込み入った議論は避ける…なんだか人類の物語は、ずいぶんと悲しい結末に達しようとしているようだ。まあそれでもぼくは、無駄な議論を重ねながら、レコードを聴き、こんなブログを書いている。

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2016-06-19 アナログで聴く、デビュー・アゲン…

markrock2016-06-19

[] アナログで聴く、デビュー・アゲン… 13:25

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大滝詠一『デビュー・アゲン』のアナログ。限定と言うことでかなり早めに予約していたけれど、そこまで焦らなくても大丈夫だった。結構在庫はあるような雰囲気、今のところは。往時のナイアガラを模したリヴァーシブル・ジャケット仕様。最後は自らを引用するという、これも遊び心かな。ディスコグラフィーの内袋とステッカー付属。ハーフ・スピード・カッティングを施したのは、ビートルズ1』なんかを手がけた、ロンドンメトロポリスマスタリングのティム・ヤング。

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気になったのは音だけれど、ふくよかなボーカルの機微が伝わる素晴らしいもの。CDで聴いたときは感じなかった低音の丁寧な歌い回しを表現できていて。現代的というより、ジャケットそのままの、80年代ナイアガラな感じがしたな。っていうか音源そのものが80年代録音中心だからだろうけれど。いずれにしても、デモテープ、という意味合いを超えて、ボーカリストとしてレコーディングしたという、その音源の魅力が表れている。あと、CDを聴いたときに感じた、レコーディングのコンディションや時代のバラツキを余り感じなかった。とはいえ、我が家の現状の再生環境がCDよりもアナログ向けにセッティングされているからそう聴こえるのかもしれないけれど…すみません、無責任ながら、細部まで検証することはせず、素直に楽しむことにする。

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でも、ボーカルが音像の中心にあるせいか、大滝さんのパーソナルな部分がいつになく垣間見えるようで、ちょっと泣けてきてしまう。

2016-06-16 Jim Glaser / The Man In The Mirror

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[] Jim Glaser / The Man In The Mirror (Noble Vision Records / 1983) 00:03

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イングランドダンジョン・フォード・コーリーのヒット「秋風の恋(I’d Really Love To See You Tonight)」。この曲が死ぬほど好きでして。余りに好き過ぎて、昨年作ったアルバムのボーナス・ディスクでカバーしてしまった位…

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もちろん、曲を作ったパーカー・マッギーが大好きで。パーカー・マッギーの唯一のソロは日本のAORファンにはとても人気がある。音のマイルドで暖かいオレンジ色の雰囲気が、出せそうで出せない色で。

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日本でもCD化されたマーカス・ジョセフに始まり、ディアドルフ&ジョセフだとか、CCM臭が相当するけれどジーン・コットン、もちろんマイケル・ジョンソンだとか、レイフ・ヴァン・ホイ、ジョッシュ・レオ…などとポップ・カントリーを集めまくったのは、第二の「秋風の恋」に出会いたかったからかも知れない。でもそれを超えるクオリティの作品には正直出会えず、ここ5年くらいはあきらめかけていた次第。

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…てなわけで今日何気に手に取ったジム・グレイサー1983年の『The Man In The Mirror』。曲目に”You Got Me Running”とあり、もしやパーカー・マッギー曲では?と当たりを付けて。さらに”I’d Love To See You Again”という「秋風の恋(I’d Really Love To See You Tonight)」にそっくりの曲名を発見し、まさか…と思って買ってみると、パーカー・マッギーのソロに匹敵する素晴らしいクオリティの作品だった。これはびっくり。さすがに”I’d Love To See You Again”は「秋風の恋」とは異なる曲だったけれど、”You Got Me Running”はやはりパーカー・マッギーのカバーで。何しろ音や声の処理も含めて、完璧なパーカー・マッギー〜イングランドダンジョン・フォード・コーリー路線だったので驚いてしまった。

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ちょっと調べてみるとジム・グレイサーはベテラン・カントリー・シンガーで現在78歳。初期のキャリアではマーティ・ロビンスのバック・ボーカルをやったり、スキーター・デイヴィスに曲を書いたりしていた模様。60年代後半からシングルを多数リリースしていたけれど、アルバムの方は意外にもこの1983年の本作『The Man In The Mirror』が初めてだったみたい。しかもコレ、かなり売れたみたいです。6曲がシングルで切られ、なんとトップ30に全て入ってしまったという(カントリー・チャートで"You're Gettin' to Me Again"が1位、"If I Could Only Dance with You"は10位、"Let Me Down Easy"と"When You're Not a Lady"は16位、タイトル曲は17位、"You Got Me Running"は28位…)。余りにも曲が良かったわけだ、と思ってしまう。しかも、ゲイリー・パケットユニオン・ギャップの名曲”Woman,Woman”をカントリー・ポップにカバーしたヴァージョンも(すでに1975年に一度シングルでカバーしていた)。私のようなノン・リアルタイム派からすると、まだまだ知らない作品が埋もれていることを思い知らされる。

2016-06-07 Orlando / Harp, Voice And Tears

markrock2016-06-07

[] Orlando / Harp, Voice And Tears ( Super Star Records SSR963 / 1970 ) 00:03



スティーヴィー・ワンダートニー・ベネットらの歌唱で知られる”For Once In My Life”の作曲者、マーデン・オーランドレコード。楽曲の知名度に比べると、この人はイマイチ知られていない。オーランドと聞けば、トニー・オーランドが出てきてしまう。

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その”For Once In My Life”、作詞はロン・ミラー。ベリー・ゴーディによりバーで演奏しているところを見出され、モータウンに雇われた人。スティーヴィーの”A Place in the Sun”や”Yester-Me, Yester-You, Yesterday”、ダイアナ・ロスの” Touch Me in the Morning”、そしてシャーリーンの”I've Never Been To Me”が代表作だ。



初出は1966年バーバラ・マクネア、その後もフォー・トップス、テンプテーションズが取り上げ、そのモータウンの流れで1968年スティーヴィー・ワンダーがアップテンポのアレンジで大ヒットさせる。さらにジャズ畑ではカーメン・マクレエトニー・ベネット、ナンシー・ウィルソン(この人はソウルクロスオーバーだけど)、デラ・リーズが取り上げて、あのフランク・シナトラも歌っている。70年代にはいると、MORの名曲と言った風情でそれこそアンディ・ウィリアムス、ビル・メドレー、ポール・アンカ、O.C.スミス、サミー・デイヴィス・ジュニア…と大御所が取り上げる曲になって。カバーは270を超えるようだ。そう、トニー・ベネットの起死回生作2006年の『Duets: An American Classic』におけるスティーヴィーとのデュエット・ヴァージョンはグラミーを獲ったし、2015年スティーヴィー・ワンダートリビュート・ライブにおけるトニー歌唱の解釈も、兎にも角にも圧倒的だった。

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さて、作曲者のオーランド・マーデンだけれど、ロン・ミラーと比べて情報が少ない。この1970年のこのレコード『Harp, Voice And Tears 』の裏ジャケにはトム・ジョーンズの「アメリカ初の男性トーチ・シンガーが、彼にしかできないように、歌い演奏する」というありきたりなコメントが寄せられているだけで。聴いた感じはクラブのジャズ歌手という雰囲気。でもこの盤が凄いのは、伸びやかでムーディな「声」と「ハープ」だけの共演だということ。しかも、ハープオーランド弾き語りによるものらしい。完全に夜のレコード、という感じ。マーデン&ミラーの共作”Carousel”の他、スタンダードや、意外にもジョニ・ミッチェルのカバー”Both Sides Now”を取り上げている。ハープは日本の琴のように優美に響く瞬間もあって、エコーがかったマーデンの声と共に深い余韻を残す。

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2016-06-01 レコ屋の風景を切り取れば

markrock2016-06-01

[] レコ屋の風景を切り取れば 00:35



今日も三鷹パレードへ。毎週帰り際立ち寄って、何枚か選んで店長さんとつらつらお話しして帰る…というのが、レコードに狂ってしまった私なんぞにとっては何とも生きている実感に繋がるもので。

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若杉実さんという人が書いた東京レコ屋ヒストリーという本が今年話題になったけれど。東京レコード屋の歴史についての聞き書き集。もちろん三鷹パレードや、先日惜しくも実店舗が閉店した高田馬場タイムなども紹介されている。ただ、本のタイトルほど包括的に東京レコード屋を網羅したものではないのと(著者のレコード個人史的な店舗のセレクトということで)、レコ屋さんの怪しい記憶に頼ったのかリサーチ不足の面があり、相当賛否両論あるようだけれど。色々なレコ屋の店主さんからお話など聞くと、レア盤発掘、と聞いてお客もレコ屋も色めき立ったけれど幻だった、だとか悲喜こもごも、面白いエピソードはいくらでも出てくるわけで。そんなレコードは思い入れある人も多いだけに、全ての人を満足させるのは難しいと思う。ちなみに「古本の本」というのは結構いちジャンルになっている所がある。例えば反町茂雄『一古書肆の想い出』平凡社)だとか、個人的には熱心に集めているジャンルだったりする。だから、東京レコ屋ヒストリーをきっかけに「レコードの本」なり「想い出のレコ屋についてのブログ」なりが今後増えていけば、それでいいのではないだろうか。個人的には通ったり、興味惹かれてきたレコ屋がとにかく被っていた(いる)のでとても面白く読ませていただいた。下北フラッシュやココナッツ・ディスク、伝説のパイド・パイパー・ハウス、このブログでお世話になっている芽瑠璃堂のことも!いやはや素敵じゃないか!



さて今日パレードで選んだのはまず…1927年1933年の黒人ジャグ・バンドが誕生した頃のコンピ『The Great Jug Bands』。Origin Jazz Libraryより1962年に出た編集盤でサム・チャーターズがライナーを書いている。1960年代のジャグ・バンドのリヴァイヴァルが始まっていく頃。ガス・キャノンとか、メンフィス・ミニー、あとはバーミンガム・ジャグ・バンド、メンフィス・ジャグ・バンド、ジャック・ケリー、ノア・ルイスなどを収録。当時のアメリカ盤だけれど、後ろに万年筆で感想が英語でつらつら書いてあるのが面白い。でも、ジャグの音がよくわかっていないみたいで「誰かが低い声で唸っている」とか「ベースのイミテーションみたいだ」とか書かれているのが微笑ましかった。

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あとドゥービーズ『The Captain And Me』のオリジナル米初盤。ちょっとしたキズがあるだけで300円というのはなんと良心的な…オリジナルの色味は後発盤よりジャケのスカイブルーが濃いのが印象的だった。

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あとはシングルを幾つか。吉幾三1977年のコミカルな再デビュー盤「俺はぜったい!プレスリーは大好きな曲なので、すかさず。B面「青春荘」はタイトルからして遅れてきたフォーク調だった。「俺ら東京さ行ぐだ」の破壊力はないけれど。山岡英二時代に、フォーク系のミュージシャンが営業で一緒になったけれど感じ悪かった、みたいな負のエピソードをどこかで聞いたことがあるけれど…まあちょっと筋モンの匂いがプンプンするわけですが、好きなんだよなぁ。凄い才能をもったシンガー・ソングライターだと思う。「俺ら東京さ行ぐだ」が今年アナログ再発されたという話も。ジャパ・コミック・ラップの先駆みたいな。私もかつてそのシングル盤を聴きまくりました。

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あと長谷川きよし「黒の舟唄/心ノ中ノ日本」プログレなど尖ったロック・レーベルという印象のヴァーティゴからのリリース。「心中日本」のタイトルにケチがつき、タイトルを変更したという「心ノ中ノ日本」はアルバムで聴いて以来、時折口ずさみ、心の支えのような曲になっている。

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ハマクラ・メロディの最高峰「みんな夢の中」。ハスキーで良い声!

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瀬戸龍介、吉川忠英など在籍でキャピトルから世界リリースされたイーストのシングル。アルバムの中でも最高の出来の”Beautiful Morning”だけれど、音はなぜかイマイチ。アルバムの方がミックスが良かったかも。

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あとは小林旭自動車ショー歌/ほらふきマドロス」。一番好きなフレーズは「骨のずいまでシボレーで」。

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これは正直知らなかった、というのは、シナーラ名義の「どう思いますか。/ブルー・スカイ・ブルー」。ソロ・アルバムがシティ・ポップ名盤として名高いセッション・シンガー木戸やすひろと、元クラフトの三井誠のデュオクラフトさだまさし詩曲の「僕にまかせてください」が売れたため、フォーク・グループのイメージが付いてしまったけれど、実はウェスト・コースト・ロックの素地をもっていたバンド。メンバーの濱田金吾はグループ解散後、AORの良作を多く残すことになるし、三井誠は稲垣潤一クリスマス・キャロルの頃には」の作曲などで当てることになる。このシナーラ、二人の個性を生かしたブリージーな楽曲を1曲ずつ分け合って歌っている。詩は荒木とよひさ

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2016-05-29 Spontaneous Combustion

markrock2016-05-29

[] Spontaneous Combustion 13:03

/ Come And Stick Your Head In(Flying Dutchman FDS-102 / 1969)


さて、今日手に取ったのは1969年ジャズレーベルフライング・ダッチマンボブ・シール設立)からリリースされたSpontaneous Combustionの『Come And Stick Your Head In』。バンド名は適当に付けたんだろうけれど、その名も「自然発火」。中身は60年代のLAポップ・シーンの陰の主役だったスタジオ・ミュージシャン、レッキング・クルーの面々。主役はティム・ハーディンの1曲以外の作曲を務めるゲイリー・コールマン。演っているのはジャズ・ロックなインスト。ロッキンだったり、ラテン・ビートが挟まったり。冒頭の”Blue Sir-G-O”がスリリングでとても気に入っている。

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メンバーはゲイリー・コールマン、マイク・メルヴォイン、ラリー・ネクテル、トム・スコット、デニス・バディマー、ジョン・ガーリン、ジム・ホーン、マイク・ディージー、そして「レイラ」の共作者でもあるジミー(ジム)・ゴードンという。60年代の多くのポップ・ソングのレコーディングは彼らを含むレッキング・クルーの面々が演奏していた、というのは有名な話だ。好きな傾向の音を含むレコードを集めていったら、ほとんどレッキング・クルー仕事だった、という話もあるから、多くの場合ノン・クレジットで影武者仕事が伏せられていたとは言え、当時から耳の良いリスナーは聴き分けられたのではないだろうか。フィル・スペクターからソニーシェール、そしてママス&ザ・パパスやバリー・マクガイアといったダンヒル仕事、ジャン&ディーン、モンキーズサイモン&ガーファンクルカーペンターズフィフス・ディメンションビーチ・ボーイズ『ペット・サウンズ』のバーズの「ミスター・タンブリン・マン」…



トミー・テデスコの息子が完成させた映画『レッキング・クルー〜伝説のミュージシャンたち〜』も今年話題になっているけれど、それに先立つケント・ハートマンの書いた『レッキング・クルーのいい仕事』P-Vine BOOKSから邦訳が出ているけれが、誤植が多いのを除けば素晴らしい)はとても面白い本だった。そこにも売れないヴィブラフォン奏者だったゲイリー・コールマンが女性ベーシストキャロル・ケイの手引きでデヴィッド・アクセルロイドの元でパーカショニストしての地位を得るくだりが出てくる。『ペット・サウンズ』パーカッションもゲイリーだった。S&Gの「明日に架ける橋」のレコーディングでは、後にブレッドに加入するラリー・ネクテルが流麗かつ壮大なライチャス・ブラザーズばりのピアノ・アレンジを練り上げ、そこにゲイリーが30分くらいでヴィブラフォンを加えた話も登場する。SPONTANEOUS COMBUSTIONの演奏に、ゲイリーを始めとしたレッキング・クルーの面々の一朝一夕では為し得ない卓越した技量を思い知らされる。

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2016-05-24

markrock2016-05-24

[] シンディ、永遠のカントリー・ガールに 22:05



ここの所、ベテランの新作が相次いでいる。LPでの並行リリースはなんだか足下を見られているようだけれど、ついついLPの方に手を出してしまう。LPは日本のショップにも入荷しているけれど、値段だけを取ると、アマゾンで予約注文するのが安かったり。

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5月にリリースされたシンディ・ローパーの新作『Detour』。「回り道」というタイトルでシンディお気に入りの40・50・60年代のカントリー・スタンダードを歌っている。エミルー・ハリスからジョージ・ストレイト、リーバ・マッキンタイア、ヴィンス・ギルらをプロデュースしてきたトニー・ブラウンが手がけたナッシュビル録音。エグゼクティブプロデューサーには今回の企画の発起人たるサイアー・レコードシーモア・スタインが。ビルボードのカントリー・チャートでも早速4位にランクインしたみたい。

これはLPで買って良かった。1曲目のスイングするロカビリー風味の”Funnel Of Love”が雰囲気十分なレトロ・サウンドになっていて(音が良い!)。チャーリー・マッコイ作でワンダ・ジャクソンが歌った曲。アナログにフィットしている音。ジャケもいいよね。御年62歳というけれど、お互いシンパシーを感じているレディー・ガガ同様、年齢を超越している雰囲気。ゲストはエミルー・ハリス(タイトル曲”Detour”をデュエット。このブログで取り上げたエルトン・ブリットやビル・ヘイリーなんかもレコーディングしている曲。)、ウィリーネルソン(なんとウィリーの”Night Life”をウィリーのギター・ソロ入りでデュエット!)、ヴィンス・ギル、アリスン・クラウス…と豪華そのもの。昔、来日公演を観に行ったジュエルとはパッツィ・モンタナの”I Want To Be A Cowboy Sweetheart”をヨーデル・ヴァージョンで歌っていたり。これにも当然感動してしまった。



カントリーと言っても、スキーター・デイヴィスの“The End Of The World”なんぞはオールディーズクラシックと言ってもいいかな。元々オールディーズ・リヴァイヴァル・バンドのブルー・エンジェルでデビューしたことなどを思い出す。その他にもドロシー・ムーアの”Misty Blue”やマーティ・ロビンスの”Begging To You”、カントリー・クラシック化している”Heartaches By The Number”、パッツィ・クラインの”I Fall To Pieces”などを。ラストの”Hard Candy Chiristmas”は比較的新しいドリー・パートン1982年のバラード。作曲は女性SSWキャロル・ホールでした。この人の70年代初頭のエレクトラ盤は凄く良い。

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ボーカルの艶も全盛期のままで驚いた。ひっくり返るヒーカップ唱法的な裏声も健在で。一時期メジャー契約が切れて、迷走しているというか、元気のない時期もあったのだけれど、グラミーにノミネートされた『Memphis Blues』あたりで生き返ってきた感じ。レディー・ガガに出会って吹っ切れたみたい。東日本大震災後の来日ステージも感動的だったし。なんと言っても感情過多なボーカル・スタイルに惹かれる。80年代は汗の匂いを消し去ったテクノな時代だったわけだけれども、29歳の遅咲きソロ・デビューを果たしたシンディのボーカル・スタイルにはどこか前時代的な汗の匂いがあったような。そして、不遇な立場に置かれていたり、どんな社会にも属せず生き辛さを抱えている(まさにUnusualな)あらゆる人を包み込む優しさもあった。1983年の『She’s So Unusual』はやっぱり印象的で、”She Bop”だとか、まだ5歳にもなっていなかったのに町の有線で聴く度に口ずさんでいたのを覚えているから不思議だ。マイケル・ジャクソンThrillerと同種のインパクトがあったと思う。ピエール瀧さんの番組に出たときに、好きなアーティストは?の質問に「シンディ・ローパー!」と答えたことなども思い出した(当時から本当に好きだった…)。

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ファーストから30周年経った2014年の記念盤。2枚組でデモやリハーサル・テイクを含むもの。日本語訳も出た自伝読みつつ聴くと発見があったり。

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もちろん聴いていた当時はカセットだった。ファミコンのソフトもあったグーニーズサントラなんぞも久々に発掘した。”グーニーズはグッド・イナフ”って凄い邦題だと思う。このサントラにはTOTO加入前のジョセフ・ウィリアムスの貴重なトラックもある。

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アラン・トゥーサンB.B.キング、ジョニー・ラング、アン・ピーブルス、チャーリー・マッセルホワイトがゲスト参加した2010年の『Memphis Blues』。これはシンディとハーピストのチャーリー・マッセルホワイトのサイン盤。

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2016-05-14 ディランのファーストがしっくり来る

markrock2016-05-14

[] ディランのファーストがしっくり来る 13:32


無意識的にレコードを買って、しりとりのように音楽を聴いている時がある。先日たまたまジャズレコード専門店を物色していた時のこと。ジャズ・ボーカルのコーナーになぜかボブ・ディランのファースト・アルバムがあった。しかもセカンド・プレス(モノラル)。これはついつい手に取ってしまった。レーベルからすると1965年頃のプレスではないかと思われるけれど、すさまじいボーカルとハーモニカ、そしてギブソンのアコギの音圧だった。



リアルタイムのファンジャズレコードアメリカ音楽、ってな括りで聴いていたことは理解していたけれど、まさかディランまでとは。でも、現在はディランの方からジャズに行ってしまったのを考えると、違和感がないといえば、ない。そうそう、ジャズ専門店のお客としては邪道かもしれないけれど、リズム&ブルースやフォーク、ソフト・ロックレコードをその中から見つけ出すのも結構好きだ。レイ・チャールズなんかはジャズのフィールドでレコードを出していたからもちろん結構あるし、ハリー・ベラフォンテオスカー・ブランド、ブラザーズ・フォーやニュー・クリスティミンストレルズのランディ・スパークスとか。フリー・デザインが有名になりすぎてしまったけれど、Project3のイノック・ライトものは沢山出てくる。A&Mだとクローディーヌ・ロンジェとかサンドパイパーズだとか。東のジョニ・ミッチェルとか言われていたらしい女性SSWマーシャ・マラメットのデッカ盤もジャズの店に限ってよく見かけたり。さらには90年代にオデッタの再来、などと言われた黒人女性SSWトレイシー・チャップマンもあったりするから面白い。実際トレイシーはジャズ専門誌にもリアルタイムでレビューが掲載されていた。ジャズ・ボーカル・ファンの食指は実に幅広い。

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さて、そんなこんなで1962年、ディランのファーストBob Dylan。デイヴ・ヴァン・ロンク版のアレンジをパクって本人を怒らせた”House Of The Rising Sun”(さらにこのアレンジをアニマルズがエレクトリック化させた)だとか、ジェシ・フラーの改題”You’re No Good”に、エリック・フォン・シュミットの”Baby, Let Me Follow You Down”、ウディに捧ぐ”Song To Woody”だとか”Talkin’ New York”…学生時代に初めて聴いたときは、オリジナル信仰がありすぎて、カバーばっかり、みたいな愚かな聴き方をしていたけれど、今はなんだか相当新鮮に響く。この時代のフォークのレコードはB級C級含めてかなりの数を聴いてきたつもりだけれど、物真似にしても迫力のある黒人ブルーズ解釈とギター・ピッキングの確かさはディランが群を抜いている。概して白人フォーク・シンガーはブルーズの色が薄く、リズムも単調な場合が多いから。彼がロックのその後の歴史を作っていけたことを良く理解できる。

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ディランの息づかいまでが伝わるファーストを聴いていたら、ランブリン・ジャック・エリオット1964年ヴァンガード盤が聴きたくなってきた。エリオットのギター&ハーモニカを基本に、ビル・リーやエリック・ワイズバーグのベース、エリック・ダーリングのバンジョー、ジョン・ハモンドハーモニカが加わっている。イアン&シルヴィアやジョン・ヘラルドの参加も。そうそう、ディラン自身も”Tedham Porterhouse”という変名でハーモニカを吹いている。一瞬ディランよりは大人しく感じるけれど、ギター・ピッキングの確かさとひょうひょうとした語り口は流石エリオットだ。いやでも、カーター・ファミリー”Will The Circle Be Unbroken”で張り上げるハイトーンを聴いていると、ディランに負けていないか。そう、この”Diamond Joe”をニューポート・フォーク・フェスティバルのCDで初めて聴いたのがエリオットとの出会いだった。ディランが憧れたのも良くわかる。語り口もそっくりだ。その他にも定番”Guabi Guabi”、高田渡もメロディを借りているウディ・ガスリーの”1913 Massacre”、盟友デロール・アダムスの”Portland Town”に加えて、ディランのファーストにあった”House Of The Rising Sun”も取り上げている。比べるとデイヴ・ヴァン・ロンクのアレンジにいかにオリジナリティがあったかが良くわかる。

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さて、そうなってくるとウディ・ガスリーだ。さきのエリオット盤と同じ1964年にフォークウェイズからリリースされた『Dust Bowl Ballads Sung By Woody Guthrie』を聴いてみる。1940年にレコーディングされた音源に、1964年の新録2曲を含むものであるようだ。冒頭”Talking Dust Blues”が始まると、すでにディラン盤の”Talkin’ New York”とシンクロしてくる。日本のフォークで言えば、”I’m Blowing Down”がシバさんの”淋しい気持ちで”となり、”Do Re Mi”が高田渡の”銭がなけりゃ”になり…という様々な影響を与えていく音盤なのだった。

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そんな気分で、ディランのファーストに繋がる盤を探していたら、ディランデビュー30周年の1992年に出た『Good As I Been To You』。実はこの辺りが私がリアルタイムで出会ったディランだった。後になってEUでリリースされたというアナログも手に入れた。当時この盤、色んなメディアで、ギターとハーモニカ弾き語りディランは嬉しいけれど、なぜカバー?どう受け止めて良いのかわからない…といった困惑が見て取れたけれど、これもオリジナル信仰に基づく理解だった。今聴くとなぜかしっくりくる。一発録りで臨んだらしいけれど、ギターが凄まじく上手で驚いてしまう。ギター一本でコレを表現するのは簡単そうで難しい(その昔、柄にもなくコピーしようとしたけれど、弾き方がわからない場所が結構あった)。”Step It Up And Go”のドライヴ感だとか。ここでもブルーズのフィーリングにただただ唸るのみ。プチプチいうこの時代のエレアコの音もなんだかやみつきになる(キャリアの中でディランを相当意識しているスティーヴン・スティルスも同じようなエレアコの音で1994年に『Stills Alone』を出した)。そう、『Good As I Been To You』にはジャック・エリオットの”Diamond Joe”が収録されているんだった。

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最後に、あ!と思って取り出したのはジェシ・フラー。”San Francisco Bay Blues”のオリジネイターとして知られているワン・マン・バンドの黒人歌手。ディランのファーストの1曲目にジェシのクレジットがあったけれど。全くこちらも同一線上にある音だ。ここいらでディランを聴いてるのか、エリオットだったか、ガスリーだったか、フラーだったか…わからなくなってくる。ディランのギター・プレイにはこのジェシ・フラーのプレイに負うものがある。この盤は1963年にGood Time Jazzから出た『San Francisco Bay Blues』。フラーはイスに座って、12弦ギターハーモニカカズーシンバル、自作のフォトデラ(右足でペダルを踏んで6弦にハンマーを当てるベース)を同時に演奏するという旅芸人だった。

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同じくGood Time Jazzから1961年に出た『Sings And Plays Jazz,Folk Songs,Spirituals & Blues』も素晴らしい出来だ。手元にあるのはオリジナルではなく、1990年のリイシューLPだ。エリック・クラプトン『Unplugged』で取り上げた”Hey Hey”も入っている。

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ところで私が尊敬しているBroom Duster KANこと元ぎんぎんの神林治満さん。10数年前に初めて吉祥寺井の頭公園路上ライブを見たとき、その風貌にジェシ・フラーと全く似たものを感じたのだった。路上から、ブルーズを地でいくその生き様が、すでに人生のレールを脱線していた20代前半の私の心を打ったのだった。以来、KANさんのホームページhttp://broomdusterkan.cocolog-nifty.com/)を運営したり、親しくさせていただいているのだけれど、その音楽への畏敬の念は初めて触れたあの時と全く変わらない。自分と比べるのはおこがましいけれど、ディランがエリオットやフラー、ガスリーに抱いた気持ちも同じようなものなのではなかっただろうか。今のディランの中にも、新鮮な何かとして、変わらず残っているのではなかろうか。

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ホームページから購入して下さったブルース・ライターの妹尾みえさんがブルースソウル・レコーズ誌で紹介してくださったBroom Duster KANの新作『Dirty Junks live at Gin House』

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2016-05-12 ファイヴ・ライヴ・ヤードバーズ!

markrock2016-05-12

[] ファイヴ・ライヴ・ヤードバーズ10:23



どちらかと言えば昔から英国ロックよりも米国ロックを贔屓にしている。どちらも大好きではあるけれど。評論家の人達もどちらかと言えばそのどちらかに分かれていたような。個人的には、伝統は浅いにしても、自由や平等と言ったアメリカ建国の普遍的・理想的価値に無意識的に惹かれてきた。しかもどっこいブルーズの伝統、ということではイギリス人もアメリカに惹かれ続けてきた。エリック・クラプトンもその一人だろう。



先日の来日公演のこともあったからか、今更、ヤードバーズのファースト英国盤を入手してみた。60年代のオリジナルは目が飛び出るほどだから、70年代の再発で、しかも盤質Cみたいなやつを見つけて。

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昔から音が悪いだとか、キース・レルフのボーカルがイマイチだとか、余り良い評判でなかった盤。私も1993年に日本のJIMCOからリリースされCDを持っていたけれど、確かにその評判通りの音で、何度も聴こうとは思えなかった。ちなみに1992年にキングから出た編集盤The Yardbirds Featuring Eric Claptonはジャケットにつられて『Five Live Yardbirds』かと思って買ったら、ソニー・ボーイ・ウィリアムスンとの共演を含む、全然違う編集盤だったという。ややこしいわ!って思ったりしました。

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てなわけで今更、この英国盤を聴いて…ぶっ飛びました!司会のマイクの破裂音まで鮮明で。「エリック・スローハンド・クラプトン!」なんていう紹介でドッと会場が沸いて、チャック・ベリーの”Too Much Monkey Business”が始まって…何度となくCDで聴いていた音だけれど全く違っている。ロンドン・マーキー・クラブの熱気がダンゴ状になって迫ってきて。特にクラプトンの高速ギターソロで各曲がオーガズムを迎えるんだけれど、ほぼ狂ってますね。ロックン・ロールが何の隠語だったのか、を思い起こさせてくれる。この時代のギタリストの誰を取ってもこんな風には弾けなかったはずだ。キース・レルフのボーカルだってそんなに悪くないし。

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ところで、日本盤のレコードの音は今にして聴くと種々多様だ。盤によっては安定した中音域を誇り、米盤よりも良音だったりするものも。ただ、ひどいと盤起こしもあるし、ジャケットもコピーで色味がオリジナルと大分違っていたり(これはとても多い)。CD化が行われた1990年前後も、現在のようなリマスターがなされていなかったし、オリジナルの音圧を再生できていなかった。とりわけ日本では、e-bayでペペッとクリックすれば買えて決済までできてしまう現在とは違い、オリジナルの入手が長らく困難だった事情もあるだろう。情報の受容・発信も一部の評論家や好事家に限られていたから誤解も大いに有り得た。一方ではそうした情報への渇望や一枚かかったフィルターがリスナーの想像力をかき立ててきた部分も無視できないのだけれど。



とはいえ、現代の視点でもう一度、過去のミュージシャンやバンドの音を再構成する作業は面白い。色々と聴き比べてみよう。



学生時代に先輩の家に呼ばれて「この"Hidaway"を聴け!」って正座させられました。その先輩、何年も留年したあげく、突然「長野に帰る」って。今頃どうしているだろう。下宿の片付けを手伝ったお礼にもらったゲイリー・ムーアLPが今も家にある。

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リプロ盤でも結構昔は高嶺の花だったような…ペイジ時代のヤードバーズ

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こんなの持ってたっけ…と思ったけどジム・マッカティ達が作ったバンド「Shoot」の盤。久々に聴くと、明らかにCS&N症候群ですね。結構好きな音!

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Box Of Frogsも存在すら忘れていた…

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