いしうらまさゆき の『愛すべき音楽よ』(ブログ〜CD&レコードレビュー)

2018-08-07 スーパーバイザー・ツカモト・バンド / ひび割れた心には君のかんだ

markrock2018-08-07

[] スーパーバイザー・ツカモト・バンド / ひび割れた心には君のかんだチューインガム( HANGER MAN RECORDS H-74099 / 1979 ) 17:45

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ガール・ポップ・シンガー須藤薫1980年CBSソニーからデビューする前に参加していた、シティ・ポップ系の自主盤(としばしば語られる)。全体的にサウンドのレベルが高く、トラックによってはジャケットからは想像できない驚愕の音。11曲中10曲を手がける主人公はつかもとひろあき。30代になった記念に自主制作した1枚であるようだ。1971年録音!という”白いヨット”、1977年録音のタイトル曲” ひび割れた心には君のかんだチューインガム”、そして”おじいちゃんの麦わら帽子”を除き、録音は1979年。フォーク風味のタイトルが共存しているのは、古い楽曲を含んでいるからか。GS風の”みどり色のマリー”なんてのも混じっていたり。

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そしてクレジットを見てその演奏の完成度に納得。スペクトラムに加入する奥慶一がキーボードを、「谷口雅洋」名義でCBSソニーからデビューする谷口守がベースを。

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そしてギターには小林泉美 & Flying Mimi Band、笹路正徳らとのマライアでも活躍した土方隆行が参加!笹路正徳といえばスピッツをブレイクさせたプロデューサーとしても有名だけれど、土方の方もその繋がりもあってかスピッツ空も飛べるはず」のプロデュースをやっていた。あとは大所帯バンドはにわオールスターズで知られる仙波清彦の名も。やっぱり注目してしまうのは須藤薫がメインボーカルを務める”レイニーデイ ブルース”と、”そっと、海へ”(井上昇の曲)。鈴のようなエヴァーグリーンな歌声。この歌声がもう生では聴けないと思うと…。ボッサ歌謡テイストの”そっと、海へ”が秀逸。

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つかもとひろあきは作詞家として、CBSソニーから1984年にデビューした爆風スランプに”東京アンギラス”、”うわさに、なりたい”を提供。確かめてみると、爆風スランプのアルバム『よい』にもクレジットされていた。あ、手元にある『よい』、落書きのようなサンプラザ中野くんのサインも入っていた。

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その後のつかもとはNHKみんなのうた」の童謡やCMソングを手がけることになる。

2018-08-04 Graham Nash / Over The Years…

markrock2018-08-04

[] Graham Nash / Over The Years… ( Atlantic/Rhino / 2018 ) 10:44

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なぜこのタイミングになったのか、と思ったけれど、グレアム・ナッシュホリーズを脱退した1968年から今年で50年だった!まさに長きに亘る”Over The Years”なキャリアを総括した2枚組ベスト盤。しかし既に2009年、Atlantic/Rhinoから未発表テイク・ミックス・曲を含む3枚組の決定的アンソロジーホリーズ時代含む)が出ていた(『Reflections』)。

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今回の2枚組は、そのアンソロジーからは除かれていた(別で出すつもりだったのだろう)CSN・ソロ初期・クロスビー&ナッシュ時代(1968〜80年)のデモを収めたDisc Two「THE DEMOS」(3曲除く12曲が初出)が目玉になっている。とはいえ、基本的にはホリーズ以降のキャリアを総括するナッシュ曲のベストDisc One「The Songs」を楽しみたい。何といっても曲がキャッチーで良い。CSNで一番初めに好きになったのはナッシュだったりする(そこからスティルスに行き、最後はクロスビーに行った)。ジェリー・ガルシアのペダルスティールが印象的な”I Used To Be A King ”は、オリジナルのグリン・ジョンズ・ミックスでも、『Reflections』収録のナサニエル・カンケルの2002年ミックスでもない、1971年ナッシュとラリー・コックスによる生のままのミックスを採用するという微妙なこだわりも(もう1曲"Better Days"が未発表ミックス)。リタ・クーリッジらのソウルフルなコーラス隊を強調させるミックスのテイクもあって、なにやら今っぽい。音の粒を揃えていて、ラスト2016年(録音は2014年)の”Myself At last”まで通して聴いて全く違和感がない。80年代のシンセ多用のトラックを意識的に取り除いているからかも(本人も余り気に入っていない??)。

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そしてDisc Two「THE DEMOS」はホリーズで拒否された”Marrakesh Express”のロンドンアパートメントでのラフなデモからスタート。このデモの出来にガッカリしている人もいるようだけれど、そもそも一般的にデモには色んな種類がある。自宅のテレコで録ったようなラフな弾き語り(詩も出来ていないような)に始まり、スタジオで録音前に仕上がりを確かめる(あるいは参加ミュージシャンを吟味する)、それなりにカチっとしたデモもある。これは前者。ワタシはむしろこういうのが聴きたかった。かつて聴きまくったCSNの4枚組ボックスが初出の未発表曲”Horses Through A Rainstorm”(テリー・リードとの共作)もロンドンでの弾き語りヴァージョンで。”Teach Your Children”やOur House”もあるけれど、ビートルズアンソロジーというよりはジョン・レノンアンソロジーような仕上がりかと。”Pre-Road Downs”は結構いい(よーく聴くとクリック音が聴こえる)。”個人的に嬉しかったのは、ドラッグでデヴィッド・クロスビーが機能しなかった時代の”Wasted On The Way”のギター弾き語りデモ。ここでは、CSNのオリジナルにも参加しているポコ〜イーグルスティモシー・B・シュミットが参加した、ティモシー、スティルスナッシュの3声ハモが楽しめる。最高!

2018-08-03 Vol.7 Luna MG-60

markrock2018-08-03

[楽器道] Vol.7 Luna MG-60 10:52


8年ほど前に「楽器道」というタイトルで、拙ブログで楽器について語っていたのを思い出した。当時は通りすがりの方からのコメントや質問があったり、ギター好きの人からの反響が大きかったことを思い出す。それも今は昔。楽器屋が潰れたり(わが町三鷹にあった三鷹楽器――往時は吉祥寺パルコにも出店していた――もとうの昔に倒産…)、そしてまさかのギブソンが経営破綻しちゃったりするという異常事態!そもそもギターソロなんか弾かない音楽表現になってきているし(そもそも現実生活ブルーズがないから、感情が平板になってきているのか?)、ギターをメインに据えたロック・ミュージックじたいが団塊世代と共にフェイドアウトしかけている。だとしても、ギターや楽器は、いつまでも人間と共にあり、フェイドアウトしようがないと思っている。実売店舗は確かに虫の息になっているのかもしれないけれど、かつての自分と同じように、ギターを背負った10代20代が街には溢れている。

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さて久々の今回は、一目惚れ状態で最近手に入れた古いミニ・ガット・ギター、Luna MG-60。MGはミニガットの略、60はおそらく当時の定価6000円ということだと思う。細身でマーティンの4分の3サイズのパーラー「5」みたいな雰囲気。ヤマハのギタレレよりはちょっと大きいという、絶妙に求めていたサイズだった。そして何より見た目。レキント・ギターのような白のピックガードが後付けにしては雰囲気が良い。鶴岡雅義的なムード歌謡を弾きたくなる感じ。ただ、チューニングはギタレレなどと違い、レギュラー。性能のいいミニ・ギターが溢れている今日この頃だけれど、30秒で即決。半ばジャンク品で1万円也。元の持ち主が入れ替えたのか、なぜかコルドバ・ミニのソフトケースが付いていた。

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Luna1950年代ハワイアン・ブームの際にウクレレで一世を風靡したメーカー。鎌野楽器が岡山県のルナ楽器に製造させていたものらしい。現在はFamousブランドで有名なキワヤ商会がLunaというブランド名を一応残している。ウクレレのブランドが復活したとき、デザインが最高で欲しかったけれど、それは買えずじまいだった。

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で、これはLunaながらギターだから、ハワイアンブームが終わった後、ギターを作ったものではないだろうか。MFという型番のミニ・フォーク・ギターも存在する模様。今手元にあるのはガット。MG-80というひとつ上位のミニ・ガットモデルは割と出回っていて、サウンドホールの装飾が少しだけ豪華な感じ。ボディ内に貼られたメーカーのラベルの色褪せから判断すると、1960年代のものではないかと思うけれど、どうだろう。ご存知の方がおられましたら、情報求ム。今でこそミニ・ギター花盛りだけれど、当時は結構珍しかったはず。


トップはスプルース、サイド・バックはマホガニー、いずれも合板。元の持ち主が相当磨いたと思われるけれど、指板とフレットはピカピカ。楽器愛ですね。何といっても飴色のスプルースは合板ながらオールドの味わい。古い国産アコギ特有の色合いだと思う。ただ当時の安価なギターの宿命か、ネックは少々順ゾリ、ブリッジには再接着跡があり、1箇所2mmほどの微妙なスキマのようなものが見えなくもない。まあそれは50年以上前のギターだから仕方ないとして、チューニングが狂いやすいのが致命的だった。たぶん元の持ち主もそれが理由で売ったんじゃないかな。さすがに閉口、万事休す。部屋のオブジェ決定か…とあきらめかけたのだけれど、ペグが原因だと気付く。

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そこでアリアの1000円くらいのペグAT-95Cを購入し(ミニ・ガットのサイズ的にこれしか嵌らなかった)、ドリルでグリグリ付け替えてみると、やっと狂わなくなった。しかも毎日弾いているうちにネックのソリのコンディションも良くなってきたのが不思議だ。しばらく弾かないとギターがスネるとよく言うが、それは嘘ではない。コンサート・ウクレレ感覚で凄まじく軽いのがいい。音の方はさすがに弾き込まれていて、合板ながら鳴る。8〜10フレットはハイポジションのCコードを弾き過ぎたのか、指板がえぐれている。これもまた50年の時を感じさせる。

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2018-08-01 Chibo & The Bayside Street Band / Bayside Street

markrock2018-08-01

[] Chibo & The Bayside Street Band / Bayside Street (Polydor /1982) 00:38


2016年から書き続けていた哲学の本。全部で70章、約400ページ×3冊分の分量になってしまったのだけれど、やっと1冊分が校了。ネットでラジオ番組(極北ラジオ石浦昌之の「哲学するタネ」)をやらせてもらっている明月堂書店から9月上旬に発売予定となっている。詳細はまたお知らせしたい。


そんなこんなで、古今東西哲学書をレコードを集めるように集め、読み続ける日々が(いったんは)終わる。資料として集めた本の一部を段ボール2箱分ほど古本屋に売ると思いのほかスペースが空いたので、またレコード屋に向かう。

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7月末のセールが終わり、宴の後のようになった店内に、同じ人が売ったと思しき日本のニュー・ロック関係のレコが多数。まず驚愕したのがFlower Travellin’ Band『Satori』のオリジナルがCD以下の価格で投げ売りされていたこと。天割れ、盤やジャケもBマイナスレベルでコンディションはかなり悪かったけれど、掠め取るように買ってしまいました。長年憧れの盤だった。音は最高!

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そしてこれも心の中で「おーーー!」となってしまったのが、Chibo & The Bayside Street Bandの『Bayside Street』柳ジョージ(譲治)、陳信輝が在籍した本牧ブルーズ・バンド、パワーハウスのボーカリストだったChibo(Chibow)こと竹村栄司のバンドが1981年にリリースした、ロックン・ソウルな大名作。発見した瞬間から宝物に出会えたような気分。クレイジー・ケンこと横山剣さんも激レスペクトするChiboさんのソウルフルな喉とゴキゲンなロックンロールR&Bサウンドはどこを切り取っても好きな音だった。元々映画館でゴールデン・カップス・ワン・モア・タイム』ってやつを観まして(2004年かな)、そこでカップスについてコメントしていたのが、Chiboさんの初見。コワそうな人だな、という印象は今も変わらない。ワタシなんぞは一生かかっても及びもつかない、完璧な不良の音楽ですよ。カップスの映画のタイトルになった”One More Time”(ゼム時代のヴァン・モリソンの曲)も『Bayside Street』では演っている。”I’m Wishing For Tomorrow 〜明日になれば〜”っていう曲が良すぎて、先ほどから10回くらいリピート中。プロモーション資料も封入されていた。

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2018-07-23 Patrick Sky / A Harvest Of Gentle Clang

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[] Patrick Sky / A Harvest Of Gentle Clang ( Vanguard / 1966 ) 01:38

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グリニッジ・ビレッジのフォーク・シーンから飛び出してきたフォーク・シンガー、パトリック・スカイ。「Sky」は芸名。名門Vanguardから1965年『Patrick Sky』でデビューしている。

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その巧みなフィンガー・ピッキングと語り口は、ジョン・セバスチャンから高田渡までを虜にしたミシシッピジョン・ハートに音楽性の多くを負っている。アイリッシュネイティブ・アメリカンのルーツをもっている、というのもフォーク・シンガーらしい。彼とブルースマードックジョーン・バエズの妹ミミとデュオを組んでいたディック・ファリーニャ、そしてデヴィッド・コーエン(後のデヴィッド・ブルー)を売り出すために1965年エレクトラが編んだコンピレーションのタイトルが『Singer Songwriter Project』。フォークの様式を借りながら、自分の言葉を載せたところから「シンガー・ソングライター」という言葉やスタイルが生まれたんだった。

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『A Harvest Of Gentle Clang』は勢いに乗るパットの2枚目。ファーストと同じフォト・セッションで撮った写真をジャケットに使い回していることがわかる。A面ラストの”Keep On Walking”はバリー・コーンフィルドやボブ・イエリンなどを交えたジャグ・バンド風のライブ録音で、メロディは高田渡の”自転車に乗って”の原曲と思われる。

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Vanguardでの2枚に続き、Verve Forecastから2枚をリリース。1973年のAdelphiの『Songs That Made America Famous』まで、正統派フォーク・シンガーの良作を個人的にはよく聴いていた。

2018-07-21 Rod McKuen / McKuen Country

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[] Rod McKuen / McKuen Country ( Warner / 1976 ) 08:20


暑いですね。毎日汗、汗、汗が全くもってひどい。温暖化も一つ上の局面にきた感じ。被災地の方々にとっても辛い夏だと思う。普段通りの生活に一早く戻れることを願う。

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引越しで300枚くらいレコードを売ったのだけれど、売った分かそれ以上がここ2ヶ月でまた戻ってきてしまった。我ながらキリがない。先日は本当に久しぶりに下北フラッシュ・ディスク・ランチを訪問。そう、下北沢再開発の工事が進んでいてビックリした。色々買ったけれど、フラッシュらしいと思ったのがロッド・マッケンの『McKuen Country』。歳をとったらロッド・マッケンが分かる大人になりたい、と思ったものだった。詩人であり、俳優であり、ソングライター、歌手でもあるロッド。ジャック・ブレルのシャンソンを英語詩にした”If You Go Away”が特大ヒットし、スタンダードとなった。ロッドの曲はフランク・シナトラバーブラ・ストライザンド、グレン・ヤーブロー、アンディ・ウィリアムスなど色んなシンガーに取り上げられている。1969年オリヴァーが歌った”Jean”(ボブ・クルーのプロデュース)も印象深い。で、この『McKuen Country』はその名の通り、ロッド・マッケンがカントリーに挑んだという異色作。ただ、よく考えると並み居るカントリー・シンガーが既にロッドの楽曲を取り上げていた。中身はナッシュビル録音とカリフォルニア録音が混在。結構良かったのは”Silver Threads And Golden Needles”。ギター・ソロがベンチャーズか?と思ってしまったけれど、おそらくビリー・ストレンジ。他にもグレン・キャンベル、スニーキー・ピート、そして元々ギタリストだったドン・コスタがギターで参加。ピアノではピート・ジョリー、珍しいところではピート・シーガーやバリー・マクガイアが参加。そうそう、ジョン・デンバーが歌ったビル&タフィの”Guess I’d Rather Be In Colorado”やクリス・クリストファソンの”Help Me Make It Through The Night”も独自の美学で訥々と歌っていて◎。

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あと、最近手に入れたロッド・マッケンものは1972年にスタニヤンから出た『The Amsterdam Concert』プレゼンテーション・コピー。ロッド自身のハンド・ナンバリングとサインが左下に入っている。吉祥寺のレコ屋の500円箱で発見した。

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2018-07-06 Penny Marshall / Cindy Williams / Laverne & Shirley Sing

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[] Penny Marshall / Cindy Williams / Laverne & Shirley Sing ( Atlantic / 1976 ) 12:02

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1976〜83年に放映されたアメリカの人気コメディ・シリーズ「ラバーン&シャーリー」の主人公がリリースした盤。女優のペニー・マーシャル、シンディ・ウィリアムスがガールズ・デュオになり切って、アメリカでいう所の青春の60年代ポップスを歌っている。取り上げているのは”Da Do Ron Ron”、”All I Have To Do Is Love”、”Chapel Of Love”、”Sixteen Reasons”、”Graduation Day”、”I’m Walkin’”といった定番ばかり。結構パンチのある見事な歌唱で惚れ惚れしてしまう。何より重要なのは全編でドラムスを叩くハル・ブレイン!殆ど完コピのような往年のサウンドなのだけれど、このつんのめるドラムスがないと、やっぱりダメです。


オリジナルでは「ラバーン&シャーリー」にも出演していたコメディアンでミュージシャンでもあるマイケル・マッキン(レフト・バンクのメンバーだったこともある)作の”Five Years On”が最高。ニューヨーク・ポップスの色香を感じる名曲だと思う。



プロデュースはシドニーシャープとジミー・ハスケル。ちなみにシンディ・ウィリアムスはハドソン・ブラザーズのビル・ハドソンと結婚した。で、ペニー・マーシャルの方は、恋人ローリー・バードを失ったアート・ガーファンクルを80年代に献身的に支えた。結婚するには至らなかったのだけれど。


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2018-07-03 Art Garfunkel / Garfunkel

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[] Art Garfunkel / Garfunkel ( CBS / 1988 ) 16:53

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一番好きな声、と言われたら「アート・ガーファンクル」と答える。これは何十年たっても揺らがない。だから、病気で一時期声を失ったものの、少しずつ復調して、昨年も来日してくれたことを嬉しく思う。思えばアーティがきっかけで出会ったアーティストにジミー・ウェッブ、スティーヴン・ビショップ、ティム・ムーア、ギャラガー&ライル、マイク・バットらがいた。あるいはアーティのアルバムに携わったプレイヤーが参加した作品なら、内容に間違いはない…といった風にレコードを買ってきた。アーティはそれぐらいの目利きだと思う。だって、アメリカで一番のソングライターだと言っても過言ではないポール・サイモンを相棒にしていたくらいなのだから…。


そんなアーティの音源は聴きつくしてきたけれど、最近はカセットやらLPやらで聴き比べに興じている。例えば『Garfunkel』LP。今なら2012年の2枚組自選ベスト『The Singer』に止めを刺すにしても、それまでは日本でもCDで長らく定番だったアーティのベスト盤だ。シングル盤のみのリリースだったティム・ムーア(ダリル・ホールがいたガリヴァーのメンバー)作の”Second Avenue”はここでしか聴けなかった。ちなみにアートのシングル盤にはアルバム未収録(”Is this love?”とか)やヴァージョン違いがあって、CD化はおろか、まとまった形でいまだリリースされていない。”Is this love?”はローリー・バードという伴侶の死から立ち直る辛い時期のリリースだから、思い出したくないのかもしれないけれど。



脱線したけれどこの『Garfunkel』、1988年リリースでLPが少なくなっている時期。一般的にCD全盛の1990年から1993年前後くらいのアナログはリリース数が少ないため、希少化している。だからか、あまり日本の中古屋でも見かけない。そんなわけで、デンマークのレコ屋から取り寄せた。アメリカは送料が高騰していて、レコ1枚で買うと痛い目を見る。Lefty(これは日本でもアナログが出回った)収録の”When A Man Loves A Woman”からスタート。尺八のソロというのが日本では特に賛否両論だったみたいだけれど、60年代文化の残滓ニューエイジ文脈だと尺八はよく使われていたから、違和感は無い。抑制された品のいいサウンドとボーカル。70年代前半から80年代後半までの代表曲の数々は、時代の変化に耐えうるもので、並べても統一感がある。作品は一つの美学の上につくられていたことがよくわかる。これからも一番好きな声、と言われたら「アート・ガーファンクル」と答えるだろう。

2018-07-02 John David Souther / Same

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[] John David Souther / Same ( Elektra / 1972 ) 23:42

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グレン・フライ(ex.イーグルス)追悼、というタイミングでリリースされた3枚組(+DVD)ボックスセット『Above the Clouds』にロングブランチ・ペニーホイッスルグレン・フライJ.D.サウザー)のAmosからの唯一作が丸々収録されていた。

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国内初CD化、と謳っているけれど、韓国ビッグピンクの再発国内盤は出ていたような。内容の方だけれど、”The Heat is on”と”Desperado”が好きです、みたいなベストヒットUSA的なファンの人からすると、ロングブランチの仕上がりは不満みたい。byアマゾン・レビューですが(笑)。ただ、1曲目の印象が悪いだけで、2曲目以降はカントリー・ロックのプロトタイプを含む、重要な楽曲が含まれている。で、言いたかったのは、このリマスタリングの音が良かったということ。アナログを持っている人も聴き比べる価値はあるのかな、と思った。かつてVHSで出ていた1992年のライブ『Strange Weather/Live in Dublin』DVDになって収録されている。

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そんな気分でいたら、J.D.サウザーのファーストのアサイラムレーベル米盤オリジをレコ屋で800円にて発見。上がりますね〜。今まで持っていたオリジはコーティングジャケの英盤。

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こちらですが、写真では区別が付きませんね(笑)。ただJDを英盤で聴く旨みはあまりなかったわけで、とうとうご本尊を、という。で、分厚い音に圧倒される。聴き比べると英盤より音圧は上。グレン・フライとのデュオの延長線上にある本盤、レーベルメイトのネッド・ドヒニーアコギも加わる一方で、米盤だとグレンのデトロイト産のブルージーなエレキが特に強調されているように感じられる。そしてアサイラム創成期、ディレクションがしっかりしているから、仕上がりに普遍性がある。思えば大昔、中学生の頃ですか。所沢レコード屋でこのファーストのコロンビア輸入盤CDがナイス・プライス600円で落ちてまして。『Black Rose』『You’re Only Lonely』と共にかっさらうようにして買った思い出が。当時の自分が気に入った順番はリリース通り『John David Souther』『Black Rose』『You’re Only Lonely』の順だった。それも後々『Home By Dawn』(はじめはジャケットがないCDだけの!、しかもキズ盤をレコファンで買ったような…)を聴いた瞬間、全述の3枚は自己ランク2位以下に転落したという(笑)。その頃にはAORをよく聴くようになっていたんだった。

2018-07-01 Peter Asher & Albert Lee / Live

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[] Peter Asher & Albert Lee / Live ( 2018 ) 15:52

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先日の金曜日、ピーター・アッシャーアルバート・リーの東京コットンクラブ公演、行って参りました。ピーター&ゴードン時代は妹のジェーン・アッシャーポール・マッカートニーと付き合っていた縁でレノンマッカートニーの楽曲提供を受け、”A World Without Love(愛なき世界)”が全米No.1に。後にプロデューサーに転身し、ジェイムス・テイラーリンダ・ロンシュタットを手がけたピーター・アッシャーソニー・ミュージックの副社長までやっていたというだけあって、カリフォルニアの業界人そのものなチェックのド派手なスーツのいでたちで。ポール・ウィリアムスみたいな。一方のアルバート・リーは、ヘッズ、ハンド&フィート時代からの驚異のギター・テクニックを誇り、エリック・クラプトン・バンドでも活躍。エルヴィスはじめロックンロール経由(つまりジェイムス・バートン)でアメリカカントリー・ミュージックインスパイアされ、エミルー・ハリスのバンドをはじめ、本場アメリカに根付いた活動を行っていた。そういう意味でアメリカの音楽界に根を張ったピーターとも接点があったわけだ。


ピーターの相棒ゴードン・ウォーラーは亡くなっていて、チャド&ジェレミーチャドスチュワートと演ったりもしているみたいだけど、なぜあえてアルバートなのかと疑問に思っていた。でも、エヴァリー・ブラザーズから始まったステージやMC(ピーターは話し始めるとエピソードが止まらない!)を聴いていて氷解。アルバートは当然エヴァリーズに産湯を浸かり、ドン・エヴァリーのバンドにも加わり、1983年のエヴァリーズ再編バンドのギタリストにも抜擢された人。そしてピーター&ゴードンはサイモン&ガーファンクル同様、エヴァリーズのハーモニーに影響されてキャリアをスタートさせている。しかも今回のライブで冒頭”Crying In The Rain”を演っていたのがグッと来た。私にとってはアート・ガーファンクル1993年のアルバムでジェイムス・テイラーとデュエットしているヴァージョンを聴いたのが初”Crying In The Rain”。そのジェイムスと、”Crying In The Rain”を作曲したキャロル・キングを引き合わせ、キャロルに”You’ve Got A Friend”のジェイムスキャロル競作の承諾をもらったのもピーターだった…ということで全てが繋がった感じ。



二人とも70を超えていて、声が出ていたとは言い難いけれど、リラックスしたアコギ弾き語りは素晴らしかった。しかもファースト・ステージだったからか、自由席だけど2列目。リビングルームでくつろぎながら弾き語りを聴いているような。しかもアルバートはかなり控えめで、ギターを弾きまくらない。もっと弾いて欲しかったけれど(笑)。二人ともジミー・ウェッブをレスペクトしていて、アルバートは近作で演っている”Highwayman”をピアノ弾き語り披露。ジミー魂が乗り移ったような素晴らしいヴァージョンだった。”Lady Godiva”や”I Go to Pieces” を聴くとやはりホンモノだな、と。エドサリヴァン・ショーの映像で観て以来一番好きな”I Don't Want To See You Again”は予想通り演らなかった。

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会場でピーターが自主盤の販売をしていて驚いた。市場には出ていないかも、と思って買ったけれど、2016年の二人のライブ音源『Peter Asher & Albert Lee / Live』アルバートフェイスブックから購入可能であるようだ。あとピーター&ゴードンのベストと『Produced by Peter Asher』というそれぞれ2枚組があって、後者を入手。後者はこんなの販売して権利的に大丈夫なのか?と思ってしまったけれど、peterashermusic.comが編集した2枚組44曲・2500円。1968年のポール・ジョーンズに始まり、ジェイムス・テイラーリンダ・ロンシュタットアンドリュー・ゴールドシェールJ.D.サウザーリンゴ・スタービリー・ジョエルジュリア・フォーダムモリッシー、ディキシー・チックス、近年ではスティーヴ・マーティン&エディ・ブリケル、エド・シーラン、フォール・アウト・ボーイまでを収録。プロデューサーとしてのキャリアを一望できるプロモ盤といった趣だった。

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終わった後は思い入れのあるレコードにサインをもらう。アルバートは「えらい保存状態がいいね〜」なーんて。

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2018-06-21 神崎みゆき / ファースト・アルバム

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[] 神崎みゆき / ファースト・アルバム(KING / 1973) 22:04

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ちょっと中性的なお名前ですが、70年代前半に2枚のアルバムを残している男性シンガー・ソングライター。特にこのファーストは、「加藤ヒロシとそのグループ」がバッキングを務めたニュー・ロック隠れ名盤。牧歌的なフォーキーも、バッキング如何によってはここまでロックできる、という好サンプル。加藤ヒロシといえば加賀テツヤがボーカルを務めたGSザ・リンド&リンダースギタリスト。個人的にはザ・フォーク・クルセダーズの「戦争は知らない」(寺山修司作詞)の作曲者として印象深い(坂本スミ子が初演だったと思いますが)。で、「加藤ヒロシとそのグループ」に参加しているのが近田春夫その人。ハルヲフォンを率いる俊英が縦横無尽でバンドを盛り上げている。そして加藤ヒロシのエレキの音が何ともエグい。冒頭の「ゆう子のグライダー」からゴキゲン過ぎる演奏。神崎みゆきの歌声は忌野清志郎とケメを足して2で割ったようで。「放課後」とか「花束をもって歩こう」なんてカッコよすぎるだろ、とツッコミたくなる。岡田冨美子が作詞し、加藤ヒロシが曲を書いた「おばあちゃんお元気ですか」も収録。こちらは人懐っこいメロディが最高!

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2018-06-18 国吉良一 / 風の通り道

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[] 国吉良一 / 風の通り道(CBSソニー / 1976) 23:25

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国吉良一といえば日本の名セッション・キーボーディスト。長谷川きよしのバックからキャリアをスタートさせ、坂本龍一伊藤銀次土屋昌巳(EX.一風堂)、吉田建、上原“ユカリ”裕、斉藤ノブなどこれまた名ミュージシャンを輩出した りりィ のバイバイセッションバンドに参加。個人的には長渕剛中島みゆきのアルバムでのプレイが印象深い。そんな彼が70年代半ばにCBSソニーからシンガー・ソングライターとして2枚アルバムをリリースしていることはあまり知られていない。今手元にある2枚はどちらも白プロモ盤。そこから推測するに、あまり売れなかったのでは。しかしこの2枚目は『風の通り道』はなかなかよい。吉田建、上原“ユカリ”裕、斉藤ノブというバイバイセッションバンドの面子に加え、洪栄龍(EX.乱魔堂)がギターで参加。後にバックスバニーCBSにやってくる金子マリや亀淵ユカ(EX.リッキー&960ポンド)というソウルフルなコーラス陣も加わる。”神田川”の喜多条忠谷村新司の歌詞提供があるあたりフォーキーな展開を予想するが、喜多条作詩の”真珠いろの月”は南佳孝の”スローなブギにしてくれ”や大滝詠一の70年代諸作を思わせるオールディーズな3連バラードで。”海の見える喫茶店”はボッサ、”地図を広げて”はサンバ風ファンキー・ロック。R&Bマナーのタイトル曲もゴキゲン。楽曲や歌声よりもスリリングな演奏に図抜けた印象が残ってしまうのは、やはりプレイヤーのソロというべきか。

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ちなみに前年1975年リリースファースト国吉良一はドラムス原田裕臣吉田建土屋昌巳斉藤ノブ、村岡建という布陣に元・六文銭ギタリスト原茂が加わり、同じく元・六文銭の及川恒平が詩を提供。よりフォーク寄りのサウンドながら、堅実な演奏が耳に残る。よしだたくろう岡林信康五輪真弓、猫、ウィークエンド、ふきのとう友部正人がいた時代のCBSソニー、期待の新人だった。

2018-06-17 Tennessee Ernie Ford / Ol’ Rockin’ Ern

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[] Tennessee Ernie Ford / Ol' Rockin' Ern (Capitol / 1957) 23:32

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あまり明るい気分にもなれない昨今。ディストピアみたいな社会の雰囲気が何だかよくないから。とはいえ雰囲気が良かったことなんて以前にあったかな、と考えてみると特段思いつかない。レコードを聴いている瞬間は少なくとも幸せだけど。

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そう、今日はダニー・コーチマーの新作CDを買ったときに封入されていたイベントの参加券があったので、少しの間を縫って駆けつけた。ダニー・クーチ、リー・スクラー、ラス・カンケル、スティーブ・ポステル、ワディ・ワクテルという神レベルの伝説のミュージシャンが車から降りて勢揃い。いやはや圧巻。リー・スクラーが圧倒的に感じの良い人だと思った。色んなミュージシャンから好かれる理由もわかった。握手する手も力強くて。ボックス・タイプのCDジャケットよりは…と思い、ポストカードの写真にサインをもらった。20日ZEPP東京のチケットはまだあるみたい。

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帰りに渋谷レコファンで見つけたのがテネシー・アーニー・フォードのLP『Ol' Rockin' Ern。550円。最高ですね。オールド・ロッキン・アーニーというタイトルだけれど、ロッキン・カントリーの代表曲を再演した1957年のアルバム。パイプを咥えたジャケもヒップなんだけれど、音も最高にヒップだった。テネシーといえばマール・トラヴィスの「16トン」をヒットさせていることでも知られているけれど、ロックン・ロールヒルビリーカントリーR&Bのあいのこだということがよくわかる。カントリー色はあまりなくて、むしろブルーズジャイブブギウギの世界。近年の細野さんの世界といいますか。難しいことを言っていると疲れるので最後は屈託のない音楽に戻っていくものなのかもしれない。


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2018-06-07 Bread / Same

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[] Bread / Same (Elektra / 1969) 18:14

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やっとこさ手に入れたブレッドのファーストのLP。そこまで熱心に探していたわけではないけれど、手ごろな価格で…と思いつつ10年以上。ブレッドのオリジナル・アルバムは1976年の再結成盤まで計6枚。USオリジナルLPだとセカンド以降は中古屋に行けば1000円前後くらいで沢山落ちている。しかしファーストはかなり数が少ないと思う(正直滅多に見かけたことがない)。ブレイク前だし、カットされたシングルもそこまで売れていなかったからだと思う。そんなわけで、イギリスの中古屋から購入。ジャケットにコーヒー染みがあるとかでレコ自体は200円くらい。送料込みで2000円ちょっとなら許せるでしょう。昨日届いたけれど、UKオリジナル・プレスで盤はピカピカだった。そして音は激良し。特にベースをはじめ各音の粒立ちがよい。CDは長らく愛聴してきたけれど、LPでのエレキの音のエグさは別物。原音に近い爆音レコでした。歌詞カードはA4一回り小さいサイズ。

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バンドとしてのデビュー前からソングライターやプレイヤー、歌手としてキャリアがあったデヴィッド・ゲイツに加え、黒っぽいロック・マインドをもったジェイムス・グリフィン、デヴィッドがプロデュースしていたプレジャー・フェア(モータウンから白人SSWとしてソロ・アルバムを出しているスティーヴン・コーンも在籍)のロブ・ロイヤーのトリオ。ドラムスはサンクス・クレジットがあるから、ジム・ゴードンかな。ロブの後釜に入るのは”明日に架ける橋”でピアノを弾いたLAのスタジオ・ミュージシャン、レッキング・クルーのラリー・ネクテルだった。大好きになる60年代ポップスがみんなレッキング・クルーの仕業だったと知ったときは驚いた。だから、そんな60年代ポップスの裏方が作ったブレッドを嫌いになるはずがなかった。

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”Dismal Day”や”London Bridge”のポップさと言ったら…”It Don’t Matter To Me”はデヴィッド中心に作り上げられる、後のバンドの世界につながる。後の”Make It With You”あたりになると黒人ミュージシャンのカバーも数多く残されている。そうしたデヴィッドの音楽的センスや幅広さには目を見張るものがある。さらにジェイムスのギターのカッティングでグイグイ引っ張っていく”Any Way You Want Me”もいい。地味に見えて”Don’t Shut Me Out”なんてのもビートルズ的なポップとロックの按配がちょうどよくて。60年代最後の年という時代を反映して、結構プログレッシブでロックな展開も。何より、互いの立ち位置を入れ替えても弾き、歌うことができるというマルチ・ミュージシャンっぷりに惚れ惚れしてしまう。ジェイムスがブレッドの代表曲を歌っているアルバム(2001年にオランダでリリースされたJAMES GRIFFIN SINGS THE BREAD HITS)があるんだけれど、デヴィッド曲も全く同じ声域・同じフィーリングで歌えていたのには驚いた。さらに90年代のライブでは、本家ラリー・ネクテルのピアノサイモン&ガーファンクルの”明日に架ける橋”をジェイムスが完璧に熱唱したりもしている(ジェイムス作でカーペンターズも取り上げた”For All We Know”とメドレーで)。これは1997年のライブを収めたブート『Live In Las Vegas』で聴くことができる。

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2018-06-06 松倉如子と渋谷毅

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[] 松倉如子渋谷毅(Self-001 / 2018) 00:36


シュガーベイブベーシスト、といいますか、ゴダールなどの映画の訳詩でも知られた寺尾次郎さんがお亡くなりになったとのこと。62歳、まだお若いのに…。佐野元春のデビュー前のバンドでベースを弾いていたこともあったようで、佐野さんの追悼メッセージもあった。娘さんはシンガー・ソングライター寺尾紗穂。この人の文章や思想にも惹かれるものがある。そういえば私がホームページを作っている、吉祥寺井の頭公園ブルーズマンBroom Duster KAN宛に以前寺尾紗穂さんからメールを頂いたこともあった。

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毎週通っている三鷹レコード屋さん、パレードにて。先日店長さんから聴いてみて下さい、と渡されたCD「松倉如子渋谷毅」。松倉如子さん(https://ameblo.jp/yukiko-m/)に関しては、はちみつぱい渡辺勝さんとのデュオ作など、気にはなっていたのに、まだ聴けずにいたのだった。そしてジャズピアニストの大御所・渋谷毅さん、参加作や作編曲作品は色々聴いたことがあるけれど(坂本九見上げてごらん夜の星を」や由紀さおり「夜明けのスキャット」の編曲も!)、正直、ご自身名義の作品をじっくり聴いたことはなかった。本作は今年出た6曲入の新作。松倉作の「うた うたう」を除き、「あまだれピチカート」など渋谷の童謡作品(今までNHKおかあさんといっしょ」「みんなのうた」に楽曲提供してきた)が収録されている。

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楽しみにして早速聴いてみたけれど……素晴らしいですね。松倉さんの唯一無二の個性的な歌声に、シンプルに、禅的に削ぎ落とした、悟りの境地のような渋谷さんのピアノが寄り添う。こういうピアノは、意図して弾けるものではない。アケタの店でレコーディングされたそうだけれど、生ピアノとライブ感のあるクリアな歌声が部屋中にしっとりと響き渡る。何とも心を打つんですね。山川啓介の詩との相性もとてもよい。そして、驚いたのは渋谷さんが歌っている曲もあったこと。ただ、歌うというよりも、松倉さんの唄に合わせて自然に声が出たかのような、作為のない「うた」。音楽はこんな風に湧き出てくるものなのかもしれない。

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パレードの店長さんに感想を伝えに行くと、今度は浅川マキ渋谷さんのデュオ・アルバム『ちょっと長い関係のブルースを何気なくかけてくれて、これがまた、素晴らしい仕上がりだった。マキさんは石川県出身で、私の母が通った高校の先輩にあたる。2010年にマキさんが亡くなった日も、渋谷さんとの演奏が予定されていたそうだ。このアルバムでの渋谷さんのプレイは、やはり歌伴に徹した、飾らない奥ゆかしいもので、何だか高田渡みたいだな、と思えた。そんな感想をすぐに伝えると、高田渡が2010年に北海道で体調を崩して亡くなったのも、渋谷さんとの共演ライブの直後だったのだという。それを聞いて、言葉を失ってしまった。こんな感情は言葉にはできないのだと思う。高田渡が住んでいた三鷹の町のレコード屋さん、渋谷さんのピアノとの素敵な出会いがあった。

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P.S. 昨年発売された、高田渡2005年の東京ラストライブを収めたDVD『まるでいつもの夜みたいに』もとても良かった。三鷹の自宅を出て、ギター片手に歩きながらインタビューされるシーンから始まって。何だかまだ生きているような錯覚をおこしてしまう。まるでいつもの夜みたいに……。

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