天珠とは

天珠は漢字圏で「天から授かった宝珠」という当て字を使い「天珠」と表記され、英語圏ではチベット人の天珠の呼び方が「ジー(ズィもしくはスィー)」であったためdZiという当て字を使います。筆者自身はどちらを使っても「正しい」とか「間違い」はないと思っているので、ここでは「天珠」という表記を多用させてもらうことにします。中には「dZi」と言うことが「通」であると勘違いされる方がいますが、どちらを使っても意味が通じればよいと思っていますので呼称にこだわる必要はないかと思います。
さて、本題の天珠ですが、天珠には諸説ありますが、神話では地上で疫病が蔓延し、それを哀れんだ神が天珠を地上に降らせ疫病を治した。または天上界に住む虫が地上に落ちて石化したもの、あるいは天上界の蝶の幼虫やさなぎが地上に落ちて石化したもの、天上界の蓮の花弁が地上におちて石化したものといわれているが、どれも内容的には仏教伝来後に後付けされた内容のようである。また、別な説では、高僧や特別に修業をした者だけが身に着けられるものとされ、その紋様をつけるのは僧侶が真言を唱えながら長い時をかけて作られるといわれています。
チベット人にとって天珠はアクセサリーという位置づけではありません。また、誰しもが持っているわけでもありません。テレビなどの映像でチベット人を見ると天珠やトルコ石、山珊瑚、琥珀などを髪に編み込んでいたり、首から下げて装飾している姿を見かけますが、あれは撮影用にお洒落をしているとかではなく、本来のチベット人の姿なのである。チベット人の多くは放牧や農業を営み、テントや粗末な民家で生活をしています。そのため、高価な物などを保管する術がないため、自らが家の財産を身につけ盗難を防いでいるのです。また、女性は嫁ぐ際には天珠を含めトルコ石、山珊瑚および琥珀などの宝を身につけ、その家の豊さを象徴するともいわれています。つまり、天珠はチベット人にとっては持ち主を守護するお守りであり、富の象徴でもあり、二度と手にすることのできない大切な宝なのである。