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macroscope

2011-06-10

エネルギー貯留・運搬媒体についてどんな技術開発を望むか

2006年に別ウェブページ「現代文明持続の鍵、エネルギー貯留技術に期待する」に書いたことのくりかえしになることが多いが、もう一度書いてみる。

再生可能エネルギー、とくに太陽光と風力は、供給が間欠的で、時刻ごとには需要を満たせないことが多い。時間的変動が大きいまま電力網に取りこむことには限界がある。もし電力網にとりこむとしても、供給側で時間的分布を調整して電力網側でほしい時間帯に送り出すべきだ。あるいは、電力網につながずローカルに使うことを考えたほうがよいかもしれない。農山漁村がエネルギー資源的に独立し、電力会社が津津浦浦まで電線をめぐらせる義務から解放されるのはすばらしいことではないだろうか。ただし都市や工場を維持するためには、農山漁村のうちめぐまれたところがエネルギー供給地にならなければならない。そこでは自給の場合よりも大規模なエネルギー貯留機能が必要だ。

エネルギー貯留方法は、熱貯留、位置エネルギー(揚水)、運動エネルギー(はずみ車)、静電気(キャパシタ)などもあるにはあるが、主役は化学エネルギーだと思う。いま蓄電池と呼ばれているものも、燃料電池と呼ばれているものも、もっと斬新な方法も合わせて、エネルギー利用技術全体のなかで、エネルギー貯留の費用を相対的に安くしていくことを目標とした技術の開発と普及に向けた投資をしていくべきだと思う。

また、エネルギーを運ぶ方法として、電力として伝えることはできているが、これには電線が必要だし、貯留機能を併用しないと需要供給の時間のずれに対応できない。化石燃料は燃料(石油、ガス、石炭)のまま運べることが利点だ。再生可能エネルギーも、一部はなんらかのエネルギー媒体物質(燃料)の形にして運ぶことを考えるべきだろう。

燃料電池のしくみとして水素酸素の反応が想定されることが多いので、貯留にも運搬にも水素が媒体として考えられることが多い。しかし、水素はたとえ圧縮あるいは液化するとしてもかさばるので、工場などでのローカル貯留用はありうるが、エネルギー輸送用、乗り物用、家庭・オフィスのエネルギー貯留用には適さないと思う。

エネルギー媒体物質の帰り道を人が管理するのか、環境に出してしまうかが分かれ道だ。たとえばマグネシウムならば、行きには金属マグネシウム、帰りには酸化マグネシウムを運ぶような物流のしくみを作る必要がある。

炭化水素か、それに酸素が加わったアルコールエーテル類ならば、サイクル全体で正味で二酸化炭素排出をしなければ、二酸化炭素および水の帰り道は環境にまかせてもかまわない。燃料を合成するならば、これ以外の元素(硫黄塩素など)を含まない常温で液体の物質を選ぶべきだと思う。

炭素源を大気中の二酸化炭素に求めてサイクルを閉じさせることが望ましいけれども、これはいわゆる「人工光合成」の課題となり、短期的な実用化は無理だろう。

先に、二酸化炭素からなんらかの有機物に変換するところまでは植物に頼り、その有機物を再生可能エネルギーによって良質の燃料に「改質」するというサイクルを、再生可能エネルギーの貯留および運搬媒体づくりと位置づけて、構築するべきだと思う。

たとえば、木質バイオマスならば、セルロースは繊維資源にもアルコール燃料にもなるが、余るリグニンなどを太陽光か風力か水力による電気または力学的エネルギーをつぎこんで燃料に変えるような工程を考えるべきだと思う。窒素を含む有機物の場合は、窒素分は燃料とは別にして窒素肥料にできるとよい。零細規模で間欠的に動かしても有効な改質工程を開発する必要がある。

なお、製品の種類によっては、製品にエネルギー資源貯留の役割をさせることが考えられる。たとえば、窒素資源はリサイクルするべきだが、それができてもなお空中窒素からのアンモニア合成も必要ならば、太陽光なり風力なりがある時だけ間欠的に合成工程が動き、なければ止まるようなプラントを考えるべきだと思う。

これから国が力を入れるべき技術開発の重点は適正規模技術だとわたしは思う。数メートルくらいのスケールにくる再生可能エネルギーを数ミリメートルのスケールに集中させて合成反応を進めるようなプラントが、農山漁村ごとにあるような世の中になるとよいと思う。もちろん村民の手で運転や保守ができるようになる必要がある。この規模をなんと呼ぶべきか迷ったすえに、ナノテクノロジーの向こうを張って「ミリテクノロジー」と呼びたくなったのだがいかがだろうか。「ミニテクノロジー」のほうがよいだろうか。(この表現を思いついた連想はナノテクノロジーよりはむしろミクロアナリシス(微量分析)からだった。分析はミクロでよいのだが、エネルギー資源の変換は積もれば山となりうる大きさが必要なのだ。)

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