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専門知識の需要側と供給側との「問い」の調整

【まだ書きかえます。どこをいつ書きかえたかを必ずしも明示しません。】

[2013-01-29の記事「科学ネゴシエーション」]と同じ話題なのだけれど、表現を変えて述べてみることにする。前回は「科学コミュニケーション」のとなりの話だという趣旨で用語を選んだのだけれど、理科系に限った話ではないので、今回は「科学」ということばを使わず「専門知識」を使ってみる。】

専門外の人(仮に「しろうと」と呼ぶ)から専門家への問いは、専門家にとって答えにくいものであることが多い。「それについては、よくわかりません。」と答えてしまうと、専門家は専門であるはずのことについて何も知らないという印象を与えてしまうかもしれない。

専門家は、専門家どうしの議論でされるような問題のたてかたをされれば、答える材料を持っている。問いに対する直接の答えがわかっていない場合も、どこまでわかっていてどこがむずかしいのかを述べることができるだろう。

しかし、専門家の問いかたが正しくしろうとの問いかたがまちがっている、というわけではない。とくに、専門家が知識を提供することを職業としているならば、顧客であるしろうとの問いの意図を尊重しなければならない。

ここで必要なのは、商品の取引の契約にいたる前の事前の交渉と似たことだと思う。

しろうとが求める問いの答えそのものを、専門家は提供できない。逆に、専門家がすぐ提供できるものは、しろうとが求めるものそのものではない。

そこで、おたがいに問いの内容を調整して、専門家が答えられて、その答えがしろうとにとって有益であるような問いに至れば、先に進める。もちろん、その調整の過程では、専門家はしろうとの問いの動機をよく知る必要があるし、しろうとは専門家がどんな種類の問いに答えることに慣れているかを知る必要があるだろう。

専門家がすでに知っていることを構成しなおして提供すればしろうとの需要に答えられることもあるだろう。この場合は、問いの調整は、専門知識のコミュニケーションのための交渉ということになる。

それだけではすまず、あらたな研究をする必要が生じることもあるだろう。この場合は、問いの調整は、研究課題を設定するための交渉ということになる。(科学技術政策家のあいだで「研究の共同設計[co-design]」とか、「研究計画へのステークホルダー[stakeholder]参加」とか言われている話に対応するだろう。)