いしうらまさゆき の『愛すべき音楽よ』(ブログ〜CD&レコードレビュー)

2013-05-07 井上陽水、山下達郎、上田正樹等

markrock2013-05-07

[] 井上陽水山下達郎上田正樹22:53

/ 限りなく透明に近いブルー ( Kitty / 1979)


ダブル村上、などと言われた時代もあったけれど、いまは村上春樹ばかりでちょっとそれも嫌になる。村上春樹という人は希有な視野と発言力を持った作家であり、ある種の思想を持った素晴らしい人だな、と発言などを聞く度思うんだけれど、なぜあんなに文体が軽いのか。恥ずかしながら、今の今までピンと来たことが一度もない。80年代的消費文化への対抗心なのかな、60年代や70年代から離れられなかった村上龍の方がピンと来るものがあって肩入れしてしまう自分がいる。社会へのむき出しの対抗心みたいなものを無くした今の日本が嫌なのかな。同じ学生運動を扱っても、春樹はクール、龍はホットというイメージ。現代という時代はクールを好むんだけど、もっとホットなものがあってもいいんじゃないかな、と思うのだ。


そんな気分とは関係ないけれど、村上龍の代表作のサントラ限りなく透明に近いブルーをさいきん入手。数年前に買い逃して以来狙っていた。映画の方はあまり当たらなかったみたいだけれど、60年代の洋楽曲を大物ミュージシャンがカバーしている(本盤のみ収録)というのが魅力。本当はオリジナル・シンガーのテイクを使いたかったんだろうけれど、権利上無理だし、どうせなら、そうした60年代の音楽の影響を受けてきた日本のアーティストに歌わせよう、みたいな企画じゃないかと想像する。


ビートルズ、という印象のある井上陽水のS&Gカバーも面白い。”Homeward Bound”と”Cloudy”を。意外と端正なボーカルを聴かせていて、アンドレ・カンドレ時代の陽水みたいで面白かった。ソニー移籍前、キティ時代の上田正樹は”When A Man Loves A Woman”を。山下達郎のサンデー・ソングブックでも使われているラスカルズの”Groovin’”はレコードのテイクとは違う珍しいもの。元ビーバーズの瀬川洋はラヴィン・スプーンフルの”You Didn’t Have To be So Nice”を。スプーンフルといえば上田正樹の相棒・有山淳司が”Daydream”を演っていたり。小椋佳は流暢な英語で”(What A)Wonderful World”と”Love Me Tender”を。コレは小椋佳とは思えない仕上がり(失礼!)でとても良い。村上龍が歌詞を書いたオリジナルも2曲(カルメン・マキの”青白い夕焼け”(”リュウ”のテーマ)とアレックス・イーズリーの”Queen Of The Eastern Blues”)。”青白い夕焼け”(”リュウ”のテーマ)はOZの春日博文曲だった。


バッキングはロバート・ブリル、上原裕、西哲也、田中章弘、高橋ゲタ夫、小原礼大村憲司、春日博文、山岸潤史、永井充夫、安田裕美、石川鷹彦、有山淳司、永田和承、難波弘之、中西康晴、星勝…などなどといった腕利きばかり。


CDも存在するようだけれど、プレミア化しているみたい。LPで十分。映画の方は正直、小説の混沌を思うと、そこまで観たくもないかな…

2011-12-09 Barry Mann and Al Gorgoni

markrock2011-12-09

[] Barry Mann and Al Gorgoni 04:26

/ I Never Sang For My Father ( Bell / 1971 )

渋谷ハイファイ・レコード・ストア。先月から自分のアルバムを置かせてもらっている。そのお礼にと思いつつなかなか足を運べなかったのだが、やっと行く事ができた。整然とした店内に所狭しと並べられたセレクトしつくされたレコード達。ピカピカに磨かれたレコードと丁寧なポップを読むだけで、音楽愛に満ち溢れている。店長の大江田さんはいらっしゃらなかったけれど、はじめてお目にかかる松永さんにお礼を伝えることができた。なんだかとても緊張した。


いくつかレコードをピックアップした。ちょうどセール中で、レオ・セイヤーのソングライティングで知られるライターの『David Courtney’s First Day』とかDanny Coxがゲイリー・アッシャーのTogetherレーベルで吹き込んだ2枚組『Birth Announcement』あたりは700円くらいで入手できた。うれしかった!


あと、今日取り上げる1枚も今まで海外オークションで高いなと思いつつスルーしていた1枚。『Lay It All Out』期のバリー・マンがアル・ゴーゴニと一緒に作ったサントラ。タイトル曲”Strangers”だけはバリー・マンとシンシア・ワイルの共作で、ロイ・クラークが謳っている小品。ジミー・ウェッブの『The Naked Apeを初めて聴いた時のような、誰も知らない感触。激しい展開が少なく、アコースティック・ギターの音色が美しい楽曲も多くって、かなり好みかな。輸入DVDはあるようだが、ジーン・ハックマンらが出演したこの映画を観ることはなかなか難しいかもしれないけれど。


タイトルからして、親世代と交わらない若者を描いているようだけれど、裏ジャケのストーリーを読むと、やはりそんな感じ。ユダヤ人と結婚した主人公の姉が縁を切られたり。いつの時代もあったはずだけれど、とりわけ50〜60年代的なテーマかな。交わろうと努力するけれど、交われず、分かり合えない若者の葛藤を描いている模様。


バリー・マンのファンなら聴いておいてもいいかな、という盤。

2009-11-01 Easy Rider

markrock2009-11-01

[] OST 16:07

/ Easy Rider ( 1969 )


麗らかなる日曜日ということで。朝早く目覚めたので、唐突ながら、久々に『イージー・ライダー』でも見ようかと思いたち、朝っぱらからとびきりジャンキーなアメリカン・ニューシネマを観てしまいました。ステッペンウルフの”Born To be Wild”にはじまり、ザ・バンド、バーズ(ロジャー・マッギン)、ジミヘンにホーリー・モーダル・ラウンダーズ、エレクトリック・プルーンズ…60年代後半のカウンター・カルチャーを代表する絶妙な選曲ですな。


しかし、冒頭改めて観ていて、この童顔もしかして?とエンドロールを確認するとフィル・スペクターだったり、意外と発見があって。映画自体の作りも、意外と粗雑だったりする所も見えてきたり。


でも、ヒッピーの二人、キャプテン・アメリカ(ピーター・フォンダ)とビリー(デニス・ホッパー)の二人がどこからも拒絶されて。旧態依然とした保守アメリカ社会からならともかくとして、ビリーなんかバック・トゥ・ネイチャーでやっているヒッピーのコミューンからも拒絶されちゃうわけでしょ。カウンター・カルチャーの時代背景抜きに考えても、どこへ行ってもハグレ者になってしまうという彼らに共感してしまった。結局、敵を作って群れをなすことしか出来ないのかな、人は。一方そんなビリーにだって、結構排他的な所があるわけだし。お互い様で。


さて、サントラの”The Weight”は契約の都合上、ザ・スミスのヴァージョンで。ロック・ファンにはコレを嫌う人が多いけれど、意外と悪くないですよ。ザ・スミスのベストも出てるし、ファンは居るはず。ステッペンウルフと同じダンヒルにいた、そのスミスの紅一点、ゲイル・マコーミックは同じくダンヒルから、ランバート&ポッター・プロデュースの名盤を残している。最高のポップ・ソウル盤でオススメ。

2007-12-10 High School Musical

markrock2007-12-10

[] High School Musical ( 2007 ) 00:12


ディズニー・チャンネルが制作した、全世界で大売れしている学園モノ・ミュージカル。2作目まで観る機会に恵まれたが、実にベタベタな作り。私も高校生だったら、この世界に入り込みたい願望にかられたかも。なーんてね。んなわけない。


何といっても魅力を感じたのは、出来すぎた楽曲群。一度聴いたら覚えられる、コレゾ売れ線、な作り。エイティーズタッチのAORバラードがあったり、ジャニーズばりのダンスナンバーがあったり。なんだかんだ商業主義礼賛なワタシは思わず購入。カラオケ付きの2枚組だったが…誰が歌うか!


冒頭のM-1”Start of Something New”、これはもしやリチャード・マークス?と思っていたが、サントラを聴いてみるとロビー・ネヴィルの作。まあ当たらずとも遠からずということで。あと、アダム・ワッツが手がけたM-3”What I’ve Been Looking For”がなかなかの佳曲。M-5”Stick to the Status Quo”は映像と共に聴きたい、ミュージカルらしい作品。これまたエイティーズなロックバラード、M-8”Breaking Free”もなかなか。ただし全体的に、映像が無く音だけだとジャリタレっぽさが気に障る部分も。歌ってるのは子供だし。


とは言え、続編『2』サントラも悪くない。

2005-05-09 Music & Songs from Starlight Express

markrock2005-05-09

[] Music & Songs from Starlight Express  22:25

(MCAD-5972 /1987)


これはCatsやThe Phantom of the Operaで知られるAndrew Lloyd Webberのミュージカルサウンドトラックのレコーディング版。El DeBargeの歌うタイトル曲M-1などは80'sバラード好きにはたまらない佳曲で、この一曲のみJay Graydonプロデュース(他は数曲除きPhil Ramone)。全体的には、映画サントラ全盛時代ということもあり、ミュージカル作品といううよりもフットルースの線の定番80'sサウンドのオンパレードで、実に気持ち良い仕上がりだが、カントリーっぽいものがあったり(Richie Havens!の歌う M-13"Light at the End Of The Tunnel")、R&B風(M-6"Pumping Iron"、M-12"One Rock & Roll Too Many")があったり新境地も。

特筆すべきはその内M-6、M-12で、なんとソロデビュー前のMarc Cohnが渋いシャウターR&Bボーカルを披露している。Marc Cohnはまだ3作と寡作ながら、30代後半にもなった1993年、(James Taylorのバックアップもあり) 感動的な"Walking in Memphis"を含むアルバムMarc Cohnでデビューした苦労人。Crosby & Nash、Jackson Browne、Jimmy Webb、Kris Kristoffersonなどとの共演もあり、ロック現役世代に絶大な支持を仰ぐSSWだ。個人的にはかなり好きな歌手でもあり、思わぬ発見に大感動。

とはいえアルバム全体の白眉はJosie Aiello and Peter HewlettのデュエットバラードM8"Only You"あるいはRichie Havens and Peter Hewlettの壮大なバラードM-11"I Am The Starlight"か。Richie Havensの野太い歌声は実に歌心いっぱい。ちなみにRichieは80年代〜90年代に素晴らしいボーカル名盤を残している。例えば1991年のNowはジミヘンの"Angel"の涙モノのカバーや、Cyndi Lauper"Time After Time"のこれまた味わい深いカバー、そしてDavid Growの信じられないくらい素晴らしいバラード"After All These Years"を収録。その他Nick JamesonやTim Mooreなどの佳曲をアーバンコンテンポラリーサウンドに載せて奏でる、時代を超えた定番作だ。また時代は遡るが1981年作Connectionsも、メロウな名バラードM-1“Mamma We’re Gonna Dance”を筆頭に、Tom Waitの"Ol '55" やSam Cooke の"You Send Me"、Paul McCartney "Every Night"、Stevie Nicks "Dremes"等のカバー曲も交えながら、Jeff Baxter、Elliot Randell、David Spinozza、Richard Tee、Chuck Rainey、Steve Gadd、Andy Newmarkなど豪華な面子で聴かせる名盤。コーラスにLou Christieの名も。しかしながら、思い返してみればウッドストック ”Freedom”の怪演が全ての始まりだったRichie Havens。まさか30年後、クワイエットストームを演出するバラーディアーになると誰が想像できただろうか。’60〜’70年代ロックファンには黙殺されがちだが、全くもって見逃せない。