巡洋艦アドミラル・ナヒモフの近代化プランは遅れている

 現在セヴェロドヴィンスクに居るプロジェクト1144 キーロフ級原子力ロケット巡洋艦3番艦”アドミラル・ナヒモフ”の近代化改修プランに遅れが生じています(flot.com)

 本来の予定ではアドミラル・ナヒモフは2011年には近代化改修を終える予定でした。しかし現時点でも改修を担当するセヴマシュ(セヴェロドヴィンスク造船所)ロシア海軍からの近代化改修プランの提出がされていないということです。
 「近代化を始めるために、顧客からのプロジェクトが必要です。未だロシア海軍からはそれは提出されていません。しかし、我々は期待しています。」セヴマシュのAlexander Kholodov代表モスクワで行われた”21世紀の高度技術”展覧会でそう語りました。彼は1999年以来アドミラル・ナヒモフがセヴマシュにドック入りしてることを想起させた。「最も重要なことは、我々は仕事の面で安全であることです。ここで危険で潜在的な核活動は行われていません。」セヴマシュのスポークスマンは語りました。
 一方でアレクサンダー代表はプロジェクト文書の提出が不当に延期されていることを指摘した。「現時点で我々独自の技術で近代化を行えない箇所もあります。しかし私たちはそれらを解決するように努力していますし、この分野の技術進歩は速いのです。」彼は付け加えました。
 
 海軍参謀本部インタファクス通信に対し「重原子力ロケット巡洋艦アドミラル・ナヒモフの包括的な近代化改修を開始している。」と語ったようです。「アドミラル・ナヒモフとアドミラル・ウシャコフは強力な艦だが、現在のロシア海軍のニーズに適合しているとは言えない。彼らは全くアナログ装置を持たない状態へとアップデートされ、最も新しい兵器システムを搭載するでしょう。」代理人は語りました。参謀本部の関係者によると、アドミラル・ナヒモフの近代化は今年から開始され、完了すると太平洋艦隊へと復帰させるようです。さらに以前は予算の見通しが立たないことからひとまず保留としておいたアドミラル・ウシャコフについても近代化を施したい意向とのこと。


(↑P-800"オニクス")
 近代化はレーダーなどの電子機器類の換装(アナログシステムが一掃されるわけです)や対艦ミサイルシステムの更新が行われます。対艦ミサイルは現在のP-700”グラニト”(SS-N-19”シップレック”)から超音速巡航ミサイルP-800”オニクス”へと更新されます。グラニートは専用VLSに合計20基装填可能であり、グラニトのサイズを考えるとオーニクスの場合は少なくとも倍の40基は装備できそうです。
 対米空母用戦略兵器としてのグラニトと違ってより短射程で価格も安い戦術的なオニクスは気軽に使用することができます。これは冷戦終了以後増加している民族独立紛争に対して行える対地攻撃の幅が広がることを意味しています(オニクスには簡易対地攻撃機能もついています)。ロシアは空軍にこのような(通常弾を使用する)戦略爆撃も可能な新型戦闘攻撃機Su-34を配備しTu-160戦略爆撃機の増産も検討されていますが、これらの機体は数が少なくもっと大規模に対地火力を投入できる兵器は今のところ艦船に限られます。しかしロシアの巡航ミサイル原潜はアメリカの改オハイオ級と異なり対空母阻止を目的としています。大きな対地火力を提供できるプラットフォームは今のところ限られるわけです。もちろん、米空母との交戦の可能性がほぼ消失した時点で中小国相手に適した装備へと組み替えることが財政上優しいのももちろんです。
 アドミラル・ナヒモフの現役復帰は遅れそうですが、ロシア海軍は戦線へと復帰させるつもりはあるようです。ゆくゆくは太平洋艦隊に帰ってきて旗艦にでもなるのでしょうかね・・・・・。ロシアは21世紀版キーロフ級の建造を蹴って近代化改修を選んでいるのでいずれにせよ汎用大型戦闘艦を欲しがっているようです。

(↑空母”アドミラル・クズネツォフ”からのP-700"グラニト"発射)
 キーロフ級原子力ロケット巡洋艦3番艦”アドミラル・ナヒモフ”は1988年に”カリーニン”として就役し、ソ連崩壊後も稼働を続け外洋でも活動していましたが核燃料の寿命で1997年7月の出港を最後に活動を停止していました。当時のロシア海軍の財政状態では燃料交換のための費用など出せるはずもなくそのまま僚艦の”アドミラル・ウシャコフ”セヴェロモルスク基地へ係留されました。1999年8月14日に燃料換装のためセヴェロドヴィンスク市へ回航され、以後セヴマシュに鎮座しています。2003年2月に工事が開始され同時に近代化も行うことと成りましたが、予算不足で工事は進みませんでした。同じくセヴマシュで建造されていた原潜「ベルゴロド」の建造が中止されそれにより工事が進展するように成りました。