阿蘇・霜神社の火焚き神事

昨日19日、雨模様でしたが阿蘇神社の摂社の一つの霜神社で執り行われた「火焚き神事」に行ってきました

この祭りは阿蘇神社や国造神社の祭りとともに「阿蘇の農耕祭事」として国から重要無形民俗文化財の指定を受けています。

祭りは8月19日の「乙女入神事」で始まります。まず、火焚き小屋と呼ばれる建物で神官が火をおこしその火種を火焚乙女と呼ばれる乙女にわたし、火焚きが始まります。この時から10月16日まで59日間火がたき続けられます。昔は火焚きの間は乙女はこの敷地から出ることができなかったと言いますが、今は乙女が火の世話を行うのは祭りの時だけでその他の日は地域の世話役が世話をしています。




{鬼八の恨みを鎮める乙女の火}

 標高の高い阿蘇では、収穫時期を早くするため、4月の下旬から5月に田植えが行われます。これは稲の品種改良が進み、また、水の確保が容易になったおかげでできるようになったものです。昔は、梅雨時に田植えを行わざるをえなかったので、収穫の時期が遅く、早霜は非常に恐ろしいものでした。

 そのためでしょうか、阿蘇では霜の害から農作物を守るためのお祭りが長い期間をかけて行われます。その祭りを「火焚き神事」と呼びます。この祭りの起こりについては、次のような伝説が語り継がれています。

 阿蘇を開拓し農業を伝えたとされる神様、建磐龍命(タテイワタツノミコト)が阿蘇五岳の城島岳と往生岳の間に腰をかけ外輪山の大石めがけて弓の稽古をしていました。その矢を拾って命のところまで運んでいたのが鬼八という家来でした。九十九本まではきちんと拾って命のところへ持っていきましたが、百本目で面倒になり、矢を命に蹴り返しました。これに命が腹を立て、逃げる鬼八の首を斬りました。恨みに思った鬼八は「死んだら天に昇り、霜を降らせて五穀に害を与えよう。」と言って死にました。以後、毎年早霜がおり阿蘇の民は大変苦しみましたので命は鬼八を神として祀るからと許しを請いました。すると鬼八は「斬られた首が痛むから暖めてほしい」と言ったので、命は霜宮を建て鬼八を祀り、火焚きの神事を始めました。

 伝説に出てくる霜宮は阿蘇市の役犬原と竹原の境近くに鎮座する阿蘇神社の摂社です。祭神は先ほどの伝説に出てくる鬼八と言う話の他に、天の七星という話も聞かれます。また、お宮の近くに「天神」と呼ばれる場所があります。火焚き神事の中でも神輿(みこし)がわざわざ立ち寄る場所で、特別な聖地と意識されている場所ですが、ここは昔隕石が落ちた場所で、ご神体はこの隕石であるとも言われます。

その言い伝えのせいもあるのでしょうか、ここの神様は天神七柱(天津神、天の七星、霜神、鬼八天)すごい方々です



毎年テレビで放映される有名な農耕の神事ですが、見学に出かけるのは初めてでした
役犬原の地域に付く頃は小雨になり、法被姿の大人や子供が見えました
沢山の方々が来ているかと想いましたが、何局かのテレビカメラの人と地元の方々でしたので、一緒についてまわりました


まず、火焚小屋で神官が昔ながらの火起こしをします


                     

雨模様の天気のせいもあり、なかなか火が付きません
煙は出るものの、火種までは行きません、最前に構えたカメラマンも途中から後ろの方へ・・・それに変わって子供達は最前線に陣取って心配そうに見守ります
この地区の学校で子供達は火起こしを体験しているので、小さな声で、真ん中がいいんだよ、もう少し頑張ってなどつぶやいてます・・・神官さんにとってはプレッシャーだったかも・・・顔に汗が滲んできます

やっと、火種ができて、みんなほっとした表情
その炎を、祖母が付き添う火焚乙女が受け取り、薪に火を移しました




それから、みんなで神様が鎮座している霜神社に向かいました
そこで神様を呼び出す神事を執り行います
そして神輿に移ってもらい、火焚小屋の祭壇に運びます
神輿がお宮から出るとき、屋根がぶつからないよう、飾りを避けたり、鈴を避けたりするのですが、誰かここ持っててと言っても、男手が足りないようで・・・結局観客のワテでいいんかいと思いながら手伝いました



お神輿は下神社から「天神」と呼ばれる隕石が落ちた場所(すぐ近く)と言われるところに寄ってから、火焚殿に向かいます

そこでも神事が執り行われ、お神輿から神様を取り出し梯子を上って、上壇に移します
・・・神様の入っている黒い箱を神官は息が直接かからないように白いマスクをして取り扱います・・・この作業を目の前で見るのは始めてです

                       

一連の神事が終わると、直会が始まります
見学させて頂いて有難うございましたと帰ろうとすると・・・あんたらも上がらんねと言われて・・・いえいえ、全くの部外者ですので失礼しますと言っても、朝からずっと居てくれたんじゃもん、一緒に上がらんねと言われて・・・結局直会にまで加えていただきました

すぐ、目の前に歴史に詳しい方がおられて、この神事は2575年前から執り行われて来ていて、歴史は阿蘇神社より古いこと、凄い神様達をお祭りしていることなど、興味深い話を一杯聴くことができました

地元の方と一緒の気持ちになって神事に参加させていただいたことはとても有り難いことでした


10月16日は、59日間焚き続けた火を落とすお祭りが行われます。
これを「乙女上げ神事」と言い、御神体は神輿で火焚き小屋から神輿でお宮に戻されます。
10月17日は、中休みといって 一切の神事を休みます。そして、18日の夜から19日の朝まで「夜渡(よど)祭」が行われます。

この日は又ぜひ夜通し参加させていただきたいなと思っています