いしうらまさゆき の『愛すべき音楽よ』(ブログ〜CD&レコードレビュー)

2015-11-23 Chris Smither / I’m Stranger Too!

markrock2015-11-23

[] Chris Smither 12:25

/ I’m Stranger Too!( Poppy[RCA] PYS 40013 / 1970 )



クリス・スミザー!久々に聴いたら…もう最高の気分だ。家から一番近くにある中古レコード屋、ほぼ毎日のように行っている三鷹のパレードにて、ちょっと割れてるけどもし良ければ…ということで頂いてしまった。レコードの盤質とか割れとかは全く気にしないので、嬉々としてプレイヤーに載せると…SSWの理想型がそこにはあった。

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90〜00年代は相当多くのSSW盤が再発されたものだと今にして思う。リアルタイム世代だけでなく、我々のような当時大学生だった世代も面白がってそこに惹かれていった、というのが今思えば不思議だ。もちろん現在のJ-POPのルーツとして突如脚光を浴びたはっぴいえんどの周辺ミュージシャンの参照枠として、アメリカン・ミュージックが地味な所まで掘られていった動きとも関連しているけれど、それだけではなかったと思いたい。大きくなり過ぎてしまった音楽産業の中で、自分だけの唄を、隣で囁きかけてくれるように歌い継ぐシンガー・ソングライター達のパーソナルなムードにある種の居心地の良さを感じたのではなかったか。現代のカフェ文化の水脈を辿っていくとそんな所にもぶつかったり。



クリス・スミザーはというと、このファーストとセカンド『Don't It Drag On』との2in1をCDで購入したんだったか。似たプロダクションだったタウンズ・ヴァン・ザントなどもその頃レコードでよく買っていた。



それにしても初めて聴いたとき、その声色の説得力に圧倒された。近作を聴いたときにもそれを確信したけれど、ギター1本でも憑依したブルーズ・マンのような所があって。声やギターの一音一音に全くもって迷いがない。このファーストにはニール・ヤング(”I Am A Child”)やランディ・ニューマン(”Have You Seen My Baby”、フォスターを引用した”Old Kentucky Home(Turpentine And Dandelion Wine)”)といったカバーも含まれているけれど、それこそ人類のコモン・ストックであるような珠玉の楽曲をブルーズ・マンの如く自分の唄に作り替えている。音楽のヒントは現在ではなく過去にある。



バンドの音も良く録れていて。基本はリズム・ギターを務めるジョン・ベイリーとクリスの二人で作った音だろう。プロデュースは60〜70年代の並み居る大物と仕事をしているロナルド(ロン)・フランペインとSSW好きならまず押さえるだろうマイケル・クスカーナ。エンジニアにはブルックス・アーサーの名前も。一番ブルーズど真ん中な”Love You Like A Man”はブルーズ姉御ボニー・レイットのアルバム『Give It Up』に取り上げられたのだった。そう、B面1曲目のタイトルが”Homunculus”というのも印象深くて。ホムンクルスと言えばルネサンス期の錬金術師パラケルススが作れると主張した人造人間だ。



ジャケットも人を食ったようで良い。アメリカを代表するデザイナーミルトン・グレイサー。86歳でまだご存命。トマトレコードのロゴも彼。なんといってもニューヨークのあのキャンペーン・ロゴが代表作!

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2015-07-16 Charlie Starr / Rough & Tender

markrock2015-07-16

[] Charlie Starr / Tough & Tender(Prophesy Records / 1971) 17:20



行きつけのレコード屋で会計を済ませた後「こんなの持ってますか?」と聴かれたのが盲目のSSW、チャーリー・スターの『Tough & Tender』ジェイムス・テイラーキャロル・キングなどのスワンピーなカバーも含む大好きな盤だ。



「それ大好きで持っています!」と答えるとどうも店長さん、A-1にちょっとだけビニヤケがあるので、プレゼントしようと思っていたらしい。こんなご厚意を無にしてはならないので、お礼を言って有り難く頂いた。

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家に帰って久しぶりに聴いてみると、改めてとても良い。プロモ白盤で持っていた盤よりもボーカルやドラムスの音圧が高くてビックリした。ジェイムス・テイラーの"Riding On A Railroad"に始まり、ゴスペル・タッチに盛り上がるゴフィン&キングの"Sweet Sweet Sweet"、ジョニ・ミッチェルの"For Free"、ジョン・ストロール&ボビー・ワインスタインの"Coffee And Donuts"、そして再びJTの"One Man Dog"(本アルバムにサンクス・クレジットまである)と続くA面は息も尽かせぬ完璧な流れ。



ソングライター・コンビ、ジョン・ストロール&ボビー・ワインスタイン作品はB面にも。アメリカン・スタジオのチップス・モーマンのレーベルから出た二人の自演盤『Cook Me Up your Taste』も大好きだ。


チャーリーの自作も2曲入っているけれど、B-3"When Does A Man Become A Man"とB-5"Dirty Water"はエレキのブルージーかつソウルフルでロッキンなストローク弾き語りっていうのが凄まじく新鮮。"That Lucky Old Sun"の壮大なゴスペル・カバーも聴きモノだ。


レーベルのProphesy Records(配給はATCO)は1973年ジャクソン・シスターズの"I Believe In Miracles"を1976年のタイガー・リリーからのアルバムに先駆けてリリースしてもいる。プロデュースはルイス・マレンスタイン。ヴァン・モリソンアストラル・ウィークス』『ムーンダンス』を手がけたことでロック史に名を残している。彼が手がけた同じく盲目のSSWターリー・リチャーズも忘れられない。アレンジはグラディス・ナイト&ザ・ピップスなどとの仕事が有名なトニー・カミロ。リック・マロッタなどNYの腕利きも参加している。

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ちなみにマーキュリーから1969年にリリースされたファースト『Just Plain Charlie』は冒頭1曲目だけを聴くと一瞬カントリー。ただ、ボーカルの迫力はカントリーの枠に収まらない魅力があり、聴き進めていくと、2枚目の『Tough & Tender』に繋がるロック・ソウル色の強い楽曲も多くある。



ドイツのエピックから1972年にシングル"Memphis Tennessee/That Old American Dream"をリリースしている。ちなみに現役サザン・ロック・バンドであるブラックベリー・スモークのリーダーとは同姓同名だが別人だ。

2015-06-26 Eric Kaz / Same ( Slice of Life Records / 2015 )

markrock2015-06-26

[] Eric Kaz / 41年目の再会 ( Slice of Life Records / 2015 ) 22:41


エリック・カズ(http://www.erickaz.com/)の41年ぶりのソロ新作。オリジナル・タイトルはシンプルに『Eric Kaz』。41年って…私の人生はそれにすら満たないし。凄まじいこと。日本のSSWものなどで有名な輸入盤店「プー横町の家」(ロギンス&メッシーナですね)のレーベル、スライス・オブ・ライフ・レコード(http://www.h2.dion.ne.jp/~slice/index.html)からのリリースだ。



正直失礼ながら心配だったのはジャケット。リリースインフォが出た時点で、そりゃないでしょ…と思ってしまいましたよ。テキトーにペイントソフトで書いたようなエリックの横顔。お店で裏ジャケを見ると、これまた携帯で撮ったみたいな写真で。ベテランSSWの自主盤にはよくあるパターンなんですが…

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でも中身を聴いて一安心。”Just Wanna Be Home”からして、素晴らしい。ピアノ弾き語りを基調とする美しいアルバムに仕上がっていた。しかも、70年代初頭の2作『If You're Lonely』『Cul-De-Sac』の方がある意味老成していたのでは?と思うほどの若々しさ。2002年の来日公演の際の、鼻に掛かった、ブルーズをルーツにした歌声を想像していたので。ちなみにその来日公演は素晴らしかった。ピアノとマーティンのオール・マホガニーのギター(当時マーティンではラッカー塗装の廉価シリーズが出始めた頃。金ピカ趣味を持ち合わせていない人なんだ、と思いました。)を持ち替えて。観客の興奮と、極東の小国で自分の音楽を待ってくれているお客さんがいるんだ、というご本人の感動が化学変化を起こしたような、ミラクルな空間だった。終演後のサイン会がまた良くて、1人1人丁寧に話をしてくれた。私はピュア・プレイリー・リーグ(再編リトル・フィートでもボーカル&ギターで参加した)のクレイグ・フラーとの共演アルバムを持参したところ、すっくと立ち上がり「彼はぼくのソウルメイトなんだ!」ととっても喜んで、握手を求められた。そんな記憶が残っている。

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さて、キャリアの詳細はCD付属の萩原健太さんのライナーがカンペキなので、そちらを参照していただくとして、割合本作がシンガー・ソングライター・アルバムだ、と語られていることに対して一言、言っておきたい。弾き語りのトラックは自演盤用に仕立てたトラックかなと思ったけれど、打ち込みトラックなどは明らかに、ソングライター・デモのプロダクションだと思われる。80年代からウェンディ・ウォルドマンなどとのコンビで、ポップ・ロック、カントリー・フィールドで相当の売れっ子になっていたエリックのことだ。こんなデモを普段から作っているのだろう。一時期エリックやウェンディ、あるいはビル・ラバウンティの曲が入っているカントリーのアルバム(たいていシングル向けでアルバムに1曲)ばかりをつぶさに集めていたこともあったな。だから聴き手のロマンを壊すつもりはないけれど、41年ぶり、というには、現役感がありすぎたりもするわけで。メロディも90年代以降のカントリーやポップ・フィールドの王道系バラードの匂い。70年代のカズ曲の特徴だったゴスペルっぽさはあまりないかな。ただし、引き込まれます。”Sanctuary”には”Love Has No Pride”の残り香も一寸あるような…佳曲揃いで一気に聴ける7曲31分。今度はまた、愛して止まないエリックの古いレコードを聴いてみよう。ラストの”Old Love Letter”の歌詞のように、捨てられないレコードがあるのです。

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プロデュース&アレンジはニック・ジェイムソン!ウッド・ストック音楽ファンには涙する名前…トラウム兄弟と活動し、マッド・エイカーズにも参加したことのあったエリック。かつてのウッドストック・コネクションがいまもあることが、当たり前だけれど、嬉しい。

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ニック・ジェイムソンのソロ、もう1枚部屋のどこかにあるけれど、もはや見つけるのも困難…

2015-06-25 JD Souther / Tenderness

markrock2015-06-25

[] JD Souther / Tenderness ( Sony Music Masterworks / 2015 ) 19:21

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表記がJ.D.サウザーからJDサウザー、とマイナー・チェンジしていたけれど。JDサウザー69歳の新作。寡作の人、というイメージで大滝詠一と被るのは、1984年の『Home By Dawn』から新作のリリースが途絶えてしまったことにある。大滝も同年の『イーチ・タイム』でリリースが途切れてしまった。さらに言えば、大滝の不朽の名盤『ロング・バケイション』(1981年)のアイデア源だったのが、J.Dサウザーの『You’re Only Lonely』(1979年)だったという事実。JDはそのタイトル曲でロイ・オービスンの”Only The Lonely”といういわばオールディーズの定石をアダプトし、愛あるトリビュートを行った。晩年のロイのトリビュート・ライブにもJDは顔を出していたけれど。さらに、ティーンエイジャー時代の憧れであったろうエヴァリー・ブラザーズのフィル・エヴァリー本人をコーラスに迎えて”White Rhythm And Blues”を歌っていたりもする。大滝がクレイジー・キャッツの新曲を作ったようなはしゃぎっぷりだったことは容易に想像できる。

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さて、そんなJD、完全に隠居状態だったはずなのに、『If The World Was You』(2008)(http://d.hatena.ne.jp/markrock/20081019)で突如としてレコーディング・アーティストとして復活。ライブ活動も再開(2009年の来日ライブ・レビューは→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20090128)。ここからはリリースラッシュ。2007年のヨーロッパ・ツアーの4曲入限定CD(『Possible Weather』)、2009年にはダウンロード限定のライブ音源『Rain Live at the Belcourt Theatre』がリリースされる(ちなみに来日公演を収めた『Midnight In Tokyo』はダウンロードのみならずLPやCDといったフィジカルでのリリースもなされた)。

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そうなると期待が高まるのはライブで演ったこともある”Doolin’ Dalton”や”New Kid In Town”などイーグルスへの提供曲の自演。”Doolin’ Dalton”は無かったけれど”Best Of My Love”や”The Sad Cafe”、”Heatache Tonight”なども含んだセルフカバー作『Natural History』(2011)(http://d.hatena.ne.jp/markrock/20110611)にはファンの溜飲を下げる何かがあった。音はコンデンサー・マイクくささがあって耳元で囁くような恐いくらいリアルな音だったけれど、個人的にはすごく楽しめた。

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さて、今作は復活後のジャジー路線を押し進めたもの。「グレイト・アメリカン・ソングブック」的なジャズ・スタンダードを念頭に置いた、歌詞と音のマッチングが楽しめる。ありがちなカバーではなくオリジナルを作ろうとした気概を評価したいところ。プロデュースはジョニ・ミッチェルやマデリン・ペルーとの共同作業で有名なラリー・クライン。だからジョニの音にも近い、クワイエット・ストーム的サウンドに感じられた。ジャケットの雰囲気からしても夜のムード。ジャズ・バンドのようでJDのギターもあるから(往年のフォーキーな個性も感じられる)、従来のロック・コンボ・スタイルとジャズとの折衷かな。古い仲間だとギタリストのディーン・パークスが参加(ロック・フィールドのセッションマンというイメージがあるけれど、最近ディーンがジャズ・ロックバンドでギターを弾きまくっている1970年あたりのLPを見つけた。スティーリー・ダンでも弾いているし。)。ちなみにJDのボーカルの艶は衰え知らずだ。



一番心に残ったのは、月並みだけれど、1曲目の”Come What May”。気の利いた歌詞がジャズ・ボーカルものを思わせる。センチメンタルで、かといって達観していてもいて。今から訪れようとしている別れを前にして、



「ぼくたちに持ちうるものは 今日、今ここしかないんだ。

君が出て行くのを、子どもの頃のようにさみしがる。

生きたければ行ってもいいよ、ぼくはここに留まろうと思う。

幸運を祈るよ、ぼくは大丈夫。

何があろうとも(Come what may)…」



ジェイムス・テイラーの新作にも感じたことだけれど、時代の節目にあってのことなのかもしれないし、単に年を重ねた老ミュージシャンの感慨なのかもしれない。でも、時代や社会を憂いて生きていたってしょうがないんだ、という素直な気持ちを、私は前向きに捉えることができた。



新作を聴いたらファーストを聴く、というのがいつもの習慣。イーグルス結成以前のグレン・フライと組んだ『Longbranch Pennywhistle』は改めてどう響くだろう。このLP買うために食事を抜いたとか、そんなことも思い出しつつ…

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JDのサンプラーCD『20 Songs』のレビュー

http://d.hatena.ne.jp/markrock/20061218

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2015-06-24 James Taylor / Before This World

markrock2015-06-24

[] James Taylor / Before This World ( Concord /2015 ) 22:48

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70年代のシンガー・ソングライター・ファンにとっては、大物のリリースが相次いでいる感もある。JDサウザーにジェイムス・テイラー、そして2002年の日本公演が書き下ろし新作を制作する活力になったというまさかのエリック・カズ。リンダ・ロンシュタットなんていう縦糸でも括れる三人だけれど、そこにジミー・ウェッブの”Adios”のカバーでコーラス・アレンジを担当したという縁でブライアン・ウィルソンの新作『No Pier Pressure』を加えてもいいかな。個人的にはこれらは久々に日本盤CDを買った新作でもあった。旧作LPは相変わらず増え続けているし、新作もLPずくしだったもので。



ジェイムスの新作はそれにしても13年ぶりなんですか。オリジナル・アルバムだと『October Road』以来。ずいぶん隔世の感がある。時代も変わり、音楽産業を巡る状況も激変。業界は明らかに縮小し、YouTubeや定額サービスで音楽を聴くのが主流になった。さらにCDはCDの価値を維持するべく、昔だったらブートまがいとも言えるライブ盤だって堂々とリリースされるようになった。権利の切れた旧作の愛のない再発や、オリジナル・アルバムの安価すぎる5枚〜10枚パッケージに至ってはもう完全に食傷気味なくらいだ。JTレベルだと、コーラス参加作なども含めて、それこそ必死に1枚1枚集めて聴き入ったものだけれど、この13年でそれもやめてしまったな。さらにアメリカという国の置かれている状況も大分変わってしまった。



そんな風にいろいろ思いながら1曲目”Today Today Today”を聴いたら、なんだか久しぶりに安心したというか…慢性的な不安が消えたというか。



「なんとかぼくは死なずにすんだ 流れに乗ろうとしていた頃とおんなじ気持ちでいるんだ プライドを初めて売ったあの時と…」



「前進あるのみ ぼくの心は恐れるものなどなく自由だ ここにぼくの旗を立てよう トゥデイ トゥデイ トゥデイ…」



今日の現実世界やアメリカの時代状況の中で、67才のジェイムス・テイラーからこんなに前向きなメッセージが飛び出してくるとは思いもよらなかったものだから、何だかじーんと来るものがあった。



さらにタイトル曲”Before This World”(スティング、ヨーヨー・マが参加)は、キリスト教的な天地創造以前の世界(before this world)を想像したうえで、現実を乗り越えんとする祈りの歌であるように聞こえた。



「行く末がどうなるか 誰が想像できようか (迷える)子羊よ 気にすることはない」



「世界は古くなり いつまでも続かない われわれの喜びの取り分は 過去の一瞬にあるんだ」



様々な音楽批評家たちが、自分にとってのあるべき音楽を命がけで語る。それは悪いことではない。私の考える一流の音楽家の条件はというと、「いま」「ここ」にある「時代」というものを詩や音で真摯に描くことができる、ということだ。もっとも小説家だろうが学者だろうがそれは変わらない。大体突き詰めれば考えていることは同じだと思うから。そんな意味でもジェイムスは一級のソングライターなのだ、という思いを改めて強くした。



90年代の『Hourglass』に始まる、チェリスト、ヨー・ヨー・マとの共演はアパラチアン・ジャーニーのシリーズで聴いた頃まではフォークとクラシックの共演、という風にしか聴こえなかったけれど、よく考えてみるとフィドルの入ったカントリー・ミュージックのような郷愁を感じるアメリカーナの響きだし、ジェイムスも自身の音楽との相性の良さを感じていたのだろう。本作にもスティーヴ・ガッドやマイケル・ランドウ、ジミー・ジョンソンといった旧来の常連に加えて、フィドルのアンドレア・ゾンがバンドに入っている。そんなわけで、現代のカントリー・ミュージックに近い音作りだと思う楽曲もあったり。ジェイムスの声は年齢のせいかハリがなくなって少しロウになったかな、と思った瞬間もあったけれど、聴き進めていけば不思議に昔と変わらない。楽曲も地味なようで、彼がこの作品を今ここで世に問うた理由がよくわかる。67才で枯れた創作意欲を蘇らせるには腰を据える必要があったのだろう。クリスマス・アルバムに単独ライブ盤(http://d.hatena.ne.jp/markrock/20080115)、カバー集(http://d.hatena.ne.jp/markrock/20081004)にキャロル・キングとの共演盤(http://d.hatena.ne.jp/markrock/20100524)と続いた彼がわざわざ新しい曲を作るために家族と離れてしばし環境を変えたという気持ちも良くわかった。

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多くのアメリカ人にとっての”Far Afghanistan(遠いアフガニスタン)”は、日本人が中国や韓国を心理的に遠く思う気持ちと一緒だろうと思ったりもした(60〜70年代に活躍したアメリカのソングライターの多くがリベラルの立場からイラク戦争を批判したこともあったけれど、ムスリムを理解しようとしない状況は余りにも変わっていない)。そんな少々政治的なテーマも含めて、ジェイムスのアコギを目立たせたミックスといい、フォークの色彩の強いアルバムだと思えてきた。ボストン・レッドソックス賛歌”Angels Of Fenway”もフォーク的な語り物だったし、ラストのスコットランド民謡”Wild Mountain Thyme”(キャロライン、ヘンリーという妻・子の家族共演)もアメリカの移民のルーツを感じさせる意味でも象徴的な楽曲だった。さらに日本盤ボーナスには1999年のアウトテイクでウディ・ガスリーの”Pretty Boy Floyd”、ランブリン・ジャック・エリオットの十八番だった”Diamond Joe”を歌っていたり。(ちなみにもう1つのボーナス曲”I Can’t Help It (If I’m Still In Love With You)”はハンク・ウィリアムスのカバーで旧友ダニー・クーチとジェイムスが二人で演奏した2003年のアウトテイク。)先日今更ながら60年代初頭のグリニッジ・ビレッジを舞台にした映画『インサイド・ルーウィン・デイヴィス』(モデルはデイヴ・ヴァン・ロンク!)を観たのだけれど、そんな気分とも個人的には繋がった。

(追記) ジェイムス・テイラーのメーリングリストの記事を見ていたら、ビルボード初登場1位を記録したとのこと。11枚のアルバムがトップ10入りしている彼のキャリアにとってに意外にも初めてのアルバム・チャート1位であるらしい。

2015-04-19 Danny Holien / Same

markrock2015-04-19

[] Danny Holien / Same ( Tumbleweed Records / 1971 ) 16:50


久しぶりにデパートの催事場で「廃盤レコード市」みたいなやつを発見。なんか懐かしい感触。いまだに地方だとやってるのを見かけるけれど、何店舗か中古盤屋が集まっていて。ユニオンみたいなチェーン系じゃないのがなんだかいい。私が高校生くらいの頃まではこんなレコード市、よくあったような気がする。張り切って万札握りしめて行くタイプの。最近の中古レコード市場の活況、あるいはレコード・ストア・デイズに合わせた出店かしら?お客さんは60代と30代が多かった。30代は小さい子どもを抱っこしたまま、さくさく、なんて人もちらほら。いいね。



ただ、昔は高くて買えなかった記憶もある。例えば今なら容易に手に入るバリー・マンの1980年カサブランカ盤が3800円、みたいな。買えるわけないでしょ…という。CD化が進んでいなかったからオールディーズ関係は特に高かった。逆にジャーニーが800円、クリス・クリストオファスン日本盤1000円、みたいな。これもまた高過ぎるよ、っていう。



そんな想い出もありつつ眺めていると、昔とは違って(というか昔は単に気付かなかっただけかな…)結構良いものがあってついつい長居してしまった。値段も3桁とか相当安くなっていて。こつこつ集めている演歌ソングライターの自演ものでは市川昭介、弦てつやの盤や、なかにし礼のシャンソン自演盤はめっけものだった。あとはジム・ゴールドがいたGalleryのセカンド(サセックスから出ている)、Bob Ruzicka(ボブ・ラジカ、かな?ずっと読み方がよくわかっていない)の1973年『Soft Rocker』(エリアコード615がバックを務める)、意外にもトミー・リピューマのブルー・サムからリリースされたSouthwindの『Ready To Ride』もジム・パルトがいたバンドとして聴いてみたかった盤で。エリック・ゲイルやラルフ・マクドナルドといったNY系のミュージシャンがバックを務めた黒人フォーク・シンガー、ジェリー・ムーアの1967年作『Life Is A Constant Journey Home』も嬉しい出会いだった。

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さて、そんな中で聴いてみて結構インパクトがあったのがDanny Holien(ダニー・ホライエン、かな)がTumbleweed Recordsから1971年に出した同名アルバム。ウッディな焼き印みたいなロゴで知られるタンブルウィードというレーベルは後にジェイムス・ギャング(ジョー・ウォルシュ)やイーグルス、ジョー・ヴァイタール、ジェイ・ファガーソン、ザ・フーやサンタナなどを手掛けて名をなすビル・シムジクらが作ったレーベル。短命ながら1973年までに幾つかレコードを出している。SSWのマイケル・スタンリーや凶悪な音を出すブルーズマン、アルバート・コリンズの作品、マニアックな所だとSSWのロブ・カンケルのアルバムだとか。ビル・シムジクは60年代から70年代にかけて、B.B.キングの音を作っていた人でもある。今作のプロデュースはそのビル・シムジク。シンガー・ソングライターのアルバムながら、サウンドはアメリカン・ロックそのものの骨太なもので聴き応えがある。ストリングス・アレンジにジミー・ハスケルが参加しているのも見逃せない。同年にビル・シムジクは、カリフォルニアの未来を描いたジミー・ハスケルのコンセプト・アルバム『CALIFORNIA ‘99』をプロデュースしている。ちなみにそのレコードではジョー・ウォルシュやママパパのデニー・ドーハティ(ミレニウムのカバー!)に歌わせていたり、ジミー・ウェザースプーンにザ・バンドの”オールド・ディキシー・ダウン”をカバーさせたり、なかなか聴き所が多い。



さて、Danny Holienの盤に話を戻すと、何と言ってもA面の1曲目”Colorado”が良かった!スティーヴン・スティルスのマナサスにも同名の曲があったけれど。こちらの”Colorado”は寂しげなダニーのアクースティック・ギターが荒涼とした大地を思わせ、フルートの深遠な響きや重たいドラムスも耳を惹き付ける何かがある。歌詞に耳を向けると、カリフォルニアのように開発が進み、遊園地のようになっていくだろうコロラドに警鐘を鳴らす歌だとわかった。実は終戦よりも人々の意識・環境を大きく変えたのは60〜70年代だったのではないか、と思う。東京で言うならば、23区から土の匂い、前近代的なものを消し去った東京オリンピック前後、ということになるだろうか。70年代初頭のアメリカにはヒッピー・ムーブメントの流れだけれど、そうした開発の動きと逆行し、大地や自然、そして地元を愛したシンガー・ソングライターが多くいた。商業的な成功を得られなかった者も多かったのだけれど。



10年くらい前だったろうか、ネイティブ・アメリカンの居留区のあるニュー・メキシコ州に行こうとしたところ、空港は直近でコロラド州のデンバーにしかなくて。そこから車で延々と。その時はデンバーというとジョン・デンバーが芸名にした、という印象くらいしかなかったけれど、ハイウェイを走り出すと、360度地平線まで建物が何も無くって。ガス欠したらおしまい、みたいな。その時、なんて人間はちっぽけなんだろう、と自然の偉大さに圧倒されてしまったことを思い出す。それは大袈裟かもしれないけれど、自分の中では精神的革命といってもいいような出来事だった。だから、ダニーの杞憂のお陰かな。コロラドはどうにかカリフォルニアの様にはならずに済んでいたようだ。

2014-11-01 John Simson / We Can Be Everything

markrock2014-11-01

[] John Simson 10:14

/ We Can Be Everything (Perception PLP16 / 1971)

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なんともあの時代なジャケに惹かれたレコード。ジョン・シムスンというシンガー・ソングライターの唯一作。サイケな匂いもあるジャケだし、アシッド風トリップ・サウンド・オンリーだと思っていたけれど、意外とポップなプロダクションの曲もあって好感を持った。もちろんアシッドな感じの曲もあったけれど。



A-1”Humboldt County”なんてソフトロックの範疇に入れても良いような。この曲、ジミー・ウェッブのファーストの雰囲気に似ているな、と。リリース時もまさに同じ頃。B-5”Good Night Lullabye”もその感じ。クレジットを見てみると、この曲を含む3曲がジミー・カーティスのプロデュースによるニューヨーク録音で、残り7曲はテリー・フィリップスのプロデュースによるイギリス録音。



イギリス録音のA-3”God Bless The Lord”には、ドリス・トロイを含むゴスペル隊のコーラスも入ってきたり。A-4”Go West, Young Man”のポップ・カントリーなノリも気に入った。ハードなギターに始まりサビでポップに展開するA-5”Been So Long”、このギターのクレジットAdrienne Curtisはエイドリアン・ガーヴィッツでしょう。英国ハード・ロック創成期のミュージシャンの一人。The Gunを結成していた弟のポール・カーティス(ガーヴィッツ)も本盤にアコギで参加している(B-1”Just A Matter Of Time”のロック過ぎる早弾きアコギソロを弾いているのが彼ではなかろうか)。エイドリアン・ガーヴィッツは『スウィート・ヴェンデッタ(甘い復讐)』の強烈な印象もあって日本ではAORの人、というイメージだが、クリームのジンジャー・ベイカー(先日のジャック・ブルースの死は本当に痛恨でした…)と組んだベイカー・ガーヴィッツ・アーミーといい、聴き所の多い人。あとはベースのキース・エリスはギリギリ、ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレイター在籍時の参加かな。そしてドラマーのマイク・ケリーはジューシー・ルーシー、スプーキー・トゥースに加わり、トラフィック、ジョージ・ハリスン、ジョー・コッカーなど数え切れない大物と共演した著名セッションマン。あと、アルバムに3曲を書いているルイーズ・ゴールドバーグの曲で”Allison”というのがあって、何だか心に残った。エルビス・コステロとはまた違ったバラードで。



ジョン・シムスンはレコーディング・アーティストの後、裏方に転身し、メアリー・チェイピン・カーペンターやスティーヴ・フォーバート、ジョネル・モッサーらのマネジメントを担当し、自身の監修したテレビ番組アメリカン・ルーツ・ミュージック』が2002年にエミー賞にノミネートされたりもしているらしい。日本でこんなレコードに巡り会えたのもさりげなく嬉しい。

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2014-08-12 Livingston Taylor / Blue Sky

markrock2014-08-12

[] Livingston Taylor / Blue Sky( Whistling Dog Music / 2014 ) 13:13

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タイトル『青空』。良いですね〜。素晴らしくヒューマンなシンガー・ソングライター、リヴの新作。ジェイムス・テイラーの弟、なんて今更何をって感じですが。今作のジャケが2009年の前作『Last Alaska Moon』http://d.hatena.ne.jp/markrock/20101224)や前々作2006年の『There You Are Again』 http://d.hatena.ne.jp/markrock/20060331)に比べて安上がりになった感があって(メジャーを離れたからだろうけれど)、ジャケと中身は対応している場合が多いから(制作費は重要なのです)ちょっと心配したけれど、安定のテイラー・メイド。安心した。っていうか、最高傑作じゃないですか!

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今作のプロデュースはナッシュビルのベテラン・ライター/シンガー/プロデューサーのマック・マクナリーが手掛けている。共同プロデュースのチャーリー・パスは若手ミュージシャンで、リヴが”ステージ・パフォーマンス”で教鞭を執るバークリーの生徒だったみたい(http://www.berkleegroove.com/2012/12/05/qa-with-berklees-own-viral-youtube-sensation-charlie-puth/)。



いつも楽しみなカバーの解釈は後述するとして、オリジナルの充実度にも目を見張るものがあった。チャーリー・パスと共作した冒頭の”Would You Mind”なんて、リヴの作風の良いとこ取り、みたいな。R&B、ジャズ、フォーク、ゴスペル…亜米利加音楽の絶妙なブレンド。タイトル曲の”Blue Sky”ではブルーグラス・ゴスペルとでも言えるイントロから、胸に迫るテイラー・メロディが飛び出す。兄ジェイムスもそうだけれど、アクースティック・ギターを抱えてもただのフォークにならないところが、素晴らしい。そんな、アメリカン・ミュージックの歴史や蓄積を感じさせる部分が、作品の奥行きに繋がっているのだろう。ちなみに、参加しているミュージシャンも素晴らしいけれど、リヴ本人もプレイヤーとして舌を巻く巧さだっていうことは、教則本や来日公演(今でも思い出すけれど、素晴らしかった…→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20061215)で良くわかった。そしてそして、兄ジェイムスも1997年の『Hourglass』で取り上げていた”Boatman”の自演。アルバム前半からバッキング・ボーカルを務めていたチャーリー・パスと女性SSWのチェルシー・ベリー(http://www.chelseaberry.com/)にとうとう2番以降のリード・ボーカルを譲る、感動的な仕上がりとなっていた。30も40も年の違う二人を包み込むようなリヴの歌声が温かくって。他にもしっとりとしたピアノで聴かせる”Shouldn’t Have Fallen”もスタンダードの風合いで気に入った。



そして、カバーなんですが、嬉しかったのは最近1980年作のCD再発が話題のバリー・マン&シンシア・ワイルの”Here You Come Again”。個人的にはドリー・パートンよりも、B.J.トーマスのヴァージョンが大好きだったけれど、今回のリヴのヴァージョンもお気に入りに加わった。ジェリー・ダグラスのドブロを入れたのは、やっぱりこの曲にはカントリーのヒット曲、というイメージがあるからだろう。でも、耳コピしてみると判るけれど、転調に転調を繰り返す、ギターじゃあ作ろうと思っても作れない優れた一曲。じゃあピアノなら作れるのか、っていうと、そこがバリー・マンの傑出した才能なんですけどね。



あとはリヴのライブでは大サビ(ココのメロディ、サザンが”涙のキッス”で引用している)を観客に歌わせる、という定番、スティーヴン・ビショップの”On And On”は、ちゃんと大サビをリヴが歌っている。ライブでは、こんなの声でないよ!だから歌ってよ!ってな感じが面白いんだけれど、ちゃんと歌えてるじゃん、てのもファンにはめっぽう可笑しい。さらにローラ・ニーロの”Sweet Blindness”も見事にハマっているし、ハンドクラップ・スタイルのブラック・ミュージックの小粋なフィーリングでカバーした”Paperback Writer”も面白かった。ポピュラーではフレッド・アステア&ジンジャー・ロジャースの『スウィング・タイム』のために書かれた”Pick Youself Up”とラストのボーナス・トラックの扱いだけれどロジャース&ハマースタインの”I Have Dreamed”を。これらも暖炉でほっこり聴くようなイメージ。年配のアメリカ人だったら郷愁を感じるような…リヴの住んでいるボストン、私も大昔に住んでいたんですが、また帰りたいなぁ、とそんな気分にもなって。音楽って、本当に、良いものですね〜と水野晴郎さんじゃないけれど、聴き終えてそんな風に思えた一枚!

http://livtaylor.com/

私的には『Life Is Good』が座右盤なんですが、皆様はいかがでしょうか?

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2014-02-09 グラミー賞とポール・ウィリアムス

markrock2014-02-09

[] グラミー賞とポール・ウィリアムス 15:00

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先日の第56回グラミー賞授賞式。テレビや動画サイト等で目にした音楽ファンも多かったと思う。ポール&リンゴのビートルズ解散後5度目だかって言う共演(今年は1964年のエド・サリヴァン・ショー出演という、かのブリティッシュ・インヴェイジョンから50周年の節目の年)に釣られて観たけれど、なんだか久々に良かった。音楽業界に元気がない昨今だから、アメリカの底力を見た思いがして。今の日本だったらアイドル百花繚乱で正直「音楽」賞を競う番組としてはまず成立し得ないでしょう。その点、アメリカの音楽業界を勝ち抜いた各ジャンルのスター達は半端ない技量とあざとさを持ち併せている。プレゼンターの配役も含めてお祭り騒ぎのエンタテイメントを楽しめたな。さらにジャンルもけっこう多岐に亘るわけだけれど、ベテランと新人をうまく組み合わせ、アメリカのポピュラー音楽史を一望できる作りになっていて。過去の音楽遺産へのレスペクトも一段と感じられた。日本は本国で忘れ去られたベテランに優しい国だとは言われるけれど、自国に目を移すと、過去と現在の音楽を結びつける取り組みは浅いかな。日本のテレビでは、唯一FNS歌謡祭なんかがプロデューサーのそんな意図が見えていて良いと思う。新旧ミュージシャン同士も刺激を受け合うだろうし、新たなファンの獲得にも繋がるでしょう。結果として音楽業界が活性化すると思うんだけど。あとは演歌とラップ、とか、津軽三味線とテクノ、とかさ、もうちょっとそれぞれのジャンルのエキスパートを掛け合わせた面白いコラボレーションの可能性が日本にもあるのではないかな。タコツボ化した状況に風穴が開くと良いんだけれど。


さてグラミー賞のパフォーマンス、何より嬉しかったのは大好きな二人のソングライター、ジミー・ウェッブとポール・ウィリアムスを耳にできたこと。この二人、20代の私の心の中に、いつも吹いていた風のような音楽。


まずジミー・ウェッブの楽曲はカントリーの大物を揃えたウィリー・ネルスン、クリス・クリストオファスン、マール・ハガードにブレイク・シェルトンで”Highwayman”が。コレ、70年代にジミーがソロで発表した楽曲で、それがカントリーのスーパー・グループとして90年代話題になったHighwaymenのタイトル曲となり大ヒットした。亡くなったメンバーのウェイロン・ジェニングス、ジョニー・キャッシュの穴はマールとブレイクが埋める形で。

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さらに、最近表だった活動をあまり耳にしなかったポール・ウィリアムスは、今年の主要2部門を含むグラミーを総ナメにした(アルバム『Random Access Memories』、シングル”Get Lucky”)とも言える、フランスのエレクトロ・デュオ、ダフト・パンクの受賞シーンに登場。ハリウッドの住人らしい73歳とは思えない若作り(10年前と変わっていない!)で行われたその詩的なスピーチは詩人の面目躍如、突出して素晴らしいものだった!ダフト・パンクがテレビでパフォーマンスを披露するのも6年ぶり、さらに、アルバムに参加しているファレル・ウィリアムス、ナイル・ロジャース、ジョルジオ・モロダー、スティーヴィー・ワンダー、オマー・ハキムらと披露した”Get Lucky”は会場がダンス・フロアと化す素晴らしいステージで。ベースはネイザン・イーストでしたね。

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ポール・ウィリアムスと言えば、カーペンターズの”We’ve Only Just Begun”、”Rainy Days and Mondays”やスリー・ドッグ・ナイト”An Old Fashioned Love Song”などを手がけた作詞(作曲)家でありシンガー・俳優。映画『ファントム・オブ・ザ・パラダイス』(1974)の主演、『最後の猿の惑星』(1973)への出演や『スター誕生』(1976)のテーマ曲の作曲(コレはグラミー受賞)、さらにアメリカ人なら誰でも知っているマペット・ムービーの”Rainbow Connection”の作曲でもお馴染みだ。ダフト・パンクの『Random Access Memories』では”Touch”(ボーカル)と”Beyond”(共作)に加わっている。

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2005年にリリースされた『I’m Going Back There Someday』(旧作のセルフカバーや新曲をウィリー・ネルスン、メリサ・マンチェスターらと手がけ、プレイヤーには元ウィングスのローレンス・ジュウバーやニッティ・グリッティ・ダート・バンドのジョン・マッキュエーンが参加している)も余り話題にならず(CD&DVDオーディオにライブDVDを含めた両面×2枚という変則スタイルでリリースされた)、その後ロジャー・ニコルズのザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ名義の新作でロジャーとの共作が収録されたことはあったけれど、それ以外、正直アメリカでは忘れ去られたのかと思っていた中でのカムバック、本当に嬉しかったなぁ。ポール・ウィリアムスを再び表舞台に引っ張り出したダフト・パンク、その音楽愛は半端無いですよ…ポールの噛みしめるような(最近ますますウィリー・ネルスンに似てきている)ボーカルの質感をちゃんと理解しての登用も嬉しかった。エレクトロでありつつ、アナログの質感を大切にした音作りも含めて、結構このアプローチは未来があると思うのでありました。

2013-10-14 The Mighty Takapu

markrock2013-10-14

[] The Mighty Takapu 19:28

/ Hitch A Cloud ( haha productions / 2012 )


三連休も気付けば終わっていきますね…今年はまだまだ毎日暑くて。しぶとい夏でした。


先日地元三鷹でたまたまお会いしたニュージーランド出身、日本在住のミュージシャン”The Mighty Takapu”を本日は紹介しよう。バンドのようなネーミングだが10曲全ての楽曲やアクースティック・ギター中心の演奏、レコーディングはGuy Exleyの手に依るもの。”Takapu”というのは聴き慣れない言葉だが、ニュージーランドの先住民マオリ族の言葉で調べてみると”カツオドリ”を意味するらしい。カツオドリはニュージランドの海鳥で、例えばオークランドでは毎年1000匹以上が巣作りをし、大きな羽を広げた親鳥が空を舞う風景が見られるのだと言う…しかしあとあと聞いてみると、なんでもGuyの出身地は首都ウェリントン郊外のタワで、カツオドリは全くいない!らしい。ただ、幼少期に遊んだ渓谷の名前が"Takapu"で、やはりマオリの言葉に由来する地名だったらしい。しかも、その川は"Mighty"という程の流れでもなく、”The Mighty Takapuはユーモアと想像力の産物のようだ。

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それでも”The Mighty Takapu”の音楽は、そんな自然の生命の力強さや瑞々しさを感じさせてくれるオーガニックなサウンドだった。アクースティック・ギターを基調とした音作りは、70年代のフォーキーなシンガー・ソングライターの近作を彷彿させるもの。所々にゲスト・ミュージシャンによるピアノやドラムス、トランペット、鳥の鳴き声といったSEが入るのだが、それも実に自然で。個人的にはランバート&ナッティカムのクレイグ・ナッティカムの90年代のソロみたいな、ほっこりしたハンドメイドのダウン・トゥ・アースなサウンドを想起した。


英語詩による楽曲が殆どである中、M-3”Hoshi”やM-4”Yanagawa”には日本語も登場して。”Hoshi”の静謐とした音作りは今作でも白眉かも。個人的にはひんやりとした感触が新鮮だったアクースティック・ロックM-7”River Belly”も印象に残った。


何だろう、こうして聴いていると、音楽を作り続けることを止めない、というミュージシャンなら当たり前のことに感動している自分がいる。音楽を「始めた」よりも「止めた」と聞くことの方が増えてきた昨今。売れる売れない、とか音楽業界を取り巻く状況が厳しくなっていることも判っているけれど。でも考えてみると、音楽を作ることは生きること。音楽をやめることは生きることをやめることとおんなじなのだ。長年音楽を作り続けてきたミュージシャンの作品には、無欲に音と向き合ってきた結果だろうか、自身の音楽と生きることが違和感なく重なり合っているのが判るのだ。これは本当に素敵なこと!


アルバムは公式HPから入手できるとのこと。一度訪れてみてはいかがだろうか。

↓公式HP

http://www.themightytakapu.com/The_Mighty_Takapu/Home.html

↓アルバムの試聴&購入は

http://themightytakapu.bandcamp.com/

2013-09-29 Peter Gallway

markrock2013-09-29

[] Peter Gallway 15:26

/ Hello Stranger ( Gallway Bay Music / 2013 )

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近年も結構多作なピーター・ゴールウェイ。アニー・ギャラップとのデュオ、ハット・チェック・ガールなんてのもありました(http://hatcheckgirl.net/)。なにげに今年来日したりもしていた。行けなかったけれど。それでも、この新作は即買いしました。タイトル『Hello Stranger』が既に良いでしょう。コレ、フィフス・アヴェニュー・バンドやソロ1作目『Peter Gallway』、オハイオ・ノックス収録曲のセルフカバーを含む懐古作。1965年のストレンジャーズの昔から70年代初期までのしみじみとした作風をこれでもかと味わえる(マーサ&ザ・ヴァンデラスのカバー” Come and Get These Memories”を除き、1965年から1970年に書かれたモノだという)。とてもソウルフルかつ洒落たコード・プログレッションなんだけど、載ってくる声が万年青年ってのが良いですね。出来ることならこんな風に青臭いまま生きていたいものです。


そんな作品だから、ゲスト陣が素晴らしい。旧友が一堂に会する夢のような一幕。”I Need Your Love Inside Me”(ピーターがデビューを飾ったストレンジャーズのシングルB面。今作のセルフ・ライナーでも触れられていたボブ・ディランの”Like A Rolling Stone”の影響をモロに受けたA面”Land Of Music”も必聴!)、そして”Fast Freight”のコーラスには名前を久々に聴いたケニー・アルトマンが!(フィフス・アヴェニュー・バンド)。彼はもう音楽業界にはいないと聞いていたので貴重すぎる(FABやホワイトホース、E,W&Fに書いた数少ないケニーの曲は本当に素晴らしい)。”Country Time Rhymes”のコーラスにはジェイク・ジェイコブス(バンキー&ジェイク)、ピアノにはマレイ・ウェインストック(フィフス・アヴェニュー・バンド)。ジェイク関係も最近ビッグピンクからCD化が実現した(コレはあえて買い直さないけど)(http://d.hatena.ne.jp/markrock/20120129)。そしてタイトル曲”Hello Stranger(A Long, Long Inside Me)”にはジョン・リンド(フィフス・アヴェニュー・バンド、ハウディ・ムーン)とラリー・ジョン・マクナリー(ジョン・リンドのプロデュースで1981年にデビューしている)が。マドンナの全米No.1ヒット”Crazy For You”も書いたジョン・リンドはA&Rに転身し、ディズニー・グループ内のハリウッド・レコードのエグゼクティブにまで出世している。ミュージシャンとしてのレコーディング参加は相当久々なのでは。さらに”Give Me John Ford”のハーモニカにはジョン・セバスチャンが参加!全体的にはピーターのエレクトリック・ギター1本+コーラスでつづられる曲も多いけれど、彼のオン・コードは実にふくよかで、音楽に広がりを与えてくれる。


うーん。フィフス・アヴェニュー・バンドの再演には正直泣きましたね…なんだろう、メロディが流れ出すだけで胸が熱くなってきてしまう…こういった音楽が、普通の音楽好きの大学生の間でAKBや嵐のごとく聴かれていた90〜00年代初頭の日本。一体あの時代は何だったんだろう…極東の片隅に世界のどこよりも遙かにマニアックな音楽ファンが存在していたはずだ。


ちなみに本作のスペシャル・サンクスはラヴィン・スプーンフル、ストレンジャーズ、フィフス・アヴェニュー・バンド、フライング・マシーン(ジェイムス・テイラー&ダニー・クーチ在籍)、バンキー&ジェイク、マジシャンズ(ジェイク・ジェイコブス、タートルズの”Happy Together”等を書いたボナー&ゴードン在籍)、ローラ・ニーロ、ティム・ハーディン、リッチー・ヘイヴンス、フレッド・ニール、バジー・リンハート、プロデューサーのエリック・ジェイコブスン…とあの頃のグリニッジ・ヴィレッジのシーンが蘇る面々に捧げられていて。それと共に、彼の音楽活動を世界一支持してきたであろう日本のミュージシャンや関係者(長門芳郎さんやブレッド&バター、大貫妙子、細野晴臣…)

の名前があるのも嬉しい。細野さんは”Haruomi Hosoni”になってるけど…まあよくあることです。

http://www.youtube.com/watch?v=zpVo99jLcZY

2013-09-21 Jimmy Webb

markrock2013-09-21

[] Jimmy Webb 00:43

/ Still Within The Sound Of My Voice ( eone / 2013 )

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大好きなミュージシャン、ソングライターの新作にリアルタイムで出会えるというのは嬉しいことだ。個人的には『Suspending Disbelief』(1993)(http://d.hatena.ne.jp/markrock/20100531)や『Ten Easy Pieces』(1994)にリアルタイムで出会い(まだ中学生だった…)、レコードだったら擦り切れるほど聴き続けてきたということもあり、今回の新作も格別の想いで受け止めている。『Suspending〜』に収録されていた”Elvis And Me”をエルヴィスのバックコーラスを担当していた本家ジョーダネイアーズと歌っていたり…あの頃、辞書を片手に歌詞を読みながら聴いていた曲だった。


さて、ジャクソン・ブラウンやグレン・キャンベル、ビリー・ジョエル、J.D.サウザー、リンダ・ロンシュタット(病気の報が悲しい)、マーク・ノップラー、ヴィンス・ギル、ウィリー・ネルソン、マイケル・マクドナルド…といった豪華ゲスト陣を迎えた2010年の『Just Across The River』http://d.hatena.ne.jp/markrock/20100712)の続編とも言える、フレッド・モーリン・プロデュースのセルフカバー盤が本作『Still Within The Sound Of my Voice』だ。


今作もブライアン・ウィルソン、アート・ガーファンクル、ライル・ラヴェット、カーリー・サイモン、クロスビー&ナッシュ、ジョー・コッカー、マーク・コーン、アメリカ、クリス・クリストファーソン、エイミー・グラントからルーマー、キース・アーバンまでのゆかりの超豪華ゲストを迎えている。70年代にマシュー・マッコリーとのコンビでカナダ繋がりのダン・ヒルやバット・マグラスなんかを手がけていたフレッド・モーリンだが、近年はナッシュビルの大物プロデューサーになっている。ここ数年ではアメリカ『Back Pages』http://d.hatena.ne.jp/markrock/20120721)やJ.D.サウザーの『Natural History』http://d.hatena.ne.jp/markrock/20110611)、リタ・ウィルソンの『AM-FM』http://d.hatena.ne.jp/markrock/20130202)などの好作を手がけている。ジミー・ウェッブというと日本ではソフト・ロックとして再評価された部分が強いけれど、アメリカではグレン・キャンベルのライターとしてのインパクトがやっぱり強い。そんなわけで、ジミーの楽曲にはポップ・カントリーの味付けがやはりう似合うという側面もある。フレッドは2010年にジョニー・マシスのナッシュビル盤のボーカル名作『LET IT BE ME-MATHIS IN NASHVILLE』(グラミーにノミネートされた)をプロデュースしていたけれど、そんな色の作。音像もクリアで。ジミー自身のピアノも"Shattered"だけだから、シンガー・ソングライター時代のリリカルなタッチを求める向きにはちょっと違う、と思うかもしれないけれど、個人的はゴージャスかつベストすぎるプロデュース・ワークだと思っている。


さて、今のところ5、6回聴き返しているけれど、前作よりもゲスト陣の色を薄くしているのが判る。つまりジミーのボーカルの割合を増やしているということ。うん、これだけでもパーソナルな風味が出てくる。大仰な前作よりも内省的なアルバムに聴こえてくるから不思議だ。ブライアン・ウィルソンがコーラスを担当した”MacArthur Park”なんて、リンダ・ロンシュタットの”Adios”の時みたいに、もっと前に出てくるのかと思いきや、そうでもない。実に奥ゆかしく、じっくり聴くと判る、という。それだけ、ジミーの歌を大切にした造りになっている。とはいえ、以前にも歌っていたジョー・コッカー自身が参加した“The Moon’s A Harsh Mistress”は流石に個性を押し殺しきれなかったか。いやいやもちろん納得の名唱だった。


あと、今回嬉しかったのはアート・ガーファンクルのニュー・レコーディング”Shatterd”が入っていたこと。いつかまた『Watermark』みたいなアートのジミー曲集を聴きたいというのはファンの夢かな。”Skywriter”もスタジオ録音で聴いてみたいもの。そうそう、アートと言えば『Angel Clare』に収録されていた”Another Lullaby”を今回クロスビー&ナッシュとの親交もあるマーク・コーンと歌っている。『Angel Clare』と言えば、当時のヴァン・モリソンの未発表曲”I Shall Sing”が収録されていたが、こちらは今年リリースされた名作『Moondance』のデラックス・エディションでヴァン自身のテイクが初お披露目となっている。


"Where's The Playground Susie"のセルフカバーも感動した。ジミー・ウェッブの初来日公演の初日で聴いた弾き語りヴァージョンが忘れられない。欲を言えば『Ten Easy Pieces』風の弾き語りアレンジでもう一度聴いてみたい気もするな。そういえば、来日公演では客席からのリクエストに応えて"Skywriter"を歌ってくれたのを覚えている。これが本当に凄かった。アート・ガーファンクルより歌えるんだぞ、ってなソングライターの本気が伝わってきて。二日目にもそんなファン心理を読んで自分から歌ったんだけど、一日目の迫力は無かった。やっぱりライブの魅力は一回性に尽きる。


そうそう、スタートに”Sleepin’ In The Daytime”という、ジミーのファンには余り評価がよろしくないロック調の楽曲を持ってきたのもジミーらしい(今回は”見張り塔からずっと”風で)。ロックにコンプレックスがあるからなのか、自身のアルバムにかならず不似合いなロックを1曲入れるという定石も崩さず(60年代にプロデュースしたテルマ・ヒューストンの『Sunshower』では掟破りにストーンズを直球カバーさせていた)。

1. "Sleepin' in the Daytime" (featuring Lyle Lovett)

2. "Easy for You to Say" (featuring Carly Simon)

3. "Elvis and Me" (featuring The Jordanaires)

4. "Where's the Playground, Susie?" (featuring Keith Urban)

5. "Still Within the Sound of My Voice" (featuring Rumer)

6. "If These Walls Could Speak" (featuring David Crosby and Graham Nash)

7. "The Moon's a Harsh Mistress" (featuring Joe Cocker)

8. "Another Lullaby" (featuring Marc Cohn)

9. "You Can't Treat the Wrong Man Right" (featuring Justin Currie)

10. "Rider from Nowhere" (featuring America)

11. "Honey Come Back" (featuring Kris Kristofferson)

12. "Adios" (featuring Amy Grant)

13. "MacArthur Park" (featuring Brian Wilson)

14. "Shattered" (featuring Art Garfunkel)

そのほかジミー関連で併せて紹介しておきたいのは2012年に蔵出しされたグレン・キャンベル&ジミー・ウェッブの共演ライブ『In Session』。1988年に録音されたモノ。CDと共にDVDも付いている。グレン&ジミーの共演は、これとは違うが日本で大昔ビデオ化されたものもあった。

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あとはアルツハイマーをカミングアウトしたそのグレン・キャンベルの最終セッションのアウトテイク『See You There』も同時にリリースされている。ここにはジミーの手がけたヒット曲”Wichita Lineman”、”By The Time I Get To Phoenix”、”Galveston”に”Postcard From Paris”の新録を含んでいる。ミュージシャンとしての生命はいつか途絶えるものだと知ってはいるけれど、涙無しでは聴けないでしょう。

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2013-09-16 Ruthann Friedman

markrock2013-09-16

[] Ruthann Friedman 01:08

/ Constant Companion ( Reprise / 1969 )

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しばらくお休みにしていたブログ、再始動致します。


60〜70年代の良質の音楽を再発してきたシリーズ「名盤探検隊」がCDデフレを反映した1200円で新たに生まれ変わって。個人的には学生時代の90年代後半、レア盤ショップの飾り物の常連だったレコードの数々がCD化されたと大興奮で聴き漁った有り難いシリーズ。ピーター・ゴールウェイ関係とか、エリック・カズ、忘れもしないポール・ウィリアムス『サムデイ・マン』、ジョー・ママ、ロジャー・ティリスン、ジェシ・デイヴィス、ドニー・フリッツ、フィル・コディ、ビリー・マーニットとかジミー・ウェッブもあったっけ…たぶんキャピトルズとかボブ・クリュー・ジェネレーション、ユージン・マクダニエルズなんかも含めて全部買ったんじゃないかな。


時は流れて、知らぬ間にLPを買い直して今に至っているものも多い。今回のラインアップはそんな意味でも新鮮味がないかな、と思いきやビックリ!新たにラインナップに入った盤も多い。女性シンガー、ヴィクトリアの盤なんて、LPで昔買ったけれど、まさか日本で再発されるとは思わなかった。レニー・ルブランのソロなんてのもLPで愛聴していた1枚。


そんな中で、今回食指が伸びたものはというと、ジーニー・グリーン、クラウディア・リニア、ラブ・ノークス『ネヴァー・トゥー・レイト』、そしてルーサン・フリードマン『コンスタント・コンパニオン』の4枚。


ルーサン・フリードマンはアソシエイションの”Windy”の作者として知られている幻の女性SSW。今回の再発盤が唯一作(リプリーズから1969年のリリース)だった人だが、ここの所、まさかの新作やら未発表レコーディング集『Windy:A Ruthan Friedman Songbook』(アコギのリフにはじまる"Windy"のデモ含む)までリリースが相次いでいる。何でも未発表レコーディング集のライナーによると、アメリカでチャート1位を獲得した単独女性作曲家(共作者ではなく)3人のうちの1人であるとのこと。ウーマン・リブに繋がる自立した女性像を作った時代の寵児だったというエピソードの一つとも言えるだろう。

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さて、『Windy:A Ruthan Friedman Songbook』ではレッキング・クルーのメンツに加え、ヴァン・ダイク・パークスやランディ・ニューマンなどを配した音やカート・ベッチャーのプロデュースによる楽曲などが収録されていたのに対し、本作『コンスタント・コンパニオン』はルーサン自身の弾き語りを中心とした静謐な作。未発表レコーディング集でも客演していたジェファーソン・エアプレインのヨーマ・コウコネンの弟、ピーター・コウコネン(ルーサンと活動を共にしていた時期もあるようだ)がギターで加わった曲もある。ジョニ・ミッチェルやジュディ・シルと比較する向きもあるようだが、確かにメロディの自由さや穏やかさの中にあるサイケデリックなムードに共通するモノはある。でも曲の展開はジョニよりはもっと常識的というか、聴きやすさがあるかもしれない。かなり好感が持てる音。ただ、ルーサンにとっての”Windy”というのは、一世一代の名曲だったということも良くわかったり。


最近では60年代モノのリイシューも重箱の隅の隅にまで行き渡ってきている感じ。特に海外レーベルが元気だ。アソシエイションでいうと”Along Comes Mary”の作者タンディン・アルマーの未発表デモがサンデイズドから今年リリースされたり。ヒッピー・ガール的な女性ソングライターだと、数年前に出た、ティム・ローズらで知られる”Morning Dew”の作者ボニー・ドブソンの再発盤も実に60年代的で感動した記憶がある。3コードに調の違うコードを交えることがカウンター・カルチャーの反抗だったのだろう。

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http://www.ruthannfriedman.com/

2013-06-21 Warren Marley

markrock2013-06-21

[] Warren Marley 17:05

/ Something Better ( A&R ARL/7100/004 / 1971 )


今年3月に亡くなった名匠フィル・ラモーン。ビリー・ジョエル、ポール・サイモン、ピーター・ポール&メアリー、ポール・マッカートニー、トニー・ベネット、レイ・チャールズ、バート・バカラック、ボブ・ディラン、アレサ・フランクリン、シカゴ、カレン・カーペンター…名だたる大御所を手がけ、14回にも及んでグラミーの栄誉に浴している音楽プロデューサーだ。


その彼のホームページのキャリアからも悲しいことに省かれている1枚の仕事を聴いている。ウォーレン・マーレイの1971年のアルバム『Something Better』がそれだ。聴いてみると、ウォーレン・マーレイのこのアルバム、7年(微妙な表現だが…)は早かったかな、と思う程、びっくりするくらい洗練されていて。後にフィル・ラモーンが手がけたドル箱スター、ビリー・ジョエルのプロトタイプとも言えるサウンド・メイキングとなっている。プロデュースは厳密にはフィルと、ジャズ・ポピュラー作品のプロデュースを行っているピート・スパーゴによるものだ。

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ウォーレン・マーレイは1946年にアメリカのアイダホ州に生まれたシンガー・ソングライター。1971年、ニコラス・ローグ監督の映画『Walkabout(美しき冒険旅行)』に彼の楽曲”Los Angeles”が使われたことから、このファースト・アルバム『Something Better』のリリースが決まったようだ。発売元のA&Rレコードニューヨークレコード会社で、マーキュリーの配給となっていた。


なんと”Los Angeles”、アレンジはフリー・デザインのクリス・デドリック。ちなみに映画絡みのもう1曲、1970年の『Pigeons』に収録された”Faces Of You”も収録されているが、こちらはボブ・ジェイムスのアレンジだ。ボブは他にもジェイムス・テイラーのカバー”Anywhere Like Heaven”、”Born Free”(ジョン・バリー作の『野生のエルザ』のメインテーマ)、そしてタイトル曲”Something Better”のアレンジも行っている。”Something Better”はボブのピアノを中心に高揚していく、ポップ・ゴスペルのような素晴らしい楽曲。ジェイムス・ギャングも参加している、とあるけれど、これはちょっと判然としなかった。一方、元ジャスト・アスのアル・ゴーゴニのアレンジしている楽曲があったのも見逃せない。ジェイムス・テイラーのカバー”Something’s Wrong”やアルの楽曲”One Fine Summer Morning”の2曲だ。ちなみにアルバムでは2曲ジェイムス・テイラーを演っているが、フォークからソウルをブレンドしていく後のジェイムスの洗練が既に見られるのは興味深い。そうそう、ハワイのシンガー・ソングライター、クイ・リーの”Days Of My Youth”も見事に歌いこなしていた。


風化しないスタンダードをロック時代にも作り上げたフィルの功績はこんな1枚からも聴き取れる。ウォーレンはその後、オランダに移住し、いくつかのレコーディングを残したようだ。フィルのキャリアからは忘れられているが、ウォーレンのホームページを覗くと今もフィルやドン・コスタと仕事をした70年代前半の日々を、誇りに思っているようだった。


http://www.warrenmarley.com/

2013-06-14 Various Artists

markrock2013-06-14

[] Various Artists 10:02

/ 〜Quiet About It〜 A Tribute To Jesse Winchester( Mailboat MBD 7000 / 2012 )

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昨年こっそりリリースされていた豪華アーティスト参加のジェシ・ウィンチェスター・トリビュート盤『〜Quiet About It〜 A Tribute To Jesse Winchester』。実に地味なリリースっぷりがなんともこの人らしいな、と思った。ジャケを見ると、晩年の高田渡のような容姿でアコギを抱えて。しかもモノクロ。なんて控えめなんだろう、と思ってしまう。


アンペックスからリリースされた1970年のファーストがザ・バンドのロビー・ロバートソン・プロデュースということで話題をさらってから、キャリアは今年で43年!語り部の如くイマジネーションをかき立てるリリックと土の匂いのするルーツ・サウンドはシンガー・ソングライター時代と絶妙に呼応し、1970年代後半まで玄人向けする渋好みの良作を残したくれた。そのコマーシャリズムに背を向けるような地味さというものは、徴兵から逃れるべくカナダに渡り(だからこそロビーと出会えた!)、しばらく本国に戻れなかったから、という理由だけではないだろう。70年代後半、誰もがなびいたAORに色目を見せなかったことからも窺えるように、派手さを好まないキャリアだったように思うのだ。そしてブルーグラスのレコードで知られるシュガー・ヒルから佳作『Humour Me』(1988)、『Gentleman of Leisure』(1999)を忘れた頃にリリースしたこともあった。


そんな地道なキャリアながら、書き残した楽曲はエミルー・ハリス、パティ・ペイジ、アン・マレー、エヴァリー・ブラザーズ、ウィルソン・ピケット、ニコレット・ラーソンなど数多くのアーティストに取り上げられ、ボブ・ディランをはじめレスペクトするミュージシャンも数知れない。


本作はそんなジェシの大ファンを公言するジミー・バフェットとエルヴィス・コステロが参加。ジミーはマック・マクナリー(彼も歌っている)と共にエクゼクティブ・プロデューサーを務めている。そこで集まったミュージシャン、ジェイムス・テイラーにロザンヌ・キャッシュ、アラン・トゥーサン、ライル・ラヴェット、ルシンダ・ウィリアムス、エミルー・ハリス&ヴィンス・ギル、リトル・フィート…という目も眩むような大御所達。プロデューサーとして風格が出てきたナサニール・カンケルが手がけたライル・ラヴェットのトラック”Brand New Tennessee Waltz”(名曲!)にはナサニールの父ラス・カンケルがドラムスで参加していたり、ジミー・バフェットの”Gentleman of Leisure”にはスライド・ギターの名手サニー・ランドレスが参加していたり。そうそう、ヴィンス・ギルのトラックには、彼に曲を書いている元NRBQのアル・アンダーソンがコーラスをつけている。悪いわけがない。


個人的にウルっと来てしまったのが、アラン・トゥーサンが自身のピアノでしっとりと歌う”I Wave Bye Bye”かな。港を去り船出する一艘の船に、夢見る男の元を去っていった一人の女の子のことを思い出す。船はきっと円を描いて、帰ってくるもの。何も泣く事はない、あらん限りの幸せを願い、いまはゆっくり手を振って別れよう…なんていう歌。オリジナルは1999年のアルバム『Gentleman of Leisure』に収録されている。

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1.Payday - James Taylor

2.Biloxi - Rosanne Cash

3.Gentleman of Leisure - Jimmy Buffett

4.I Wave Bye Bye - Allen Toussaint

5.Talk Memphis - Vince Gill

6.Defying Gravity - Mac McAnally

7.Brand New Tennessee Waltz - Lyle Lovett

8.Mississippi You're On My Mind - Lucinda Williams

9.Dangerous Fun - Rodney Crowell (featuring EmmyLou Harris and Vince Gill)

10.Rhumba Man - Little Feat

11.Quiet About It - Elvis Costello