いしうらまさゆき の『愛すべき音楽よ』(ブログ〜CD&レコードレビュー)

2014-12-23 AC/DC / Rock Or Bust

markrock2014-12-23

[] AC/DC / Rock Or Bust ( Sony / 2014 ) 12:10

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ロックするか、ぶっつぶれるか!(『Rock Or Bust』)また最高のタイトルで奴らがやって参りました。解説はセーソクさんこと伊藤政則氏。こーいうものは日本盤を入手。初回限定ホログラム・ジャケというやつが面白い。バンド・ロゴが粉砕されるという演出付きで。しかも、計算済みであろうジャスト35分00秒の11曲。セーソクさんも流石慧眼と思ったけれど、指摘してました。アナログ時代を念頭に置いた作品であるということ。確かに最近のアルバムは冗長で長すぎる。聴き続けて、物足りないなと思うくらいの長さが、また聴こう、に繋がるのかもしれない。そう言う意味では長くて3分41秒、短くて2分42秒、というこのアルバムの楽曲は実に潔い。レーベルも黒字に金文字の旧い12インチ風で。

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ハード・ロック / メタルプログレの世界って、女人禁制の会員制クラブみたいな所があって、どうもそういう雰囲気は好きになれないけれど、近年のAC/DCは普通のロック・ファンにもっと聴かれて良いのになと思ったりする。ストーンズとほとんど同じ、ノリを楽しむ良い意味の金太郎飴ロック。最近このノリがなぜか涙腺を刺激する。私自身、真に開眼したのは恥ずかしながら2008年の前作『Black Ice(悪魔の氷)』だったわけで。それまではモンスター・アルバム『Back In Black』は当然聴いてるけど、程度の。それが、前作『Black Ice(悪魔の氷)』の冒頭”Rock N Roll Train(暴走列車)”を聴いたとき、アタマに雷が落ちたくらいの衝撃がありまして。再ブームを巻き起こしたのも判るポップさ。それから狂ったようにアルバム遡って全部聴きました。大好きなイージービーツヴァンダ・ヤングかいな、っていう、そしてジョン・ポール・ヤングもだったんかいな、という初歩的な気付きもありました。そして2011年リリースのDVD『Live At River Plate』を観て…これ、贔屓目抜きで今までみた音楽DVDの中で一番凄かった。だって、渦のような南米の熱狂的な群衆で会場が「揺れて」るんですよ。物理的に。それがちゃんとわかる。シンプルな、時に技巧的なアンガス・ヤングのギターリフだけで音が立ち上がって観客もろともロックする。ロック音楽の神髄はここにあるんだな、という。何故だか涙が止まらなくなって。ストーンズなんかの生演奏でもそのフィーリングが伝わるんだけれど、なかなかこんなバンドはありそうで、ない。日本のロックバンドも色々生で観たけれど、こういう感覚を味わったことはまだない。もったりしたノリなんだけど、腰が動く、という。でも、ファシズムみたいな一律的なヘッドバンキングや手を振りかざしての一斉動作にはならない、という。

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今作は前作ほどのキラーがあるか、と言えばそこまでのものはないけれど、伝統芸能か、と言うくらいのお家芸全開で、米メジャーリーグポストシーズンのテーマに選ばれたという2曲目”Playball”に続く3曲目”Rock The Blues Away”でまたもや涙が止まらなくなってしまった。もはや涙腺制御不能、意味不明ですね。感情の趣くままに。前作に引き続くブレンダン・オブライエンのプロデュース・ワークも良い。ハード・ロック・ファンだけに聴かせない、危険な匂いに偏らない骨太なアメリカン・ロックの王道感を打ち出している。何よりブライアン・ジョンソンの歌いっぷりが好きなんだと思う。ボン・スコット時代より好き、なんて言ったら流石に筋金入りのファンに怒られるかな。でも、ガニ股で、もはやカッコイイとは言い難いオッサン67歳が声振り絞ってハイトーン出すわけですよ。胸が打ち震えない訳がない。来年でバンドはデビュー42年。ブライアンはジョーディーでデビューしたのが1972年ということですから来年で芸歴43年…。

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9月にはまさかの認知症…によるマルコム・ヤングの離脱もありました。内ジャケにはアンガスのギターと寄り添うマルコムのギターが…切なすぎる。ただかつてマルコムの代役を務めた一族スティーヴィー・ヤングが再び代役に収まった。と思ったら今度は11月にドラマーのフィル・ラッドが殺人に関与して逮捕、なんてニュースもあって。ニュー・アルバムの気の利いたプロモーションかと勘違いしたけれど、実際プロモーションはフィル抜きで行われて、シャレになっていない出来事だと理解した次第。人生山あり谷ありか…ロックするか?それともぶっつぶれるか?

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2014-12-13 Bryan Adams / Tracks Of My Tears

markrock2014-12-13

[] Bryan Adams / Tracks Of My Tears ( Bad Records / 2014 ) 10:32

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もう12月半ばですか!早いとしかいいようがないです。ジョン・レノンの命日も過ぎ。唐突にブライアン・アダムスの新譜を。ブライアン・アダムス、大好きだった。最近聴いていなかったけれど。10年くらい前に武道館来日公演も行きました。当時もはや若くはなかったはずなのだが、白い「つなぎ」で登場しましてね。トリオ編成のロックバンドだったかな。シンプルなロックンロールのすごみを感じられて感動したのを覚えている。



70年代ブリティッシュ・ロックを思わせるスタイリッシュなジャケ写ヴァンクーバー時代の16歳のブライアン本人!)がいいでしょ。写真集のようなブックレットを開くと、スリーブ付きのシングル盤で楽曲が紹介されていて、センスが良い。Capitol、Dot、CBS…とか、アナログ好きがニヤリとするような色んなレーベルを模したデザインになっていて、見ているだけで楽しい。あの時代、への鎮魂みたいな雰囲気も感じつつ。11曲で本編が終わるけれど、私の買った輸入盤だと5曲のアウトテイクのボーナスが付いていた(日本盤にはさらにもう1曲、エヴァリー・ブラザーズのカバーが入っている模様)。昨今のカバーものの流れを汲んでいて、ブライアンが影響を受けた楽曲を彼なりに料理した作品。「知らない曲があったらオリジナルを聴いて、僕の解釈を楽しんで欲しい」なんてブライアン自身のコメントがライナーにあった。AMラジオから流れる”Born To be Wild”(Steppenwolf)、”Killer Queen”(Queen)、”Mississippi Queen”(Mountain)…なーんて楽曲に胸躍らせる生粋のラジオ少年だったみたい。でも今回の選曲ディープ・パープルレッド・ツェッペリンバッド・カンパニーアリス・クーパー…なんていうハード・ロック路線に走らなかったのはプロデューサーの判断があったみたい。そのプロデューサーというのが、同郷カナダ出身のデヴィッド・フォスターとブライアン自身(3曲はボブ・ロックとブライアン)。いやこりゃびっくりですね。デヴィッド・フォスター、最近ではボンボン息子の乱行が日本のバラエティ番組でも取り上げられるくらいのネタ提供セレブ化してますが、ちゃんと良い仕事をしていて。ソウル名曲をキレイ目にカバーした2作+ライブが印象的だったシールとか、マイケル・ブーブレの諸作とも同様、安定したポピュラー・ボーカル盤としても聴けるかな。ちなみに最近、誰も買おうとしないような50〜60年代のゴージャスなポピュラー・ボーカル盤をせっせと集めているんだけれど、デヴィッドが目指してきた王道感ってのはこの辺りが念頭にあるのかもしれないなと思ったり。



こうして聴くとブライアンのしゃがれ声がやはり印象的で存在感がある。カバー盤を聴いていると誰のCDを聴いていたか忘れちゃうことが時としてあるけれど、そんなことはない。冒頭ビートルズの”Anytime At All”(これまたジャストな選曲で…)なんて往年のブライアン節の突っぱしるギター・ロックなアレンジで。



ジム・ヴァランスとの共作”She Knows Me”もブライアンらしい、フォーク・ロック風味の新曲。自身の楽曲はこんなミュージシャンの影響でできたものなんです、という証明かな。ドン・ギブソンというかレイ・チャールズ版が有名な”I Can’t Stop Loving You”、ディランの”Lay Lady Lay”、 CCRの”Down On The Corner”にチャック・ベリービートルズ)の”Rock And Roll Music”はバラード、ミディアム、ロックン・ロールというブライアン節の直球。さらにマンハッタンズの”Kiss And Say Goodbye”みたいな隠し球もあり。”The Tracks Of My Tears”は色んなカバーがあるけれど、個人的にもスモーキー・ロビンソンで一番好きな曲だから嬉しかった。本作のタイトルはこれをもじって『Tracks Of My Years』なんてのも気が利いている。そして、日本人にも受けたブライアンの歌謡性(ライナーには日本のファンとの近年の交流も記されていた)はボビー・ヘブの”Sunny”やアソシエイション”Never My Love”のカバーで理解できたような。いずれにせよ60年代ロックにどっぷり、なブライアン少年だったんでしょうな…



ラストはブライアン繋がり、か知りませんが”God Only Knows”を。基本デヴィッドのピアノ弾き語りで。グッと来ましたね…クリス・クリストオファスンやエディ・コクランジミー・クリフなどを取り上げたボーナスも、簡素なアンプラグドセッションみたいな感じで聴き物。違和感なく収録された”You’ve Been A Friend To Me”は2009年リリース楽曲セルフ・カバー。



代表作『Reckless』の30周年記念デラックス・エディション4枚組なんてのも出ている。たぶん結構良いんだろうけれど、この類は最近消化不良を起こしそうになってしまう(実際今年入手したボックス系は飽和状態でとても聴ききれない!)。筋金入りのファンの方は必携かと。

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2013-03-27 Heartsfield

markrock2013-03-27

[] Heartsfield 06:40

/ Foolish Pleasures ( Mercury / 1975 )


ドゥービー・ブラザーズをさらに軽やかにしたようなファンキーなギター・カッティングに導かれる”As I Look Into The Fire”でスタートするハーツフィールドなるバンドの3枚目のLP。分厚いコーラスも決まっている。FDRで購入した盤だと記憶している。


決めてはプロデューサーのデヴィッド・ルービンソン。サンフランシスコのロックの顔役というイメージがあるプロデューサー/エンジニア。もっと重たいロックかと思っていたけれど、実に爽やかな印象のある西海岸ロック盤だった。ミスティでアクースティックな”Magic Mood”やイーグルスみたいな”Nashville”なんてウェスト・コーストのカントリー・ロックやSSWのファンにもアピールするでしょう。中心メンバーはギター、マンドリン、バンジョー、フィドルを操るJ.C. Hartsfield(バンド名はちょっと綴りが違う)とギター・ボーカルのPerry Cordell Jordan。間奏でプログレッシブな演奏を展開する曲もあり、その実力が窺い知れる。


2000年代にはオリジナル・メンバーのFred Dobbsを中心に再結成し、現在までに計11枚のアルバムをリリースし、今もツアーを続けているとのこと。生粋のライブ・バンドだったのだろう。

http://www.heartsfield.com/

2011-08-02 Rainbow Cottage

markrock2011-08-02

[]  Rainbow Cottage 21:37

/ Same ( amr / 1976 )

昨日は制作中のミニアルバムのうち、2曲の歌入れレコーディングでした。よしだたくろうや海援隊、古井戸、ケメ、泉谷しげるらを輩出したエレック・レコードという70年代のインディ・レーベルはURCと共に私の憧れでもありました。んで、ケメさんがいたピピ&コットのリーダーだった金谷あつしさんが経営するお店「風に吹かれて」ってのが大森にありまして。響きが良いウッディなそのお店でのレコーディング。2曲のアレンジはこれまたエレックレコード出身、元“竜とかおる”の佐藤龍一さんにお願いした。素敵なブルースハープも入れてもらいました。エンジニアは敬愛する元古井戸の加奈崎芳太郎さんをはじめ、多くのフォーク・歌謡曲のアーティストを手がけた石崎信郎さん。私なりの洋邦フォーク・ミュージックへのオマージュといった作品になればと思っています。プロデューサーは金谷さんということでアルバムは6曲入る予定。9月ごろには完成させたいもの。


さて、本日の1枚はレインボー・コテージのファースト。まあ普通に耳にするアルバムではないかもしれない。エアー・メイル・レコーディングスの紙ジャケ再発、ラリー・ペイジ・コレクションの仲の1枚。ラリー・ペイジは、キンクスを見出し、トロッグスのヒットを支えたという裏方だ。


イギリスものは、アメリカに比べると好んで聴いているとも言えないけれど、ウェスト・コーストロックへの憧れを載せたサウンドという帯の文句に惹かれて購入。直球すぎるけれど、イーグルスのファーストに入っている”Take It Easy”をカバーしてるってんだから、聴いてみないわけには行かないでしょう。


ということで流してみると、確かにアクースティックギターを貴重にしたカントリー・ロックサウンドで、コーラスもウェストコースト・ロックのそれだ。ただ個人的にはイーグルスというより、”名前のない馬”で知られる、これまたイギリスのグループ、アメリカに近いものを感じた(先月のダン・ピークの訃報はショック…!アメリカの40周年の新譜には、繋がりのあるジミー・ウェッブのカバー、”Crying In My Sleep”が含まれているようだ。)



イーグルスの”Take It Easy”の他には、70年代初頭、シャドウズ出身ながらCS&Nを模したサウンドを披露してくれたマーヴィン、ウェルチ&ファーラーの”Brownie Kentucky”や、”ビューティフル・サンデー”でお馴染みのダニエル・ブーンの”Play Me Like A Violin”をカバー。それ以外はメンバーのブライン・ギブスがそつない楽曲を提供している。カラッとした、といいたいところだけれど、薄口でイギリスらしい湿った音に感じた。もっともイーグルスのファーストも、グリン・ジョンズが手がけたイギリス録音だけれども。ウェスト・コーストの蒼い空なんてのは、ある種の創造の産物なのかもしれない。


いずれにせよ爽快なポップ・カントリー・ロック盤。

2011-01-10 The Bird And The Bee

markrock2011-01-10

[]  The Bird And The Bee 01:47

/ Interpreting The Masters Volume 1 : A Tribute To Daryl Hall And John Oates ( Blue Note 2010 )


去年出たザ・バード&ザ・ビーの盤。故ローウェル・ジョージの娘イナラ・ジョージとグレッグ・カースティンからなるデュオ、って説明しなくてもそれなりに知られてきている。


オールド・ロック・ファンにとっては2世というだけで気になるところだけれど、さらに、ヴァン・ダイク・パークスやジャクスン・ブラウンと共演したりと、イナラの活動にはロックが生み出してきたある種の遺産を大切にしようとする姿勢が見て取れる。だって、有名人の子供でも、そういう古い連中とは付き合いたくないってタイプもいるわけだから。


それで、今回はダリル・ホール&ジョン・オーツのトリビュート作を作ってしまった。フィリー・ソウル色の濃い初期のホール&オーツというよりも、エイティーズに”Kiss On My List”なんかでバカ売れしたエレクトロ・ポップな彼らを蘇らせた感じ。絶妙なソウル・フィーリングと良くできたメロディのブレンドに改めて触れると、ホール&オーツがソングライターとして優秀だったと言わざるを得ないだろう。


ビージーズの”How Deep Is Your Love”のカバーなんてのは以前演っていたけれど、ここまで直球な作もまた良いもので。しかも1曲目にオリジナルの”Heard It On The Radio”っていうこれまた“あの”時代のホール&オーツの甘酸っぱさを蘇らせたモノ。作り手としては、絶対作ってみたい作品だろう。ホール&オーツと同化できたようなそんな満足感に包まれているのではなかろうか。ちなみに本作のジャケは『Private Eyes』(1981)を借用、曲目はベスト盤『Rock’n Soul Part1(フロム・A・トゥ・ONE)』を元にしている。


楽曲不足でカバー流行りなのは別に日本に限ったことではないけれど、ホンモノが自分たちの音で再構成するカバー盤、これってタイトルにもある通りInterpretation、つまり解釈という領域なんだと思う。スキマのある音がとても良い。そう思うと、訳のワカラン女性シンガーに90〜00年代のメガヒットを歌わせるだけってのは芸がないよね。

2010-11-11 Owl City

markrock2010-11-11

[]  Owl City 23:05

/ ocean eyes ( Universal / 2009 )


アウル・シティのポップス。なんだか全然見当違いかもしれないけれど、Daft Punkを初めて聴いたときに似た感じ。デジタルでエレクトロニックな感触だけれど、エイティーズ風味の懐かしさを感じたような、そんな胸キュン(死語!)な何かがある。


アウル・シティというとバンドのような気がするけれど、なんでもアダム・ヤングという男1人で作り上げたという。まさに、宅録・マイスペース世代の落とし子だ。曲によって、マシュー・ティーセン、メリサ・モーガン、ジョリー・リンドホルム、ブレアン・デューレンがボーカルを務めている。


いずれの曲もポップそのもの。ただ、エレクトロニックというと、耳をつんざくようなダンス・ミュージックかと眉を顰める向きにはその誤解を解かねばなるまい。まことにとろけそうな音なんだから驚きだ。こんな気分になれるヒット曲は日本にはない。J-Popってつまりカラオケで歌われることを前提としたバカ音楽なんだけど、そんなのばかり売れてるようじゃやっぱり救えないな、と思ってしまう。せめてアウル・シティくらいのクオリティは保っていて欲しい。

2010-11-07 Elton John / Leon Russell

markrock2010-11-07

[]  Elton John / Leon Russell 01:55

/ The Union ( Decca / 2010 )


興奮のデュオ新作。DVD付きの方を輸入盤で入手。最近日本盤はトンと買わなくなったな。安さが一因。特にこういったベテランの新譜だと、パッケージのデラックス感を強調して、団塊の世代向けの高価格を設定してくるからね…全くバカにしてますよ。


さて、アメリカとイギリスを代表するピアノマンである、レオン・ラッセルとエルトン・ジョンがまさかの邂逅。60年代は売れっ子セッションメンとして、70年代にはロック界の顔役だったことを思うと、近年細々とした活動が目立ったレオンにとっては、久々のメジャー復帰。エルトンとビリー・ジョエルはツアーはすれど、共演盤という発想は出なかった。ビリーとエルトンの方が音楽的に近しいモノがあるから、レオンとじゃあエルトンと言えど刺激を感じたのかもね…なんて思いつつブックレットを読み進めていって、その感動的なくだりに涙が出た。


なんでも2008年、エルトンの私生活上のパートナーであるデヴィッド・ファーニッシュと音楽番組を一緒にプロデュースした際(エルヴィス・コステロが出演)、長らく忘れ去っていた3人のシンガー・ソングライターについて話し合ったとか。その3人というのが、ローラ・ニーロ、デヴィッド・アクルス(まさかこの名がエルトンから出てくるとは…)、そしてレオン・ラッセルでありまして。で、3人の音楽を知らなかったデヴィド・ファーニッシュは、iPodに彼らの音楽を入れることにした、と。その中からレオンの『Retrospective』(ベスト盤ですな)を聴かせてもらうことになったエルトン、突然涙が止まらなくなり、彼の音楽が人生における最も美しく素晴らしい時をもたらしてくれたことに気づき…さらに、こんなにも素晴らしい音楽を人々が忘れ去ってしまっていることに怒りを覚えたんだとか。


思い起こせば若き日のアイドルだったレオンと1970年にLAのライブハウス、トルバドールで出会い、レオンはイギリスからやってきたエルトンとの共演を快く快諾したという。ディレイニー&ボニーのツアーやジョー・コッカーとのマッド・ドッグス&イングリッシュマン、そしてチャリティ・イベントの先駆でもあるコンサート・フォー・バングラディシュで一世を風靡したレオンと、”Your Song”のブレイクで一躍ポップスターの仲間入りをしたエルトンの2人が再び重なり合うことはなかったわけだが、ひょんなことでレオンの音楽に突き動かされたエルトン。アメリカにおけるマネージャーを務めるジョニー・バービスがかつてシェルター・レコードのスタッフだった関係から、レオンと連絡が取れて、電話越しに旧交を温めた。その後早速T・ボーン・バーネットに初めて連絡を取り、プロデュースを依頼して…なんだかトントン拍子の夢のような話で、読んでいるだけで胸が熱くなった。


盤の中身は最高!レオン、エルトン&バーニー・トーピンのそれぞれの単独作に、レオン&エルトンやレオン&バーニーの共作も加えて。ボーカルを2人で取るものが特にぐっと来る。昨日このブログで取り上げたロバート・プラント&アリスン・クラウス盤もTボーンのプロデュースだったので、マーク・リボーやジェリー・ベルローズ、デニス・クロウチとか、その盤とも被ったメンツではあるけれど、あっちよりナチュラルな音で、個人的には好みかな。演奏では2人のピアノはもちろん、他にもジム・ケルトナー、ドン・ウォズ、ロバート・ランドルフ、ドイル・ブラムホール供▲屮奪ー・T・ジョーンズが。コーラスではビル・カントス、ジェイスン・シェフ、ルー・パーディニなんてAORな人が参加している。さらにさらに、”When Love Is Dying”ではコーラスにブライアン・ウィルソン、”Gone To Shiloh”ではニール・ヤングがボーカルを聴かせている。ゴスペル風の女声コーラスもとても良い。


手元にあるのは16曲入り。DVD入りの方が2曲多いので要注意だ。2人が全く衰えていないところがこの盤の価値を高めている。メイキングのDVD(カナリ短い…)を観て、”Border Song”辺りはレオンの影響なのかな、と思ってしまった。こんなベテランになっていながらも、イギリス人がアメリカ音楽に気を許しつつ、でも地が出てしまう感じが良い。冒頭の”If It Wasn’t For Bad”はレオンの会心の1曲で最も売れ線かも。

2010-11-06 Robert Plant Alison Krauss

markrock2010-11-06

[]  Robert Plant Alison Krauss 01:49

/ Raising Sand ( Rounder / 2007 )


昨日何故か急にツェッペリンが聴きたくなって。アルバムを全部ひっくり返して聴いてみた。語り尽くせないくらい良い曲と演奏があるんだけれど、”Gallows Pole”が改めて良かったなぁ。単純にカッコイイということだけでも十分だけれど、ブルーズやトラッドのルーツに通じているところが、さらにこのバンドに惹かれる理由の一つだったりする。大分昔になるけれど、レッドベリーのLPを中古屋で手に入れ、12弦のぶっといストロークと迫力のヴォーカルに耳を奪われつつ、何気なく聴いていたら”The Gallis Pole”って曲が飛び出してきて。もう、驚いた!”ハングマン”というフレーズでツェッペリンの”Gallows Pole”と同曲だと判りましたよ。


てなわけで、久々にロバート・プラントとブルーグラスの女王アリスン・クラウスの共演盤を取り出してきた。クラシック・ロックのオーディエンスや評論家筋から大いに評価されて、2009年にはグラミーをかっさらった(5部門!)。Tボーン・バーネットそのものといえる、独特の音像で紡がれるトラッド・ライクな音楽は、曲によっては単純なフォークやカントリーとも言うに言えない無国籍な空間を作り上げている。マーク・リボーがキーマンですな。その他にもデニス・クロウチ、ジェイ・ベルローズ、ノーマン・ブレイク、マイク・シーガーといったミュージシャンが参加している。


楽曲を見ると、元ザ・バーズの故ジーン・クラークの曲を2曲取り上げているのが目立つところ。他にもアルバム内では珍しくロッキンな仕上がりの”Gone Gone Gone (Done Moved On)”はなかなか良い。シングルにも切られた、ご存じエヴァリー・ブラザーズの曲。ロバートのシャウトも聴けてゴキゲンだ。トム・ウェイツやタウンズ・ヴァン・ザントを取り上げているのも嬉しいところ。ペイジ&プラントで1998年に発表した”Please Read The Letter”も再録。


いやはや、正直リリース直後は、Tボーン・バーネット臭さが正直鼻についたし、その地味さも気になったのだけれど、なぜか、何度も聴くと不思議とじわじわ来るのだ。


プラントは今年も『Band Of Joy』をリリースし、ルーツの追求に余念がない。そう言えば、漁船衝突の映像流出が方々で波紋を広げ、YouTubeがとうとう外交問題に切迫するという、そのメディアの特性をある意味じゃあ遺憾なく発揮した状況を迎えていて。しかし、半端ではないプラチナ・チケットと化したロンドンでのツェッペリン再結成(2007年)がすぐに映像で見られたときは、興奮したものだ。今更言うことでもないけれど、YouTube恐るべしですよ。

2010-10-15 Fistful of Mercy

markrock2010-10-15

[]  Fistful of Mercy 00:48

/ As I Call You Down ( HOT Records / 2010 )


けっして作り込まれた感じはしない。裏ジャケの通り、ラフなセッションという感じ。でもこの生々しい感じがとても良いんだ。彼ら3人の新たな音楽の創造に対する喜びが伝わってくる。メンバーはジョージ・ハリスンの息子、と言われてしまうのは致し方ないダーニ・ハリスン(なにしろジョージにソックリなのだから)、シンガー・ソングライター&ギタリストとして不動の地位にあるベン・ハーパー、そしてジョセフ・アーサーという3人だ。出来立てほやほやのデビュー・アルバム。


消え入りそうなアクースティック・ギターを中心とした揺らぎのあるサウンドに3人のボーカルが載る。CSN的と言ってしまうのは簡単だけれど、3者の個性がそれほど分かり易く自己主張しているようにも聴こえない。注目のダーニも流石にメインは張れないな、という青さだし。でもその青さみたいなモノが全体を通した魅力かもしれない。以前、マシュー・スウィート、ショーン・マリンズ、ピート・ドロージっていう3人のソングライターが組んだザ・ソーンズってのがあったけれど、これは作り込まれた分かり易いポップさがあった。それでも、儚げな浮遊感になんともちょっと、似た感じを覚えた。


YouTubeで見たけれど、”Father’s Son”ってのがバリバリ、ブルーズしている作で、ある種ベン・ハーパーの独壇場の音だけれど、ダーニのボーカルはジョージっぽいなとも思ったり。時折ひねくれた展開をする辺りが、ジョージっぽさを出した部分だろう。ダーニ本人は意図していなくても、他のメンバーがそこを引き出した可能性は大いにある。


歌詞はこれまた東洋的でありまして、シンプルな言葉に奥行きを持たせている感じ。格言めいた言葉が多く出てくるあたり、ダーニの趣味かなと思ってしまう。たとえばタイトル曲は、不可分の関係にある二人は、相手を見てコントロールすることが出来ても、自分の内面を見てコントロールすることはできないものだ、と歌っている。


また別に、バンド名をタイトルにした”Fistful of Mercy”って曲があるけれど、これは「一握りの慈悲」ってな意味なのかな。人生の危機に際して、それを救ってくれる「一握りの慈悲」は枯れ果てた自分の心の中にあるんだ、と希望を持たせて結んでいる。全体的に、内省を促す言葉が並んでいて宗教的にすら感じられた。


曲によってはセッションの中から浮かび上がった言葉を記していったような楽曲もあるのかな、と推測するけれども。ちなみにドラムスが入った曲では百戦錬磨のジム・ケルトナーが参加。それにしても、ジョージに生き写しだ。下はポールと一緒に写っている写真だけれど。

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ポールの息子、これまた激似のジェイムス・マッカートニーもEPのリリースが決まっていて、ビートルズ関連の需要を見込んだ便乗に精が出ている。視聴した限りあんまり個性を感じないが。

http://www.jamesmccartney.com/index.php

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2010-09-20 Maroon 5

markrock2010-09-20

[] Maroon 5 23:57

/ Hands All Over ( Universal / 2010 )



マルーン5の3枚目の新作。今月15日に日本盤が出たけれど、今回はボートラにそこそこ目立つモノがあったからそちらを購入。過去2枚が1500万枚売れているってのも凄いですな。立派なアルバム・アーティストだと思う。今回も出来がとにかく良いものだから!間違いなく最高傑作。


さて、今作のプロデューサーは本人からラブ・コールのあったロバート・ジョン“マット”・ラング。個人的にはブライアン・アダムスで耳馴染みな音なんだけれど。他にもAC/DCやらシャナイア・トゥエインで知られているトップ・プロデューサーだ。


やっぱりドツボだったのはシングルが切られている”Misery”かな。とてもエイティーズのテイストを感じさせる楽曲。ボーカルのアダム・レヴィンが女の子に殴られたり、ひどい仕打ちを受け続ける衝撃的なプロモも良かったけれど。Em-Am-D-Gなんてコード進行がまた良いじゃないですか。個人的にはアバのアグネッタが1987年に小ヒットさせた”Let It Shine”(ビル・ラバウンティがソングライティングに加わっている)を思い出したな。同じコード進行だし。


コード進行で思い出したけれど、去年くらいからアメリカのチャートを見てみると、ヒットしている曲はみんな同じコード進行だったりしますよ。キーCで言うところのF-C-G-Amという定番のリピート。ジェイスン・デルーロ”Whatcha Say”だとか、ケイシャの”Tik Tok”だとか、アウル・シティの”Fireflies”とかね。レディー・ガガの”Alejandro”もそうかな。ま、今に始まった進行ではないけれど。


さて、話を戻すとこのマルーン5の新作、カントリー界の新星レイディ・アンテベラムとの共演(”Out Of Goodbyes”)という話題性もある。結構ポップ・カントリーな音をこうしてやっちゃう所もフトコロの広さを感じたな。”Don’t Know Nothing”はあの”I Heard It Through The Grapevine”を聴き取ったり、モロにモータウンしている”I Can’t Lie”があったり。”How”には先日新作を取り上げたフィル・コリンズを思わせる、ポップ・ソウルを感じたり。頭打ちのパーティソングみたいのが入ってるのはしょうがないけれど、楽曲の完成度は抜群に高い。バラード”Just A Feeling”もキたなあ。


で、ボーナストラックでは”Misery”のデモと思しきテイクがあったり。コレを聴くと、アレンジで作り込む過程が見て取れる。でも、アクースティックでこれだけ聴ける曲だから、自ずとヒットしたんだろうな。ライブやボートラ扱いだけど、アリシア・キーズの”If Ain’t Got You”(アダムの歌、上手いですわ)やクイーンの”Crazy Little Thing Called Love”も演っちゃう所が凄いね。伝統と新風をミックスさせつつ、良質のポップスを守っている好バンド!これからも応援します。

2010-09-15 Lou Ann Barton

markrock2010-09-15

[] Lou Ann Barton 00:42

/ Old Enough ( Antone’s / 1982 )


2日で20枚くらい買ってしまった。うーん、やっちまったと思うが止められないいつものパターン。なぜか無性にルー・リードのソロが欲しくなる、とか、買いこぼしていたユートピアやトッドを押さえよう、とかいった様な地味な作業なんだけれども。我ながら何やってんだろ、という感じで。


さて、今日はテキサスを本拠とする女性ブルーズ・シンガー、ルー・アン・バートンの盤。イーグルスのグレン・フライとジェリー・ウェクスラーがプロデュースを手がけたマッスル・ショールズ盤(アサイラムよりリリース)ということで入手したLPをどういうわけか、いぜん200枚くらい売っぱらった時に不覚にも混ぜてしまった。イーグルスとか、ウェストコースト関連の定番、いまじゃ1枚たりとも逃さず確保することにしているけれど、食傷気味になった時期があったんですな。


今聴くと、グレンの趣味のR&B色が強い、なかなかポップな好盤だった。軽く流しとくにはゴキゲン。プレイヤーはというと、ギターにウェイン・パーキンス、ジミー・ジョンスン、ジミー・ヴォーン、グレン・フライ、キーボードにバリー・ベケット、ベースにデヴィッド・フッド、ドラムスにロジャー・ホーキンスという鉄板セクション。グレンやレニー・ルブラン(最近息子のディラン・ルブランがアメリカーナの傑作盤をリリースして話題!)らがコーラスを手がけている。


“It’s Raining”みたいなミディアム・バラードに涙。ハンク・バラードのロックンロール”Finger Poppin’ Time”もフレムトーンズのコーラス付きでサイコーの出来。マーシャル・クレンショウ作の”Brand New Lover”はなかなかポップで意外な良さ。フランキー・ミラーの楽曲も”I’m Old Enough”、”The Doodle Song”の2曲を収めている。


ちなみに改めて手に入れたこちらはCDで、テキサスにあるブルーズの老舗ライブハウス、アントンズの持つレコード会社からの再発だった。

2010-08-28 Mr. Mister

markrock2010-08-28

[] Mr. Mister 15:51

/ Go on … ( RCA / 1987 )


最近新聞を読んでいてよく文化面で取り上げられるのが、出版&レコード業界の不況。本とCD・レコードっていう、個人的には人生の全て(こんなこと家族に言ったら怒られますね…)と言えるものを提供してくれている業界が危機に立たされている、というわけで。これはヒトゴトでは居られない。音楽の話で言うと、渋谷HMVの閉店ですか。新星堂同様HMVは経営再建中のようで、吉祥寺店も潰れちゃったなぁ。HMV、タワレコ、ヴァージンといったメガストアにはじめて行ったときの興奮はいまだに忘れられない。検索で欲しいモノの有無が一発でわかる今とは違って、足で店を一軒一軒回ることに意味があった。外国へ行く友人や親戚がいたら、あのCD買ってきて、なんてお願いをしたりね。アマゾンもなかった時代のことだけれど、それもそんなに昔のことではない。ここ10年余りでの我々を取り巻く劇的な変化って一体…


でも、まだまだ望みは捨てたもんじゃなくて。アメリカほど広大な土地を有する地域なら、ソフトをダウンロードや通販に頼むのも解らなくはないけれど、日本ならまだまだ地域の店舗に未来はあるということだ。本でもCDでも、中古盤屋さんでも、セレクトショップにいまだに魅力や需要があるというのなら、1冊の本やCDから広がる未知の世界があるってことを実際のお店でじかに提示することなのかな。ただ売る時代はもう終わったということで、小売店のある種の工夫や経営努力は音楽文化を今以上に豊かにするのではないかと思っている。


そしてそして、ダウンロードやコピーばかりが横行しているけれど、音楽を愛する以上、対価を支払うことが大事だ。良い音楽には、対価を支払う。当たり前だけれど、フリー・ライブに行ったらCD1枚買う、とかね。インターネット社会になってから、無料が当たり前、ってな感覚が根付いてしまっているけれど、それは違うと思う。例えばユーチューブはミュージシャンが汗水垂らして作った音楽財産をごっそりと奪って、自分の儲けにしてしまっている。本当は音楽に支払われるべき対価を奪っていると言うことだ。以前たまたま、友部正人のBBSを見ていたら、友部氏がユーチューブからの削除を求めたとき、若いファンから「がっかりした」という声があったことがあった。何の情報もない若者に、友部さんの音楽を紹介する際、URLを送るだけで済むユーチューブは簡便で有効である、と。その利点を積極的に利用しているミュージシャンも居ることは確かだけれど、友部氏の反応は長い目で見て間違っていないと思う。ただこうした現状は、CDという複製可能なデジタルメディアが登場した1980年代初頭にすでに、予期されていたことでもあった。


ならば何を為すべきか…ミュージシャンは良い音楽を作り、リスナーは対価を払うこと。これに尽きるのではないだろうか。日本のCDは高すぎる、とか、ミュージシャンへの実入りが少ない、とか、色々あるけれど、音楽文化を死滅させないためにはそれっきゃないのかな。インディで動くには、現在のネット環境の整備はむしろミュージシャンに吉でもあるし。ただ、無くなってはいけないのは、ライブに行って、CDを買って、という当たり前の消費行動。コレがないとミュージシャンは間違いなく死滅しますね。


てなわけで、今日もCDを買ってこよう…ごちゃごちゃ言っても、レコキチにとって結局のところ結論は一緒なんですけどね。


今聴いているのは、MR.ミスターの1987年盤。ペイジスがAORファンに受け入れられているのに対し、同じリチャード・ペイジ、スティーヴ・ジョージ率いるMR.ミスターは80’sポップロックとしての受け入れしかなされていない。コーラス隊の一員としてもセッションメンとして引っ張りだこだったリチャード・ペイジとスティーヴ・ジョージに商業的成功をもたらしたバンドだった。今聴いても上質のサウンド。現在、リチャード・ペイジはソロ新作のレコーディングを終えたようだ。


昨年より息の長いヒットになっているベテランバンドTrainの”Hey , Soul Sister”。ウクレレを効果的に使った、レゲエビートの佳曲!そのサビに

Hey soul sister, ain't that mister mister on the radio, stereo

The way you move ain't fair you know

Hey soul sister, I don't wanna miss a single thing you do tonight

なーんて、ラジオから流れるMR.ミスターの名前が入ってました!しかし、このバンド、今英米でどれくらいの人に知られているんだろう。

2010-06-08 Show Of Hands

markrock2010-06-08

[] Show Of Hands 01:50

/ Formerly Anthrax ( Elektra EKS-74084 / 1970 )


口蹄疫騒ぎは胸が痛む限りだけれど、今日はFormerly Anthraxというタイトルのアルバムを。同じ家畜の病気でも“炭疽病(Anthrax)”の名が入っている。“以前は炭疽病”って何のこっちゃ。


その名の通り、ジャズ・ロック・テイストのむちゃくちゃ変なバンド。フォーキーな要素もあるし。何とも掴めない感じが魅力なのだ。メンバーは多くの曲を書くキーボーディストJack Jacobsenにパーカッション(ドラムス)のRick Cutler、そしてボーカル・ギター・フルートのJerry McCannの3人。これがまた冒頭のA-1”No Words Between Us”から何ともスリリングな演奏を披露してくれる。A-2”Stanley’s Theme”はラストにスキャットなんかもあって。最近こういうシンプルな生演奏にグッと来る。


一番有名なのはVan Morrisonのむちゃくちゃカッコイイカバー、A-3”Moondance”に尽きるかな。コレは1970年という時代を思うと早すぎる音。コレ一曲でも買いな一枚。ロックとジャズのおいしいとこ取りでありまして。この時代だからこんな尖った音に出来たのだな、と思う。


妙ちきりんなブルーズ・ロックみたいなA-4”These Things I Know”(コレはJerryの作)や、Richie HavensのカバーB-1”No Opportunity Necessary, No Experience Need”もグルーヴィーでなかなか。ジミヘンのB-2”May This Be Love / One Rainy Wish”なんてのもあって。コレはStephen Stillsみたいに聴こえる瞬間もある。そう言えばStillsもJimiに心酔していてファーストでは共演もしていたなと。B-3”Mount Olympus Breakdown”はバンジョーとアコギで奏でるインスト。とはいえ、ブルーグラスな雰囲気で行くのかと思ったら、レイト・シックスティーズを引きずったメロディが飛び出して。Jerry作のB-4”Like A Child”はアクースティックでSSWライクな作品。ファルセットなども飛び出してなかなか感動的。ラストのB-5”Toy Piano and goodbye”は悲しげなメロディが印象的。ただし、あんまりジャズ・ロックなテイストはないかな。


今手元にあるのはプロモーションコピーのLPだが、どうも調べてみるとWounded BirdからCDが出ているらしい。こんなのをCD化するなんて面白いな。全然関係無いけど、Wounded Birdが出すような奥の細道的名盤CDは売り切りなのか、廃盤になるのも早いので、欲しいと思ったら買っている。ボーナストラックみたいなせこい商売をしていないのは実に素晴らしい。でもそうなると、CDにそこまで固執しなければ、LPで持っている場合はわざわざ買い直さなくても良かったりする。


Jerryは2000年代に本盤の再演を含む2枚のアルバムをリリースしている。JackはHuey Lewis & The Newsの2001年の快作『Plan B』にキーボードで参加、RickはMichael Franksの1982年のアルバム『Objects of Desire』で叩いている。

2010-03-25 Bob Dylan

markrock2010-03-25

[] Bob Dylan 00:55

/ Together Through Life ( Columbia / 2009 )


加藤さんのことを考えていたら、ポピュラー音楽界の現状に対する失望が余りにも深くて。正直このブログもやめてしまおうかと考えてもいたのだ。でも唯一の希望があって。それは生演奏のアウラ(オーラ)。アナログからデジタルへの変化に従って、ほぼ複製が可能となったわけだけど、完全に所有することが出来ないのはライブ演奏だと思うし、これだけCDが売れないと言われ続けていても、ライブの動員数はそれほど落ち込んでいないと言うことがそれを証明してくれる。結局ライブに行って、観客やアーティストと感じる一体感は、ヴァーチャルに勝るんです。そんなことを感じつつ、24日に行ける事になった「ディラン」が唯一の望みでして。


そのライブに先立って、細野晴臣のエッセイ集『分福茶釜』を読んでいたら、ロックに未来がある、なんて文章がたまたま見つかった。若者の所有物と思われていたロックを60代が演奏するようになることへの期待。そして、若くなければダメ、という思い込みが強いのはアメリカや日本くらい、なんて発言も心強かった。そうだよね、民謡の世界じゃ歳を重ねた長老が若造には到底表現しえない芸を見せ付けてくれるもので。ワールド・ミュージック的観点ではそっちが当たり前なんだな、と。


で、24日のボブ・ディラン来日公演。凄かったなあ。本当に凄かった。一聴して、どう考えても「当たり」の一日と確信。毎度開演時にアナウンスされる“コロンビア・レコーディング・アーティスト”を48年も続けてきた男が現役じゃなくてなんなんだ、と言う気にさせられる。今も転がり続けている。そもそも68歳にしてライブハウス・ツアーだよ!まあ年齢がどうとかいう問題ではないのかもしれないけれど。Zepp東京はブライアン・セッツァー以来ながら、熱気はそれ以上。ぎゅう詰めの超満員だったけれど、数メートル先に動くディランを観たら失神しそうになった。


9年前の武道館でも演った”Stuck Inside Of Mobile With The Memphis Blues Again”(拓郎で言うところの"春だったね"<これも一曲目によく演る>ですな)でスタートして、もう半端なく声が出ている。9年前を余裕で上回るコンディションで。しけてることで有名な94年のアンプラグドなんて、一体なんだったんだ、と思う仕上がり。しかも、笑顔を見せつつハープを吹くわ、吹くわ!殆んど水も飲まず、歌の途中でもプープー吹いて来るんだから、度肝抜かれました。ディラン自身によるキーボードも、単調な三連ソロとかに大真面目に合わせているバンドが最高で、もうロックとしか言いようが無いその演奏に涙涙…チャーリー・セクストンはかなりディランに気を遣っていて(当然か)、偉いなぁと思った。あの”Like A Rolling Stone”までをして即興演奏を挟み込まんとする、予定調和を拒むディランこそがロック!!

セットリストは以下の通り。

1. Stuck Inside Of Mobile With The Memphis Blues Again

2. It Ain't Me, Babe

3. Rollin' And Tumblin'

4. Mr. Tambourine Man

5. Cold Irons Bound

6. Sugar Baby

7. Desolation Row

8. Blind Willie McTell

9. Most Likely You Go Your Way

10. Can't Wait

11. Highway 61 Revisited

12. If You Ever Go To Houston

13. Thunder On The Mountain

14. Ballad Of A Thin Man

(encore)

15. Like A Rolling Stone

16. Jolene

17. All Along The Watchtower

個人的に1・2はイントロで既にチビりそうになった。4は驚くほど、オリジナルのメロに忠実で、どうしちゃったのかと思ったくらい。声が出てるんだわ。そして7では観客のフィーヴァーが頂点に達し。そしてバンジョーが入って、マサカの8…この隠れた名曲(もはや代表曲かもしれませんが…)を生で聴けるとは!11も凄い盛り上がり。近作からは12が気に入っていたので、嬉しい選曲。アンコールは割とラフな演奏だと思ったけれど、ロックのダイナミズムを存分に感じられた。


終演後には、9年前の武道館にも一緒に足を運んだ長年の音楽仲間と感動を分かち合った。目の前にあの時と同じように立ちはだかるディランが、9年間の心境や環境の変化とどう呼応してるか、なんて話していたら、話尽きなくて…。ディランはとにかく人生と重ね合わせるに足る人物。78年のディラン初来日時にNHKで放送された名ルポルタージュ『ボブ・ディランがやって来た』(村上龍がレポーター)の再放送を見た時にも感じたことだけれど、ボブ・ディランがやって来る、というだけで、番組が出来てしまうくらい、多くの人々の人生に意味を持ってきた歌手なのだということなのだ。


音楽に失望するのはしばらくやめにしよう、と本気で思えた一晩。

VQVQ 2010/04/04 00:55 こんにちは!僕は23〜26日の4日間連荘で行ったのですが、24日が1番良かったです。全てがハイライトと言える位最高でした◎
26日は「〜Watchtower」が「Blowin' in the Wind」に差し替えられ、驚きました。

markrockmarkrock 2010/04/04 23:59 >VQさん

どうも!4連チャン行きましたか〜やはり24日はキレてたんですね!ほんと今思い返してみても凄いステージでした。その後、風に吹かれてがセットリストに加わったことは、私もネットで確認して衝撃を受けました。2001年の武道館でもラストだったこの曲を、できることなら聴きたかった…でもお金が持ちませんでした(笑)

2010-02-05 Bill Haley And The Comets

markrock2010-02-05

[] Bill Haley And The Comets 23:20

/ Travelin’ Band ( Janus JLS 3035 / 1972 )


『暴力教室』のテーマ曲となって大ヒットした1955年の”Rock Around The Clock”、と言えばエルヴィス旋風前夜のロックンロール誕生の1曲、という位置づけになっている。歌っていたのはビル・ヘイリーという男。エルヴィスと比してセクシャル・アピールに欠けてはいたけれど、カントリーを弾ませたビートを持つそのサウンドは確かにロックンロールそのものだった。


さて、これはそのビル・ヘイリーが1972年にJanusからリリースした盤。72年と言うと、ロックの時代が訪れてもはや時代遅れに成っていた旧き良き60年代前半のアメリカが、ベトナムの惨状もあってか懐古される名画『アメリカン・グラフィティ』が封切られる一年前。ちなみにそのサウンドトラックの冒頭に位置していたのが、ビルの”Rock Around The Clock”だった。


さて中身だが、元々ビルのルーツがカントリーにあることが良く判る選曲。とはいえ、彼にしてはチャレンジングと思えるのが、クリス・クリストファースン(ジャニス・ジョプリン)のA-1”Me And Bobby McGee”やCCR(ジョン・フォガティ)のA-3”Who’s Been Stoping The Rain”、A-4”Travelin’ Band”、さらにジョー・サウスのB-2”Games People Play”をカバーしていること。とりわけタイトル曲のA-4”Travelin’ Band”はジョン・フォガティもこんなイメージだったんだろうな、と思えるほどの熱いモノホンのロックンロール!B面にはラリー・ウィリアムスのB-4”Bony Molonie”や、あの曲を下敷きにしたB-1”Dance Around The Clock”もあった。


プロデュースは邦訳書が出ている『ブルースの詩』でお馴染みのサミュエル・チャーターズ。