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のび太の恐竜 2006

のび太の恐竜 2006

みてきた。おもしろかった。

  • 「ちょっとディズニーの奴らにカートゥーンでも見してやるか」的なタッチ感。
  • キーフレーム命のアニメーション。フルアニメーションでなくリミテッドアニメーションを追求したかんじ。枚数で圧すようなカットはあまり多くない。このへんの感覚は「千年女優」とかに近いのかなと思った。それをディテールの少ないドラちゃんキャラクタでやっている。
  • 動き萌えはすばらしく堪能できる。これは全編すばらしいわけだが、アクションシーンのダイナミックなカットでは空間(現代)的なアニメ、静かなシーンの小芝居では平面(昭和)的なアニメを中心として、渾然一体となりつつ、隙あらばどこにでも詰め込んであるかんじ。わけてもドラちゃんのかわいさは異常。のび太の部屋でイス→棚→棚→棚と飛び移りながら会話するシーンの昭和アニメ成分の濃度は見てて鼻血出ると思った。
  • のび太の部屋の狭さがすばらしかった。
    • TV 版とかだと平面芝居っていうか、キャラクタを左右に配して 2D の人形劇調に芝居をする関係で、のび太の部屋が「狭いんだけど広い」かんじに描かれてあるわけなんだけど、今回の劇場版だと TV 的な演出が廃されており、空間がちゃんと狭いように描かれていて非常によかった。
    • 空間の整合性については、早くから CG を見切りつつ取り込んでいるポケモン映画などに一日の長があるなと思ったが、今作にいくつか見られた空間整合性の無理矢理感は、これわざとかもしれんなとおもった。絵柄と相俟っているといえるので。なにしろ 2006 年はそこかしこでリアルとバーチャルが融合しているし…。
  • やる気があってやり遂げようとするのび太
    • 大長編ドラえもんの一般的イメージといえば「普段あばれんぼうなだけのジャイアンがやたらいいヤツになる」だが、今作でいうとジャイアンよりも明らかにのび太のちゃんとしてるっぷりがイイ。というか TV 版でも新ドラののび太って妙に印象いいんだよなおれの中で。だらしなさが旧ドラより少ない気がするというか。やってることはそんなに変わらないんだけど。声の印象だろうか。ともかく原作で「もう少しうまくなってから練習したほうが…」とか様々な名言を残しているのび太が(http://hanaballoon.com/dorachan/oishiku/meigen/)、ドラえもんの秘密道具を借りてとはいえピー助を掘り当てて卵に戻して孵して育てて、きちんとやっててすごいなと思った。前半のストーリー展開は、のび太一人のモチベーションによって展開していくといっていい。「のび太の恐竜」ののび太って、これほどちゃんとしてたのか。いままで気付いてなかった。すまん見直した。これくらいやれるやつなら、確かにのび太「の」恐竜ってタイトルでも納得だよ。普段ののび太がだらしないのって、案外あれじゃないか年に一度の劇場版でやる気のすべてを使い果たすからじゃないのか。
  • 映画終わったあと、見に来てた子供が満足そうだったのがよかった。いいタイミングで笑いを取れていたし(序盤は立て続けにネタを振って引き込み、後半の大展開は物語で引っ張るかんじ)、ああちゃんといまどきの子供が見て楽しい映画になってんだなあと思った。よくぞ復刻してくれた。
  • 難点
    • 全編クオリティは非常に高いが、「劇場版っぽさ」が一貫しているかというと、そうではなかったように感じられた。どこかガチャガチャしてるような印象。カメラ演出の具合だろうか。ロングのカットもけっこうあって、そこはいいと思うんだけど。よくわからんので DVD とかが出たあとで確認してみたい。なにしろ久しく見ない絵柄感だったのでそこで脳が戸惑ってるのかも。
    • 冒頭のスネオ宅のカメラ回転等で、なんとなくフィルレートが追いついていないかのようなチラつきがあった。あともう 1,2 箇所で感じた。秒間 24 フレだから?なんとなく機械的なエラーな気がするんだけど…。
    • ドラ映画としてはある意味前提というか当然なのかもしれないのだが、設定に関する説明がまったくないのはこれでいいんだろうかとちょっと首をかしげたが、オタ的な懐疑すぎるかな(劇場ではじめてドラえもん世界を知るひとのことは問題にしていないというか)。キャラクタの人間関係とか。しずちゃんのドライな立ち位置は非常にしっくりきててよかったけども。
      • 以下余計なオタオタ。ドラえもん世界最大の謎はもちろん「あのへんな青いのはナニ?なんでのび太ん家に居るの?」なわけだが、これを劇場で一から説明するのは無理だろうし無駄だろうな。あとあれをロボットだと認識するのは極めてむずかしいだろう。ミュータントというか妖怪というか。動きの文法にロボっぽさは皆無だ。22 世紀なのだから進みすぎている。十分に高度化したロボットは妖怪と区別できない。「未来から来たネコ型ロボット」という設定を示すものはなにもない。かろうじてタヌキ型ロボットと言われて怒る場面で「ああロボット?」とわかるかんじか。タイムマシンは出てくるが、しかしそれを即座にドラえもんの由来と関連付けることができるのは、おれがドラちゃんの第一話を読んだことがあるからだろうし。
      • あとここもちょっとびっくりしたんだけど、「秘密道具を取り出してパンパカパーンとアップになってその道具の性能を説明するシーン」が一切ない。ふつうに取り出してあたりまえに使わる。このあたりの設定知識も前提になっている。これはあれかな初めて見たこどもが「あれなにー」とか聞いて、パパママが「あれはね…」とか答えてあげるという親子のコミュニケーション促進とかそういうアレだろうか。んなわきゃないか。こどもはドラえもん見るまえにちゃんと漫画読んで予習してるよね。
    • なんというか、唐突にかっこいい場面がいくつかあって違和感。「張られてあるのだろう伏線を見ないまま結果がいきなり出てくる」かんじ。たとえば敵ボスがカツラだったとかはいきなりでいいんだけど、ジャイアンが修羅場でかぶるマスクとかについては事前の伏線が見たいかんじっていうか。本編にはなかったけどなにかあるだろう。上映時間の問題とかで削ったシーンとかあるような。完全版があるんじゃないかなあ。それを DVD で観たいぞ。けどこれもあれかな、悪しき「ちゃんといちから馬鹿丁寧に説明を受けたがり病」かなあ。べつにあれはあれでいいといえばいいわけよな。ただ、そういう「説明されなさ」は大人向けな気がしなくもないんだよな。むーん。
    • 成長後ピー助が地声すぎる問題→例によってあれはあれでいいと思った。
  • いい点でもあると思うが原作のストーリーの流れをベタに映画化しており、最近のエンタメ映画的には食い足りさもあった。諸国漫遊のリズムが漫画のもので、アニメ映画としてはテーマ的ななにかへの集束感が欲しい気も。このへん原作漫画読みなおして感覚差分を体感してみたいが、いま持ってないのであとで。
    • たとえばピー助との一回目の別れと二回目の別れの質的な違いがあまり腑に落ちてこないかんじ。そこは道中の食い応えから視聴者側の肝に据えておけということかなあ。ザッと見てしまっているかもしれない。
    • たとえばしずちゃんが恐竜ベビーを守るシーンが、あれはピー助の成長を示す場面でもあるわけなので大事とは思いつつ、しずちゃんとピー助の絡みが少ない気もするのであすこは「しずちゃんが赤ちゃんじゃなくてピー助を守る」のほうが話を一本化するにはいいんじゃないかなと思わなくもないところだった。気が。しなくもないが。どうもな。むーん。
    • のび太の、ピー助に対する愛情の変化をもうちょっと見たかった。そもそものび太が恐竜を発掘して育てることになったのは友人への対抗心からで、心意気は美しいが動機としては不純だ。けど様々のイベントが起きてそのたび無我夢中の選択を行ううちに、徐々に純粋なものになってゆく。だから一回目の別れのシーンは「感情的になっている&勢いで行動している部分」がまだあると思っていて(ある意味、ピー助を育てることができないから「手に負えなくなって捨てにいく」)、全部わかりつつ別れていく二回目(それがピー助のためにできる最もよいことだから「過去に置いていく」)とはいろんな部分で違ってくるんじゃないかなあと思うのだ、が…。描写は十分でおれの見方が足りなかっただけかもしれないのでこのへんもちょっとアレ。あとそれと別に、のび太の年齢ではそんなことまでは自覚して行為に反映させることはできないと判断するほうが自然な気も。子供なめすぎか?
    • ピー助側の心情については、現状で十分「擬人化としてギリギリ」のバランスだとおもうので満足。
  • diekatze 氏も指摘しているとおり(http://d.hatena.ne.jp/diekatze/20060305#1141496249)前半の日常描写が非常によい。後半はわりと淡々としている。淡々というかすっきりというか。ちょっとすっきりしすぎているのかなあ。感情の交錯がもうちょっと見たかったようにも。
    • 峡谷でのジャイアンのび太に救われるところとか、後にもつながる重要な場面だが、作画に気を取られてわりと流して見てしまっていた。視線の演技とかがあるとわかりやすかったのだろうか。いやそれだとしつこくなっちゃうよな。十分だよな。むーん。

とにかくにも溢れるものも滾るものもいろいろある映画だ。あと「難点」とか書いているが、「これが○○だからダメ」とかいうようなニュアンスでは一切ない。もうしばらく頭から離れそうにない。いずれ考え直す。とりあえず今日のところはここまで。