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黒猫亭

2012-04-20

こんど

結婚記念日でヨメと飲み歩いていたら、ある店で白髪頭の初老男性と隣席になった。大学の先生らしいその人は、美女ぞろいの教え子3人と楽しそうに飲んでいたんだけど、背格好と表情が死んだ佐藤さんとそっくりだった。

市の事業の委員に呼ばれた時、一部同年代を除くおおむね全員が「なんだコイツ……」という感じで遠巻きに僕を見ている中、気さくに話し掛けてきてくれたのが佐藤さんだった。若いクリエイターと交流するのが好きな方で、上から目線ではなく社交辞令でもなく、どんな人の話も興味を持って聞く人だった。

その後もスーツを来た社長さんたちとか役人の集まりとか、場違いなところに呼ばれた時などは、その白髪頭を探して駆け寄っていった。

ある時、ちょっとシリアスな案件で意見を求められて、フォーラスの向かいのカフェで話をした。僕なんかに相談するような話じゃないと思ったんだけど、真剣に相談されたので、自分なりの考えを話した。とにかく年齢とか肩書きとか、そういうことで人を判断しなくて、よくまとまらない僕の意見にも「うんうん」と耳を傾けてくれた。

そのあと、仙台で佐藤さんが期待している何人かのクリエイターの話になった。子どもみたいに無邪気な顔で「仙台はこれから面白くなっていくよね。楽しみだ」と言っていた。気を遣って僕のことも、「あんたみたいな人が仙台に必要なんだよ」と言ってくれた。「こんどゆっくり飲みに行こうな」「はい」と約束して、その日は別れた。

それが最後に交わした言葉になってしまった。

人は断りもなく突然行ってしまう。おれも明日急に死ぬかもしれないし、「こんど」があるとは限らない。会えるときに会って、伝えたいことは伝えないと。

あの言葉、お世辞でもすごくうれしかったんですよ。それで僕はまだなんとかやっています。

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