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松原和之の「教育考現学」 RSSフィード

2017-04-21

AI時代に必要な人間の知性とは何か

こんにちは。コアネット教育総合研究所松原和之です。

今月の「ハーバード・ビジネス・レビュー」はとても面白かったです。最近、私が常に考えていることに大きなヒントを与えてくれる内容でした。

そのタイトルは「知性を問う」です。人工知能(AI)の時代だからこそ、人間の知性の本質とは何かを考えなければならない。これは、私の問題意識に重なります。

このタイトルで、4人の方の論文、インタビューが掲載されているのですが、その中の1人、ヤフーCSOの安宅和人氏の論文から、印象に残った点を紹介したいと思います。

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安宅氏は、AIが得意なのは情報の識別や予測、実行過程の自動化であり、不完全な情報の中で問いを見立てたり、単層ではないタイプの問いに答えることはできない。知的生産の本質は何らかのイシューに答えを出すことであり、大切なのは正しいイシューの見極めだ、と言います。
仕事の多くは課題解決であり、その要素である(1)課題の性質の見極め、(2)大枠のイシューの見極め、(3)課題の腑分け、(4)答えを出すアプローチの見極め、(5)分析的に答えを出す、(6)統合といったものはAIにはできない。つまり、知的生産の多くの過程は当面人間の仕事として残る、とも記述しています。

AI全盛の時代になるからこそ、人間には「思考」することがますます求められるのだと思います。

安宅氏によれば、思考とはインプットをアウトプットにつなげることであり、情報を知覚(感覚)し、理解し、統合し、判断し、実行につなげることです。

情報収集や分析の量と質を上げるためにはAIは活用できますが、正しい課題解決に結びつけるのは人間の知性です。
また、情報収集はAIがやるからといって、知識は必要ないかというと、そうではないと安宅氏は言います。

いちいち必要な情報を脳にアップロードしなければならない人では適切な判断は難しい。どれほどAIが発達して知識や判断をサポートしてくれるようになっても、過去の先人がつくり上げてきた知的体系を学ぶことの必要性は変わらない。知的体系の理解なしには、その場で起きている問題を総合的に見立て、把握し、判断することができない、と言います。

学習指導要領の改訂や高大接続改革の議論の中で、思考力・判断力・表現力等を重視する傾向に対し、「知識は必要ないのか」という反論を述べる方がたくさんいます。安宅氏の論を見れば、ビジネスの現場にいる方から見ても、知識は必要だということです。

その通りだと私も思います。決して知識が不要になるわけではありません。しかし、子どもたちの学ぶ機会や時間は有限です。思考力等の汎用的な資質・能力を身に付けるための学習を行うためには、これまでのやり方では無理です。細かい知識はAIに任せておけるので、メタレベルでの知識や思考や判断に活用できる形で身に付ける知識を重視することが大切なのではないでしょうか。

この手の議論が抽象論では済まないことは私も認識しています。アクティブ・ラーニングをより実践的にするためには避けて通れないポイントです。
AI時代の人間の知性とは。そして、それを身に付けるために学校で学ぶことは何か。
これからも、より具体的に考えていきたいと思います。

2017-04-16

大学入学希望者学力評価テストの原案速報

こんにちは。コアネット教育総合研究所松原和之です。

これまでもブログに書いてきましたが、現在検討中の高大接続改革の一環として、2021年度入試から大学入試システムが変わります。その変更のポイントの1つが、センター試験の代わりに行われることになる「大学入学希望者学力評価テスト」です。

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正式な実施方針は文科省から6月に発表されるとのことですが、今回、その一部が分かったとの報道がありました。

今回の報道を見ると、これまで検討段階で発表されていた内容とあまり変わりませんが、英語においては、4技能を評価する問題を大学入試センターで作成するのか、民間の検討試験等を活用するのかで検討していましたが、民間の試験の活用で決定したようです。国語の記述式問題は、採点を大学入試センターで行う、大学で行う、という案が出ていましたが、結局は民間業者に委託するということになったようです。

以下、4月14日の朝日新聞の記事を転載します。

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大学入試センター試験に代わって2020年度から導入される新テスト「大学入学希望者学力評価テスト」の原案が13日、わかった。英語では、英検のような民間試験を事前に受けさせ、聞く・読む・書く・話すの4技能を評価。受験生は2回まで受けられ、結果の良い方を採る。国語の記述式はセンターが民間業者に採点を委託し、80〜120字程度で答える問題などを数問出題する。

新テストは、現役であれば21年4月に入学する今の中学3年から対象になる。文部科学省は近く原案を示し、大学、高校側と協議したうえで、6月に実施方針として公表する。出題科目は国語や数学機∪こ史A、物理など30科目で、24年度以降は絞る。

高校の学習指導要領は英語の4技能の育成を求めている。だが、マークシート式のセンター試験では聞く・読むしか測れないため、文科省はすでに大学の推薦入試などに使われている英検やTOEIC、TOEFLのような民間試験の活用を決めた。大学入試センターが試験の内容や実施態勢が必要な水準を満たしている団体を認定する。民間試験の内容はビジネスや留学を想定したものもあり、学習指導要領に沿った問題になっているか確認する。

受験生の成績はセンターが管理し、出願先の大学に成績を提供する方式を軸にする。成績は点数ではなく、CEFR(欧州言語共通参照枠)という国際基準に対応した段階別とし、6段階表示などを検討。各大学が2次試験の出願資格や試験免除、得点の加算に使うことを想定する。

また、経済的な負担や離島・へき地の受験生などを考慮し、受験回数は高3の4〜12月に2回までとする。浪人生については別に検討する。いまのセンター試験の2技能の試験は23年度まで併存させ、その後は廃止する方向だ。

新テストでは「記述式」の導入も大きな柱となる。文科省はこれまで、国語で。牽飴以内の短文形式△茲蟷数が多い形式――の2種類を課すことを検討してきたが、大学に採点の負担がある△詫用が広がらないと判断。センターが民間業者に採点を委託する方式に統一した。

そのうえで、記述式のための大問を設け、80〜120字程度の問題を含めて3問程度を出題することを検討。試験時間はいまの80分から100分程度に延ばし、結果は段階別で示すことを想定している。例えば、アパートの賃貸契約書を読ませて懸念される点を問うたり、自治体の街並み保存策について、長所と短所を説明させたりするような問題を検討している。

記述式は数学にも導入。図表を用いて考えたことを数式などで表す問題を3問程度出題し、試験時間は10分増やして70分程度を想定している。新指導要領に基づくテストとなる24年度以降は、地理歴史や公民、理科でも記述式の導入を検討する。(水沢健一、編集委員・氏岡真弓)

■大学入試センター試験に代わる新テスト「大学入学希望者学力評価テスト」の骨子
・2020年度(21年4月入学者)から毎年1月中旬に実施

《英語》
・民間の試験を活用。「聞く・読む・書く・話す」を評価
・高3の4〜12月に2回まで受けられ、結果の良い方を採用(浪人生は別途検討)
・成績は点数ではなく、複数段階(6段階を検討)で表示
・成績のデータは大学入試センターが管理し、大学に提供
・低所得世帯への受験料割引、障害者への配慮などを求める
・センターが作成する「聞く・読む」の試験は23年度まで継続

《国語》
・記述式の採点はセンターが民間業者に委託
・記述式は80〜120字程度で答える問題を含め3問程度
・試験時間はマークシート式と記述式合わせて現行の80分から100分程度に

《数学》
・大問の中にマークシート式と記述式が混在する形で3問程度
・試験時間はマークシート式・記述式合わせて70分程度
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まあ、現実的なところに落ち着いたという感じですが、高校生たちにとっては、英語の4技能をバランスよく身に付けておくこと、国語では記述力を身に付けておくことの大切さは変わらないでしょう。