Hatena::ブログ(Diary)

幸せに生きる環境学(フライブルクにて)

2011-08-07

EWS(シェーナウ電力会社)のウルズラ スラ−デックさんにインタビュー

21:04

 6月にシェーナウ電力会社に訪問し、スラーデックさんにインタビューさせてもらいました。とても清々しい笑顔の女性で、明るく優しいとても素敵な方でした。脱原発、市民のための市民による活動を目指し活動されています。この日は徳島県の上勝町役場の視察に同行させてもらい、シェーナウ電力会社訪問に参加させてもらいました。徳島県からの視察の方達は、スラーデックさんのように、地域の電力会社を設立しようと今取り組んでおられます。地域の電力を自給自足するためドイツの市民による電力会社の事例を見学しに来られたのです。

 以下はシェーナウ電力会社見学の最後に、僕がスラーデックさんに行ったインタビューです。

 

おいかわ(インタビューアー):今の私たちの社会はたくさんの問題を抱えていると思いますが、どんな社会の理想像を持っていますか?

スラーデーク:明白な社会の理想像は正直に言うと今は持っていません。少なくとも社会の発展が現在突き当たっていて早急に必要なことは、私が思うに4年おきに行われる投票であるような民主主義から、もっと国民の底辺から発展させ、国民が本当の意味で参加するようにしないといけません。要するに早い段階、計画の時点で、例えば大きなインフラなどの計画に、市民が参加するということです。計画していることをただ伝えるのではなく、初めから市民を巻き込み、出来るだけ多くの容認を得ることなのです。市民はすべてに反対しているということは全くなく、何か初めから既にある計画を示され、それを強制されることに反対するんです。市民は出来るだけ良い解決策を見つけることを望んでいます。

お:『市民参加』が大切だということですね。

ス:はい、例として新しい送電線の設置について考えてみましょう。今新しい高圧送電線をどこかに通す必要がある場合、電磁場、電磁波によって付近に住む住人の健康被害が引き起こされることが考えられます。とても強い電磁波を出す物もあり、そうなるとその地域の地主は土地を失うことにもなります。旅行業が盛んなところでは旅行業が大きな打撃を与えられることになります。だから市民が、「この計画は全くよくなく、もっといい方法がある。」と言うことが想像できます。もちろん良い方法はあります。この電線を覆えば、電磁波障害は極端に抑えることが出来ます。

要するに、このような送電線を計画する時は、計画の初めの段階から、もしくはその前から、どのように送電線が敷かれるべきかを確定し、市民に対し「私たちはこういう計画をしています。これは、これこれこういう理由からここに送電線を敷くことは絶対に必要なことであり、他に道はありません」と説明しなければいけません。透明性があり、誠実に説明しないといけません。そうして市民と一緒によい方法を見つけ出さないといけません。一番良い方法というのは必然的に一番安いものであるべきだということではありません。でももし、市民の反対運動によってこの計画が数年から数十年遅れることがあれば、先ほどの例のような計画の初めから理性的にプロジェクトを進行させていくよりも多くのコストがもちろん掛かってきます。だから『市民参加』というのは我々にとって、そして新しい社会にとっての核心になると思っています。どのように私たちの社会が今後発展していくのか、市民が参加するということが実際に政治的な機能を果たし得るのかどうか、ということをはっきりさせることはとても重要です。ここで市民を参加させるということは、最終的にはもちろん経済的にも市民も利益を共有するということです。例えば私たちEWSは組合です。誰もが共同出資者になれ、EWSの経済的成果を分かち合うことが出来ます。電力供給においてはこのような形がふさわしいと思います。なぜなら、電力供給は全ての人に関係することだからです。でもどうして私たちの社会のほんの一部の人だけがそこから利益を得ているのでしょうか、どうして全ての人が、もちろん少ないかもしれませんが、そこから恩恵を得られないのでしょうか?これが私たちの社会発展のビジョンです。だからもちろんEWSは電力供給会社以上の役割を担っていて、EWSは社会を変えていく実際の活動をしているのです。

お:これはもう素敵な社会の未来像ですね。しかし当時、いったいどこからスラーデークさんはそんなに大きな力を得ていたのですか?

ス:それはグループで活動してきたからです。一人では絶対不可能でした。仲間がいるということはものすごく大切なことです。なぜならグループであれば補う合うことが出来るからです。誰かが気を落としている時でも他の仲間が、「いや、私たちはきっと成功するから、頑張ろう」と言って引っ張っていく。こういうグループのダイナミズムはとっても大切なんです。また遠くの大きな目標のみを見ないで、小さなステップを踏んでいくこと、そしていつも成果を出すことももちろん大切です。成果はさらに続けて仕事をする意欲を起こさせるからです。失敗すれば意欲も信念もゆらいできます。だから成功する小さなステップを踏んでいくことが重要なんです。そして成功したらお祝いをする。

お:それは素敵なアドバイスですね。当時一人一人のメンバーが強いモチベーションを持っていたと思いますが、どうしてですか?

ス:それはチェルノブイリ原発事故後に政府が何もしなかったことに対する不満だったと思います。当時の社会は何も変わっていかなかったのです。そうした不満は十分にモチベーションになりました。もちろん子供を持っていたということも当時のモチベーションに関係しています。例えば私は5人の子供がいます。もし子供が5人もいたら、子供が今後生きていくことになるこの世界の大事なことを後から取り組むということは考えられません。これは未来を見つめるようなものです。子供がいなくても社会には若い人、子供、少年少女がいます。彼らはみんな未来が必要です。全員がどうにかして取り組んでいかなければいけません。それで原子力を初めに何とかしないといけません。

お:私は今原発からの放射線がとても気がかりです。

ス:もちろんそうですね。

お:私は日本に帰って仕事を探し、そこで子供を持とうと思っているので、とても不安なんです。

ス:あなたの家族はみんな日本にいるんですよね?

お:はい

ス:そうでなかったら、ここ(ドイツ)に留まるって言えるのにね。

お:んー。いいえ。私は日本が好きですから。

ス:もちろんそうね。日本はあなたの故国ですものね。

お:だから私も反原発活動をしていきたいんですが、反対ばかりではなく、何かの為、未来の為に、素晴らしい社会の為に誰も傷つけることなく活動していきたいと思っているんです。

ス:ええ。でも誰にも迷惑がかからないようにというのは無理ですよ。人が何かに取り組む時にはいつも何かに迷惑が掛かって来るものです。でもこれは『どのように』やるかが問題なんです。攻撃的にも出来るし、友好的にも出来る。友好的な方がより良い方法です。明らかですね。そうすることによってより多くのことが達成できるんです。

お:私が今持っている大きな課題の一つは、南北格差、貧困問題をどのように改善していくかということです。

ス:そういう社会的なことですね。

お:はい

ス:そのような社会的問題は生態系の問題と密接に関わり合っています。世界中で多くの人がいまだに電気を使えていない状況をよく見てみると、これは教育を受ける機会がないということや、職を得る機会がないことと、つまり貧乏ということと関係しています。また健康を維持する選択肢がないといったこととも関連しています。つまりエネルギー問題は他の色々な事柄と、それは結局最終的にはその人の社会的な地位を決めている物ですが、関わり合っているのです。だから私たちは、生態系、社会、そして文化を合わせて言っているのです。これらは関連し合っていて、切り離すことはできません。何か一つのことに取り組もうとしたら、他のことにも取り組むことになるのです。

現在ドイツや日本などの富裕国は特別な責任を持っています。貧困国に対して何とかして公正さを持って対応していかなければいけません。幸運なことに若い人たちはこういったことに対して関心を持っています。上の世代の人達は残念ながらこういった感情が鈍感です。彼らはそのような問題に取り組もうとせず、誰か貧乏な人がいれば、その理由をその人が馬鹿だからとか、怠け者だからとかということに見出します。・・・(訳不明)

お:この時期たくさんのインタビューを受けていると思いますが、どうして何度も繰り返しお話をされているのですか?

ス:なぜなら私たちが取り組んでいることは重要なテーマであって、他の所でも取り上げられるべきだからです。日本でもアメリカでもエネルギー問題は重要で、これは世界中に共通した問題です。原発は一度事故が起こってしまえば結局全ての人が、もしくは少なくともとても大多数の人が、被害を被ります。気候変動の問題(化石燃料二酸化炭素排出)はいずれにしても全ての人に関係しています。要するに全ての人がこのような問題に取り組んでいかなければいけないのです。そのような事柄に貢献することが出来るのであれば、そうしていきます。

お:チェルノブイリ前もそのような考えを持っていたんですか?

ス:チェルノブイリ前は全くそんなことなかったんです。

お:でも既に環境に対して意識が高かったんじゃないんですか?

ス:いいえ、特別高いといったわけでもなかったですよ。80年代の初めはまだ今日のように「環境」はメジャーではなかったんです。「環境にやさしい」という言葉は当時普及していなかったんです。

お:この会社をこれから先どのように経営していきたいですか?特定の目標はありますか?

ス:様々な目標があります。可能な限り多くの自治体がその地区の電力供給を自分でするよう牽引すること。そしてその援助。可能な限り多くのきれいな電力(原発以外からの電力)を使う顧客を増やすこと。自分達自身、発電施設に関与していくこと。また発電施設の財政的な援助をしていくことなど、様々な目標があります。

お:エネルギーの節約がとても大切で、優先事項だとお話しされていましたが。

ス:そのことについても取り組んでいます。

お:でももし多くのお客さんが節電していくと、あなたの会社の収入が減るんじゃないですか?

ス:そのとおりです。でも顧客も増えていてその分は補われるので心配ないですよ(笑)。

お:個人的な将来の計画はありますか?

ス:それはここ(EWS)で取り組んでいることと深くかかわっています。私の愛する私の大家族のことももちろん大切です。それはそうですよね。でも私の子供たちはもうみんな大きくなって、それぞれの人生を歩んでいます。だから私にとってはこの反原発の取り組みが私の人生の重要な課題なんです。私個人としては、ドイツの全部の原発が止まるのを生きのびて体験したいですね。

お:もちろんできますよ!

ス:それが私の個人的な夢ですね。そうしたら幸せですね。

お:ありがとうございました。

時間が無くてできなかった質問をメールにてしました。

お:環境問題社会問題で今一番大きな問題とはなんですか?

ス:エネルギー問題が一番重要な問題だと私は思います。なぜなら、大きな影響力(気候変動とその結果起こる事柄、原発の危険性)がある生態的な問題であるだけでなく、社会的な問題でもあるからです。世界人口の20%の人が80%のエネルギー資源を消費しています。人類の多数の人達がエネルギーを得る機会がそもそもないのです。これは健康、経済的状況、教育の問題の結果からくるものです。しかしながらこのような貧困層が、気候変動に主に責任がある富裕国よりも、気候変動の結果起きる事柄により苦しめられることになります。これは富裕国への難民の流れ、難しい議論、そして戦争にもつながるでしょう。エネルギー問題の解決が世界平和にとって特に重要な意味を持っています。

お:あなたにとって「幸せ」とは何ですか?

ス:私にとって「幸せ」とは、誰かと一緒に私のビジョンと目標の為に取り組むことが出来、そして何か達成することです。