いしうらまさゆき の『愛すべき音楽よ』(ブログ〜CD&レコードレビュー)

2016-09-26 9月の雨の日に

markrock2016-09-26

[] 9月の雨の日に 22:36



先日下北フラッシュ詣を久々に。雨が続いたりと嫌な季節だけれど、夢のような空間でしばし時を忘れてレコードに集中する。

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今日の感動の1枚はやっぱりビートルズ『Help』、イエロー・パーロフォンのUK mono初回盤!51年前のレコードなのに、キズ盤とはいえ野口さん2枚というのはフラッシュならではだと思いました!そもそも以前フラッシュで手に入れたUSオリジナルの『Meet The BeatlesUKステレオ再発盤『A Hard Day’s Night』が、US および UK プレスのビートルズに改めて目覚めたキッカケだった。UK盤、US盤、モノ、ステレオ、さらにはマトリクスに着目して…と集め始めればキリがないけれど、フラッシュ椿さんのコメント「Plays good!!」が私にとっての指標になっている。

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あとはジミー・ウェッブ・プロデュースのテルマ・ヒューストン『Sunshower』ダンヒル盤も買い直してしまった。コレ、レコードの方はモータウンからの再発盤しか持っていなかった。CDはボーナス・トラック入りの輸入盤も出ている。ジャケットも含めてトータルで完成されている盤。レッキングクルーの躍動感もココに極まれり、という。それにしてもこの時代のダンヒルものはやはり素晴らしい。一時期リチャード・ハリスとか好きすぎて何枚もダブって集めていたこともあったけれど、しばらく前に1枚を残して処分してしまった。

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ええと、あとはメリリー・ラッシュのベル盤『Angel of the morning』を均一盤で発見。大好きな盤で嬉しかった!チップス・モーマン、マーク・ジェイムス、ゴーゴニ・マーティン&テイラーとか漁っていた時期に出会った盤だけれど、なぜかLPを持っていなかった。70年代の再演盤はもっていた気がするけれど…椿さんから、80年代にチップ・テイラー作の表題曲”Angel of the morning”をリヴァイヴァルさせたのは誰でしたっけという話になって、メアリー・マクレガーでしたっけ、いや違うな〜…なんていうことで、ずっと帰り道考えていたら、ジュース・ニュートンだった!と思い出せて感動してしまった。検索すればいいんでしょうけど、それもつまらないな、と思って朧気な記憶を辿って…カントリー系だけど、ポップ・ロック的なフィールドだったような…とかいう感じで思い出して。

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あと残りは300棚でニール・ダイアモンドの『Love at the Greek』を。グリーク・シアターでのライブ盤でロビー・ロバートソンのプロデュース。大好きなニール・ダイアモンドなのにこの盤だけはなぜかスルーしていた。ベタな例で悪いけれど、日本の全盛期のアリスのやたら多いライブ盤みたいなイメージで、スルーしていたような。改めて通しで大音量で聴いてみて…死ぬほど良い!近作に至まで、これほどハズレのない人はいないと思う。そして、なぜ人気があったのか、は聴けば判るという。

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あとはニュー・ライダース・オブ・パープル・セイジの『Brujo』。1974年のオリジナル盤だった。この頃はジョン・ドーソンと共にスキップ・バッティンがリードしていて。スキップ曲はキム・フォウリーとの共作で。これぞカントリー・ロック、というか、カントリーというにはイカレた感じでボーカルが最高。

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あとはジャズ・ボーカルものでも集めているフランキー・レインの『Hell Bent For Leather!』イギリス盤のペラジャケで。ローハイドやハイヌーンなんかが入っているカントリー作。初めて買ったのは60年代の日本盤だけれど、そちらもペラジャケだった。ジャズど真ん中のボーカル盤もとても上手いけれど、映画ブルースブラザーズでもコミカルにカバーされた”Rawhide”が笑っちゃうくらい良い。

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そして最後はジョン・レノン没後1982年にリリースされた名ベスト盤『The John Lennon Collection』。これもUK盤と思われるブラック・パーロフォン・レーベルで。これは感慨深かった。そもそもジョンに初めて触れたのがこのベスト盤だったから。私の世代ぐらいまでは「レコードは高い」からゆえの、音源への飢餓感があった。私の兄が学校の先生に紹介され、コピーして貰ったカセットテープでこのベスト盤を聴いていたのだった。それを有り難く、何度聴いたか判らないくらい。レコードも、今聴くと決して音も良くはないんだけれど(キャリアを通じた音を同じレベルで並べるのは、この時代の技術では難しかったと思う)、何かタイムマシーンみたいな感じもして。ジャケの内側にウールワースのシールが貼ってあって、1982年12月16日なんて書いてあるから、オーストラリアニュージーランドで誰かが当時買ったものかな?

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"Happy Xmas"冒頭の「ハッピー・クリスマス・キョーコ」「ハッピー・クリスマス・ジュリアン」とジョン&ヨーコの前夫・前妻の子どもに囁きかけるシーンも、何か言ってるぞ、とかいう話になって、音の悪いカセットテープの音量を上げてですね、スピーカーに耳を近づけて聴いたという。まあ聴こえるわけないですよね(笑)。



しかし聴いていると心の中がヒリヒリしてくるのは何だろう。変な話だけれど、人間は大分遠いところまで来てしまったようにも思える。儒教でいうところの、分をわきまえなければいけないな、と申しますか。日本の伝統が大好きな人たちに限って中国思想である儒教が好き、というのは日本のねじれの一つだけれど、そんな人たちが経済発展が大好き、というのもまた分をわきまえていないな、と思うことがある。これもねじれの一つなのかもしれない。あの時ぼくがぼくの兄と一緒にスピーカーの奥から聴こうとしていたものは何だったのだろうか。

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頬がこけた写真を見ているとジョンも亡くなる直前は結構なおじさんになっていたのだなと思う。とはいえこのジョンも、もし今生きていたら、戦争に賛成していたかもしれないし、その辺りは人間だからわからない。ぼくは40歳になっても、ベッドでギターを弾いていられるかな?

2016-09-12 Roy Orbison / Big O

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[] Roy Orbison / Big O (London / 1970 ) 22:06

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ビートルズのハリウッド・ボウルのリマスター再発。色々賛否両論あって面白い。ジョージ・マーティンの息子ジャイルズが曲順などオリジナルの雰囲気を損なうことなく、各楽器、ボーカルの音量を持ち上げて、クリアに分離させることに成功している。父の手がけたオリジナルのLPへのレスペクトはありつつの、全くの別物として受け入れるべきものだろう。ただそれでも、1977年当時のジャケットや、歓声にかき消されんばかりの異常なコンディションの中で、半分ヤケ気味に奮闘する四人の演奏に思い入れがある人にとっては、色々ツッコミたくもなるのかな。ジャケも伝記映画とのタイアップになっていて商魂見え見えだし、ボーナストラックを中途半端に入れるのならブートにもあるようなコンプリート版にした方が良かった、だとか。ただ、オリジナルのLPを持っていれば、別々に楽しめばそれだけでいい話のような。オリジナルのLPもそんな評判は良くなかったわけだけれど、改めて聴くと流石の迫力があり、生演奏の実力が伝わってくる。リマスターはまたそれとも別物。録音は再現芸術であると共に、ある種の解釈や編集を含んでいるわけだから。演奏のクリアさに耳をそばだてつつ、素直にまさかの新譜を喜んでいる。

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ザ・ビートルズ『ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル』THE Beatles : Live At The Hollywood Bowl

<曲目>

1 Twist & Shout / ツイスト・アンド・シャウト(1965年8月30日)

2 She’s A Woman / シーズ・ア・ウーマン(1965年8月30日)

3 Dizzy Miss Lizzy / ディジー・ミス・リジー(1965年8月30日/1965年8月29日——1曲にエディット)

4 Ticket To Ride / 涙の乗車券ティケット・トゥ・ライド)(1965年8月29日)

5 Can’t Buy Me Love / キャント・バイ・ミー・ラヴ(1965年8月30日)

6 Things We Said Today / 今日の誓い(1964年8月23日)

7 Roll Over Beethoven / ロール・オーバー・ベートーヴェン1964年8月23日)

8 Boys / ボーイズ(1964年8月23日)

9 A Hard Day’s Night / ア・ハード・デイズ・ナイト(1965年8月30日)

10 Help! / ヘルプ!(1965年8月29日)

11 All My Loving / オール・マイ・ラヴィング(1964年8月23日)

12 She Loves You / シー・ラヴズ・ユー(1964年8月23日)

13 Long Tall Sally / ロング・トール・サリー(1964年8月23日)

14 You Can’t Do That / ユー・キャント・ドゥ・ザット(1964年8月23日——未発表)

15 I Want To Hold Your Hand / 抱きしめたい(1964年8月23日——未発表)

16 Everybody’s Trying To Be My Baby / みんないい娘(1965年8月30日——未発表)

17 Baby’s In Black / ベイビーズ・イン・ブラック(1965年8月30日——未発表)

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さて、そんな気分のまま手に取った、フィフティーズ・ロックンローラーの過渡期作。ビートルズ旋風以前はアメリカロックンローラーレスペクトされていたから、こんなイギリス録音が可能になった。手元にあるのもイギリス盤。ロンドンレコードからのリリースで、演奏・コーラスを務めるアートムーブメントというイギリスのグループと共演している。冒頭の”Break My Mind”とジム・ホールがアレンジしたラストの”Penny Arcade”がシングルで切られたみたい。”Penny Arcade”以外はライブ・レコーディングで、コーラスとオーケストレーションは後でオーバーダブされたんだとか。

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プラターズの”Only You”もロイの美声で聴いてみたかった!と思わせるもの。ビーチ・ボーイズの”Help Me Rhonda”のカバーは珍しい。アル・ジャーディンの声域で歌うと意外と声が似ているのだと思ったり。ビートルズも演っている”Money”やクリス・ケナー(ウィルソン・ピケット)の”Land Of 1,000 Dances”だとかR&Bものは、アメリカへの憧憬を交えたイギリス人好みの感覚かな。ビートルズがロイのバックを演ったら、なんて感じでも聴けて。オーケストレイションが入った曲には70年代英国ソフトロックなテイストも。”Loving Touch”のアウトロには”Pretty Woman”のお約束”Grrr”も入っている。

2016-09-10 熊本のレコード屋

markrock2016-09-10

[] 熊本レコード08:53


最近おやぢバンドに加入して歌ったりしている。これが何とも面白い。自分一人では絶対に演らないだろうヴァン・ヘイレンとかも演ってみたり。先日お会いした、とあるプロのドラマーの方(テレサ・テンのバックバンドを長くやられていたという)も「音楽はアマチュアに限るよ〜」と仰っていたけれど、コレも一つの真理かもしれない。しかし、昔取った何とやらではないけれど、おやぢバンド、50代のロック少年の演奏の上手いこと上手いこと…学生時代はレコード聴き聴き、耳で憶えてコピーしていた、なんていう感じみたいだから、フレーズが体に染みついているのかな。最近の10代バンドのステージとか見ると、複雑なギターソロを弾けるギタリストが少なくなってきたようにも思える(というか、ジャズから発展したロックには、ある程度即興で演じられる「ソロ回し」という文化があったけれど、それも徐々に消え失せているということなのだろう)けれど、往年のロック・ミュージシャンはソロでギンギン弾きまくるんですよね〜



で、時折スタジオ入ったりもするんですが、昔に比べて予約が取りやすい。バンドが減ってるんでしょうか。そして、アコギのピックは廃番になったヤマハのデッドストックを一生分(笑)買ってあるからいいとして、エレキのピックを買いだめしようと某楽器屋へ。10年前によく通っていたその店にはオリジナル・ピックがあって、激安50円だけど磨り減りにくく、重宝していたことを思い出したから。で、店員さんに聞いてみてビックリですよ。「もう作ってないんです…今楽器屋は不況で、オリジナル・ピックも自前で作れなくなっちゃったんです…在庫抱えるとタイヘンだし…」なーんて。時代は変わる。確かにイマドキの中高生はバンドよりダンス、みたいな身体感覚の変容もあるしね…ちょっと寂しいけれど。

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さて、そんなおやぢバンドのメンバーの方に昔のレコードあげるよ〜なんて私が好きそうな奴を選んでいただいて、どっさり頂戴してしまった。その方は熊本出身の方で、かつて英語関係の仕事でクリエイションの竹田和夫さんと同じ職場だったこともあるんだとか。クラプトンが乗り移ったようなギターを弾く。で、レコードはキッス、ディープ・パープルジョー・コッカー、デイヴ・メイスン、バークレイジェイムス・ハーヴェスト、マホガニー・ラッシュ、エンジェル、T.レックスなどなど…もうロック黄金時代ってな感じで最高ですよね。1977年レコードにハズレはない!なんて話もしていて。私みたいなアメリカン・ロックやSSW好きに取ってみると、1977年キーボード主体の音楽が出てくる過渡期で駄作が多い印象があるんだけれど、全く違う価値観もあるんだなぁと。



レコード外袋には「マツモトレコード」「WOODSTOCK」とあって。聞いてみると、熊本で一番オールジャンルで在庫が多かったのは「マツモトレコード」で、マニアックなロックのLPは「WOODSTOCK」で買ったとのこと。頂いたマイク&サリー・オールドフィールドとかは「WOODSTOCK」で予約して買ったんだとか。

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気になって調べてみると、両方ともスゴイ店だったみたい。でも「九州一の豊富な在庫」を謳っていた「マツモトレコード」は残念ながら2006年に閉店していた。往時は年間60〜70のアーティストがインストア・ライブ&手売りをやり(「ユーミンサザン矢沢永吉以外はほとんど来た」とのこと)、閉店時の2代目店長は「日本一CDを売った」と豪語してもいた。まさにこれも時代だなあ、と。1977年創業の「WOODSTOCK」の方は移転して今もあるとのこと。地震の被害もまだ残る熊本だけれど、一度行ってみたいと思う。それにしても九州の音楽シーンというとめんたいロックや照和福岡、そして鹿児島に注目が集まるけれど、熊本にもこうして文化を作りあげた店や人があった。阿蘇のカントリー・ゴールドっていうチャーリー永谷さんが続けているカントリーの祭典もある(毎年アメリカン・カントリーの一流どころが出ている)。そう言えば、とライターの松永良平さん(熊本のご出身)のインタビュー集『20世紀グレーテスト・ヒッツ』熊本のDJかなぶんやさんのインタビューがあったのを思い出し、読み返してみた。そう、おやぢバンドの方も言っていました、「熊本にはベストヒットUSAみたいな番組があったよ〜」って。何しろかなぶんやさんの洋楽ビデオ番組「サタデー・ミュージック・スペシャル」の放映はベストヒットUSAよりも先んじていたのだった。こういった番組に支えられて、数多の洋楽ファン音楽評論家、ギター小僧にバンドマンが育っていった、という事実にじーんと胸が熱くなった。

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2016-09-08 Man / Same (Columbia CS9803 / 1970 )

markrock2016-09-08

[] Man / Same (Columbia CS9803 / 1970 ) 10:27



エアロスミスやリッチー・サンボラ、ピンク、そしてミーカ(MIKA)のファースト・アルバムなどのライターとして知られているリチャード(リッチー)・スパのソロ作がCD化されているのを見て、オッ!と思った。最近は本当に重箱の隅のようにCD化が進んで、とてもじゃないけれど追いかけきれなくなったし、有り難みが半減している感じもする。BIG PINKとか、著作権切れものの再発とか。あくまで個人的には、残りの自分の人生を考えると、CDに買い換える必要もないような。アメリカン・ロック、SSW、スワンプ…のその類のレコードの多くを、かつて熱心に集めていたけれど、それらも次々にCDになっていくのだろう。しかしとんでもないレア盤を除けば、レコードにさほど値動きはないような。そっちはそっちで欲しい人がいるのかな。それにしてもそうしたマニアックな再発盤、大体300枚ぐらいの作りきりのプレスのはず。その300枚がマニアの間で買われたり、中古でやりとりされたり。ちなみに卑近な例だけれど、自分が自主レーベルで作ったアルバムも300枚のプレス。実は500枚、1000枚とプレスしてもプレス代自体はほぼ一緒なのだけれど、売れ残り在庫は生活空間を奪うので(笑)。300売るってのは、今の時代、結構タイヘンなことなのだ。新人のメジャー・リリースでも初回プレス300でその殆どがプロモーション用や全国のツタヤに…とかあるみたいですし。CDが売れない時代。リチャード・スパの今年の最新作『Enemy』ダウンロードでリリースされている。

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さて、そんなリチャード・スパのソロ以前のバンド、マンの唯一盤MANを取り出してきた。「人類」みたいなバンド名。そう言えば河島英五のバンドが「ホモ・サピエンス」で『人類』っていうアルバムがあったな。

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このマンをはじめ、60年代後半から70年代初頭にかけて、コロンビアやエピックの売れなかった単発バンドって、テックスメックス系を含めて結構あった気がするけれど、プロダクションがしっかりしているから、今聴いても悪くないものが多い。プロデュースは泣く子も黙るボブ・ジョンストン。

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ちなみにマンの前身バンドはペリー・コモの甥デニー・ベラインを中心とするDenny Belline and The Rich Kidsで、RCAビクターから1966年にアルバム『Denny Belline and The Rich Kids』をリリースしている。バンド名のRichはメンバーのリッチー・スパと掛けているのかな。ペリー・コモの甥を看板にするのは仕方ないとしても、才能のあった両看板のリッチーの名も刻まないわけにはいかなかったのかも。ロング・アイランド出身、ヤング・ラスカルズフォロワーとして人気があったようで、シングルも幾つかリリースしている。アルバムの方はライブ盤だけれど、若さと勢いが素晴らしい。ウィルソン・ピケット(”Mustang Sally”、”Don’t Fight It”)やビートルズ(”Night Before”、”Rain”)のカバー、バカラックの”Any Day Now”やアラン・トゥーサン”Get Out Of My Life”といった有名曲で構成されており、本家ヤング・ラスカルズが取り上げた”Good Lovin’”も演っている。ブリティッシュ・インベイジョンの波、シックスティーズのある種のバンドブーム(日本で言えばGSのような)が終わり、再デビューと引き替えに名前やサウンドをニュー・ロック・テイストに変えさせられたのがマンというバンドだろう。

https://www.youtube.com/watch?v=N2yeNdWHDXM

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リチャード・スパはリード・ギター、ボーカルなどを務め、デニス(デニー)・ベラインと共にバンドの中心だけれど、単独でソングライティングを手がけているのは8曲中3曲だけ(メンバーとの共作含めると5曲)。スパ曲以外だと、冒頭のギルバート・スレイヴィン、アンソニー・クラシンスキーの共作”Sleepy Eyes And Butterflies”はクラシックとロックを融合させたような異色のプログレッシブ・サウンドで印象的。他にも”Camp Of The Gypsies”だとか。でもリッチーもソングライティングに加わった”Riverhead Jail”ではスライド・ギターのイントロからしてスワンピーなロック・サウンドを聴かせてくれて。ハープシコードのイントロが少しバンドの個性なんだけど、ボーカルはポップなザ・バンドみたいなソウルフルな色で。この辺りがリッチーの本性なのかな。喫茶ロック的風情のスパ作の”Brother John”もある。そう言えば、メンバーのギルバート・スレイヴィンって、スティーヴン・ソールズなんかも参加したダスティ・スプリングフィールド1974年のオクラ入り未発表作『Faithful』2015年に陽の目を見ている)で多くの曲を書いているギルバート・スレイヴィンと同一人物ではないかな。ただし、アルバム中先行シングルカットされたジェフ・バリー、ボビー・ブルーム、アレックス・ハーヴェイの曲が全く売れなくて、アルバム丸ごとオクラ入りしたみたいですから、運が悪いとしかいいようがない。後にソングライターとして成功するリッチーに比べると、大きな魚を獲り逃がしたことになる。

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さて、対するリッチーは1971年に初のソロ『Supa's Jamboree』パラマウントからリリース。同じくパラマウントからリリースされた2枚目の『Homespun』と共にアトランタ・リズム・セクションのバックアップの元(バディ・ビューイのプロデュース)、土臭い、アクスティックなアメリカン・ロック・サウンドを作り上げた。とりわけ『Homespun』は名作中の名作で、アメリカン・ハード・ロックの源流はココにある、と言えるような音。アコギ一本を基調としつつ、ここまで骨太なロック・サウンドを作れる、という良いサンプルではないだろうか。

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その後エピックに移籍し、1976年に『Lifelines』をリリース。これは個人的にはカナダSSWダン・ヒルのレコードと一瞬見間違えてしまうけれど、そうしたピアノ基調のAOR路線で作ったアルバム。歌は当然むちゃくちゃソウルフルなんだけれど。そう言えばダン・ヒルもピアノマンの印象があるけれど、元々アコギ弾きだったから、感傷的なソングライティングの妙は変わらないまでも、イメチェンさせられた人かも。

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そして、ポリドールに移籍。ソングライターとしての名声を獲得した1978年の『Tell Tales』は、エアロスミスが取り上げた”Chip Away The Stone”の自演を含む作品。カントリーAORみたいな風情もまだ残っているけれど。”Chip Away The Stone”はエアロスティーヴン・タイラーが大好きで(いかにも好きそう…)、シングルカットを推したらしいけれど、ハード・ロッキンなエアロファン層はあまり反応せず、大ヒットには至らなかったという。

2016-08-28 Felix Cavaliere’s Rascals

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[] Felix Cavaliere’s Rascals 18:36

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フェリックス・キャバリエールズ・ラスカルズ。7月後半辺りにコットンクラブとか、ブルーノートの公演で来日していた。コンスタントにライブをこなしている現役とは言え、フェリックスも今年で74歳。ヒジョーに迷ったのですが、ついに行けなかった。どんなに好きなアーティストでもタイミング、というかチケット買うときの気分とかってありますよね。それに何だか最近ライブのチャージが高すぎて、気軽に観に行こうかな、という気になれない。以前ほど売れなくなったCDに代わり、チケットとグッズで商売しているのだから仕方ないけれど。最近、著名国内アーティストを総動員してのチケット転売防止運動もありますものね。でも外タレのチケットは流石に暴利と思えるものも。フェリックスもかつて参加していたリンゴ・スターオールスター・バンドは行くことにしたけれども、ね…

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さて、そんな後悔を埋めるようにフェリックス・キャバリエールズ・ラスカルズのライブ盤を。フェリックス自身のプロデュースによる、完全な自主盤で、フェリックスのホームページで購入できる(20ドル)。曲名すら書いておらず、スリーブにCD1枚が投げ込まれている簡素な作り。布陣は今年の来日ツアー・バンドとほぼ同じ。

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ラスカルズの魅力は色々ある。80年代のロッカーに顕著だけれど、フォロワーも沢山いるバンドだし。もちろんブリガッティ兄弟の楽曲やボーカル、それにジーン・コーニッシュやディノ・ダネリのガレージな魅力も捨てがたいんだけれど、フェリックスのイタロ・ブルーアイド・ソウルなボーカルの人懐っこい味わいに負うところも大きい。後期のラスカルズはフェリックスで保っていた感じだし。

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さて、”Lonely Too Long”、“It’s A Beautiful Morning”、”A Girl Like You”、”Groovin”、”People Got To Be Free”…といったラスカルズ名曲の数々を聴いていくと、この明るくポジティブなエネルギーに心が温まると同時に何とも甘酸っぱい気分になってくる。ラスカルズ名曲Ray of hope”と同タイトルのアルバムを作った山下達郎に与えた影響力の大きさは語り尽くされているかもしれないけれど、改めてそれも感じられたような。とは言え”Groovin”が”My Girl”や”Just My Imagination”とメドレーで演奏されるのを聴くと、ラスカルズのメロウ・サイドにおけるさらなるルーツを思い知らされる。一方で、”Mustang Sally”に”I Thank You”が織り込まれたり、スタックス・ソウル・レヴューさながらの雰囲気も。スタックスのトリビュート&深化を企図したような2008年・2010年の、スティーヴ・クロッパーとの共演アルバム2枚も素晴らしい出来だったけれど。そう、この現ラスカルズギタリストの方はというと、相当ハード・ロックな資質を持っていて、この辺がロッキン・ソウルな楽曲の魅力を引き立てている。”Good Lovin’”が”La Bamba”、”Whole Lotta Love”や”Purple Haze”になり、”What’s Goin’ On”になって…とかリズム遊びからスタートしたジャム・セッションみたいな感じのトラックもある。しかしマコトに遊び心満載!観客を楽しませる術を心得ている。しかも唄も演奏もオリジナルの雰囲気を掴んでいてムチャクチャ上手いし。こういうサウンドならお手の物だよ!ってな感じで、フェリックスには60年代精神をひっくるめて継承する自負があるのかもしれない。

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さて、HPでは2014年リリースのクリスマス・アルバム『Christmas Joy』販売されている(20ドル)。こちらはクリスマス・カード風のサイン入り仕様になっている。こちらも演奏陣はライブ盤と変わらない。16ビートの”White Christmas”とか、ソウルフルなアレンジがフェリックスらしい。喉も快調そのもの。しかも、ここでもやはり山下達郎クリスマス・アルバムを思い出してしまったと言う。オー、オエ〜オってソウルフルなこぶしを回すところが、まさにフェリックス節なんだな、と。クレジットの最後にはジャック・ニッチェフィル・スペクターに「インスピレーションを有り難う」なんて書いてあって。もちろんロックンロール世代の感性で作り上げたあの名クリスマス・アルバムのことなわけで、実際ウォール・オブ・サウンド風アレンジもあるけれど、これもまた60年代的精神だなと。


http://www.felixcavalieremusic.com/


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2016-08-14 Larry Weiss / Black & Blue Suite

markrock2016-08-14

[] Larry Weiss / Black & Blue Suite ( 20TH CENTURY / 1974 ) 22:53



グレン・キャンベル最大のヒット曲といえば”By The Time I Get To Phoenix(恋はフェニックス)”…ではなくて”Rhinestone Cowboy(ラインストーン・カウボーイ)”!恋はフェニックスは初めての大きなヒットとは言え最高24位、と曲は抜群に良いのだけれど…チャート・アクション的にはそこまででもない。それに対してラインストーン・カウボーイは1975年に初めての1位、23週ランクインされている。1970年代に入って落ち目だったグレンにとって、起死回生の1曲となった。

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さて、作者はというとニュー・ジャージー出身のSSW、ラリー・ワイス。実はラリーの自演の方が先にシングルを切っていて、1974年のアダルト・コンテンポラリーチャートで24位を記録している。これをグレンが気に入ってレコーディングした、というわけ。グレン版のランバート&ポッターのアレンジはラリー版に倣っている印象だ。



さて、このラリー・ワイスだが実はソングライターとしてはなかなかのキャリアの持ち主。あのバブルガム風味のポップ作品を量産したウェス・ファレルの元でソングライターとしての腕を磨いた。1963年ナット・キング・コールに” Mr. Wishing Well”を書いたのを皮切りにチャック・ジャクソンやシュレルズに曲を書き下ろし、その後も作詞家のスコット・イングリッシュ(後にリチャード・カーとのコンビでバリー・マニロウに"Mandy"を書いている)とのコンビでアメリカン・ブリードやエイメン・コーナーが取り上げた”Bend Me, Shape Me”、ジェフ・ベックの”Hi Ho Silver Lining”などがヒットする。ブリル・ビルディングのライターとしては相当な提供曲数だ(リストは→http://rhinestonecowboy.com/?page_id=6)。スプーキー・トゥースの”Evil Woman”もそうですね。

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その後ロスに移住してリリースした、ソングライターのショウケースの様な『Black & Blue Suite』からは、前述の”Rhinestone Cowboy(ラインストーン・カウボーイ)”や、グレン・キャンベルと共にバリー・マニロウが取り上げた”Lay Me Down(Roll Me Out To Sea)”のようなスタンダードの雰囲気を持つ名曲が生まれている。”Sheldon”なんてのも、全盛期の歌謡曲みたいな音だし。土臭くも都会的な”She’s Everything She Doesn’t Want To Be”は苦み走ったAORみたいな風情で。ブロードウェイやブリル・ビルディングの伝統を感じさせる”Lead Me On”や明らかにレオン・ラッセルの”Song For You”にインスパイアされた”Anytime Babe”もある。それにしてもかなり間口の広いソングライターだと感じられる。ソウルフルな”Evil Woman”の自演も収録。バックはリー・スクラー、リック・マロッタ、ヒュー・マックラケン、ジミー・ハスケルジェイムス・ヘンドリクス、ジム・ケルトナー、ディーン・パークスといった腕利きが参加。冒頭の”Rhinestone Cowboy(ラインストーン・カウボーイ)”の凄まじい完成度を聴くと…当時のギョーカイ人は金の匂いを感じたんだろうな…と想像する。ナッシュビルに遷り、ソングライターとして活動する中で2008年には34年ぶりの2枚目となるオリジナル・アルバム『CUTS & SCRATCHES』をリリース。エリック・バードン&ジ・アニマルズがヒットさせた”Help Me Girl”のセルフカバーを含んでいる。

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http://rhinestonecowboy.com/

2016-08-13 Sarah Vaughan / A Time In My Life

markrock2016-08-13

[] Sarah Vaughan / A Time In My Life ( Mainstream MRL-340 /1972 ) 17:22



数日の休日の間にレコ部屋の整理を。流石に6畳間が物量的に危機的状況になって来た。次、大地震が来たら、たぶんもろとも潰されるかも。東日本大震災の時は間一髪で子どもの命に関わる事態もあった(コレは本当に危なかった…)。その時は部屋の復旧に半年以上かかっている。レコ漁と並行したライフワークとして、仕事柄(とかこつけて)とりわけ哲学・思想関係の本を買い漁っているものだから、本棚の背中と背中を合わせてタワーを作ったり色々スペース確保の工夫はしているものの、冗談にならない程スペースがなくなってきた。そんなわけで、いま冷静に処分を検討している。例えばビートルズ関係なら日本盤レコは全て処分する、とか、初期プレスだけを残してダブり盤は売る、とか自分なりにルールを作ってですね。ちょっとしたレア盤の類だったら、オリジナルのレコを手に入れたらCDの方は売る、とか。取り急ぎ200枚くらいのレコを抜いてみたけれど、余り状況は変わらないですね…今まで、断捨離とかミニマリストとか、情報への執着を失っているわけではない似非解脱者を一生お掃除やってろ!とか言って相当コケにしてきたんですが、本当にゴメンナサイ。。それなりに断捨離は必要かもしれませんね。。それにしても、処分しては買い…というレコ狂いなら世界共通の全く生産性のない作業なんですが、もし処分の良いアイデアがあったら誰か教えて下さい。

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そんなわけで今日も反省なく入手してしまった盤の中から、オッと思ったのがジャズ・シンガーの大御所サラ・ヴォーン『A Time In My Life』1972年メインストリームからリリースされたレア・グルーヴ的観点評価の高い一枚。元の持ち主が入念にビニールカバーをゲイトフォールドの内側まで貼り付けていて、経年変化でノリがベタベタして困ったパターン。全部カッターで切り取るとシールド盤並のジャケが現れてちょっと感動。

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安っぽいジャケなので今までスルーしてきたけれど、ボブ・シャッドのプロデュースでアーニー・ウィルキンスのアレンジということで、同じくメインストリームからのフリー・ソウル名盤、アリスクラークAlice Clark』と全く同じプロダクション。並べて聴ける姉妹盤だった!ジョン・レノンの”Imagine”のソウルフルなカバーに始まり、マーヴィン・ゲイの”Inner City Blues”、ラヴィン・スプーンフルの”Magical Connection”、ミシェル・ルグランの曲でマイク・カーブ・コングリゲーションがヒットさせた”Sweet Gingerbread Man”、そしてボブ・ディランジョージ・ハリソンの”If Not For You”とか選曲が秀逸過ぎる。ブライアン・オーガーとAWBのアラン・ゴーリーらの共作”On Thinking It Over”もあるな、と思ったら、ブライアン・オーガーズ・オブリヴィオン・エクスプレス(ドラマーは後にAWBを作るロビー・マッキントッシュ1971年『A Better Land』から”Trouble”、”Tomorrow City”を含めて3曲が取り上げられていた。時代を反映してアクースティックなロック・サウンドに接近した好作だけれど、こうした同時代的評価があったことに今更、気がついた。

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2016-07-29 Dan Penn / Nobody’s Fool

markrock2016-07-29

[] Dan Penn / Nobody’s Fool ( Bear Family[Re-issue] / 1973 [2016]) 00:13

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ダン・ペンのフェイム未発表曲集第2弾に合わせて、ファースト・ソロ『Nobody’s Fool』LPリイシューが実現した。ドイツの良心的リイシュー・レーベル、ベア・ファミリーより。ベア・ファミリーと言えば最近『Rock・A・Billy Dynamiteというナント40枚組!のCDボックスを取り寄せたところだった。ちなみにそちらは正直一生かかっても聴き込めない程のシロモノで。エルヴィス、エディ・コクランみたいな定番から絶対誰も知らないような超ローカルなロカビリアンまで、これでもかと詰め込んだボックス。音もアナログに近い凄く良い音で、大興奮していた所。

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さて、話を戻してダン・ペンの方。オリジナルを持っている場合はリイシューは手を出さない、という個人的ルールがあるんだけれど、こちらのリイシューLPに手を出したというのはそう、オリジナル『Nobody’s Fool』が高すぎて買えなかった…というわけで。幻の名盤とか言われているモノも、海外から取り寄せると、近年では信じられないくらい安く手に入ることもある。だけれども、この『Nobody’s Fool』アメリカでもムチャクチャな値段が付いてます。てか、そもそもオリジナルのプレスが相当少ないのではないかな。カットされたシングルの方がまだ手に入りやすかったり。まあ今回のリイシューによって、手放す人もいるだろうから、少しは手頃なオリジナルが出回ることもあるかもしれない。

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私はCDでリイシューされた輸入盤を長らく愛聴してきた。1996年にRepertoireから再発されたものと、Marvelas Recordという海賊盤風のリイシューCDが手元にあった。後者はフェイムから公式シングルになった2枚の内1枚、”Close To Me”と”Let Them Talk”が含まれている。このアルバムの内容を地味だとかいう人もいるけれど、この抑制されたソウル・フィールは代替不可能!そして後のダン・ペンを考えると結構派手な音も入っていると思いますよ。アメリカシンガー・ソングライターものやカントリー、サザン・ソウル愛する人にとっては、これ以上のモノはない、と思えるの1枚なのではなかろうか。

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アナログは分厚く、プレスも実にしっかりしている。見開きのゲイトフォールド仕様。肝心の音も良かった!楽器の一音一音がクッキリと、ボーカルの息遣いもリアルで。しかし改めて、エルヴィスみたいな白い黒人の音。同時代のニュー・ソウルのような攻撃的な部分もなく(強いて言うなら黒人差別に抗議した”Skin”がそんなタッチだけれど)、こうした白人ソウルがゆくゆくはAORの洗練に辿りつく、ということも理解できる。共作しているドニー・フリッツも久々に聴きたくなってきた。

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ドニーもそうだったけれど、90年代以降の録音も素晴らしい。そう、ダン・ペン&スプーナー・オールダムの共演ライブ、DVD付の新装盤が出ていたけれど、目玉のDVDは家宝に出来るレベルで素晴らしかった。店によっては輸入盤が2000円しないという、かなりのお買い得盤なので、DVD目当てで買い直してみる価値はあると思う。

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2016-07-23 永六輔その世界

markrock2016-07-23

[] 永六輔その世界 14:26



永六輔大橋巨泉が相次いで亡くなったと聞いてなんだか淋しい気持ちになった。戦後民主主義とか普遍的価値としての自由多様性を許容する幅…そんな気風を体現していた人達だと思うから。ユーモア感覚も含めて。日本と亜米利加の間で、テレビという新興のメディアで時代を作り、ときに時代そのものをおちょくってみたり。テレビ創成期の放送作家の質は凄かったと思う。1930年代初頭生まれ、同世代早稲田の流れですよね。永、巨泉青島幸男中村八大野末陳平野坂昭如…という。野末さん以外はこの世にもういない。さらに、現政権現代日本への立ち位置も含めて、戦争体験者、戦前戦後の変わり身を経験した者にしかわからない感覚もあったような。これは想像力の問題だと思うので、わからない人にはわからないのかもしれない。もちろん私も経験者ではないから実のところはわからない。



永さんの先祖が江戸時代中国から渡来したお坊さん永(ヨン)さんだった、ということも、何だか彼の立ち位置を示すものでありそうだ。日本に対して、どこかヨソモノのような立ち位置を持ちつつも、それからずっと日本に根ざして住んできたわけですから、そんじょそこらの東京人とは違う、江戸っ子を自負する側面もあるという。まあ縄文弥生まで遡りますと、現在日本に住む人の9割以上が現在の中国朝鮮半島からの渡来人であったわけですから、ことさら日本にこだわるのもどうかとは常々思うんですが、この自由な立ち位置から学ぶべきものはある。



そんな彼の作詞した”上を向いて歩こう”が、坂本九の歌で1963年に全米No.1を記録し、それが現在、高度経済成長期の日本を代表する楽曲として消費されて、ノスタルジーをかき立てるどころか、ナショナリズムをも慰撫していることを彼はどう捉えていたのだろうか。まあ悪い気分はしなかったと思うけれど。

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てなわけで、六八九コンビで一世を風靡した永六輔の自演盤『六輔その世界 生きているということは』を。1974年、永が40を回った頃のリリース。全作詞永六輔、全作曲・編曲中村八大。”こんにちは赤ちゃん”を朗々と歌う永自身のボーカルはお世辞にも上手いとは言えないけれど(とはいえ下手でもない)…木訥としたタッチはオリジナル歌手とは違った味わいがある。”黒い花びら〜黄昏のビギン〜恋のカクテル”の名曲メドレーも。田辺靖雄梓みちよが歌った”いつもの小道で”は永と由紀さおりで歌う。タイトル曲(”生きているということは”)は時代を反映してかフォーク風だけれど、自作自演歌手の登場で歌謡曲から引退したという永ながら、シンガー・ソングライターとして対抗した曲のようにも聴こえる。「生きているということは 誰かに借りを作ること 生きているということは その借りを返してゆくこと」なーんてフレーズ、いいですね。他にも過去音源も含めつつデューク・エイセス(”幼ななじみ”など)、ジェリー藤尾(”遠くへ行きたい”)、坂本九(”上を向いて歩こう”)が加わる一方で、永本人のDJでの軽妙なトークや、淀川長治の教えから生まれた”嫌いな人には逢ったことが無い”(スタンダード風!)では淀川さん自身の語りも入っていたり。”たこ酢で一杯”はウェスタン・スウィングっぽいコミック・ソングでゴキゲン。

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ちなみに坂本九もひっぱり出してきたけれど、九ちゃんのベスト・ヒット・パレード』東芝のペラジャケでなんだか好きだ。リリースは1970年かな。私が小学校の頃は”レットキス”でレクリエーションとかやったんですよね。吉本のリメイクもあった”明日があるさ”、”幸せなら手をたたこう”、”見上げてごらん夜の星を”、そしてパラダイス・キング時代の”悲しき六十才”、”すてきなタイミング”…1960年代前半の典型的なアメリカン・ポップスの音ですね。

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あとこちらは”上を向いて歩こうSUKIYAKI)”が世界的にヒットした時にリリースされたSUKIYAKI AND OTHER JAPANESE HITS。手元にあるのはドイツ・オリジナル盤だから、ドイツでもリリースされていたということだ。「坂本」じゃなくて「坂木九の唄う 日本のヒット歌集」となっているのは面白い。2曲目が「ツンツン節」なんだけれど、この辺りは流石にエキゾチックに聴かれたんじゃないだろうか。ずっこけたかもしれないけれど。

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ちなみに坂本九1979年に六八九コンビの再結成盤『689』をリリースしている。こちらは2011年のCD化の際にかつての作品を含めて2枚組コンプリート盤がリリースされた。この再結成盤は結構期待して聴いたのだけれど、悪くはないが…という印象だった。

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『6輔+8大 14ヒット(永六輔中村八大傑作集)』水原弘”黒い花びら””黄昏のビギン”、坂本九上を向いて歩こう”、ジェリー藤尾”遠くへ行きたい”、デューク・エイセス”おさななじみ”、坂本スミ子夢で逢いましょう”辺りの大名曲をオリジナル歌唱でまとめて楽しめる好盤。

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あと、コレはいわゆるミューザク的なムード盤だけれど『ウナ セラ ディ東京 上を向いて歩こう 星降る公園』というレコードには中村八大クワルテットの演奏する”上を向いて歩こう”(鈴木邦彦編曲)が収録されている。妙に弾んでポップなアレンジがちょっと面白い。他にも永六輔関連盤と言うと、高石ともやと一緒にやった宵々山コンサートとか、レコードに記録されたものも他にもあるけれど、それはまたどこかで。

在りし日の…

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2016-07-18 芹澤廣明の世界

markrock2016-07-18

[] 芹澤廣明の世界 22:20


先日チェッカーズの初期作品を唐突にレコードでまとめて手に入れて。初期3枚、『絶対チェッカーズ!!』『もっと!チェッカーズ1984年『毎日!!チェッカーズ1985年)は抜群に良かった。「白いマリンウォッチプレゼント」とかいうチラシが入っていて、コレは時代を感じるなぁ。中身はというと、結構音作りがコントロールされていて、作品としてのまとまりがある。1980年代と言えばツッパリ・フィーヴァーもありつつの、フィフティーズのロケンロール回帰現象があったわけだけれど。チェッカーズも今なら、そうしたエイティーズ・ロックンロール・リヴァイヴァルのひとつとして楽しむのが良い。”ギザギザハートの子守歌”とか”涙のリクエスト”とか、今聴くと笑っちゃうくらいなんだけど、一日中鼻歌を歌ってしまうくらいの強烈なインパクトがあることは否めない。そんな彼らの船出にあたり、作曲・サウンドプロデュースを担当していたのが芹澤廣明その人。じきにチェッカーズのメンバーのオリジナル志向とぶつかって、ケンカ別れしちゃうのかな。芹澤さんからすれば、オレのお陰で売れたのに、独り立ちしようだなんて…って感じだったんだろう。アイドルのデビューから自立のプロセスで結構あるある、なお話。いまだに藤井フミヤが”ギザギザハートの子守歌”を歌えないのもそうした理由だとかなんとか。

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芹澤廣明といえば、清須邦義も在籍していたGSのザ・バロン出身。よく考えてみるとチェッカーズ提供曲にしても、代表曲の一つである岩崎良美の”タッチ”にしてもGS風味が感じ取れる。その後ステージ101のオーディションに合格し、メンバーとなってキャリアは進展。NHKの番組だったステージ101は、メンバーによる多くのアルバムをリリースしていて、日本のソフトロックと呼べるそのクオリティが、今も音楽ファンに注目されている。メンバーには清須邦義、塩見大治郎、ピコの愛称で知られる天才・樋口康雄、後にアニソンで有名になる串田アキラ(後に芹澤作曲のキン肉マンのテーマ”キン肉マンGo Fight!”を歌う)、牧みゆきなどがいた。

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その中で人気を博したのが後の芹澤廣明河内広明)と若子内悦郎。二人は「ワカとヒロ」(この頃は河内広明名義)のデュオとしてもレコードを出している。1972年東芝EMIエキスプレスレーベルからリリースされたヤング101東海林修アレンジで70年代の洋楽カバーに少々のオリジナルを含めたソフトロック好盤。1973年東芝EMIからリリースされた『聞き違い』はオリジナルとカバーからなるニューロックなテイストの名盤だ。

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その後芹澤廣と改名して、サザンがデビューする頃のビクターinvitationから2枚のソロ『Changes』(1978年)、『ジャパニーズ・センチメンタル』1979年)をリリース。甲高くてひんやりとしたボーカルに、GSロック風から歌謡曲風、フォーク風、カントリー・ロック風…と器用なソングライティングが光っている。見た目もフィフティーズのリーゼント、キザでワルぶった感じだけど、音作りも含めて独自の美学をもっている。六文銭の及川恒平が多くの作詞を手がけているのも注目すべき。『ジャパニーズ・センチメンタル』の方はAORっぽいプロダクションになっている。

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でもこの2枚、私が入手したのもサンプル盤だけれど、おそらく余り売れなかったはず。その後は裏方に転じ、1982年に作詞家の売野雅勇と組んだ中森明菜の”少女A”が大ヒットして人気作家コンビとなった。そしてそのコンビで曲を作ったチェッカーズがドカンとバカ売れし、時代の寵児となったわけだ。芹澤のワルっぽさ、不良っぽさの系譜が回り回って、時代の趨勢とフィットしていく様が今にしてよくわかる。



ちなみに”タッチ”の主題歌が大ヒットした岩崎良美のアルバムhalf time』も芹澤プロダクション。あとは『タッチ』『ナイン』の挿入歌では芹澤自身が何曲も歌っている。誰かコンピレーション作ってくれないかな。あと、2001年には芹澤自身による”タッチ”のセルフカバーもあった。

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あと芹澤廣明名義のソロでは1987年にポニー・キャニオンから『Million Stars』をリリース。チェッカーズもの、”Song for U.S.A.”、”雨に消えたソフィア”、” ジュリアに傷心(ハートブレイク)”のセルフカバーが素晴らしい。情念の入り込まないクールなボーカルに独特の個性を感じてしまう。シンガー・ソングライターとしての作品をもっと聴いてみたかった。

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2016-07-17 Eric Clapton / I Still Do

markrock2016-07-17

[] Eric Clapton / I Still Do (Bushbranch/Surdog / 2016) 00:25


今年の忘れ得ぬ来日公演に行った流れで紹介しようと思い、張り切って予約までして入手したものの、日々増殖するレコードに埋もれて、やっと封を切ったという…いやはや、いけません。ジェフ・ベックの新譜を聴いて、クラプトンのことを思い出した次第。そう言えばジェフの方、個人的には抜群にロックで良かった!とはいえ色々賛否もあるようだけれど、もはや此処まで来ると、今回は駄目だとかあーだこーだ言ってる暇ないですからね。もう70過ぎてますから。赤ちゃんみたいなもので「笑った!」とか「立った!」とかそういう次元で感動しないといけません(失礼!)。結局自分の抱いている全盛期のイメージに被りつつ、ちょっと現代的だったりしないと満足しないファンというのは一定数いるものだけど。でもとうに70も過ぎて、たぶん本人はそんなことを期待されても困る…という感じなのではないかな。

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クラプトンもまさにそんな感じで。いつになくリラックスしてマイ・ウェイを貫いている。2枚組LPで入手したけれど(ダウンロード・カード同封)、通常LPの33回転ではなく、シングル盤の45回転仕様になっており、一瞬トレースして焦った。A〜D面にそれぞれ3曲ずつ12曲。音を良くしようと言う意図がわかる。冒頭A面の3曲、リロイ・カーの”Alabama Woman Blues”、JJケイルの”Can’t Let You Do It”、90年代的なコンテンポラリー・アコースティック・ポップ路線の”I Will Be There”(ポール・ブレイディのカバー)からして、全てのファンを満足させる作り。今までのスタイルを自然に並べた感じで。ちなみに”I Will Be There”には、アコギ&ボーカルで共演する”Angelo Misterioso(アンジェロミステリオーソ)”なる人物がクレジットされていて、かつて”Badge”を共作したジョージ・ハリスンの変名” L'Angelo Misterioso”を類推させるネーミングだけに、ジョージの未発表音源なのでは?なんていう憶測も流れたけれど。実際は日本公演において同曲で共演したエド・シーランであるようだ。何でもエドのレコード会社がその仕上がりを気に入らなかったようだ。エドはエリックをレスペクトしているから、変名で参加したのだろう。

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ちなみにバンドはアンディ・フェアウェザー・ロウやクリス・ステイントン、ポール・キャラック、ダーク・パウエルといった先日の来日公演メンバーにサイモン・クライミーらも加わって。来日公演でマンドリンアコーディオンを従来のロック・サウンドに加えて、異常な目立ち方をしていたダークだから、本作に加わってそのサウンドが再現されていると期待したけれど、そこは肩すかしをくらった。そこまで目立っておらず残念。あの来日公演のブルーグラスを思わせるクラプトン・サウンドは結構貴重だったかも。

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その他、自作の”Catch The Blues”が良い雰囲気だったり、スキップ・ジェイムス!やロバジョンを挟んで、ザ・バンドのようにも聴こえるボブ・ディランの”I Dreamed I Saw St.Augustine”があったり(コレが個人的にはベストかな)。そして”I’ll Be Alright”、コレは聴いていて気が付いたけれど、公民権運動アンセムだった”We Shall Overcome”の原曲ですね…ちなみにプロデュースは泣く子も黙る名匠グリン・ジョンズということで。ジャケットの写真からアナログな機材を使ってある意味贅沢にレコーディングされていることがわかる。歌詞は本人の意向で掲載無し。現代は情報過多な時代じゃないですか、その一方、人々は情報量そのものに価値を見出さなくなってきている。「それが何?調べれば今すぐわかることだけど。」っていう。これが昨今絶賛進行中の情報革命というパラダイム・シフトにあたるわけで。従来情報量を売りにしていた部分も多々あった音楽評論を、誰も有り難がらなくなってきた現状も、その辺に理由があると思っている。だけど、今回のクラプトンみたいに、歌詞はなし、ゲスト参加も変名で秘密、みたいなやり方もちょっと面白いなと思ったり。ちょっとググってみてもわからない、そんな時にこそ想像力の翼が羽ばたき出す…なーんて。

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2016-07-15 The Rides / Pierced Arrow

markrock2016-07-15

[] The Rides / Pierced Arrow(429Records / 2016 ) 23:07


おっ!と思ってしまった。アナログの方が出音が良かったときはちょっと感動する。スティーヴン・スティルスがCS&Nとは別に作ったトリオ、The Ridesの2作目(前作『Can’t get Enough』のレビューはこちらに→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20130917)。CDはすでにボーナス・トラック入りの日本盤もリリースされていて、それも買って何度か聴いていたけれど。アナログの音が何とも良い感じだったから。王道すぎるぐらいのアメリカン・ロックだから、フィットするに決まっているけれど。

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ティルス以外のメンバーの一人は若手ブルーズギタリスト、といってもすでに今年で38歳のケニー・ウェイン・シェパード。そしてもう一人は大御所キーボーディスト、バリー・ゴールドバーグ。フォーク・ロック期のディランとの活動や、エレクトリック・フラッグ、そしてアル・クーパーにマイク・ブルーム・フィールド、今回再び組んだスティルスとのスーパー・セッションなど、ニュー・ロック期の最重要ミュージシャンの一人だ。ベースはCS&Nのツアー・サポートをやっていたケヴィン・マコーミック。3人の共作およびケヴィンを加えた4人の共作が10分の6。とはいえ実際メロディ・ラインやメイン・ボーカルから考えて、どうにもスティルス色は強いんだけれど。ケニー主体で作った”By My Side”は90年代以降のCS&NやCPRの色もあって、そういったスティルスがハモりやすそうな曲をケニーが作ってあげる辺りのレスペクトが、素敵だなと。親子くらい年の差があるわけだから。

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ジェリー・ゴフィンとバリーとの共作でR&Bスタンダードとなった”I’ve Got To Use My Imagination”のケニー歌唱も激シブな仕上がりで。ジェリー・ゴフィンの自演版もなかなかだったけれど。B面に行くと、ゲストでファビュラス・サンダーバーズのキム・ウィルソンがブルーズハープで加わった”Game On”とか、バッファロー時代の楽曲を思わせるスティルスの”Mr.Policeman”がツボだった!ラストはウィリー・ディクソン作のスタンダード”My Babe”。CDのボーナス・トラックにはスティルスの新曲とポール・バターフィールド・ブルース・バンドの”Born In Chicago”(もはやホワイト・ブルーズの古典…)、そしてジミー・リードのカバーということで、そちらも見逃せないモノばかりだったけれど、レコードのまとまりとしてはボーナス抜きの10曲がシンプルでやっぱり、気持ちいい。



それにしてもほとんど新曲ばかりの新譜が出てくるとは思わなかった。一時期はどうなるかと思ったスティルスも、老いてなお盛ん、71にして枯れたくないっていう気概がちょっと凄いなと思ったり。

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LPのプレス自体は新品なのに普通に擦り傷があったり、アメリカ盤ならではの荒っぽい感じもあるけれど(笑)、往年のジャズファンみたいにロックを聴く人もまさかいないでしょう。アンプのツマミを緩めて、バカでかい音でガツンと鳴らすのが最高に良い。ダウンロード・カードは付属していなかったけれど、3人のサイン入りの盤というのが相当数出回っているみたいで、アナログはそちらを手に入れてみた。最近フィジカルCDの売り上げが落ちているからだろうけれど、アメリカを中心に、相当サイン盤を売っているミュージシャンが増えている。でも、そもそもダウンロードじゃないブツの良さはこういった所にあったわけだから。

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そう、最近アナログを手に入れたオウ・ゴー・ゴー・シンガーズ。バッファロー・スプリングフィールド結成前の、若き日のリッチー・フューレイとスティーヴン・スティルスの記念すべきデビュー盤だ。スティルス歌唱の” High Flying Bird”は何々シンガーズ、といった当時の数多のお利口さんフォーク・グループの範疇を超えたブルーズ・マインドに驚かされる。当時19歳。これも贔屓目抜きで、CDよりアナログの方が音が良かった。たぶんそこまで手の込んだリマスターがなされていなかったからだろうけれど。いずれにしても、ここから52年の時を思いつつ…新作を聴くのも感慨深い。

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2016-06-30 Cheryl Ernst / Always Beginning

markrock2016-06-30

[] Cheryl Ernst / Always Beginning ( Bell /1973 ) 21:58

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ベル・レコードから1973年にリリースされた女性SSWシェリル・アーンストの唯一作。プロデュースとアレンジはボーンズ・ハウ。シェリル60年代後半からハウの音楽出版社Hello There Musicに雇われていた。何と言っても冒頭の組曲”Fantasia Suite/Long And Sleepless Nights”が一人フィフス・ディメンション様相で素晴らしい。ボブ・アルシヴァーのオーケストラ・アレンジがソフト・ロックのお手本のようで。日本の赤い鳥のソフトロック作にもアルシヴァーのアレンジがあった。



弾むような演奏を聴かせるのは、ルイ・シェルトンやハル・ブレインといった面子。ヒッピーガールの雰囲気だけれど、曲はそこまでダウナー&サイケデリックではなく、その辺りの明るいポップ・センスがボーンズ・ハウに好まれたのだろう。2曲はハウの元でやはりソングライターとしての腕を磨いていたジェフリー・コマナーの曲。今にすれば、全てシェリルのオリジナルで揃えても良かった気がするけれど。ちなみにジェフリーの曲はフィフス・ディメンションのアルバムなどに取り上げられたのだが、シェリルは、というと、ソングライターとしての才能を嘱望されていた割には、他アーティストへの提供曲は少なく、むしろSSWとしてリリースしたこの作品が唯一作となってしまったのは残念だ。もちろん、キャロル・キングジョニ・ミッチェルローラ・ニーロにしろ、時代は職業作曲家というより、シンガー・ソングライターにシフトしていたからなのだろうけれど。1970年にはダイアナ・ロス初のソロ・アルバムのセッションで”The Interim”が取り上げられるも、アウトテイクになってしまったみたい。エクスパンデッドCDに入っているけれど、一聴の価値がある。

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とはいえ、ハウの手引きで紹介されたジャズピアニスト、ジミー・ロウルズとの共作があった。ジミーと言えば、シンガーのバックではカーメン・マクレエとの『The Great American Songbook』やホーギー・カーマイケルの『Hoagy Sings Carmichael』などで知られている。シェリルは作詞家として呼ばれ、ジミーと”Looking Back”を作った。手元には1978年のキャロル・ストーンのレコーディングがある。

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ボーンズ・ハウのプロデュース作の棚を漁っていたら、女優ケリーガレットの1976年のアルバムに"He Moves Me"というシェリルの曲があった。なかなかファンキーな感じの曲。このアルバムにはハル・ブレインやマイク・メルヴォインなどが参加していた。

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2016-06-22 ロックの未来、人類の未来

markrock2016-06-22

[] ロックの未来、人類の未来 23:33



色々意見があろう所をあえて、突っ込むけれど。2016年フジロックに政治を持ち込むな、みたいな意見があったという先日のニッカンスポーツの記事(http://www.nikkansports.com/entertainment/news/1666182.html)。シールズの奥田氏やジャーナリスト津田大介氏が出演することに噛み付いた人がいるとか。こうした記事すら眉唾で読んではいるけれど、久々にあきれてしまった。善意共同体ではもはや無くなっているフェイスブックのコメント欄などは、余りに極端すぎるので馬鹿馬鹿しく、見ないようにしているけど(万物斉同だと思っているので…)、今回ばかりはと覗いてみると、政治的な音楽なんか聴きたくない、みたいな、ナイーブさを装いつつの典型的な左翼アレルギーみたいな感じで。



いやしかし、ですよ。モノを作って世に問う人間が命がけで社会に何かを問いかけようとすることが、既にある種の政治性を帯びているということに何らかの自覚はないのだろうか。表現の仕方は直截・隠喩色々だろうけれど。例えばマドンナレディー・ガガ、あるいはタモリという存在そのものにだって政治性はある。ましてや今回焦点になっているのはロック・ミュージックですからね。「カウンター・カルチャーとは?」とか「ウッドストックに至るロックの歴史」なんぞをわざわざ説明しなきゃいけない時代になってきたと言うことなのか?「No Nukes」というイベントがありまして…とか。そんなことすら直感的にわからないくらい、感性が鈍ってしまったのか…

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まあ色々絶望的な時代の気分を象徴していると思う。そう、先日思想家内田樹さんが新聞に書いていたけれど、高度成長期までは互いを成長させるために好まれた「議論」というものは近年、相手に深い知識を与えることになるため、好まれなくなったと。自由競争・自助努力・自己責任を重視する昨今の新自由主義を勝ち抜き、利益を得るためには、相手議論をすることは損になる、ということなのだろう。先細りになる有限資源を奪い合い、少しでも多く分け前をもらうために、込み入った議論は避ける…なんだか人類の物語は、ずいぶんと悲しい結末に達しようとしているようだ。まあそれでもぼくは、無駄な議論を重ねながら、レコードを聴き、こんなブログを書いている。

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2016-06-19 アナログで聴く、デビュー・アゲン…

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[] アナログで聴く、デビュー・アゲン… 13:25

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大滝詠一『デビュー・アゲン』のアナログ。限定と言うことでかなり早めに予約していたけれど、そこまで焦らなくても大丈夫だった。結構在庫はあるような雰囲気、今のところは。往時のナイアガラを模したリヴァーシブル・ジャケット仕様。最後は自らを引用するという、これも遊び心かな。ディスコグラフィーの内袋とステッカー付属。ハーフ・スピード・カッティングを施したのは、ビートルズ1』なんかを手がけた、ロンドンメトロポリスマスタリングのティム・ヤング。

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気になったのは音だけれど、ふくよかなボーカルの機微が伝わる素晴らしいもの。CDで聴いたときは感じなかった低音の丁寧な歌い回しを表現できていて。現代的というより、ジャケットそのままの、80年代ナイアガラな感じがしたな。っていうか音源そのものが80年代録音中心だからだろうけれど。いずれにしても、デモテープ、という意味合いを超えて、ボーカリストとしてレコーディングしたという、その音源の魅力が表れている。あと、CDを聴いたときに感じた、レコーディングのコンディションや時代のバラツキを余り感じなかった。とはいえ、我が家の現状の再生環境がCDよりもアナログ向けにセッティングされているからそう聴こえるのかもしれないけれど…すみません、無責任ながら、細部まで検証することはせず、素直に楽しむことにする。

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でも、ボーカルが音像の中心にあるせいか、大滝さんのパーソナルな部分がいつになく垣間見えるようで、ちょっと泣けてきてしまう。