『ネット株の心理学』小幡績
- 作者: 小幡績
- 出版社/メーカー: 毎日コミュニケーションズ
- 発売日: 2006/06/01
- メディア: 新書
- 購入: 1人 クリック: 16回
- この商品を含むブログ (26件) を見る
『すべての経済はバブルに通じる (光文社新書 363)』(以下『すべバブ』)で話題になった小幡績さんの前著。
『すべバブ』を読むと「株とか絶対手出したくないなぁ」となるが、この本読むと「デイトレとかちょっとやってみてもいいかも」とか思ってしまう。罠かもしれない(笑)
世間のデイトレ、デイトレードに対するイメージは、前に話題になった経済産業省次官の「バカで浮気で無責任」という発言に現れているようにあまり良いものではない。
"株を買うというのはその会社に投資することだから、業績の良い会社の株を長期で持って、配当をもらいながら儲けていくのがよく、売るタイミングなどは特に考えなくてもよい。"有識者や専門家に限らず、一般に株式投資ではこういうことが常識であるように思われている。
しかし、小幡はその認識を全てひっくり返す。それは次の3つの理由からだ。
- 業績で株式を買って利益を上げるのは困難
- 長期保有は最もリスクの高い投資戦略
- タイミングも含めた、売り方を考えることが投資の中では最も重要
小幡は超優良企業とされるトヨタを例に出し、業績がいくら上がっても、株価は半分になってしまうことがあることを上げている。業績が上がることを予想してトヨタの株を買った人は予想が当たったにも関わらず長期に渡って含み損を抱えることになり、しかも長期保有すれば活路がある、と信じて持っているほど損失は拡大して、ついには資産が半分以下になってしまう。
それに比べればデイトレは株を保有してるのは2分とかその程度で、1日で売買を成立させてしまうのでリスクは少ない。さらに本書で解説されているように資金効率もいいし、そして投資家の生活環境の変化にも強く、取引の時間以外は株価のことは考えずにすむ。
もちろんデイトレでも失敗する取引はたくさんある、と小幡は言う。
しかしデイトレなら、損失を確定させて、忘れてしまえば、それ以上の損失はありません。一方長期投資の場合は、長期保有だということで塩漬けにしていると、損失が膨らむリスクを常に抱えたまま生活を送らなくてはいけませんから、株を忘れることがなかなかできませんし、忘れることができてもかえって大変なことになってしまうのです。
―『ネット株の心理学』p146
このことは行動ファイナンスという新しい経済理論でも指摘されているという。
すなわち、人間というのは自分の誤りを認めたくなく、また損失を確定するのを嫌がり、先送りしたがるという行動の癖がある、ということがデータでも実証されているのです。
…従来の経済学、ファイナンス理論が想定する合理的な人間というのは適切な設定ではないという学問的な主張をする研究が増えてきています。
―同上p147
わざわざ研究で調べたのかwそうだよねー人間ってそういうところあるよね。
デイトレであれば、損失の先送りをしようにも、その日で売却してしまわなければなりませんので、人間の行動の歪みを是正してくれるルールを自らに課すことになり、投資損失の可能性を自動的に減らしてくれています。…デイトレは、意外と合理的で理論的にも優れているのです。
―同上p147
デイトレの話以外にも、ライブドアで話題になった株式分割バブルの話とかも『すべバブ』の「上海発世界同時株安」や「サブプライム危機」の話みたいに時系列に沿って、そのときの投資家の心理と合わせて詳しく書かれていて面白かった。小幡さんはこういう話の書き方がうまい。
『すべバブ』につながる話もいくつもあった。株式投資はある意味「ねずみ講」に似てるとか。
最後にはまとめとして著者の「株式投資とはマーケティングである」という考えからの具体的な株式投資の手法についてのアドバイスもある。詳しく知りたい人は読んでみてね!
*関連
- 作者: 小幡績
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2008/08/12
- メディア: 新書
- 購入: 22人 クリック: 221回
- この商品を含むブログ (106件) を見る