Demand Media上場とコンテンツ価値、そして土方とランス・アームストロング

Demand Mediaという企業が一ヶ月以内に上場する。→ソース 

どんな会社?

Demand Mediaは「一般消費者が欲しがるニッチな情報をピンポイントで提供する」コンテンツ会社なんだそうな。Googleで何か調べようとするとやたらと上位にランクしてくるeHow.comなんてのは同社の代表的コンテンツでHow to Write a Great Blog PostHow to Become a Hooters Girlなどなどどうでも良い記事が無数に登録されている。Demand Mediaが保有しているサイトはeHow以外にもた〜くさんある。Livestrong.com、Cracked、Trails.com、あるいはGolfLink。まだまだあるらしい。自身がレジストラ-eNom-をやってるくらいだし。

儲かっているの?

上場をすることになっているが、Demand Mediaは過去一度も黒字化したことはない。ということが、S-1からわかっている。赤字幅は縮小しつつあるが、同社CEOは過去「我社はずっと黒字を出してきた」という発言を繰り返していたという問題も指摘されている。→ソース: Where Did Demand Media’s Profits Go?

クソコンテンツを作成する土方達

eHow.comの閲覧は無料である。ではどうやってDemand Mediaは収入を得ているのか?...もちろん広告である。eHowの記事をみればわかるが、これでもかというくらい広告が貼られている。何百万というDemand Mediaのコンテンツが何百万回と表示されれば、数十万回の広告クリックは発生するだろう。これがDemand Mediaの収入になる。

問題は...これらの膨大なコンテンツをどうやって安く作成し、保守していくかということだ。そのコンテンツ作成・編集の裏側がMy Summer on the Content Farmという(やや長い)記事に詳しく説明されている。「Content Farm」というとなんか響きはいいが、これはタコ部屋だ。ただし物理的に部屋に押し込まれるわけではない。基本的には在宅の仕事。メールで仕事の指示が飛んできて、期限までにこなす。その報酬がひどい。

同記事作者はDemand Mediaの「編集担当」の一人だったようだが、報酬はなんと「記事一本あたり$3.50」。ざっと300円。週に12時間以上の作業が求められ、うまくこなせば「時間あたり$20〜$30」。でもコーヒー代も稼げない日もある。そんな仕事。

編集者でこの給料だから、記事を書く人たちのレベルも知れてくる。(書き手は在宅な人が中心で、記事あたり$15〜#30) そういう記事の編集は不毛で、ストレスのたまる仕事だったのだろう。結局彼は途中で仕事を放棄し、解雇される。

不毛な仕事と思うのも無理はない。Demand Mediaの「マニフェスト」を抜粋して、彼はこんな説明をしている。

“We aren’t here to break news, lay out editorial opinion, or investigate the latest controversy,” Demand’s corporate manifesto declares. “Our audience tells us they want incredibly specific information and we deliver exactly that – in a style that the average consumer appreciates and understands.” In a nutshell, what the company does is to take informational demand and create, in virtual-sweatshop fashion, supply.

  • Demand Mediaはニュースの速報性は求めないし、編集者の意見も掲載しないし、政治的問題の調査もしない。
  • Demand Mediaは消費者の欲しがる情報を突き止め、それを正しく届ける。一般消費者が理解できる形で。

要はインフォマーシャル*1を労働搾取工場で制作し、供給するようなもの。質より量。コンテンツ土方。

笑ってしまうのは紹介されているeHowの記事: How to Price Yourself as a Freelancer(フリーランサーとして、自身をどうやって値付けするか?)

Resist the temptation to do any work for less than legal minimum wage. (最低賃金以下でも働こう、という気持を捨てよ)

→このeHow記事を書いたコンテンツ土方達はどういう気持だったのだろうか...

うはうはランス・アームストロング

だがIPOなのである。そしてLivestrong.comもDemand Mediaの一大コンテンツなのである。そして、ランス・アームストロングはこのLivestrongの関係で...Demand Mediaの大株主の一人なのね。

Why an IPO is 3X better for Lance Armstrongには、Demand Mediaが予定通り$12でIPOされたらどうなるか、という説明がある。ランス側は$6での新株購入権を125万保有しているので、$6×125万=750万ドルの上場益が得られることになる。

いっそ消えてくれデマンドメディア

でも、こういうDemand Mediaみたいな企業ってありがたい存在なのかね?

幸い日本語版は存在しないようだけど、英語でちょっと調べごとをしようとすると検索結果上位にやたらとDemand Mediaのコンテンツが並んでくる場合がある、というのは正直うざい。夜中にテレビつけたらどのチャンネル回してもインフォマーシャルしかやってない、みたいな状態。

質が低いから検索結果からeHow(やDemand Media関係サイト)のコンテンツを除外する、なんていう選択肢があればいいのだけど、検索サイトも広告配信で収入を得るわけだから、それも無理な注文か...

*1:番組を装った宣伝