志の輔らくご in PARCO 2010 鑑賞


今年も行ってきた。
毎年、渋谷PARCOで一月に公開される「志の輔らくご
志の輔師匠の落語は機会を見つけては行っているのだが、PARCOのそれは規模が段違いでいつも楽しみにしている。
大舞台での趣向を凝らした一ヶ月公演。
しかも、普通の独演会などとは違って、前座もなしに師匠が三つの噺をやってくれる。
チケットを手に入れるのは一苦労だが、ファンとしては行かないわけにはいかない。


今回の演目は以下のとおり。

身代わりポン太
踊るファックス 2010
中村仲蔵


一つめの「身代わりポン太」。
富山県のある村で、地域活性化ために進められてきた「たぬきの里プロジェクト」が、流行の事業仕分けのあおりで予算を凍結されてしまった。
そのおかげで、プロジェクトの目玉のたぬきの形をした展望台がまだ半分、キンタマのぶらぶらする下半身しか完成していないのに残ってしまい、予算がないので解体することもできず、さあどうしようと関係者が右往左往するお話。
きっとこれが今年の新作なのだろう、初めて聞いた。
時事ネタをうまく盛り込んで、大いに笑わせてもらった。
会場のロビーには、たぬきの置物がしっかり飾られていた。



二つ目の「踊るファックス 2010」。
「2010」がないものは、何年か前に初めてPARCO落語に行ったときにやっていた演目で、生で見るのは二度目だ。
当時買ったパンフレットには台本まで掲載されていたので、お話はよく知っている。
それでも大笑いした。
やっぱり落語は、「何をやるか」じゃなく、「誰がやるか」だ。
台本と照らし合わせてみると、大枠は同じでも所々で変わっている。
サゲも変えてきたし、大舞台ならではのギミックも面白い。
当時の新作が年月を経て、熟成されていた。


休憩を挟んで、三つめは「中村仲蔵
PARCO落語では、最後は古典なのが定番だ。
江戸時代の歌舞伎役者に、中村仲蔵という人がいる。
歌舞伎において、「名人仲蔵」と言われるほどの名優である。(中村仲蔵 (初代) - Wikipedia
彼がまだ成り上がりの一役者にすぎなかった頃、当時は端役だった「仮名手本忠臣蔵・五段目」の定九郎を周囲からの嫌がらせで割り当てられ、それにめげることなく斬新な解釈で演じきるまでのお話。
その時演じた定九郎は、現在まで続く定九郎スタンダードになっているという。
元ネタの「仮名手本忠臣蔵・五段目」のお話やら、当時の状況やらを知らない観客のために――はい、知りませんでした――ちゃんと説明してくれるところがありがたい。もちろん、笑いを交えて。
テンポ良く笑わせてくれた前の二本とは違い、古典の人情話をじっくりと楽しませてもらった。
全部の噺が終って師匠がもう一度挨拶に出てきたとき、「中村仲蔵は一時間二十分もやっていた」というのを聞いて、会場全体に「えっ、そんなにやっていたの?」というどよめきが広がったのが印象的だった。
みな時間を忘れて、聞き惚れていたのだ。


いい落語だった。また行きたいものだ。