Hatena::ブログ(Diary)

macroscope

2011-05-04

資源リサイクル論: ものづくりは「本質循環」へ

2006年に「資源リサイクル論:持続可能性と熱力学的エントロピーを基礎として」というウェブ記事に書いた意見と基本的には変わらないのだが、標語を思いついた。

ものづくりの設計で安全をどう考慮するかに関連して、「本質安全」または「本体安全」という表現を聞くことがある。わたしはまだ出典として何をあげるべきかよく知らない。わたしの理解している意味は、製品の基本的設計ができたあとで特に安全を目的とした機能をつけたすよりも、製品が基本的機能を果たせば安全性も満たせるような設計をするほうがよい、ということだ。対照となる概念もよく知らないが、わたしが自分で考えるとすれば「安全機能付加」となる。

資源の循環に関しても、よく3R (reduce, reuse, recycle)と言われるが、使い捨てを前提として設計されている製品について、(その形のままで)再利用しようとしても、(物質資源として)リサイクルしようとしても、あまり資源節約の効果は上がらない。製品を設計する段階で、資源の循環を意識した設計をするべきなのだ。社会の中のものの流れを、「3R機能付加」ではなく、「本質3R」あるいは「本質循環」で計画するべきなのだ。

[2011-05-07補足: 英語では、intrinsically recyclable, rather than extrinsically recyclable と言うことにしよう。]

ものの循環は大きく2種類に分けて考えるべきだと思う。McDonnough & Braungart (2002)の表現によれば「技術的代謝」と「生物的代謝」だ。(この下に続くのは彼らではなくわたしによる表現。)

[技術的代謝] 自然界の生物にとって少量でも有害な物質は、なるべく使わないほうがよいが、人間の便益のために必要ならば、確実に人間が管理した閉じたリサイクルをするべきだ。製造過程で出る廃物も、製品が廃物になったものも、製品よりも価値が低いので、製品にもどすためにはエネルギー資源を投入する必要がある。投入するエネルギー資源を少なくするためにも、自然界に漏れるのを避けるためにも、物質の種類別の分別がしやすいように設計しておくべきだ。

[生物的代謝] 自然界の生物にとって無害な物質だけからできている廃物は、環境中に出してその先は自然の循環にまかせてもよい。人間が管理する循環は閉じないことになる。ただし、物質の種類としては無害でも量が多すぎると有害になることもある。それを避けるために、再利用あるいはリサイクルによって廃物となる量を減らすことや、廃物を生物にとっての害がより少ない物質に変える処理をすることが必要になることもある。

このどちらの循環にのせるつもりなのか、製品を設計する段階で決断するべきだ。両方の物質を使う必要があることもあるだろうが、その場合は、廃品を回収したら分解して分別処理できるように設計しておくべきだ。

また、多くの場合、物質資源としてのリサイクルよりも形を保ったままの再利用のほうが望ましい。多数回再利用することを前提とすると、使い捨ての場合に比べて個々の製品には多くの資源を投入することになるかもしれない。たとえば、再利用を想定したペットボトルは、使い捨てのペットボトルよりはだいぶ壁の厚いものになる。それでもガラスびんよりは軽くできるので(傷がつきやすいという欠点があるが)、大きさ・形を標準化することによって逆流通をしやすくし、食品衛生を保つための洗浄・点検の技術を普及させれば、使い捨てボトルにとってかわることができるのではないだろうか。

印刷(パソコンのプリンターを含む)による情報媒体として使われる紙についても、すべて使い捨てでは森林資源がもったいないので、McDonnough & Braungartが言うようにプラスチックスに切りかえたほうがよいのかもしれない。ただし今作られている合成紙は既存の紙に似せすぎていると思う。再利用に最適なように、印刷・製本技術、廃品回収の社会的しくみを含めて設計しなおしたほうがよいのではないだろうか。「新聞やさんに古新聞を持っていくとそれにきょうのニュースを刷ってくれる」世の中になったら新聞という物体は何からできていてどんな大きさ・形をしているのがよいかを考えるのだ。

文献

  • William McDOUNOUGH & Michael BRAUNGART, 2002: Cradle to Cradle: Remaking the way make things. [日本語版] ウィリアム・マクダナー、マイケル・ブラウンガート著, 岡山 慶子, 吉村 英子 監修, 山本 聡, 山崎 正人 訳, (2009): サステイナブルなものづくり — ゆりかごからゆりかごへ。人間と歴史社, 315 pp. ISBN 978-4-89007-175-3. [読書メモ]

スパム対策のためのダミーです。もし見えても何も入力しないでください
ゲスト


画像認証

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/masudako/20110504/1304508624