いしうらまさゆき の『愛すべき音楽よ』(ブログ〜CD&レコードレビュー)

2018-09-10 杉田二郎 / 旅立つ彼

markrock2018-09-10

[] 杉田二郎 / 旅立つ彼(東芝EMI / 1973) 10:06


日本でもアメリカでもイギリスでも、1973年位までのロック音盤にハズレはない。シューベルツ〜ジローズ杉田二郎の70年代初頭盤も素晴らしい。ソロとしては2枚目にあたる『旅立つ彼(ひと)』は佐々木勉のタイトル曲を除き、作詞・なかにし礼、作編曲・深町純(”ちいさなお前”は深町の詞曲)というトータリティに優れたプログレッシブな盤。何よりボーカリストとしての杉田の魅力を存分に味わえる。当たり前ですが、すごく良い声。

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タイトル曲の”旅立つ彼”はニューロックなアレンジ、そして”真夜中の青春”はブラス・ロックになっていたり。曲間をあえてしぼっているため余韻を与えず、目まぐるしい展開でアルバムが進行する。曲によってはソフトロックのたおやかさもある(ジローズのファーストもそうだったけれど)のはこの時代ならでは。参加陣を見てみると、ドラムスにチト河内、ベースは岡沢章(アキラ)、江藤勲、後藤次利、ギターに高中正義水谷公生、矢島賢、石川鷹彦、そしてエレピ・ピアノオルガンシンセエレクトリックハープシコード、メロトロンなど鍵盤全般は深町純。そしてバックグラウンド・ボーカルにはソウルフルな自演盤もある岡沢章、キン肉マンのテーマでお馴染みの串田アキラ、そして売れるまでは杉田が食わしていたというオフ・コース(小田和正鈴木康博)の二人。"死にたい時もある"で特徴的なオフコースのコーラスを聴ける。

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お陰様で拙著『哲学するタネ【東洋思想編】』、全国のジュンク堂丸善などで取り扱って頂けているようです!

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地元の三鷹啓文堂でも!ありがとうございます!

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アマゾン

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honto

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2018-09-01 Aretha Franklin / Sings The Great Diva Classics

markrock2018-09-01

[] Aretha Franklin / Sings The Great Diva Classics ( RCA / 2014 ) 09:51

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8月31日のアレサ(アリーサ)・フランクリンの葬儀。スティーヴィー・ワンダーが"make love great again"なんて言っていた。本当にそうだと思う。「アメリカ」などという国家とか、家族だとか、たかだか近代に作られた価値は脆いものだし、素直に信じてはいけないのかもしれない。分断する共和党トランプよりも公民権運動を支えた民主党ケネディ時代のラブ&ピースの感性が60年代ソウルやロックには通底している。

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そんなことで今更ながら…アレサが亡くなったことを思い返して。糸井重里さんのツイッターで危篤の報を聞いたのが初報。ただその日の朝、アレサの2014年『Sings The Great Diva Classics』が急に聴きたくなって、久々に探し出して聴いていたものだから、嫌な予感がした。前にこんなことがあったのはジョン・デンバーかな。高校生の頃、ジョンのCDを初めて買ってきた翌日、飛行機事故で亡くなったのだった。朝、父親に「ジョン・デンバー死んだぞ!」と言われて起こされたのを覚えている。

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で、今日になってやっと落ち着いてアレサを聴く気になれた。好きなレコードは色々あるけれど、『Live At Fillmore West『The Girl’s In Love With You』がどうにも突出している。

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80年代作もよく聴いていたけれど。これらはLP。CDは最近とうとう出すのが面倒になってきて、近作しかすぐ手に取れない状況。『Sings The Great Diva Classics』も10年前ならもっと売れていたかもしれない。クライヴ・デイヴィスが手がけた、ロッド・スチュワートジャズソウルクラシック・カバー集のアレサ版という体。本当にクライヴ・デイヴィスとアレサ自身が共同プロデュースを務め、当時復活したところのベイビーフェイスなんかも参加している。”I Will Survive”なんかを割とコンテンポラリーなアレンジでやっているんだけれど、シャウトしまくるボーカルを聴いていると、まだこの時は元気だったのかな、と。バリバリ、フェイクしながらのアレサ節。ここに入っているグラディス・ナイト&ザ・ピップスでヒットした”Midnight Train To Georgia”のカバーがとても良い。大好きなソングライター、ジム・ウェザリーの曲。とはいえ注目すべきはアデルの”Rolling In The Deep”やアリシア・キーズの”No One”のカバー、なのかもしれないけれど。



それにしてもソウル音楽は過去のものになってしまった。海外でもソウルは90年代以降、風前の灯のようなジャンルになっているし、特に日本のシーンは厳しい。ファンの方にはタイヘン申し訳ないけれど、そういった音楽がルーツの一つになっているはずの、現代日本アカペラ・グループなどに取り立てて琴線が反応したことはない。ただそれは今に始まったことではなく、10代の頃から同時代の音楽に対しては大抵そんな風だった。余計なお世話だと言われそうだけれど、歌を歌いたい理由がそれほど伝わってこないからかもしれない。でもなぜ?恵まれすぎているから?あるいは何事も消費されていく時代のせいだから?それも今に始まったことではないのだけれど…アレサ・フランクリン…黒人として、ひとりの女性として、歌う理由しか見当たらない歌…レイ・チャールズもそうだったけれど。二人が出演したブルース・ブラザーズも強烈だった!大学生の頃、アレサが歌う"Think"のシーンを友達の下宿で観せられて、ソウルに目覚めたんだったか。そういえばアレサの夫役だったマット・マーフィーも6月に88歳で亡くなっていたな…。

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2018-08-25 哲学するタネ【東洋思想編】(石浦昌之 著)9月上旬発売!!

markrock2018-08-25

[] 哲学するタネ【東洋思想編】(石浦昌之 著)9月上旬発売!! 14:23



音楽ブログにて、哲学の本のお知らせは唐突かもしれませんが、9月上旬に初めての単著となる哲学するタネ【東洋思想編】』明月堂書店)を出版する運びとなったので(2017年10月から始めた同名インターネットラジオ番組の書籍化)、お知らせできればと思います。

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とはいえ出版のキッカケは音楽と深い縁がありました。編集から装丁校正や進行管理までの全てを手がけて頂いたマルチな編集者・杉本健太郎さんは、私の大学時代のサークルの先輩にあたります。何を隠そう杉本さんと私は、今は亡き渋谷・ジァンジァンが閉館するまで、元・古井戸加奈崎芳太郎さんのライブの「追っかけ」をやっていたのです。さらに、1960〜70年代文化に耽溺していた90〜00年代の私です。大学時代はロックをはじめとした60年代アメリカのカウンター・カルチャーを研究対象とし、寺山修司といった日本のアングラ文化や漫画雑誌ガロ』(つげ義春白土三平林静一永島慎二佐々木マキ水木しげるから根本敬蛭子能収みうらじゅんしりあがり寿までを輩出した!)に心酔していたのです。



今回のお話を頂いた際、杉本さんに連れられて出版元の明月堂書店のオフィスに足を踏み入れたときは目を疑いました。そこには『ガロ』のバックナンバーが全て揃っていたんです。それもそのはず、社長の末井幸作さん(『素敵なダイナマイトスキャンダル』の末井昭さんとはただならぬ関係にある)は『ガロ』の創業者長井勝一の意志を継ぐ青林工藝舎を立ち上げた方の一人だったのです。しかも末井さんから「赤色エレジー」の林静一さん作の陶器までもを頂戴してしまい…これこそ運命だと思いました。



本の中にも書きましたが、哲学と音楽はよく似ています。どちらも人生にあってもなくても良いものである、などと言いたいのではありません。語りえぬものについて語ろうとしている点、人間性を深く追求している点、世界をより良いものにしようとしている点…世間に流布する一般的定義や解答に疑いを持ち、批判・吟味の上で自分なりの答えをオリジナルに表現するというプロセス…それに触れた人々の前には今までとは全く違う様相の世界が立ち現れ、そこから新たな思索・創作が始まるという相互作用…私が哲学や音楽に惹かれる理由はそんなところにあります。ですから今回哲学の本を作ったことと音楽制作とは、自分にとってほとんど差がありません。



ただ、私が心配しているのは、哲学や芸術を切り捨てんとする、昨今の時代の風潮です。高校レベルで唯一哲学を学べる授業である「倫理」という科目は必修から選択へと格下げされます。これはグローバル企業の要請を受け、政府国立大学文系学部を再編し、哲学文学のような文系学問が風前の灯のような状況になっていることと地続きです。中高では英語の時数などが増える一方で、芸術の時数が徐々に減らされていることは、教育関係者なら周知のことと思います。「ゲゲゲの鬼太郎」でおなじみの漫画家水木しげる太平洋戦争従軍する直前の手記に「芸術が何んだ 哲学が何んだ 今は考へる事すらゆるされない時代だ」とありました。そこには、戦争を前にして人間らしい感性が切り捨てられていく現状に煩悶する水木の姿が生々しく記されています。グローバル経済を勝ち抜く企業「戦士」を国家と多国籍企業が手を組んで育てようと躍起になっている昨今、哲学も芸術も「今は考へる事すらゆるされない時代」なのかもしれません。

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とはいえ、くさっている場合ではありません。哲学する基本知識を「タネ」(つまり”ネタ”)と呼び、高校「倫理」の学習内容を軸として、混迷の時代にあって答えのない問いに答えを求め続ける「タネ蒔き」をしようじゃないか、というのが本書の基本姿勢になっています。全70章の内、第1弾は【東洋思想編】(1〜32章)です。原典引用満載で384頁という特大ボリュームになってしまいましたが、思想・哲学という堅いジャンルながら、ラジオを聴くような読みやすいスタイルで記述するよう心掛けました。「日本」という国の成り立ちとその思想はもちろん、仏教を学びなおしたい、孔子の『論語』を読み直したいといったニーズにもお応えできるかと思います。アマゾン及び全国の書店でも予約注文が始まりました。何卒よろしくお願いいたします。

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明月堂書店[9月の新刊のご案内]哲学するタネ【東洋思想編】(石浦昌之 著)9月上旬発売!!

http://meigetu.net/?p=6974

アマゾン

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【目次】

1章  日本とは

2章  古代日本人の思想

3章  日本文化の特色

4章  日本の風土 日本人の美意識

5章  仏教の受容

6章  平安仏教最澄空海

7章  鎌倉仏教(1)(浄土信仰法然親鸞一遍

8章  鎌倉仏教(2)(栄西

9章  鎌倉仏教(3)(道元日蓮

10章 近世日本の思想(1)(朱子学

11章 近世日本の思想(2)(陽明学、古学派)

12章 近世日本の思想(3)(国学神道

13章 近世日本の思想(4)(民衆思想)

14章 近世日本の思想(5)(蘭学和魂洋才、水戸学

15章 福沢諭吉

16章 中江兆民植木枝盛

17章 キリスト教

18章 近代文学(1)(ロマン主義自然主義

19章 近代文学(2)(森鷗外夏目漱石白樺派宮沢賢治

20章 社会主義

21章 国粋主義

22章 大正期の思想

23章 日本の独創的思想(和辻哲郎西田幾多郎九鬼周造

24章 日本の民俗学柳田国男折口信夫南方熊楠柳宗悦

25章 戦後日本の思想(丸山眞男加藤周一大江健三郎坂口安吾吉本隆明村上春樹

26章 バラモン教

27章 仏教(1)

28章 仏教(2)

29章 中国思想(1)(孔子

30章 中国思想(2)(孟子荀子韓非子墨子、その他の諸子百家

31章 中国思想(3)(朱子王陽明

32章 中国思想(4)(老子荘子

2018-08-23 Albert King / Blues For Elvis

markrock2018-08-23

[] Albert King / Blues For Elvis ( Stax / 1969 ) 19:05

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普通に良音だな〜と感心しているのはブルーズ三大キングのひとり、” Born Under A Bad Sign”で知られるアルバート・キング1970年作でエルヴィス・プレスリートリビュート作。とはいえこのLPはオリジナル(原題『King, Does The King’s Things』)ではなく、1980年『Blues For Elvisのタイトルで再発されたもの。安く落ちていたので捕獲してみた。私はレコーディングを除き、極力ヘッドフォンやイヤフォンで音楽を聴かないのだけれど(なぜかアタマが痛くなる…)、こういうシンプルなやつは近所から苦情が来るくらいの大音量のスピーカーで聴かないとダメだな、と思う。実際いまそんな音に酔いしれているところ。


ドナルド・ダックダンとアル・ジャクソン・JrというブッカーT&ザ・MGズのリズム隊がプロデュースとアレンジを務める。スティーブ・クロッパーがいないぞ、と思うかもしれないけれど、そこはブルーズ三大ギタリストアルバート・キングがいますから(同年にスタックスからリリースされた『Jammed Together』アルバート・キング、スティーブ・クロッパー、ポップ・ステイプルズ名義でこれまた良いアルバム)。”Hound Dog”はエルヴィスというよりオリジナルのビッグ・ママ・ソーントン版を思わせるけれど、”All Shook Up”や”Jailhouse Rock”など、ロックを感じさせる演奏もあるあたり、1967年にスタックスに移籍して白人ロック世代の若者にアピールしたアルバートらしい。”That’s All Right”、”Heartbreak Hotel”、”Don’t Be Cruel”、”Blue Suede Shoes”、そして”Love me Tender”まで…エルヴィスという最も黒っぽかった白人が、それこそビッグ・ママ・ソーントンやアーサー・クルーダップ、オーティス・ブラックウェルやジャッキー・ウィルソンなどの黒人ミュージシャンから学び取ったものを逆の経路で辿っていく感じが面白い。オーティス・レディングの有名フレーズなんかを忍び込ませているアレンジも遊び心がある。時代を超えたハリのある音を聴いていると、エンジニアのうちの一人、テリー・マニングはやはり凄い音を作っているのかな、と思ったり。彼は1970年に名ソロ『Home Sweet Home』を出している。

2018-08-19 Sunrise / Same

markrock2018-08-19

[] Sunrise / Same ( Crunch Records / 1974 ) 17:29

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プロデューサージョー・ヴェネリ(Joe Venneri)に引っかかって買ってみた一枚。1974年、CrunchというNYの知らないレーベル。正直ジノ・ヴァネリのキーボーディストのジョー・ヴァネリだと勘違いしていた。"ヴァネリ"ではなく当のジョー・"ヴェネリ"は「ライオンは寝ている」で知られるトーケンズのギタリストだった人のようだ。Crunchの旗揚げリリースは1973年のダニー&ザ・ジュニアーズの”At The Hop”のセルフ・リメイクの45回転だった模様。で、翌1974年にジョーがデビューさせた5人組がこのサンライズ。聴いてみて驚いた。時代としてはちょっと遅かったのだろうけれど、パワーのあるソフトロック〜MORな演奏と流麗なメロディ、全員で歌うコーラスがとにかく抜群で駄曲皆無。何よりリード・ボーカルのリック・ライデル(1979年にソロを出し、チャイ・ライツのシングルB面を書いている)の歌声がバリー・マニロウをさらに溌剌とさせたようで素晴らしい。”Doesn’t She”なんてのはアート・ガーファンクルの”Second Avenue”のような迫力。”Got To Find The Line”は大人が歌ったジャクソン5みたいな色でブルーアイド・ソウルAOR感覚も先取りしている。ジャズ・ヴォーカリーズのような”Moonlight And Memories”もシャレている。キーボードのロイ・ブレイヴァーマンは後にテレビ・映画音楽の世界で活躍し(http://www.bravermania.com/about.html)、ギターのウォルター・バーはジャズ・シーンで70年代後半から80年代前半にかけてMuseから3枚のリーダー作をリリース(ロイ・ブレイヴァーマンも参加)、そしてドラムスのポール・シュワルツはロサンゼルスのレコーディング・スタジオStudio56のオーナーになったようだ。こういうレコードがCD化されることはないだろう、たぶん。

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2018-08-07 スーパーバイザー・ツカモト・バンド / ひび割れた心には君のかんだ

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[] スーパーバイザー・ツカモト・バンド / ひび割れた心には君のかんだチューインガム( HANGER MAN RECORDS H-74099 / 1979 ) 17:45

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ガール・ポップ・シンガー須藤薫1980年CBSソニーからデビューする前に参加していた、シティ・ポップ系の自主盤(としばしば語られる)。全体的にサウンドのレベルが高く、トラックによってはジャケットからは想像できない驚愕の音。11曲中10曲を手がける主人公はつかもとひろあき。30代になった記念に自主制作した1枚であるようだ。1971年録音!という”白いヨット”、1977年録音のタイトル曲” ひび割れた心には君のかんだチューインガム”、そして”おじいちゃんの麦わら帽子”を除き、録音は1979年。フォーク風味のタイトルが共存しているのは、古い楽曲を含んでいるからか。GS風の”みどり色のマリー”なんてのも混じっていたり。

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そしてクレジットを見てその演奏の完成度に納得。スペクトラムに加入する奥慶一がキーボードを、「谷口雅洋」名義でCBSソニーからデビューする谷口守がベースを。

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そしてギターには小林泉美 & Flying Mimi Band、笹路正徳らとのマライアでも活躍した土方隆行が参加!笹路正徳といえばスピッツをブレイクさせたプロデューサーとしても有名だけれど、土方の方もその繋がりもあってかスピッツ空も飛べるはず」のプロデュースをやっていた。あとは大所帯バンドはにわオールスターズで知られる仙波清彦の名も。やっぱり注目してしまうのは須藤薫がメインボーカルを務める”レイニーデイ ブルース”と、”そっと、海へ”(井上昇の曲)。鈴のようなエヴァーグリーンな歌声。この歌声がもう生では聴けないと思うと…。ボッサ歌謡テイストの”そっと、海へ”が秀逸。

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つかもとひろあきは作詞家として、CBSソニーから1984年にデビューした爆風スランプに”東京アンギラス”、”うわさに、なりたい”を提供。確かめてみると、爆風スランプのアルバム『よい』にもクレジットされていた。あ、手元にある『よい』、落書きのようなサンプラザ中野くんのサインも入っていた。

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その後のつかもとはNHKみんなのうた」の童謡やCMソングを手がけることになる。

2018-08-04 Graham Nash / Over The Years…

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[] Graham Nash / Over The Years… ( Atlantic/Rhino / 2018 ) 10:44

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なぜこのタイミングになったのか、と思ったけれど、グレアム・ナッシュホリーズを脱退した1968年から今年で50年だった!まさに長きに亘る”Over The Years”なキャリアを総括した2枚組ベスト盤。しかし既に2009年、Atlantic/Rhinoから未発表テイク・ミックス・曲を含む3枚組の決定的アンソロジーホリーズ時代含む)が出ていた(『Reflections』)。

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今回の2枚組は、そのアンソロジーからは除かれていた(別で出すつもりだったのだろう)CSN・ソロ初期・クロスビー&ナッシュ時代(1968〜80年)のデモを収めたDisc Two「THE DEMOS」(3曲除く12曲が初出)が目玉になっている。とはいえ、基本的にはホリーズ以降のキャリアを総括するナッシュ曲のベストDisc One「The Songs」を楽しみたい。何といっても曲がキャッチーで良い。CSNで一番初めに好きになったのはナッシュだったりする(そこからスティルスに行き、最後はクロスビーに行った)。ジェリー・ガルシアのペダルスティールが印象的な”I Used To Be A King ”は、オリジナルのグリン・ジョンズ・ミックスでも、『Reflections』収録のナサニエル・カンケルの2002年ミックスでもない、1971年ナッシュとラリー・コックスによる生のままのミックスを採用するという微妙なこだわりも(もう1曲"Better Days"が未発表ミックス)。リタ・クーリッジらのソウルフルなコーラス隊を強調させるミックスのテイクもあって、なにやら今っぽい。音の粒を揃えていて、ラスト2016年(録音は2014年)の”Myself At last”まで通して聴いて全く違和感がない。80年代のシンセ多用のトラックを意識的に取り除いているからかも(本人も余り気に入っていない??)。

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そしてDisc Two「THE DEMOS」はホリーズで拒否された”Marrakesh Express”のロンドンアパートメントでのラフなデモからスタート。このデモの出来にガッカリしている人もいるようだけれど、そもそも一般的にデモには色んな種類がある。自宅のテレコで録ったようなラフな弾き語り(詩も出来ていないような)に始まり、スタジオで録音前に仕上がりを確かめる(あるいは参加ミュージシャンを吟味する)、それなりにカチっとしたデモもある。これは前者。ワタシはむしろこういうのが聴きたかった。かつて聴きまくったCSNの4枚組ボックスが初出の未発表曲”Horses Through A Rainstorm”(テリー・リードとの共作)もロンドンでの弾き語りヴァージョンで。”Teach Your Children”やOur House”もあるけれど、ビートルズアンソロジーというよりはジョン・レノンアンソロジーような仕上がりかと。”Pre-Road Downs”は結構いい(よーく聴くとクリック音が聴こえる)。”個人的に嬉しかったのは、ドラッグでデヴィッド・クロスビーが機能しなかった時代の”Wasted On The Way”のギター弾き語りデモ。ここでは、CSNのオリジナルにも参加しているポコ〜イーグルスティモシー・B・シュミットが参加した、ティモシー、スティルスナッシュの3声ハモが楽しめる。最高!

2018-08-03 Vol.7 Luna MG-60

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[楽器道] Vol.7 Luna MG-60 10:52


8年ほど前に「楽器道」というタイトルで、拙ブログで楽器について語っていたのを思い出した。当時は通りすがりの方からのコメントや質問があったり、ギター好きの人からの反響が大きかったことを思い出す。それも今は昔。楽器屋が潰れたり(わが町三鷹にあった三鷹楽器――往時は吉祥寺パルコにも出店していた――もとうの昔に倒産…)、そしてまさかのギブソンが経営破綻しちゃったりするという異常事態!そもそもギターソロなんか弾かない音楽表現になってきているし(そもそも現実生活ブルーズがないから、感情が平板になってきているのか?)、ギターをメインに据えたロック・ミュージックじたいが団塊世代と共にフェイドアウトしかけている。だとしても、ギターや楽器は、いつまでも人間と共にあり、フェイドアウトしようがないと思っている。実売店舗は確かに虫の息になっているのかもしれないけれど、かつての自分と同じように、ギターを背負った10代20代が街には溢れている。

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さて久々の今回は、一目惚れ状態で最近手に入れた古いミニ・ガット・ギター、Luna MG-60。MGはミニガットの略、60はおそらく当時の定価6000円ということだと思う。細身でマーティンの4分の3サイズのパーラー「5」みたいな雰囲気。ヤマハのギタレレよりはちょっと大きいという、絶妙に求めていたサイズだった。そして何より見た目。レキント・ギターのような白のピックガードが後付けにしては雰囲気が良い。鶴岡雅義的なムード歌謡を弾きたくなる感じ。ただ、チューニングはギタレレなどと違い、レギュラー。性能のいいミニ・ギターが溢れている今日この頃だけれど、30秒で即決。半ばジャンク品で1万円也。元の持ち主が入れ替えたのか、なぜかコルドバ・ミニのソフトケースが付いていた。

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Luna1950年代ハワイアン・ブームの際にウクレレで一世を風靡したメーカー。鎌野楽器が岡山県のルナ楽器に製造させていたものらしい。現在はFamousブランドで有名なキワヤ商会がLunaというブランド名を一応残している。ウクレレのブランドが復活したとき、デザインが最高で欲しかったけれど、それは買えずじまいだった。

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で、これはLunaながらギターだから、ハワイアンブームが終わった後、ギターを作ったものではないだろうか。MFという型番のミニ・フォーク・ギターも存在する模様。今手元にあるのはガット。MG-80というひとつ上位のミニ・ガットモデルは割と出回っていて、サウンドホールの装飾が少しだけ豪華な感じ。ボディ内に貼られたメーカーのラベルの色褪せから判断すると、1960年代のものではないかと思うけれど、どうだろう。ご存知の方がおられましたら、情報求ム。今でこそミニ・ギター花盛りだけれど、当時は結構珍しかったはず。


トップはスプルース、サイド・バックはマホガニー、いずれも合板。元の持ち主が相当磨いたと思われるけれど、指板とフレットはピカピカ。楽器愛ですね。何といっても飴色のスプルースは合板ながらオールドの味わい。古い国産アコギ特有の色合いだと思う。ただ当時の安価なギターの宿命か、ネックは少々順ゾリ、ブリッジには再接着跡があり、1箇所2mmほどの微妙なスキマのようなものが見えなくもない。まあそれは50年以上前のギターだから仕方ないとして、チューニングが狂いやすいのが致命的だった。たぶん元の持ち主もそれが理由で売ったんじゃないかな。さすがに閉口、万事休す。部屋のオブジェ決定か…とあきらめかけたのだけれど、ペグが原因だと気付く。

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そこでアリアの1000円くらいのペグAT-95Cを購入し(ミニ・ガットのサイズ的にこれしか嵌らなかった)、ドリルでグリグリ付け替えてみると、やっと狂わなくなった。しかも毎日弾いているうちにネックのソリのコンディションも良くなってきたのが不思議だ。しばらく弾かないとギターがスネるとよく言うが、それは嘘ではない。コンサート・ウクレレ感覚で凄まじく軽いのがいい。音の方はさすがに弾き込まれていて、合板ながら鳴る。8〜10フレットはハイポジションのCコードを弾き過ぎたのか、指板がえぐれている。これもまた50年の時を感じさせる。

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2018-08-01 Chibo & The Bayside Street Band / Bayside Street

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[] Chibo & The Bayside Street Band / Bayside Street (Polydor /1982) 00:38


2016年から書き続けていた哲学の本。全部で70章、約400ページ×3冊分の分量になってしまったのだけれど、やっと1冊分が校了。ネットでラジオ番組(極北ラジオ石浦昌之の「哲学するタネ」)をやらせてもらっている明月堂書店から9月上旬に発売予定となっている。詳細はまたお知らせしたい。


そんなこんなで、古今東西哲学書をレコードを集めるように集め、読み続ける日々が(いったんは)終わる。資料として集めた本の一部を段ボール2箱分ほど古本屋に売ると思いのほかスペースが空いたので、またレコード屋に向かう。

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7月末のセールが終わり、宴の後のようになった店内に、同じ人が売ったと思しき日本のニュー・ロック関係のレコが多数。まず驚愕したのがFlower Travellin’ Band『Satori』のオリジナルがCD以下の価格で投げ売りされていたこと。天割れ、盤やジャケもBマイナスレベルでコンディションはかなり悪かったけれど、掠め取るように買ってしまいました。長年憧れの盤だった。音は最高!

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そしてこれも心の中で「おーーー!」となってしまったのが、Chibo & The Bayside Street Bandの『Bayside Street』柳ジョージ(譲治)、陳信輝が在籍した本牧ブルーズ・バンド、パワーハウスのボーカリストだったChibo(Chibow)こと竹村栄司のバンドが1981年にリリースした、ロックン・ソウルな大名作。発見した瞬間から宝物に出会えたような気分。クレイジー・ケンこと横山剣さんも激レスペクトするChiboさんのソウルフルな喉とゴキゲンなロックンロールR&Bサウンドはどこを切り取っても好きな音だった。元々映画館でゴールデン・カップス・ワン・モア・タイム』ってやつを観まして(2004年かな)、そこでカップスについてコメントしていたのが、Chiboさんの初見。コワそうな人だな、という印象は今も変わらない。ワタシなんぞは一生かかっても及びもつかない、完璧な不良の音楽ですよ。カップスの映画のタイトルになった”One More Time”(ゼム時代のヴァン・モリソンの曲)も『Bayside Street』では演っている。”I’m Wishing For Tomorrow 〜明日になれば〜”っていう曲が良すぎて、先ほどから10回くらいリピート中。プロモーション資料も封入されていた。

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2018-07-23 Patrick Sky / A Harvest Of Gentle Clang

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[] Patrick Sky / A Harvest Of Gentle Clang ( Vanguard / 1966 ) 01:38

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グリニッジ・ビレッジのフォーク・シーンから飛び出してきたフォーク・シンガー、パトリック・スカイ。「Sky」は芸名。名門Vanguardから1965年『Patrick Sky』でデビューしている。

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その巧みなフィンガー・ピッキングと語り口は、ジョン・セバスチャンから高田渡までを虜にしたミシシッピジョン・ハートに音楽性の多くを負っている。アイリッシュネイティブ・アメリカンのルーツをもっている、というのもフォーク・シンガーらしい。彼とブルースマードックジョーン・バエズの妹ミミとデュオを組んでいたディック・ファリーニャ、そしてデヴィッド・コーエン(後のデヴィッド・ブルー)を売り出すために1965年エレクトラが編んだコンピレーションのタイトルが『Singer Songwriter Project』。フォークの様式を借りながら、自分の言葉を載せたところから「シンガー・ソングライター」という言葉やスタイルが生まれたんだった。

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『A Harvest Of Gentle Clang』は勢いに乗るパットの2枚目。ファーストと同じフォト・セッションで撮った写真をジャケットに使い回していることがわかる。A面ラストの”Keep On Walking”はバリー・コーンフィルドやボブ・イエリンなどを交えたジャグ・バンド風のライブ録音で、メロディは高田渡の”自転車に乗って”の原曲と思われる。

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Vanguardでの2枚に続き、Verve Forecastから2枚をリリース。1973年のAdelphiの『Songs That Made America Famous』まで、正統派フォーク・シンガーの良作を個人的にはよく聴いていた。

2018-07-21 Rod McKuen / McKuen Country

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[] Rod McKuen / McKuen Country ( Warner / 1976 ) 08:20


暑いですね。毎日汗、汗、汗が全くもってひどい。温暖化も一つ上の局面にきた感じ。被災地の方々にとっても辛い夏だと思う。普段通りの生活に一早く戻れることを願う。

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引越しで300枚くらいレコードを売ったのだけれど、売った分かそれ以上がここ2ヶ月でまた戻ってきてしまった。我ながらキリがない。先日は本当に久しぶりに下北フラッシュ・ディスク・ランチを訪問。そう、下北沢再開発の工事が進んでいてビックリした。色々買ったけれど、フラッシュらしいと思ったのがロッド・マッケンの『McKuen Country』。歳をとったらロッド・マッケンが分かる大人になりたい、と思ったものだった。詩人であり、俳優であり、ソングライター、歌手でもあるロッド。ジャック・ブレルのシャンソンを英語詩にした”If You Go Away”が特大ヒットし、スタンダードとなった。ロッドの曲はフランク・シナトラバーブラ・ストライザンド、グレン・ヤーブロー、アンディ・ウィリアムスなど色んなシンガーに取り上げられている。1969年オリヴァーが歌った”Jean”(ボブ・クルーのプロデュース)も印象深い。で、この『McKuen Country』はその名の通り、ロッド・マッケンがカントリーに挑んだという異色作。ただ、よく考えると並み居るカントリー・シンガーが既にロッドの楽曲を取り上げていた。中身はナッシュビル録音とカリフォルニア録音が混在。結構良かったのは”Silver Threads And Golden Needles”。ギター・ソロがベンチャーズか?と思ってしまったけれど、おそらくビリー・ストレンジ。他にもグレン・キャンベル、スニーキー・ピート、そして元々ギタリストだったドン・コスタがギターで参加。ピアノではピート・ジョリー、珍しいところではピート・シーガーやバリー・マクガイアが参加。そうそう、ジョン・デンバーが歌ったビル&タフィの”Guess I’d Rather Be In Colorado”やクリス・クリストファソンの”Help Me Make It Through The Night”も独自の美学で訥々と歌っていて◎。

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あと、最近手に入れたロッド・マッケンものは1972年にスタニヤンから出た『The Amsterdam Concert』プレゼンテーション・コピー。ロッド自身のハンド・ナンバリングとサインが左下に入っている。吉祥寺のレコ屋の500円箱で発見した。

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2018-07-06 Penny Marshall / Cindy Williams / Laverne & Shirley Sing

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[] Penny Marshall / Cindy Williams / Laverne & Shirley Sing ( Atlantic / 1976 ) 12:02

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1976〜83年に放映されたアメリカの人気コメディ・シリーズ「ラバーン&シャーリー」の主人公がリリースした盤。女優のペニー・マーシャル、シンディ・ウィリアムスがガールズ・デュオになり切って、アメリカでいう所の青春の60年代ポップスを歌っている。取り上げているのは”Da Do Ron Ron”、”All I Have To Do Is Love”、”Chapel Of Love”、”Sixteen Reasons”、”Graduation Day”、”I’m Walkin’”といった定番ばかり。結構パンチのある見事な歌唱で惚れ惚れしてしまう。何より重要なのは全編でドラムスを叩くハル・ブレイン!殆ど完コピのような往年のサウンドなのだけれど、このつんのめるドラムスがないと、やっぱりダメです。


オリジナルでは「ラバーン&シャーリー」にも出演していたコメディアンでミュージシャンでもあるマイケル・マッキン(レフト・バンクのメンバーだったこともある)作の”Five Years On”が最高。ニューヨーク・ポップスの色香を感じる名曲だと思う。



プロデュースはシドニーシャープとジミー・ハスケル。ちなみにシンディ・ウィリアムスはハドソン・ブラザーズのビル・ハドソンと結婚した。で、ペニー・マーシャルの方は、恋人ローリー・バードを失ったアート・ガーファンクルを80年代に献身的に支えた。結婚するには至らなかったのだけれど。


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2018-07-03 Art Garfunkel / Garfunkel

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[] Art Garfunkel / Garfunkel ( CBS / 1988 ) 16:53

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一番好きな声、と言われたら「アート・ガーファンクル」と答える。これは何十年たっても揺らがない。だから、病気で一時期声を失ったものの、少しずつ復調して、昨年も来日してくれたことを嬉しく思う。思えばアーティがきっかけで出会ったアーティストにジミー・ウェッブ、スティーヴン・ビショップ、ティム・ムーア、ギャラガー&ライル、マイク・バットらがいた。あるいはアーティのアルバムに携わったプレイヤーが参加した作品なら、内容に間違いはない…といった風にレコードを買ってきた。アーティはそれぐらいの目利きだと思う。だって、アメリカで一番のソングライターだと言っても過言ではないポール・サイモンを相棒にしていたくらいなのだから…。


そんなアーティの音源は聴きつくしてきたけれど、最近はカセットやらLPやらで聴き比べに興じている。例えば『Garfunkel』LP。今なら2012年の2枚組自選ベスト『The Singer』に止めを刺すにしても、それまでは日本でもCDで長らく定番だったアーティのベスト盤だ。シングル盤のみのリリースだったティム・ムーア(ダリル・ホールがいたガリヴァーのメンバー)作の”Second Avenue”はここでしか聴けなかった。ちなみにアートのシングル盤にはアルバム未収録(”Is this love?”とか)やヴァージョン違いがあって、CD化はおろか、まとまった形でいまだリリースされていない。”Is this love?”はローリー・バードという伴侶の死から立ち直る辛い時期のリリースだから、思い出したくないのかもしれないけれど。



脱線したけれどこの『Garfunkel』、1988年リリースでLPが少なくなっている時期。一般的にCD全盛の1990年から1993年前後くらいのアナログはリリース数が少ないため、希少化している。だからか、あまり日本の中古屋でも見かけない。そんなわけで、デンマークのレコ屋から取り寄せた。アメリカは送料が高騰していて、レコ1枚で買うと痛い目を見る。Lefty(これは日本でもアナログが出回った)収録の”When A Man Loves A Woman”からスタート。尺八のソロというのが日本では特に賛否両論だったみたいだけれど、60年代文化の残滓ニューエイジ文脈だと尺八はよく使われていたから、違和感は無い。抑制された品のいいサウンドとボーカル。70年代前半から80年代後半までの代表曲の数々は、時代の変化に耐えうるもので、並べても統一感がある。作品は一つの美学の上につくられていたことがよくわかる。これからも一番好きな声、と言われたら「アート・ガーファンクル」と答えるだろう。

2018-07-02 John David Souther / Same

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[] John David Souther / Same ( Elektra / 1972 ) 23:42

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グレン・フライ(ex.イーグルス)追悼、というタイミングでリリースされた3枚組(+DVD)ボックスセット『Above the Clouds』にロングブランチ・ペニーホイッスルグレン・フライJ.D.サウザー)のAmosからの唯一作が丸々収録されていた。

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国内初CD化、と謳っているけれど、韓国ビッグピンクの再発国内盤は出ていたような。内容の方だけれど、”The Heat is on”と”Desperado”が好きです、みたいなベストヒットUSA的なファンの人からすると、ロングブランチの仕上がりは不満みたい。byアマゾン・レビューですが(笑)。ただ、1曲目の印象が悪いだけで、2曲目以降はカントリー・ロックのプロトタイプを含む、重要な楽曲が含まれている。で、言いたかったのは、このリマスタリングの音が良かったということ。アナログを持っている人も聴き比べる価値はあるのかな、と思った。かつてVHSで出ていた1992年のライブ『Strange Weather/Live in Dublin』DVDになって収録されている。

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そんな気分でいたら、J.D.サウザーのファーストのアサイラムレーベル米盤オリジをレコ屋で800円にて発見。上がりますね〜。今まで持っていたオリジはコーティングジャケの英盤。

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こちらですが、写真では区別が付きませんね(笑)。ただJDを英盤で聴く旨みはあまりなかったわけで、とうとうご本尊を、という。で、分厚い音に圧倒される。聴き比べると英盤より音圧は上。グレン・フライとのデュオの延長線上にある本盤、レーベルメイトのネッド・ドヒニーアコギも加わる一方で、米盤だとグレンのデトロイト産のブルージーなエレキが特に強調されているように感じられる。そしてアサイラム創成期、ディレクションがしっかりしているから、仕上がりに普遍性がある。思えば大昔、中学生の頃ですか。所沢レコード屋でこのファーストのコロンビア輸入盤CDがナイス・プライス600円で落ちてまして。『Black Rose』『You’re Only Lonely』と共にかっさらうようにして買った思い出が。当時の自分が気に入った順番はリリース通り『John David Souther』『Black Rose』『You’re Only Lonely』の順だった。それも後々『Home By Dawn』(はじめはジャケットがないCDだけの!、しかもキズ盤をレコファンで買ったような…)を聴いた瞬間、全述の3枚は自己ランク2位以下に転落したという(笑)。その頃にはAORをよく聴くようになっていたんだった。

2018-07-01 Peter Asher & Albert Lee / Live

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[] Peter Asher & Albert Lee / Live ( 2018 ) 15:52

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先日の金曜日、ピーター・アッシャーアルバート・リーの東京コットンクラブ公演、行って参りました。ピーター&ゴードン時代は妹のジェーン・アッシャーポール・マッカートニーと付き合っていた縁でレノンマッカートニーの楽曲提供を受け、”A World Without Love(愛なき世界)”が全米No.1に。後にプロデューサーに転身し、ジェイムス・テイラーリンダ・ロンシュタットを手がけたピーター・アッシャーソニー・ミュージックの副社長までやっていたというだけあって、カリフォルニアの業界人そのものなチェックのド派手なスーツのいでたちで。ポール・ウィリアムスみたいな。一方のアルバート・リーは、ヘッズ、ハンド&フィート時代からの驚異のギター・テクニックを誇り、エリック・クラプトン・バンドでも活躍。エルヴィスはじめロックンロール経由(つまりジェイムス・バートン)でアメリカカントリー・ミュージックインスパイアされ、エミルー・ハリスのバンドをはじめ、本場アメリカに根付いた活動を行っていた。そういう意味でアメリカの音楽界に根を張ったピーターとも接点があったわけだ。


ピーターの相棒ゴードン・ウォーラーは亡くなっていて、チャド&ジェレミーチャドスチュワートと演ったりもしているみたいだけど、なぜあえてアルバートなのかと疑問に思っていた。でも、エヴァリー・ブラザーズから始まったステージやMC(ピーターは話し始めるとエピソードが止まらない!)を聴いていて氷解。アルバートは当然エヴァリーズに産湯を浸かり、ドン・エヴァリーのバンドにも加わり、1983年のエヴァリーズ再編バンドのギタリストにも抜擢された人。そしてピーター&ゴードンはサイモン&ガーファンクル同様、エヴァリーズのハーモニーに影響されてキャリアをスタートさせている。しかも今回のライブで冒頭”Crying In The Rain”を演っていたのがグッと来た。私にとってはアート・ガーファンクル1993年のアルバムでジェイムス・テイラーとデュエットしているヴァージョンを聴いたのが初”Crying In The Rain”。そのジェイムスと、”Crying In The Rain”を作曲したキャロル・キングを引き合わせ、キャロルに”You’ve Got A Friend”のジェイムスキャロル競作の承諾をもらったのもピーターだった…ということで全てが繋がった感じ。



二人とも70を超えていて、声が出ていたとは言い難いけれど、リラックスしたアコギ弾き語りは素晴らしかった。しかもファースト・ステージだったからか、自由席だけど2列目。リビングルームでくつろぎながら弾き語りを聴いているような。しかもアルバートはかなり控えめで、ギターを弾きまくらない。もっと弾いて欲しかったけれど(笑)。二人ともジミー・ウェッブをレスペクトしていて、アルバートは近作で演っている”Highwayman”をピアノ弾き語り披露。ジミー魂が乗り移ったような素晴らしいヴァージョンだった。”Lady Godiva”や”I Go to Pieces” を聴くとやはりホンモノだな、と。エドサリヴァン・ショーの映像で観て以来一番好きな”I Don't Want To See You Again”は予想通り演らなかった。

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会場でピーターが自主盤の販売をしていて驚いた。市場には出ていないかも、と思って買ったけれど、2016年の二人のライブ音源『Peter Asher & Albert Lee / Live』アルバートフェイスブックから購入可能であるようだ。あとピーター&ゴードンのベストと『Produced by Peter Asher』というそれぞれ2枚組があって、後者を入手。後者はこんなの販売して権利的に大丈夫なのか?と思ってしまったけれど、peterashermusic.comが編集した2枚組44曲・2500円。1968年のポール・ジョーンズに始まり、ジェイムス・テイラーリンダ・ロンシュタットアンドリュー・ゴールドシェールJ.D.サウザーリンゴ・スタービリー・ジョエルジュリア・フォーダムモリッシー、ディキシー・チックス、近年ではスティーヴ・マーティン&エディ・ブリケル、エド・シーラン、フォール・アウト・ボーイまでを収録。プロデューサーとしてのキャリアを一望できるプロモ盤といった趣だった。

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終わった後は思い入れのあるレコードにサインをもらう。アルバートは「えらい保存状態がいいね〜」なーんて。

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