いしうらまさゆき の『愛すべき音楽よ』(ブログ〜CD&レコードレビュー)

2016-12-05 Frankie Valli / ‘Tis the Seasons

markrock2016-12-05

[] Frankie Valli / ‘Tis the Seasons (Rhino / 2016 ) 06:18


一足早く、クリスマスの気分に。フランキー・ヴァリの新作ホリデイ・アルバム『‘Tis the Seasons』を。「クリスマスの季節がやって来た!」ってなタイトルだけれど、もちろんフォー・「シーズン」ズを掛けている。新作アルバムとしては2007年の『Romancing the '60s』http://d.hatena.ne.jp/markrock/20071014)ぶりかな。今年から来年にかけて、フォー・シーズンズのツアーもあるということで、現役としての活動が嬉しい。ジャージー・ボーイズの大成功ですっかり生ける伝説と化している。

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とはいえ御歳82歳ですから、さすがに往時の力強さは少し失われている感じもある。それでも甲高い声色だけでファンなら失禁レベルと思われます。74歳のボブ・ゴーディオのプロデュースも嬉しい。すっかり円熟しきった音かと思いきや、ゴーディオとブレア・マスターズのキーボードで現代的でフレッシュな音作りになっており驚いた!マスタリングはテッド・ジェンセンですよ。コーラスには現フォー・シーズンズも参加。冒頭とラスト、Joy To The World/Do You Hear What I HearのメドレーとWe Wish You A Merry Christmasなんかは打ち込みも入れつつ新鮮だった。ブレアナッシュビルのスタジオ・ミュージシャンで、ガース・ブルックス、トリーシャ・イヤウッド、ケニー・ロジャースからピーター・フランプトンメガデスまでも手がけている人。Do You Hear What I Hearは好きな曲ですね。We Are The WorldのBメロはたぶんこの曲のBメロを無意識に引用したんじゃないかな。この辺がWe Are The Worldホーリーな感じを生み出している要素になっていると思われる。あと、フォー・シーズンズ風のアレンジを取り入れたFrosty The Snowmanも堪らないし。クリスマスR&Bソングの定番Merry Christmas Babyではジェフ・ベックが客演。ジェフのギターをそんなに上げていないのは、トータルの雰囲気を考えると正解。Have Yourself A Merry Little Christmasは伸びやかに歌い上げており、名唱だった。ライトなソウル感覚を漂わせたWhat Are You Doing New Year’s Eveは山達ファンにも訴えそう。

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思い出してフォー・シーズンズクリスマス・アルバムを取り出してみると、The Chiristmas SongやWhite Christmas、Joy To The World、We Wish You A Merry Christmasが今回のアルバムと被っていることに気がついた。再演だったわけですね。そう言えば、西のビーチ・ボーイズ、東のフォー・シーズンズという言葉があったけれど(East Meets Westとか言って共演もしてました)、確立されたお家芸的サウンドといい、いまだに双璧だなと。声に着目すると、マイク・ラブの喉でこねくって歌う感じとヴァリが被る部分もある気が。もちろんヴァリのほうが力量としては上だけれど。

2016-12-02 マギー・メイ〜実川俊晴のポップ・センス

markrock2016-12-02

[] マギー・メイ〜実川俊晴のポップ・センス 23:41


クリンク・レコードからマギー・メイの『12時のむこうに〜アンソロジー 1969−1975』が出ている。今までどうして出なかったのかなと思うくらいの仕上がり。アルフィー坂崎幸之助坂崎幸之助のJ‐POPスクール』岩波書店)で推しまくっていたという記憶があるけれど、CD化されることはなかった。その本も2003年に出たから13年も経っているとは。

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なぜかLPも中古市場にあまり出てこなかったから、本当に売れなかったのかも。アルフィー同様、ガロフォロワーのグループ。ガロのファーストやサードにあるCSN的部分を引っ張ってきた感じ。音を聴くだけで微笑ましい。他にも日本の70年代B級バンド(失礼!)でCDになっていないものはまだ結構あるような。坂田修がいた宿屋の飯盛とか、初期RCフォロワー藁人形と五寸釘とか、田舎芝居とか。結構好きでLPを聴いている。やっぱり大ヒットが出るかどうかは大きかったのかな。BUZZなんかは特大ヒットがあるから知名度で生き残れる。



ビートルズ・チルドレン世代のフォークやロックは、戦後の経済成長とパラレルになったある種の成功物語がある。とりわけポップ・マインド溢れる洋楽系の人たちは70年代初頭のフォークの時代にうまく乗れなかった人が多いから。うまく乗れたせいでおかしくなってしまったガロの失速もある。ガロはむしろ後年、後期のアルバムが評価されたり。斉藤哲夫にしてもフォークからポップに展開して、過渡期もありつつ今の君はピカピカに辿り着いて行った。大滝詠一もそう。エレックからコロンビアに行ってアルバム乱発していた時期は、どう考えてもどん底だったはず。ロング・バケイションが起死回生の一発になったけれど、当時業界からは信用を失い見放されていたみたいだし。レッツオンドアゲイン、じゃ見放されても仕方ないかもしれないけれど!



そう思うとマギー・メイの実川俊晴の場合は、キテレツ大百科のテーマ、あんしんパパ名義で出した「はじめてのチュウ」がその成功物語に当たるのかな。ただ、匿名化されていたから、評価が遅れたのだろう。SMAP木村拓哉がかなりしつこくレスペクトして自身の番組に出したりしていたのは、美川憲一におけるコロッケのようにカナリ効果があった気がする。渋谷系的ディグ精神。

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実川俊名義のソロも続けてCD化されるのだろうか。期待。1979年『ふりむけば50億』は本当にすばらしい作品。当時売れなかったのもよくわかるけれど(手元にあるのもサンプル盤だし)、それは大滝詠一ナイアガラ・カレンダー』が1978年にバカ売れし得なかったのと同じ理由だと思う。バックのセッションメンも一流、完成度の高い楽曲もポップスの玉手箱的で、大滝のポップ・センスに相当近いものを感じる。というか声が荒木和作とソックリ、というのが、大滝色を感じさせる部分かもしれない。歌詞の世界も1980年代的感性に足を突っ込んでいて、トータリティもばっちり。

2016-11-27 トニー・ブルーノの2枚。

markrock2016-11-27

[] トニー・ブルーノの2枚。 21:21


年末になるとレコード針を替えようかな、と毎年思う。長年愛用しているVestaxのプレイヤーだけれど、Vestax自体が倒産してしまったから、針もなくなってしまって。結局それでも、数年前電気屋さんに聞いたらですね、同じ工場で作った同じ型の針がいろんなメーカーから出ている、ということで、ケンウッドの同タイプの針を買ってしのいでいたんですが、それも廃版になってしまったとかで。万事休す、かと思っていたら、ケンウッドと同じタイプの針を作っているところがありまして(http://www.apis-jp.com/)。たぶん大体どこのメーカーの新旧の針もある模様。買ってみたら、ケンウッドの針よりも出音が良かったのはびっくりした。いつまでもあるものなんて無いのだけれど、もうちょっとはしのげたら嬉しい。



さて、そんな針を落としているのはトニー・ブルーノLP渋谷タワレコパイドパイパー・ハウスが期間限定出店しているけれど(出店期間が2017年7月まで延長になったとのことで、これもまた嬉しい!)、長門芳郎さんの再発『アンダース&ポンシア ポップ・ワークス』がなければこの人には出会えなかった。クリッターズのドン・シコーネ、ジノ・クニコ、ボビー・ブルームなどに交じってトニー・ブルーノのシングル”Small Town Bring Down”が入っていた。この2枚組3600円は高校生だった当時のぼくには高すぎて。ある種、清水の舞台から…でした。所沢Vanda Recordsで買ったはず。CDの外袋があったから思い出せた。西多摩近郊では当時在庫が相当豊富な店だった。

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そういえばドン・シコーネは今年の10月に亡くなった。フォー・シーズンズのメンバーだった時期もあったイタロ系。フォー・シーズンズといえばメンバーだった元シュガーローフのジェリー・コルベッタも9月に亡くなった。ピーター・アンダースも今年3月に亡くなって。あまり話題にならなくて悲しかったけれど。フランキー・ヴァリの新作クリスマス・アルバムは期待しないと。

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で、このトニー・ブルーノだけれど、1968年のキャピトル盤『An Original By Bruno』はカーマ・スートラ産、アーティ・リップのプロデュースでアーティ・バトラーの豪華なアレンジと粘っこくも感情過多なトニー・ブルーノのイタロ・ブルーサイド・ソウルがもう最高で!小粋な感じもあって。ポップ・ボーカルものはかなり集めているので、B級・C級色々聴いているけれど、プロダクション的にも間違いないのと、ロック世代の感性が注入されているのがこの作品を特別なものにしていると思う。ジャズに毛が生えた系の枠を出ないものが多いから。”Yesterday”はもちろんレイ・チャールズ版を下敷きにしている。” Small Town Bring Down”ももちろん収録。”What’s Yesterday”はディーン・マーティン『Dino』1972年)の1曲目に取り上げられていて、すごく良い曲。

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ところでファーストにあたるこの盤は、前年の1967年盤『The Beauty of Bruno』カーマスートラレコード)を、キャピトル配給になった際、別ジャケで出したものである模様。

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さて、セカンドの1969年のキャピトル盤『I'm Feeling It Now』はアーティ・リップのプロデュースは変わらず、でアレンジや弦はロジャー・ケラウェイが手掛けている。やはりピーター・アンダースとトニー・ブルーノの共作が収められているほか、ビートルズの”You Can’t Do That”のソウルフルなカバーが白眉かな。リチャード・ハリス(ジミー・ウェッブ)の”Didn’t We”やボビー・ラッセルの”Little Green Apples”、ティム・ハーディンの”Reasons To Believe”もある。音の雰囲気は悪くない。

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あとはカルトバイカー・ムーヴィーである所の『Hell's Angels '69』サントラ1969年にキャピトルで手掛けている。このLPは見たことがないけれど、再発CDは手元にある。基本トニーは音楽担当でここではソングライターとしての資質を期待されたのかな。トニー自身も1曲”Hang On Tight”を歌っているけれど、個性が活かされているとは言い難い。やっぱりトニー・ブルーノはファースト、セカンドの2枚が素晴らしい。今日の「本日の1枚」は1枚と言いつつ2枚と言うことで!


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2016-11-20 ブルース・ホーンズビィ”The Way It is”から30年を経て

markrock2016-11-20

[] ブルース・ホーンズビィ"The Way It is"から30年を経て 01:01

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久しぶりに何気なくブルース・ホーンズビィ&ザ・レンジのレコードを聴いていてハッとした。1986年に全米No.1になった"The Way It is"。美しいピアノの音色を中心に据えた王道のアメリカン・ロック。エリオット・シャイナーがプロデュースに加わっていて(ヒューイ・ルイスが手がけた曲もある)、30年経っても全く古びていない良い音。CDと違うジャケだったことにもちょっと意外だなと思ったり。このLP輸入盤

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日本で洋楽はほぼサウンドについて語られるばかりだから、この曲もピアノの美しさばかりが強調されて、歌詞に注目した人はついぞいなかった気がするけれど。バブルに至る日本のムードはシリアスな歌詞を受け止められなかった。ビリー・ジョエルのベスト盤でアレンタウンとグッドナイト・サイゴンをスルーする、そんな感覚。


生活保護申請のために列に並ぶと、絹のスーツの男が年配の女性に「仕事見つけろよ」とからかっていく…というAメロ。コーラスは、


That's just the way it is(現実はこんな風だ)

Some things will never change(変わらないものがある)

That's just the way it is(現実はこんな感じで)

But don't you believe them(でもそんなのを信じるのかい)...



その後の歌詞を読むと、1964年に成立した公民権運動も効力を失ってしまったこと、法律は人の心まで変えられなかった、現実はこんな風だ…と続く。悲しいあきらめのようなメロディだけど、現実を直視しつつ、こんなのはおかしいよ…と言うメッセージの余韻が残る。



なんだかトランプズ・アメリカの現実と重ね合わせて、深く感じ入るものがあった。映画『バック・トゥ・ザーフューチャー』(この映画も30年前に封切られた)で主人公マーティ・マクフライ父親をいびっていたビフはトランプがモデルという話だけれど、今年は映画の予想通り、そのディストピアが現実になったかに思われた。でも、そうなるアメリカ風土は30年前既にあったということだろう。そんなことで色々調べてみると、ブルース・ホーンズビィは2011年にトランプを題材にしたブロードウェイミュージカル『SCKBSTD』の音楽を手がけていたのだった。その中の曲、"The Don of Dons"と絡めてトランプの狂気を語る記事もあったから(http://www.billboard.com/articles/news/7393555/bruce-hornsby-donald-trump-song-interview)、直感は間違ってもいなかったようだ。



80年代、レーガノミクス双子の赤字を抱えたアメリカ貿易摩擦で日本に憎しみを募らせていたのがトランプだった。レーガン規制緩和小さな政府民営化市場原理主義…という新自由主義路線格差社会が進行し、自信を失った人々は内向きになっていった。今思えば、80年代のアメリカン・ロックはある種白人によるアメリカ民族音楽のような音だったようにも思う(90年代は黒人ヒップホップの揺り戻しが来た)。マッチョイズムっぽい感じもあって。ブルーススプリングスティーンジョン・クーガー・メレンキャンプトム・ペティも。ジョン・フォガティも復活していた。後にはアメリカーナなんて名称も出てくるわけだけど。ブルース・ホーンズビィも、ブルーグラスに接近した時期もあった。今振り返ると、思想的にはリベラルでも、音だけは愛国的・内向きだったのかも。スプリングスティーンは本当にそれで勘違いされたりもした。でも日本にもそんなねじれがあったような。外向きグローバル志向のリベラルはっぴいえんどが日本語で、内向きロケンローラーが英語、みたいな。



日本にも新自由主義が中曽根に始まり、森〜小泉〜安倍ラインでアメリカに遅れて完全導入される。当然格差が進行して内向きになり、エスタブリッシュメント打破みたいな橋本現象とか、ニッポンを取り戻せみたいな話が出てきてリベラルが退潮した。That's just the way it is(現実はこんな風だ)…って話になってくるのでありまして。まあ、リベラル(liberal)ってのは人間にとって崇高すぎるのかもしれない。ラテン語の語源liberは満たされた自由民のことだから。自分に余裕がなければ、人様に分け与えることなんてできない、ということなのだろう。



さて、ブルース・ホーンズビイから遠いところに来てしまったので話を戻そう。彼のデビュー・バンドのザ・レンジは売れない方がおかしい、という位の腕利き揃いのバンドだった。ファースト・ツアーの前まで短期在籍したギター・マンドリンヴァイオリンのデヴィッド・マンスフィールドはTボーン・バーネットやスティーヴン・ソールズとアルファ・バンドを組んでいた。ディランのローリング・サンダー・レヴューでもお馴染み。元々はトニー・ベネットのドラ息子(かどうかは知りませんが)二人とクァッキー・ダック・アンド・ヒズ・バーンヤード・フレンズを組んで天下のワーナーからアルバムをリリースしていた。

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さらに、ギターのジョージ・マリネリはビリー・ヴェラのバンド、ザ・ビーターズでギターを弾いていたし、ベースのジョー・プエルタはデヴィッド・パックのアンブロージアのメンバーだった。"The Biggest Part Of Me"収録のアルバム『One Eighty』の写真の真ん中にいる人。

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そんなバンド・メンバーを従えたブルースはその後もアメリカン・ロックの大物との共演を経験した。ドン・ヘンリーのために作った"The End Of The Innocence"は特に印象的だった。ノイズメイカーズのライブ盤『Here Come the Noise Makers LIVE98/99/00』ブルースの自演版が収録されている。そして、元シルヴァーだったブレント・ミッドランドの後釜としてグレイトフル・デッドに加入し、インプロヴァイゼーションを鍛え上げた。いまだに彼のライブにはデッド・ヘッズが駆けつけているとのこと。2011年『Bride of the Noisemakers』も素晴らしい2枚組ライブ盤だった。写真の右下にあるのは彼のサインだ。

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2016-11-19 Giorgio / Son Of My Father (Dunhill / 1972)

markrock2016-11-19

[] Giorgio / Son Of My Father (Dunhill / 1972) 19:06



トップガンベルリンの”Take My Breath Away”など)『フラッシュ・ダンス』アイリーン・キャラの”Flashdance…What A Feeling”とか)『ミッドナイト・エクスプレス』『ネバーエンディング・ストーリー』『オーバー・ザ・トップといったサントラ仕事、そしてドナ・サマーをはじめとした一連のディスコもの(Hot Stuffとか)のプロデュースで一世を風靡したイタリアのミュージシャン、ジョルジオ・モロダー。これは「ジョルジオ」名義での3枚目のアルバム。1969年のファーストはタイトルが『That's Bubblegum - That's Giorgio』で"Yummy, Yummy, Yummy"といったブッダ系のバブルガム・ポップに加えてCCRホリーズ、サー・ダグラス・クインテットなんかを取り上げている。この辺りからして後のジョルジオに通ずる下世話なポップ・サウンドの原型を見る思いがする。ポップなメロディ+CCR的な反復ビートでトランスしていく感じ。

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さて、この三枚目はドイツレーベル、ハンザ産だけれど、アメリカではダンヒルディストリビューションで出ている。1972年という時代を考えると、ムーグシンセの宇宙的サウンドがディスコやエイティーズ風味を先取りしているのが面白い。結構革新的じゃないかな、と思うけれど(ラストのムーグと弦が絡む”Tears”では後のモロダーの音が既に聴ける!)、ロックにも多少の精神性が求められてもいた時代背景を思うと、このバブルガムの延長のようなド級のポップ・サウンドは分が悪かった。”London Traffic”とか”Underdog”みたいなホリーズ風ポップも魅力的だ。

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久々にジョルジオ・モロダーを聴き直そうと思ったのは、ドナ・サマーアメリカ盤を何気なく聴いていたら、むちゃくちゃLPの音が良かったから。こんなに良かったっけ、という。アナログ録音だと、エイティーズものですら、音が良い、と思うようになってしまった。新作のLPでも、デジタル録音の音源をそのままLPにしたようなやつは、正直イマイチだし。



ソロのCDも昔買った気がするけれど、レコの山に埋もれて探せそうもない…現在76歳で、まだ新作とか出しているみたい(http://www.moroder.net/)。すごいですね。10月末、ハロウィンの日に渋谷で観たリンゴ・スターも元気すぎて驚いたけれど!


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2016-11-17 哀しみのダンス

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[] 哀しみのダンス 00:38



ただでさえ世界の成り行きに呆然としているのに、舞い込んでくる訃報は心をざわつかせる。モーズ・アリスンまで!結構なお歳だったわけだけど。よくよく思えば今年もぽつぽつ訃報があった。でもここへ来てどっと…りりィさんも驚いたし…私の母と同い年だったから。バイバイセッション・バンドは日本のスタジオミュージシャンの最高峰とも言えるメンバーが入れ替わり立ち替わり参加していた。フォークがムーブメントとして売れていたから、どちらかと言えばメジャーになれなかったロック志向のミュージシャンが集ったわけだろう。80年代の音楽シーンはそんなメンバーが今度は作り出したものだった。でもやはりその求心力りりィさん自身の魅力が大きかったからではないかな。ちなみに80年前後も結構良いレコード有るんですが、たまねぎ』『ダルシマ』『タエコ』『ライヴ』あたりが日本の70年代の女性SSWの傑作だと思っている。五輪真弓ユーミンりりィ、って感じ。

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そしてレナード・コーエン。訃報記事にノーベル文学賞騒動もあってかディランの名前も出されていたけれど。まあコロンビアでジョン・ハモンド、だから。そうなるのかな。新作も出たばかりで、オッ元気だな、とか思っていたところだった。結局遺作もまだ買えずじまいだ。2014年『Live in Dublin』なんかもとっても良かった。観ようと思って先ほど探したけれど、こういう時に限ってどこかに埋もれて出てこない。ほとんどの作品にハズレがなく、詩人だからじっくり歌詞を読みながら読んだり、したものです。元々スザンヌがジュディ・コリンズに歌われたのが世に広く知られるきっかけだったけれど、楽曲がカバーされることが多かった人で。オムニバスもあるし、ジェニファー・ウォーンズのカバー集も本当に良く聴いた。評判は良くないけれど、フィル・スペクターの貴重なプロデュース作品があるのも最高だし。そう、中古盤を買ったら、誰かに当てたサインが書かれていたなんてこともあった。

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そしてレオン・ラッセルね…先日音楽好きのおやぢバンドのメンバーに訃報を教えていただき…落涙。。近年も来日していたわけだし、観に行けば良かった、と本気で後悔した。レッキングクルーの一員として、大滝詠一ナイアガラ・サウンドに継承される鉄板・ドリーミーなアレンジやプレイも最高だったし、スワンプ・シーンの中核として、シンガー・ソングライターとしても、燻し銀の歌声も最高でした。アサイラム・クワイアを初めて聴いた時の期待感とか。メアリーラッセルとの共演盤のメロウな味わいとか。

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ジョー・コッカーもそう言えば2014年に亡くなりました。エルトン・ジョンとの共演作が6年前に出たときは、とうとうレオン・ラッセルがメジャーなシーンにカムバックする!と嬉しく思ったもので。この共演作ジャケ含めて実に完成度が高かった(http://d.hatena.ne.jp/markrock/20101107)。90〜00年代はジャケがかなりチープな作品が多かったから。ニュー・グラス・リヴァイヴァルとの共演作のジャケはヒドかったなぁ。ハンク・ウィルソンの第4弾。でも内容は最高で!今はハンク・ウィルソンの第2弾を聴きながら書いている。追悼盤、ということでエルトン・ジョンとの共演作『The Union』のレビューを再掲します。ちなみにシングルカットで雰囲気のある45回転シングルもリリースされていました。

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Elton John / Leon Russell / The Union ( Decca / 2010 )

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興奮のデュオ新作。DVD付きの方を輸入盤で入手。最近日本盤はトンと買わなくなったな。安さが一因。



さて、アメリカイギリスを代表するピアノマンである、レオン・ラッセルエルトン・ジョンがまさかの邂逅。60年代は売れっ子セッションメンとして、70年代にはロック界の顔役だったことを思うと、近年細々とした活動が目立ったレオンにとっては、久々のメジャー復帰。エルトンとビリー・ジョエルはツアーはすれど、共演盤という発想は出なかった。ビリーとエルトンの方が音楽的に近しいモノがあるから、レオンとじゃあエルトンと言えど刺激を感じたのかもね…なんて思いつつブックレットを読み進めていって、その感動的なくだりに涙が出た。



なんでも2008年、エルトンの私生活上のパートナーであるデヴィッド・ファーニッシュと音楽番組を一緒にプロデュースした際(エルヴィス・コステロが出演)、長らく忘れ去っていた3人のシンガー・ソングライターについて話し合ったとか。その3人というのが、ローラ・ニーロ、デヴィッド・アクルス(まさかこの名がエルトンから出てくるとは…)、そしてレオン・ラッセルでありまして。で、3人の音楽を知らなかったデヴィド・ファーニッシュは、iPodに彼らの音楽を入れることにした、と。その中からレオン『Retrospective』(ベスト盤ですな)を聴かせてもらうことになったエルトン、突然涙が止まらなくなり、彼の音楽が人生における最も美しく素晴らしい時をもたらしてくれたことに気づき…さらに、こんなにも素晴らしい音楽を人々が忘れ去ってしまっていることに怒りを覚えたんだとか。



思い起こせば若き日のアイドルだったレオン1970年にLAのライブハウス、トルバドールで出会い、レオンイギリスからやってきたエルトンとの共演を快く快諾したという。ディレイニー&ボニーのツアーやジョー・コッカーとのマッド・ドッグス&イングリッシュマン、そしてチャリティ・イベントの先駆でもあるコンサート・フォー・バングラディシュで一世を風靡したレオンと、”Your Song”のブレイクで一躍ポップスターの仲間入りをしたエルトンの2人が再び重なり合うことはなかったわけだが、ひょんなことでレオンの音楽に突き動かされたエルトン。アメリカにおけるマネージャーを務めるジョニー・バービスがかつてシェルターレコードのスタッフだった関係から、レオンと連絡が取れて、電話越しに旧交を温めた。その後早速T・ボーン・バーネットに初めて連絡を取り、プロデュースを依頼して…なんだかトントン拍子の夢のような話で、読んでいるだけで胸が熱くなった。



盤の中身は最高!レオン、エルトン&バーニー・トーピンのそれぞれの単独作に、レオン&エルトンやレオン&バーニーの共作も加えて。ボーカルを2人で取るものが特にぐっと来る。昨日このブログで取り上げたロバート・プラントアリスン・クラウス盤もTボーンのプロデュースだったので、マーク・リボーやジェリー・ベルローズ、デニス・クロウチとか、その盤とも被ったメンツではあるけれど、あっちよりナチュラルな音で、個人的には好みかな。演奏では2人のピアノはもちろん、他にもジム・ケルトナー、ドン・ウォズ、ロバート・ランドルフドイル・ブラムホール供▲屮奪ー・T・ジョーンズが。コーラスではビル・カントス、ジェイスン・シェフ、ルー・パーディニなんてAORな人が参加している。さらにさらに、”When Love Is Dying”ではコーラスにブライアン・ウィルソン、”Gone To Shiloh”ではニール・ヤングがボーカルを聴かせている。ゴスペル風の女声コーラスもとても良い。



手元にあるのは16曲入り。DVD入りの方が2曲多いので要注意だ。2人が全く衰えていないところがこの盤の価値を高めている。メイキングのDVD(カナリ短い…)を観て、”Border Song”辺りはレオンの影響なのかな、と思ってしまった。こんなベテランになっていながらも、イギリス人がアメリカ音楽に気を許しつつ、でも地が出てしまう感じが良い。冒頭の”If It Wasn’t For Bad”はレオンの会心の1曲で最も売れ線かも。

2016-10-29 The Honey Drippers / Volume One

markrock2016-10-29

[] The Honey Drippers / Volume One ( WEA /1984 ) 22:14



しばらく更新が空きました。飽きました、だったのかもしれないけれど…レコードを探したり、音楽を聴くことに飽きたわけではなくて、そっちは相変わらずどころか加速する一方ですが…たぶん情報が飽和状態になってきている、というのがあるのかも。昔だったらチェックしている音楽雑誌とか、テレビ番組とか、時折更新されるミュージシャンの日記なりをそれなりに早くチェックして反芻していれば良かったわけだけれど…ツイッターフェイスブックタイムラインに流れてくる情報の波と言ったら。もはや人間業では追い切れません。与えられた時間は限られてますから。しかも、その殆どは我々の空き時間を金にしようと目論む、釣り記事という名の広告の山ですから、見てるだけで疲れてくる。そしてそんな無機質な情報に刺激を感じなくなるんですよね。飽和状態=飽き…ってそれにしても漢字はうまく出来ています。



そんなことを考えてブログの記事を書いていると、じきに虚しくなって来てしまって。開設当初は、インターネットという善意共同体や情報の希少性が生きていて、このレコード好きですよ〜とか、こんなの知ってますか〜とか、見知らぬ音楽ファンの中との交流があったりと、結構楽しかったんですが。最近は余りにも情報の無料化・匿名化が進んでしまっているのか、素通りばかりになってしまった。マニアックすぎる内容にも関わらず90万アクセスに達するという所ですが、なんだかその素通り感がコワイというか(読んでいただいている皆様には大変感謝致しておるのですが…)、別にそれを可視化する必要も一切ありませんが、この気分は伝わりますでしょうか。。フェイスブックなどで、そうした善意コミュニケーションは生きているように思いますが、そうした24時間コミュニケーションすら、なんだか疲れてしまう。でも、そう、釣りというより「このレコード実はすごい思い入れがあって…」とか「この人好きなんですよ!」みたいな話には、グッと心が引き寄せられる。芽瑠璃堂マガジンに寄稿されている皆様のブログ(ぼくが長らくライナーや雑誌などで親しんできた方々もいらっしゃる!)にはそれこそ音楽愛が充ち満ちているから、ホッとする部分もあったり。

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まあそんな愚痴っていても仕方ないので、脈絡なく本日の一枚を。最近入手したハニー・ドリッパーズ、1984年の唯一作。『Volume One』とあるけれど、結局この一枚という。ロバート・プラントのソロ・プロジェクトという印象だけれど、ジャケでは伏せられているメンバーはジミー・ペイジジェフ・ベックナイル・ロジャースという豪華なもの。ぼくはサタデー・ナイト・ライブの映像で見たのが初めてで。50年代懐古ってな革ジャンのロバート・プラントが”Rockin’ At Midnight”を歌っていた。そして日本盤のCDを買ったのだけれど、こいつは帯がプラケースに糊付けされているタイプのやつだったはず。日本盤LPは12インチだけれど、今回入手したイギリス盤は10インチだった。手にしてみると、雰囲気は最高。LPと比べてみると、ちょっとサイズが小さいことがわかる。音はかなり良かった!

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10インチは結構魅力的なものだ。ちびちび買っているけれど、やはりロック以前のジャズやカントリーが多いかな。パッと出してみたところだとダニー・ケイケニー・ドリュー、スリーサンズ、ファロン・ヤング・ジーン・オートリーイギリスという国はこの10インチに思い入れがあるのかな。70年代のRSOレコード『PRIME CUTS』ってありますよね。これも擬古調で。エリック・クラプトンが歌う”Smile”が入っていることで有名。80年代のイギリス盤でチャック・ベリーの再発10インチというのもあった。

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日本のペラ盤は60年代初めのプレスが主だ。これは北島三郎SP盤とサイズが同じであることがわかる。SPは市丸のもの。SPは趣味で買った物だけれど、私の祖父ぐらいだとお座敷遊びとかがまだ生きていたからか、三味線や小唄のレコードも結構家にあった。

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2016-10-15 ボブ・ディラン、音楽と文学の間

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[] ボブ・ディラン、音楽と文学の間 12:03

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ボブ・ディランノーベル文学賞受賞。長らくノミネートが取り沙汰されていたから(ディランのファンのお約束−その凄さを説明するときに「ノーベル文学賞にノミネートされていて」と言う−)、とうとうこの日が…という。自身もその影響を隠さない村上春樹もナットクでしょう。物事には順序というモノがある。いまこの時代、このタイミングだと思うと、ジャストですよね。資本主義が先鋭化し、マネーゲームや権力闘争に明け暮れる…おいおい、アンタそれでいいのかい?っていう問いかけが常にディランにはあった。



しかしタイムリーな国内報道を見てズッコケた人は多いのではないだろうか。フォークの神様、とか、ミュージシャンで詩人の、とか。間違っているわけではないけれど、何かズレている。つまりディランを知らないということだ。そもそもズレまくっているNHKなんかも酷いレベルで「昔聴いてました、あの頃は革新的だったなぁ〜」とかいうコメントを延々垂れ流していて、メディアの作り手も受け手も、誰も知らないんだなあ、と苦笑してしまった。結局レコードコレクターズ的な方々のご登場を願うほかない、という(笑)。そうそう、小室哲哉が受賞を予言していた、という記事にも失笑してしまった。ああいった20世紀少年世代ならノミネートの話は常識だった。むしろ桑田佳祐の方がディランが来る、ってのを無意識的に予言していたと思う。「ヨシ子さん」みたいな、桑田さんの脳内をドロっと垂れ流したような作品にやたらディランが出てきていたから。こういうの今の時代に受けないよな〜と思いつつ、好きすぎて出しちゃった感じ。



音楽と文学を混同するな、とか、文学が文化の中心だった時代が終わり、音楽家が文化の中心になった時代を象徴する賞(だがその時代の終わりをも無情に宣告する)とか、色々な読み方ができるように思うけれど、ぼく自身としては、80年代的なる消費一辺倒文化リヴァイヴァルの終焉、への一歩だと踏んでいる。50〜60年代が80年代にリヴァイヴァルし、60〜70年代が90年代にリヴァイヴァルし、80〜90年代が00〜10年代にリヴァイヴァルし、という大衆文化現象があるけれど。これは親から子へ、という世代の文化再生産としてもごく自然だと思う。となるとコレは、一面的にケーハクとみなされる80年代のそのまたリヴァイヴァルの終焉?時代は「言葉」やファッションではない「哲学」を再び求め始めている、ということなのでは?

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ディランとビートルズ、ってのが何だかんだ、ロックの基本だと思う。古典的図式で言えばサウンドと詩、アメリカイギリス、その相互作用。アイ・ラブ・ユー、ユー・ラブ・ミーのロックが、ディランと出会って、物語性や重層性、多義性を帯びていくわけで。ジョン・レノンがディランに出会って詩の世界を変えたという有名なエピソードもある。ディランが血肉化させていたフォーク・ミュージックには、パフォーマーを時代を超えた語り部に憑依させる伝統があった。

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しかしそんな彼の近作がジャズ・スタンダード集、という人を食った感じも最高だ。本人は受賞のニュースに一瞬ニヤッと笑ったかも知れないけれど、たぶん彼の音楽活動を変えるモノでもないだろう。スタンダード第二弾『Fallen Angels』は輸入LPで入手した。丁寧な歌がまた、沁みる。

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そして、今一番聴きたいと思えるのが1995年のMTV UNPLUGGEDの2枚組LP私的にはリアルタイムで追いかけ始めた頃の新譜だから思い入れも深い。はじめは貧乏旅行の終盤、ロンドンの今はなきHMVで5ポンドくらいのディスカウントでカセットを買った。コレ、再発LPもあるけれど、そっちは音が良いか保証できない。というのも、クラプトン『UNPLUGGED』を信頼する友人の所有するEULP(90年代のプレス)で聴かせていただき、CDを軽く上回るその音の良さに大感動して近年の再発LPを買ってみたところ…全然ダメだったから。ディランの方も90年代のオリジナルLPの音は素晴らしい。ディランのアコースティック・セットを一列目で聴いているような臨場感がある。

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2016-10-01 Chelsea Beige / Mama, Mama, Let Your Sweet Bird Sing

markrock2016-10-01

[] Chelsea Beige / Mama, Mama, Let Your Sweet Bird Sing ( Epic E-30413 / 1971 ) 14:26


まだ聴いたことのない70年代初頭のロック・バンドなんてあるんだなぁ、とアメリカ音楽の懐の広さを思い知らされる。日本にリアルタイムで紹介されなかったバンドも沢山ある。こちらはチェルシー・ベージュというバンド。

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1973年くらいまでのアメリカン・ロックにはほぼハズレがない、というのは個人的な感想。経験上どんなB級、C級バンドでも生楽器のアンサンブルでスリリングなロック・ミュージックの醍醐味が味わえる。コレ、日本でもそうじゃないでしょうか。日本だとちょっと遅れていたせいか、1976〜77年くらいまではイナタイ感じのロックバンドがいた。でも1978〜79年頃になってニュー・ミュージック的な雰囲気が挿入されてくると途端にズッコケてしまうという。

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さて、チェルシー・ベージュだけれど、この唯一作『Mama, Mama, Let Your Sweet Bird Sing』、音としてはブラス・ロックという括りになる。アート・ロック的ごった煮テイスト。エピックのバンドだから、音作りも期待していたけれど、期待通りのエグイ音。ブラスやエレキ・ギターの一音一音がぐいぐい迫ってくる感じで。リード・ボーカルとピアノのアラン・スプリングフィールドが全曲を手がけている。シカゴBS&Tなんかとも決してひけをとっていない曲もある。ボブ・ディラン風のフォーク・ロックなテイストの曲もあるけれど、そこにブラスが絡む感じも面白い。ジャズ、ロック、ブルーズ、カントリー…と幅広い音楽性を持っているようだ。プロデュースはコロンビアプロデューサーエンジニアだったジョン・マクルーア。アレンジがなかなか秀逸だと思ったら、アラン・スプリングフィールドと共にアレンジを手がけるサックスクラリネットのケニー・リーマンディスコ時代にシックをプロデュースし、ナイル・ロジャース、バーニー・エドワーズと"Dance, Dance, Dance"を共作するなどして名を挙げた人だった。



調べてみると、何でもリーダーのアラン・スプリングフィールドニューヨークブロンクスの生まれで両親はホロコーストの生き残りだったとか。スキャンダルのパティ・スマイスの母、ベティ・スマイスが運営していたギャスライトなどで演奏していたバンド、テイク・ファイヴ(もちろんデイブ・ブルーベックの曲から命名)がチェルシー・ベージュの前身。メンバーチェンジを経て、結局キャピトルと契約。S&Gなどを手がけたあの黒人プロデューサー、トム・ウィルソンがバンド名をザ・ラスト・リチュアルと改めて1969年に唯一作『The Last Ritual』をリリース。

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BS&Tのフォロワーといった体だったようだけれど、余り売れず、アランのドラッグ禍で解散。メンバーの一人、ボビー・リッチグは後にシールズクロフツのメンバーになり”Summer Breeze”や”Diamond Girl”などのヒットを飛ばす(しかしシールズクロフツのバハーイ教の信仰についていけなくなって脱退し、今度はドゥービーズを脱退したマイケル・ホサックらとボナルーを結成)。

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ザ・ラスト・リチュアルの解散後結成されたのが今回取り上げたチェルシー・ベージュだけれど、結局アランのドラッグオーバードーズでその活動も頓挫したみたい。アランのドラッグ癖はそのまま治らず、1982年には残念ながら亡くなっている。ちなみにチェルシー・ベージュのメンバー、ジョン・スコーゼロ(トランペット)はビッグバンドのメンバーになり、BS&Tと後に共演している。

2016-09-26 9月の雨の日に

markrock2016-09-26

[] 9月の雨の日に 22:36



先日下北フラッシュ詣を久々に。雨が続いたりと嫌な季節だけれど、夢のような空間でしばし時を忘れてレコードに集中する。

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今日の感動の1枚はやっぱりビートルズ『Help』、イエロー・パーロフォンのUK mono初回盤!51年前のレコードなのに、キズ盤とはいえ野口さん2枚というのはフラッシュならではだと思いました!そもそも以前フラッシュで手に入れたUSオリジナルの『Meet The BeatlesUKステレオ再発盤『A Hard Day’s Night』が、US および UK プレスのビートルズに改めて目覚めたキッカケだった。UK盤、US盤、モノ、ステレオ、さらにはマトリクスに着目して…と集め始めればキリがないけれど、フラッシュ椿さんのコメント「Plays good!!」が私にとっての指標になっている。

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あとはジミー・ウェッブ・プロデュースのテルマ・ヒューストン『Sunshower』ダンヒル盤も買い直してしまった。コレ、レコードの方はモータウンからの再発盤しか持っていなかった。CDはボーナス・トラック入りの輸入盤も出ている。ジャケットも含めてトータルで完成されている盤。レッキングクルーの躍動感もココに極まれり、という。それにしてもこの時代のダンヒルものはやはり素晴らしい。一時期リチャード・ハリスとか好きすぎて何枚もダブって集めていたこともあったけれど、しばらく前に1枚を残して処分してしまった。

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ええと、あとはメリリー・ラッシュのベル盤『Angel of the morning』を均一盤で発見。大好きな盤で嬉しかった!チップス・モーマン、マーク・ジェイムス、ゴーゴニ・マーティン&テイラーとか漁っていた時期に出会った盤だけれど、なぜかLPを持っていなかった。70年代の再演盤はもっていた気がするけれど…椿さんから、80年代にチップ・テイラー作の表題曲”Angel of the morning”をリヴァイヴァルさせたのは誰でしたっけという話になって、メアリー・マクレガーでしたっけ、いや違うな〜…なんていうことで、ずっと帰り道考えていたら、ジュース・ニュートンだった!と思い出せて感動してしまった。検索すればいいんでしょうけど、それもつまらないな、と思って朧気な記憶を辿って…カントリー系だけど、ポップ・ロック的なフィールドだったような…とかいう感じで思い出して。

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あと残りは300棚でニール・ダイアモンドの『Love at the Greek』を。グリーク・シアターでのライブ盤でロビー・ロバートソンのプロデュース。大好きなニール・ダイアモンドなのにこの盤だけはなぜかスルーしていた。ベタな例で悪いけれど、日本の全盛期のアリスのやたら多いライブ盤みたいなイメージで、スルーしていたような。改めて通しで大音量で聴いてみて…死ぬほど良い!近作に至まで、これほどハズレのない人はいないと思う。そして、なぜ人気があったのか、は聴けば判るという。

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あとはニュー・ライダース・オブ・パープル・セイジの『Brujo』。1974年のオリジナル盤だった。この頃はジョン・ドーソンと共にスキップ・バッティンがリードしていて。スキップ曲はキム・フォウリーとの共作で。これぞカントリー・ロック、というか、カントリーというにはイカレた感じでボーカルが最高。

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あとはジャズ・ボーカルものでも集めているフランキー・レインの『Hell Bent For Leather!』イギリス盤のペラジャケで。ローハイドやハイヌーンなんかが入っているカントリー作。初めて買ったのは60年代の日本盤だけれど、そちらもペラジャケだった。ジャズど真ん中のボーカル盤もとても上手いけれど、映画ブルースブラザーズでもコミカルにカバーされた”Rawhide”が笑っちゃうくらい良い。

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そして最後はジョン・レノン没後1982年にリリースされた名ベスト盤『The John Lennon Collection』。これもUK盤と思われるブラック・パーロフォン・レーベルで。これは感慨深かった。そもそもジョンに初めて触れたのがこのベスト盤だったから。私の世代ぐらいまでは「レコードは高い」からゆえの、音源への飢餓感があった。私の兄が学校の先生に紹介され、コピーして貰ったカセットテープでこのベスト盤を聴いていたのだった。それを有り難く、何度聴いたか判らないくらい。レコードも、今聴くと決して音も良くはないんだけれど(キャリアを通じた音を同じレベルで並べるのは、この時代の技術では難しかったと思う)、何かタイムマシーンみたいな感じもして。ジャケの内側にウールワースのシールが貼ってあって、1982年12月16日なんて書いてあるから、オーストラリアニュージーランドで誰かが当時買ったものかな?

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"Happy Xmas"冒頭の「ハッピー・クリスマス・キョーコ」「ハッピー・クリスマス・ジュリアン」とジョン&ヨーコの前夫・前妻の子どもに囁きかけるシーンも、何か言ってるぞ、とかいう話になって、音の悪いカセットテープの音量を上げてですね、スピーカーに耳を近づけて聴いたという。まあ聴こえるわけないですよね(笑)。



しかし聴いていると心の中がヒリヒリしてくるのは何だろう。変な話だけれど、人間は大分遠いところまで来てしまったようにも思える。儒教でいうところの、分をわきまえなければいけないな、と申しますか。日本の伝統が大好きな人たちに限って中国思想である儒教が好き、というのは日本のねじれの一つだけれど、そんな人たちが経済発展が大好き、というのもまた分をわきまえていないな、と思うことがある。これもねじれの一つなのかもしれない。あの時ぼくがぼくの兄と一緒にスピーカーの奥から聴こうとしていたものは何だったのだろうか。

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頬がこけた写真を見ているとジョンも亡くなる直前は結構なおじさんになっていたのだなと思う。とはいえこのジョンも、もし今生きていたら、戦争に賛成していたかもしれないし、その辺りは人間だからわからない。ぼくは40歳になっても、ベッドでギターを弾いていられるかな?

2016-09-12 Roy Orbison / Big O

markrock2016-09-12

[] Roy Orbison / Big O (London / 1970 ) 22:06

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ビートルズのハリウッド・ボウルのリマスター再発。色々賛否両論あって面白い。ジョージ・マーティンの息子ジャイルズが曲順などオリジナルの雰囲気を損なうことなく、各楽器、ボーカルの音量を持ち上げて、クリアに分離させることに成功している。父の手がけたオリジナルのLPへのレスペクトはありつつの、全くの別物として受け入れるべきものだろう。ただそれでも、1977年当時のジャケットや、歓声にかき消されんばかりの異常なコンディションの中で、半分ヤケ気味に奮闘する四人の演奏に思い入れがある人にとっては、色々ツッコミたくもなるのかな。ジャケも伝記映画とのタイアップになっていて商魂見え見えだし、ボーナストラックを中途半端に入れるのならブートにもあるようなコンプリート版にした方が良かった、だとか。ただ、オリジナルのLPを持っていれば、別々に楽しめばそれだけでいい話のような。オリジナルのLPもそんな評判は良くなかったわけだけれど、改めて聴くと流石の迫力があり、生演奏の実力が伝わってくる。リマスターはまたそれとも別物。録音は再現芸術であると共に、ある種の解釈や編集を含んでいるわけだから。演奏のクリアさに耳をそばだてつつ、素直にまさかの新譜を喜んでいる。

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ザ・ビートルズ『ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル』THE Beatles : Live At The Hollywood Bowl

<曲目>

1 Twist & Shout / ツイスト・アンド・シャウト(1965年8月30日)

2 She’s A Woman / シーズ・ア・ウーマン(1965年8月30日)

3 Dizzy Miss Lizzy / ディジー・ミス・リジー(1965年8月30日/1965年8月29日——1曲にエディット)

4 Ticket To Ride / 涙の乗車券ティケット・トゥ・ライド)(1965年8月29日)

5 Can’t Buy Me Love / キャント・バイ・ミー・ラヴ(1965年8月30日)

6 Things We Said Today / 今日の誓い(1964年8月23日)

7 Roll Over Beethoven / ロール・オーバー・ベートーヴェン1964年8月23日)

8 Boys / ボーイズ(1964年8月23日)

9 A Hard Day’s Night / ア・ハード・デイズ・ナイト(1965年8月30日)

10 Help! / ヘルプ!(1965年8月29日)

11 All My Loving / オール・マイ・ラヴィング(1964年8月23日)

12 She Loves You / シー・ラヴズ・ユー(1964年8月23日)

13 Long Tall Sally / ロング・トール・サリー(1964年8月23日)

14 You Can’t Do That / ユー・キャント・ドゥ・ザット(1964年8月23日——未発表)

15 I Want To Hold Your Hand / 抱きしめたい(1964年8月23日——未発表)

16 Everybody’s Trying To Be My Baby / みんないい娘(1965年8月30日——未発表)

17 Baby’s In Black / ベイビーズ・イン・ブラック(1965年8月30日——未発表)

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さて、そんな気分のまま手に取った、フィフティーズ・ロックンローラーの過渡期作。ビートルズ旋風以前はアメリカロックンローラーレスペクトされていたから、こんなイギリス録音が可能になった。手元にあるのもイギリス盤。ロンドンレコードからのリリースで、演奏・コーラスを務めるアートムーブメントというイギリスのグループと共演している。冒頭の”Break My Mind”とジム・ホールがアレンジしたラストの”Penny Arcade”がシングルで切られたみたい。”Penny Arcade”以外はライブ・レコーディングで、コーラスとオーケストレーションは後でオーバーダブされたんだとか。

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プラターズの”Only You”もロイの美声で聴いてみたかった!と思わせるもの。ビーチ・ボーイズの”Help Me Rhonda”のカバーは珍しい。アル・ジャーディンの声域で歌うと意外と声が似ているのだと思ったり。ビートルズも演っている”Money”やクリス・ケナー(ウィルソン・ピケット)の”Land Of 1,000 Dances”だとかR&Bものは、アメリカへの憧憬を交えたイギリス人好みの感覚かな。ビートルズがロイのバックを演ったら、なんて感じでも聴けて。オーケストレイションが入った曲には70年代英国ソフトロックなテイストも。”Loving Touch”のアウトロには”Pretty Woman”のお約束”Grrr”も入っている。

2016-09-10 熊本のレコード屋

markrock2016-09-10

[] 熊本レコード08:53


最近おやぢバンドに加入して歌ったりしている。これが何とも面白い。自分一人では絶対に演らないだろうヴァン・ヘイレンとかも演ってみたり。先日お会いした、とあるプロのドラマーの方(テレサ・テンのバックバンドを長くやられていたという)も「音楽はアマチュアに限るよ〜」と仰っていたけれど、コレも一つの真理かもしれない。しかし、昔取った何とやらではないけれど、おやぢバンド、50代のロック少年の演奏の上手いこと上手いこと…学生時代はレコード聴き聴き、耳で憶えてコピーしていた、なんていう感じみたいだから、フレーズが体に染みついているのかな。最近の10代バンドのステージとか見ると、複雑なギターソロを弾けるギタリストが少なくなってきたようにも思える(というか、ジャズから発展したロックには、ある程度即興で演じられる「ソロ回し」という文化があったけれど、それも徐々に消え失せているということなのだろう)けれど、往年のロック・ミュージシャンはソロでギンギン弾きまくるんですよね〜



で、時折スタジオ入ったりもするんですが、昔に比べて予約が取りやすい。バンドが減ってるんでしょうか。そして、アコギのピックは廃番になったヤマハのデッドストックを一生分(笑)買ってあるからいいとして、エレキのピックを買いだめしようと某楽器屋へ。10年前によく通っていたその店にはオリジナル・ピックがあって、激安50円だけど磨り減りにくく、重宝していたことを思い出したから。で、店員さんに聞いてみてビックリですよ。「もう作ってないんです…今楽器屋は不況で、オリジナル・ピックも自前で作れなくなっちゃったんです…在庫抱えるとタイヘンだし…」なーんて。時代は変わる。確かにイマドキの中高生はバンドよりダンス、みたいな身体感覚の変容もあるしね…ちょっと寂しいけれど。

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さて、そんなおやぢバンドのメンバーの方に昔のレコードあげるよ〜なんて私が好きそうな奴を選んでいただいて、どっさり頂戴してしまった。その方は熊本出身の方で、かつて英語関係の仕事でクリエイションの竹田和夫さんと同じ職場だったこともあるんだとか。クラプトンが乗り移ったようなギターを弾く。で、レコードはキッス、ディープ・パープルジョー・コッカー、デイヴ・メイスン、バークレイジェイムス・ハーヴェスト、マホガニー・ラッシュ、エンジェル、T.レックスなどなど…もうロック黄金時代ってな感じで最高ですよね。1977年レコードにハズレはない!なんて話もしていて。私みたいなアメリカン・ロックやSSW好きに取ってみると、1977年キーボード主体の音楽が出てくる過渡期で駄作が多い印象があるんだけれど、全く違う価値観もあるんだなぁと。



レコード外袋には「マツモトレコード」「WOODSTOCK」とあって。聞いてみると、熊本で一番オールジャンルで在庫が多かったのは「マツモトレコード」で、マニアックなロックのLPは「WOODSTOCK」で買ったとのこと。頂いたマイク&サリー・オールドフィールドとかは「WOODSTOCK」で予約して買ったんだとか。

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気になって調べてみると、両方ともスゴイ店だったみたい。でも「九州一の豊富な在庫」を謳っていた「マツモトレコード」は残念ながら2006年に閉店していた。往時は年間60〜70のアーティストがインストア・ライブ&手売りをやり(「ユーミンサザン矢沢永吉以外はほとんど来た」とのこと)、閉店時の2代目店長は「日本一CDを売った」と豪語してもいた。まさにこれも時代だなあ、と。1977年創業の「WOODSTOCK」の方は移転して今もあるとのこと。地震の被害もまだ残る熊本だけれど、一度行ってみたいと思う。それにしても九州の音楽シーンというとめんたいロックや照和福岡、そして鹿児島に注目が集まるけれど、熊本にもこうして文化を作りあげた店や人があった。阿蘇のカントリー・ゴールドっていうチャーリー永谷さんが続けているカントリーの祭典もある(毎年アメリカン・カントリーの一流どころが出ている)。そう言えば、とライターの松永良平さん(熊本のご出身)のインタビュー集『20世紀グレーテスト・ヒッツ』熊本のDJかなぶんやさんのインタビューがあったのを思い出し、読み返してみた。そう、おやぢバンドの方も言っていました、「熊本にはベストヒットUSAみたいな番組があったよ〜」って。何しろかなぶんやさんの洋楽ビデオ番組「サタデー・ミュージック・スペシャル」の放映はベストヒットUSAよりも先んじていたのだった。こういった番組に支えられて、数多の洋楽ファン音楽評論家、ギター小僧にバンドマンが育っていった、という事実にじーんと胸が熱くなった。

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2016-09-08 Man / Same (Columbia CS9803 / 1970 )

markrock2016-09-08

[] Man / Same (Columbia CS9803 / 1970 ) 10:27



エアロスミスやリッチー・サンボラ、ピンク、そしてミーカ(MIKA)のファースト・アルバムなどのライターとして知られているリチャード(リッチー)・スパのソロ作がCD化されているのを見て、オッ!と思った。最近は本当に重箱の隅のようにCD化が進んで、とてもじゃないけれど追いかけきれなくなったし、有り難みが半減している感じもする。BIG PINKとか、著作権切れものの再発とか。あくまで個人的には、残りの自分の人生を考えると、CDに買い換える必要もないような。アメリカン・ロック、SSW、スワンプ…のその類のレコードの多くを、かつて熱心に集めていたけれど、それらも次々にCDになっていくのだろう。しかしとんでもないレア盤を除けば、レコードにさほど値動きはないような。そっちはそっちで欲しい人がいるのかな。それにしてもそうしたマニアックな再発盤、大体300枚ぐらいの作りきりのプレスのはず。その300枚がマニアの間で買われたり、中古でやりとりされたり。ちなみに卑近な例だけれど、自分が自主レーベルで作ったアルバムも300枚のプレス。実は500枚、1000枚とプレスしてもプレス代自体はほぼ一緒なのだけれど、売れ残り在庫は生活空間を奪うので(笑)。300売るってのは、今の時代、結構タイヘンなことなのだ。新人のメジャー・リリースでも初回プレス300でその殆どがプロモーション用や全国のツタヤに…とかあるみたいですし。CDが売れない時代。リチャード・スパの今年の最新作『Enemy』ダウンロードでリリースされている。

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さて、そんなリチャード・スパのソロ以前のバンド、マンの唯一盤MANを取り出してきた。「人類」みたいなバンド名。そう言えば河島英五のバンドが「ホモ・サピエンス」で『人類』っていうアルバムがあったな。

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このマンをはじめ、60年代後半から70年代初頭にかけて、コロンビアやエピックの売れなかった単発バンドって、テックスメックス系を含めて結構あった気がするけれど、プロダクションがしっかりしているから、今聴いても悪くないものが多い。プロデュースは泣く子も黙るボブ・ジョンストン。

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ちなみにマンの前身バンドはペリー・コモの甥デニー・ベラインを中心とするDenny Belline and The Rich Kidsで、RCAビクターから1966年にアルバム『Denny Belline and The Rich Kids』をリリースしている。バンド名のRichはメンバーのリッチー・スパと掛けているのかな。ペリー・コモの甥を看板にするのは仕方ないとしても、才能のあった両看板のリッチーの名も刻まないわけにはいかなかったのかも。ロング・アイランド出身、ヤング・ラスカルズフォロワーとして人気があったようで、シングルも幾つかリリースしている。アルバムの方はライブ盤だけれど、若さと勢いが素晴らしい。ウィルソン・ピケット(”Mustang Sally”、”Don’t Fight It”)やビートルズ(”Night Before”、”Rain”)のカバー、バカラックの”Any Day Now”やアラン・トゥーサン”Get Out Of My Life”といった有名曲で構成されており、本家ヤング・ラスカルズが取り上げた”Good Lovin’”も演っている。ブリティッシュ・インベイジョンの波、シックスティーズのある種のバンドブーム(日本で言えばGSのような)が終わり、再デビューと引き替えに名前やサウンドをニュー・ロック・テイストに変えさせられたのがマンというバンドだろう。

https://www.youtube.com/watch?v=N2yeNdWHDXM

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リチャード・スパはリード・ギター、ボーカルなどを務め、デニス(デニー)・ベラインと共にバンドの中心だけれど、単独でソングライティングを手がけているのは8曲中3曲だけ(メンバーとの共作含めると5曲)。スパ曲以外だと、冒頭のギルバート・スレイヴィン、アンソニー・クラシンスキーの共作”Sleepy Eyes And Butterflies”はクラシックとロックを融合させたような異色のプログレッシブ・サウンドで印象的。他にも”Camp Of The Gypsies”だとか。でもリッチーもソングライティングに加わった”Riverhead Jail”ではスライド・ギターのイントロからしてスワンピーなロック・サウンドを聴かせてくれて。ハープシコードのイントロが少しバンドの個性なんだけど、ボーカルはポップなザ・バンドみたいなソウルフルな色で。この辺りがリッチーの本性なのかな。喫茶ロック的風情のスパ作の”Brother John”もある。そう言えば、メンバーのギルバート・スレイヴィンって、スティーヴン・ソールズなんかも参加したダスティ・スプリングフィールド1974年のオクラ入り未発表作『Faithful』2015年に陽の目を見ている)で多くの曲を書いているギルバート・スレイヴィンと同一人物ではないかな。ただし、アルバム中先行シングルカットされたジェフ・バリー、ボビー・ブルーム、アレックス・ハーヴェイの曲が全く売れなくて、アルバム丸ごとオクラ入りしたみたいですから、運が悪いとしかいいようがない。後にソングライターとして成功するリッチーに比べると、大きな魚を獲り逃がしたことになる。

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さて、対するリッチーは1971年に初のソロ『Supa's Jamboree』パラマウントからリリース。同じくパラマウントからリリースされた2枚目の『Homespun』と共にアトランタ・リズム・セクションのバックアップの元(バディ・ビューイのプロデュース)、土臭い、アクスティックなアメリカン・ロック・サウンドを作り上げた。とりわけ『Homespun』は名作中の名作で、アメリカン・ハード・ロックの源流はココにある、と言えるような音。アコギ一本を基調としつつ、ここまで骨太なロック・サウンドを作れる、という良いサンプルではないだろうか。

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その後エピックに移籍し、1976年に『Lifelines』をリリース。これは個人的にはカナダSSWダン・ヒルのレコードと一瞬見間違えてしまうけれど、そうしたピアノ基調のAOR路線で作ったアルバム。歌は当然むちゃくちゃソウルフルなんだけれど。そう言えばダン・ヒルもピアノマンの印象があるけれど、元々アコギ弾きだったから、感傷的なソングライティングの妙は変わらないまでも、イメチェンさせられた人かも。

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そして、ポリドールに移籍。ソングライターとしての名声を獲得した1978年の『Tell Tales』は、エアロスミスが取り上げた”Chip Away The Stone”の自演を含む作品。カントリーAORみたいな風情もまだ残っているけれど。”Chip Away The Stone”はエアロスティーヴン・タイラーが大好きで(いかにも好きそう…)、シングルカットを推したらしいけれど、ハード・ロッキンなエアロファン層はあまり反応せず、大ヒットには至らなかったという。

2016-08-28 Felix Cavaliere’s Rascals

markrock2016-08-28

[] Felix Cavaliere’s Rascals 18:36

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フェリックス・キャバリエールズ・ラスカルズ。7月後半辺りにコットンクラブとか、ブルーノートの公演で来日していた。コンスタントにライブをこなしている現役とは言え、フェリックスも今年で74歳。ヒジョーに迷ったのですが、ついに行けなかった。どんなに好きなアーティストでもタイミング、というかチケット買うときの気分とかってありますよね。それに何だか最近ライブのチャージが高すぎて、気軽に観に行こうかな、という気になれない。以前ほど売れなくなったCDに代わり、チケットとグッズで商売しているのだから仕方ないけれど。最近、著名国内アーティストを総動員してのチケット転売防止運動もありますものね。でも外タレのチケットは流石に暴利と思えるものも。フェリックスもかつて参加していたリンゴ・スターオールスター・バンドは行くことにしたけれども、ね…

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さて、そんな後悔を埋めるようにフェリックス・キャバリエールズ・ラスカルズのライブ盤を。フェリックス自身のプロデュースによる、完全な自主盤で、フェリックスのホームページで購入できる(20ドル)。曲名すら書いておらず、スリーブにCD1枚が投げ込まれている簡素な作り。布陣は今年の来日ツアー・バンドとほぼ同じ。

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ラスカルズの魅力は色々ある。80年代のロッカーに顕著だけれど、フォロワーも沢山いるバンドだし。もちろんブリガッティ兄弟の楽曲やボーカル、それにジーン・コーニッシュやディノ・ダネリのガレージな魅力も捨てがたいんだけれど、フェリックスのイタロ・ブルーアイド・ソウルなボーカルの人懐っこい味わいに負うところも大きい。後期のラスカルズはフェリックスで保っていた感じだし。

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さて、”Lonely Too Long”、“It’s A Beautiful Morning”、”A Girl Like You”、”Groovin”、”People Got To Be Free”…といったラスカルズ名曲の数々を聴いていくと、この明るくポジティブなエネルギーに心が温まると同時に何とも甘酸っぱい気分になってくる。ラスカルズ名曲Ray of hope”と同タイトルのアルバムを作った山下達郎に与えた影響力の大きさは語り尽くされているかもしれないけれど、改めてそれも感じられたような。とは言え”Groovin”が”My Girl”や”Just My Imagination”とメドレーで演奏されるのを聴くと、ラスカルズのメロウ・サイドにおけるさらなるルーツを思い知らされる。一方で、”Mustang Sally”に”I Thank You”が織り込まれたり、スタックス・ソウル・レヴューさながらの雰囲気も。スタックスのトリビュート&深化を企図したような2008年・2010年の、スティーヴ・クロッパーとの共演アルバム2枚も素晴らしい出来だったけれど。そう、この現ラスカルズギタリストの方はというと、相当ハード・ロックな資質を持っていて、この辺がロッキン・ソウルな楽曲の魅力を引き立てている。”Good Lovin’”が”La Bamba”、”Whole Lotta Love”や”Purple Haze”になり、”What’s Goin’ On”になって…とかリズム遊びからスタートしたジャム・セッションみたいな感じのトラックもある。しかしマコトに遊び心満載!観客を楽しませる術を心得ている。しかも唄も演奏もオリジナルの雰囲気を掴んでいてムチャクチャ上手いし。こういうサウンドならお手の物だよ!ってな感じで、フェリックスには60年代精神をひっくるめて継承する自負があるのかもしれない。

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さて、HPでは2014年リリースのクリスマス・アルバム『Christmas Joy』販売されている(20ドル)。こちらはクリスマス・カード風のサイン入り仕様になっている。こちらも演奏陣はライブ盤と変わらない。16ビートの”White Christmas”とか、ソウルフルなアレンジがフェリックスらしい。喉も快調そのもの。しかも、ここでもやはり山下達郎クリスマス・アルバムを思い出してしまったと言う。オー、オエ〜オってソウルフルなこぶしを回すところが、まさにフェリックス節なんだな、と。クレジットの最後にはジャック・ニッチェフィル・スペクターに「インスピレーションを有り難う」なんて書いてあって。もちろんロックンロール世代の感性で作り上げたあの名クリスマス・アルバムのことなわけで、実際ウォール・オブ・サウンド風アレンジもあるけれど、これもまた60年代的精神だなと。


http://www.felixcavalieremusic.com/


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2016-08-14 Larry Weiss / Black & Blue Suite

markrock2016-08-14

[] Larry Weiss / Black & Blue Suite ( 20TH CENTURY / 1974 ) 22:53



グレン・キャンベル最大のヒット曲といえば”By The Time I Get To Phoenix(恋はフェニックス)”…ではなくて”Rhinestone Cowboy(ラインストーン・カウボーイ)”!恋はフェニックスは初めての大きなヒットとは言え最高24位、と曲は抜群に良いのだけれど…チャート・アクション的にはそこまででもない。それに対してラインストーン・カウボーイは1975年に初めての1位、23週ランクインされている。1970年代に入って落ち目だったグレンにとって、起死回生の1曲となった。

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さて、作者はというとニュー・ジャージー出身のSSW、ラリー・ワイス。実はラリーの自演の方が先にシングルを切っていて、1974年のアダルト・コンテンポラリーチャートで24位を記録している。これをグレンが気に入ってレコーディングした、というわけ。グレン版のランバート&ポッターのアレンジはラリー版に倣っている印象だ。



さて、このラリー・ワイスだが実はソングライターとしてはなかなかのキャリアの持ち主。あのバブルガム風味のポップ作品を量産したウェス・ファレルの元でソングライターとしての腕を磨いた。1963年ナット・キング・コールに” Mr. Wishing Well”を書いたのを皮切りにチャック・ジャクソンやシュレルズに曲を書き下ろし、その後も作詞家のスコット・イングリッシュ(後にリチャード・カーとのコンビでバリー・マニロウに"Mandy"を書いている)とのコンビでアメリカン・ブリードやエイメン・コーナーが取り上げた”Bend Me, Shape Me”、ジェフ・ベックの”Hi Ho Silver Lining”などがヒットする。ブリル・ビルディングのライターとしては相当な提供曲数だ(リストは→http://rhinestonecowboy.com/?page_id=6)。スプーキー・トゥースの”Evil Woman”もそうですね。

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その後ロスに移住してリリースした、ソングライターのショウケースの様な『Black & Blue Suite』からは、前述の”Rhinestone Cowboy(ラインストーン・カウボーイ)”や、グレン・キャンベルと共にバリー・マニロウが取り上げた”Lay Me Down(Roll Me Out To Sea)”のようなスタンダードの雰囲気を持つ名曲が生まれている。”Sheldon”なんてのも、全盛期の歌謡曲みたいな音だし。土臭くも都会的な”She’s Everything She Doesn’t Want To Be”は苦み走ったAORみたいな風情で。ブロードウェイやブリル・ビルディングの伝統を感じさせる”Lead Me On”や明らかにレオン・ラッセルの”Song For You”にインスパイアされた”Anytime Babe”もある。それにしてもかなり間口の広いソングライターだと感じられる。ソウルフルな”Evil Woman”の自演も収録。バックはリー・スクラー、リック・マロッタ、ヒュー・マックラケン、ジミー・ハスケルジェイムス・ヘンドリクス、ジム・ケルトナー、ディーン・パークスといった腕利きが参加。冒頭の”Rhinestone Cowboy(ラインストーン・カウボーイ)”の凄まじい完成度を聴くと…当時のギョーカイ人は金の匂いを感じたんだろうな…と想像する。ナッシュビルに遷り、ソングライターとして活動する中で2008年には34年ぶりの2枚目となるオリジナル・アルバム『CUTS & SCRATCHES』をリリース。エリック・バードン&ジ・アニマルズがヒットさせた”Help Me Girl”のセルフカバーを含んでいる。

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http://rhinestonecowboy.com/