メガザル(始まり)

 今、ネカフェにいます。

僕が どうして こんなところにいるのかは、 後後話すつもりなんだけど、とりあえず僕が象牙の塔にログイン出来なかった一週間の間に 僕の身に何が起こったのかを話すね。


 今から一週間前、そう最後のログインしたのが金曜日の深夜2時頃かな、その後 僕は例のごとく、海外のWALZサイトで レアファイルが落ちてないか物色していたんだ。

 僕 英語はあんまり得意じゃないし、中学 高校程度の英語力なので、文の意味を理解するのは無理で、せいぜい よく見知った英単語の意味をなんとか理解出来る程度。

だもんで、海外サイトを サーフィンするときは 2ch掲示板なんかの誰かによって書き込まれたURLを辿っていく事が多いんだ。  

 その日の僕も たしか そうだった。

 悪意のある他者による誘導とも知らずにね‥


 まあ それはともかく リンクを踏むと まず関係のないバナー広告が いっぱい貼られたページに飛び、そこから またリンク・クリックで本来の目的地であるHPに飛ぶんだけど、そのとき 僕の目に飛びこんできたのは 全面まっ黒のページだった。

 別にコンテンツ・メニューがあるわけでもないし、最初 誰かがイタズラ目的で こんなページを作ったのかなって思ったので、すぐにタブを閉じようとしたんだけど‥


 マウスカーソルをタブの×印の上に持っていった瞬間、ブラウザごと固まってしまったんだ


 このとき僕は得体のしれない不気味な雰囲気を感じ取った。

 いつの間にか部屋の空気がおかしい。

 まだ9月初旬で 暑さは一向にましにならないというのに この部屋は残酷なまでに寒気が するんだ

 そして 視線‥、誰かに見られている、しかも 今までに感じたことのないほどに強い眼力‥邪眼というべきであろうか


 昔から、邪眼は 忌み嫌われ その眼で見られた者は命を落とすという

 また幸運にも生き残ることが出来たとしても、交通事故に遭ったり 心臓発作になったり 悲惨な運命を辿るそうだ


 話を元にもどし、その後 まるで部屋全体が深い霧に包まれているかのように、視界が曇り あちら こちらの方向から「どーん」 「どーん」という太鼓の響が部屋の空気を振動させはじめた

 僕は耳を澄まして その音源は どこなのかと意識を尖らせていたんだけど、いくら思考を周巡させたところで、結局答えは分からずじまいだった


 そのうち部屋のなかに獣の死臭のような匂いが立ち込めはじめ、そのあまりにも強烈な匂いに、恐ろしいほどの吐き気を覚えた

 さすがに僕は これはどうにかしないと

 (殺られるな)と思い、昔読んだ「グリモワール」の結界術を試みた

 というのも、いま僕が体感している超常的な事象は、長年経験と修養を積み重ねた高位の魔術師が、儀式の手順を間違えて、空間の磁場を汚がしてしまったときに起こる(ソレ)と非常に よく似ていたからだ。


 僕はまず部屋の中央に立ち 右手で手刀を作り頭上に振りあげ「アテー」

 その手を胸上に下ろし「マルクトー」と叫び、裏聖書の第144編の1節を読みあげたんだ


 すると、今まで部屋に立ちこめていた異臭が 立ちどころに消え、眼前を覆っていた深い霧状のエクトプラズムさえも拡散していき、最後には何ごともなかったかのように消えたんだ


 でも、ブラウザは固まったまま。

 こりゃあ タスクマネージャーで プロセスを終了させるしかないな‥って思って、タスクマネージャーを開きました、firefox終了出来ました、よかった(ほっ)


 でも そんな安堵も束の間、怪異現象は それだけに留まらなかったんだ

 何が起きたかというと、ローカルディスクのプログラム・フォルダのなかに いつの間にか 僕の知らないフォルダが入っている


 フォルダ名は「megazal」
 

 メガザル(マーウ゜ェラス)

 こんばんは、末期です。

 えっと昨日は どのあたりまで話したっけ?

あっ そうそう ローカルディスクのプログラムフォルダ内に、いつの間にか 僕の知らないフォルダが入っていた事までは話したんだよね?


 そのフォルダ名は「mwgazal」で 一見何の変哲もないフォルダなんだけど ダブルクリックして中を開けてみて びっくり。

 そのフォルダのなかには、拡張子がexeのファイルが 数万個入っていたから‥


 exeファイルといえば みなさんも ご存知のように自動実行ファイルで 良くコンピューターウィルスなんかで使われるけど、これって全部ウィルス?

 試しに 僕のPCに導入しているkasperskyで ウィルス・スキャンを試みたんだけど、予想に反し、何の反応もなくて、ちょっと がっかり


 当然 一体このファイル達には 何が入ってるんだろうっていう好奇心が僕の心を揺さぶり、つい先頭のexeファイルを ダブル・クリックしてしまったんだ。

 すると何やら英語で書かれたインストローラーが立ちあがって、ウィンドウ下部に許可を求めるアイコンが表示されていくので、全部「yes」‥

 最後まで全部クリックし終わると、ダイアログが消えたあと すぐにshokwave形式のフラッシュ動画が始まったんだ


 何やら 画面の中央部分に縮小化されたサムネイル画像が秒速1mm程度の早さで スムーズに拡大されていく。  再生が始まって約10秒後には肉眼で認識出来るほどの大きさまでになり、それを見た瞬間 僕はあまりの驚きに全身が硬直した


 「あっ」と声を漏らしたかは定かではないが、そのときに覚えた恐怖の感情を 今でも はっきりと覚えている。  
 時間にして数秒のはずなのに 僕には まるで時間の流れが完全に停止したかのように、長く感じた


 画像は 僕と両親の集合写真、写真のなかの僕は坊主で まだ幼い

 一・二歳の頃の写真で あろうか?母の隣には父が写っていて いまの僕の顔に近い

 僕は母に両手で しっかりと抱きかかえられて、胸のあたりに位置している。


 父も母も満面の笑みを浮かべていて、父はともかく 母が‥  あの母がこんなにも健やかな笑みを浮かべている姿なんて、物心のついてからの僕には記憶がなかった


 僕の知っている母は、いつも神経質で いつも曇った表情をしていたはずなのに‥


 前の日記にも書いように 僕の母は精神を病んでいてそのせいか いつもヒステリー気味で 子供の頃の僕が
何か 粗相を犯すと容赦なく体罰を与えられた

 いまでも その頃の事が トラウマになっていて、僕の人格形成に悪影響を与えたのは 火を見るよりも明らかなはずなんだけど、出来れば過去の記憶(トラウマ)は思い出させないで欲しかったんだ。     なのに‥


 なのに、その写真を見ると 過去の記憶(トラウマ)が 走馬灯の様に現れては消え 消えては現れた


 僕は いつしか自分が泣いている事に気付いた。

 その涙は、悔し涙なのか なつかしさのあまり 溢れ出てきたのか 理由は定かではないが、一度井戸の湧き水のように じわりと湧き出た その液体は、眼の奥の方から 怒涛のごとく湧き出てきて 自分の意志では どうする事も出来なかった。


 画面のなかの写真が滲む‥

 滲んだ それは まるで 水彩画のように輪郭がぼやけていて すごく綺麗だった


 誰が一体こんな事を‥。

 何故こんな写真が現世に存在しているんだ?


 僕の父は薄情な人間で、僕は幼少のころから 全然構ってもらえず、玩具(おもちゃ)の ひとつさえも買い与えられなかったというのに‥

 だから ありえないのだ。  そんな事、ありえない。


 だからこそ不気味に思う。  この写真を‥ 一体誰が この写真を撮ったんだろう?

 

‥話の腰を折って悪いけど、いまカウンターから「退室時間」を知らせるコールが かかってきたんだ

 だから もうすぐ此処を出なくっちゃ‥


 所持金3万1600円。  ネカフェのナイトサービスや、朝昼夜の飯代含めたら 僕が この世に現存出来る時間は 約1週間弱かな。


 そのあいだに 僕は これを全て書き終えるよ。


 それじゃーね        アディオス    

 メガザル(試練)

こんばんは、末期です。
 
 昨日から ずっと食欲がなくて、朝から何も食べてません
そして、あれほど エロ動画鑑賞が好きだったのに性欲が湧きません、オナニーする気も起きないんだ。


 近況報告は それぐらいにして続きを書きますね


 写真は誰が撮ったのか 答えが出ないままに、スライドは次第に透過していき、最終的には完全に消滅したんだ。

 それから間もなくして、また次の写真(?)が画面の中央から拡大されていくのが見えた。

 最初それは小粒大の大きさしかなかったんだけど、例のごとく スムーズに拡大されて文字(?)が認識出来る程になった。

 ダイヤログには、英文字で 男性か女性かという問いかけの文章が つらつらと書きこまれています。

 何かのアカウント登録画面でしょうか?

当然僕は男性の方にチェックを入れ、承諾して次の画面へ〜

 すると いきなり インストールを推奨画面が現れて ゆっくりと進み始めました

 全部進んだところで、何やら急にモニターの電源が落ちて、まっ暗になりました


 コンピューターウイルスかな? あれ? 電源入んないや

 しょうがなくなり、PC購入の際に付属で付いてた リカバリCDと 起動用デイスクをセットし、電源を入れます

 数分後、工場出荷状態に戻った僕のPCは無事にOSを起動させる事が出来ました

 
 あれは一体何だったんだろう?

 まっいいか、こんなくだらない事に時間を費やしてる暇はない、積んでるうエロ動画と同人ゲームをしなくちゃな
っと思い、外付けHDDを、リカバリしたばかりのPCに繋ぎます

 エロゲなら、何もソフトをインストールしなくても起動するはずです。 僕は別HDDのFフォルダを開きました

 その瞬間、僕の目に飛び込んできたのは、さっき見たばかりの‥「それ」でした


 僕はもう驚いたり、泣いたり 怖い思いを存分に味わった後なので、「ああ、やっぱりね」くらいの感情shか湧かなかった

 でもさすがに この後エロゲをうる気力も失せて、そのままPCの電源を切って、そのまま寝ました


 昼頃、目が覚めて母と顔を会わせたのですが、母はなにやら怪訝な顔をして まるで僕を汚いものを見るような目つきで 僕を睨み付けました

 夜中に僕が儀式の最中に叫んだ呪文を どうやら母に聞かれてしまったようです。


 「ああ、あれね。あれは ただ外にいる猫が にゃーにゃー五月蝿いもんだから脅かしてやろうと思ってさ」
‥などと言い訳がましく説明してやろうと思ったんですが、時間の無駄なので止めておきました

 どうせすぐに忘れるでしょう


 さて、昨日のフォルダは一体何なのか解読してやるかと、ミステリーマニアの僕は上機嫌で PCの電源を立ち上げ、別HDDのなかのFフォルダを開きます

 昨日の夜は全然着付かなかったのですが、よく見ると昨日実行したはずのexeファイルは跡形もなく消えています

 その代わりに、英語で書かれたtxtファイルが入っていました

 僕は それをメモ帳で開きまました

 そこには英文字で何やら長長と長文が書かれていて目につくのは「death」やら 「heaven」やら torojyanの文字が書かれています


 前にも話しましたが 僕の英語力は大したことないので、ここは迷わず「EXCITE翻訳」を使うことにします

 所詮機械翻訳なので、たどたどしい日本語で こんな風な事が書かれてありました


 「ようこそ 末期様、メガザルの世界へ

私たちは この物質至上主義社会を本来の霊的至上主義社会に転換する為に活動しているグノーシス集団「メガザル」です。 この度は 「メガザル」の新規参入試験のお申し込みありがとうございます

 さっそくですが私達から貴方に、我が組織「メガザル」に加入する資格があるかどうか適性判断する為の試験をご用意させていただきました

 もうお気付きかもしれませんが、フォルダ内にある65535個のexeファイルが「それ」です

 このexeファイル群には、世の中に 妬み恨みの情を持っている国際A級ハッカー達が苦心の末に作りあげた「悪意のあるプログラム」です

 種類は トロイ ワーム 亜龍系の新種ウイルスなど‥ありとあらゆる種類を取り揃えてあります

 末期様は これらのウィルスを三日三晩の間に全て駆除して下さい


 全てを駆除出来たとき 扉は開かれるでしょう」


 と、こんな感じの文章が書かれてあって、最初誰かのイタズラだと思ったんだ

 霊的至上主義だと?  ふざけるな


 あまりにも馬鹿馬鹿しいので無視して フォルダを閉じようとしたんだけど、昨日ブラウザを閉じようとしたときと同じく、閉じれない

 
 「やられたー」  僕のPCはコイツラ(exeファイル)を どうにかして全て消してしまわないと まともに作動してくれそうになかった


 で、僕は その日から寝る間も惜しんで、ファイルを片っぱしから実行し、ウィルスに感染しては、ネットで駆除方法を調べ 削除すると言う方法を実行したんだ。


 ウィルス・ソフトで駆除すればいいじゃないかと思うかもしれないけど、並のアンチ・ウィルスソフトでは まったく歯が立たず、ウィルス検出率NO1のあのカスペルスキーでさえも、完全に除去するのは難しいのだ。

 だから僕は一つ一つ丹念にネットで調べては、レジストリエデイタで削除していったんだ


 そして三日後 僕は遂にあと最後の一つを残して、他のファイルを削除する事に成功した

 このときは すでに精神力・体力ともに限界で、精神にも異常をきたし始めて 本来なら見えてはいけない物が見えてしまったり、聞こえるはずのないピアノの伴奏や
お寺の坊主が お経を読経しているのが聞こえていた


 だもんで、はた目から見ても常軌を脱していたのだろう、あれほど僕に無関心な父が重い腰を上げた


 
 ‥どうやら僕を精神病院に入れるらしい‥



  時間切れ‥‥みたいです。


  また この続きは明日書きます  





                          では 

 メガザル(精神病院脱出)

 こんばんは、末期です。

この前、僕の現在の所持金3万1600円だと公開したんだけど、財布のなかにイマ、6000円弱しかないので、ネカフェに通う事が出来るのも、残り あとわずかになりました。


 昼間、あまりにも暇すぎたので、つい昔のくせで 新大阪の「リッチドール」っていうピンサロに行ってしまったんだ。
 昨日、性欲が失くなったって話した矢先なのに本当にごめん。  

 もし僕が この告白を最後まで全部書き終えるまでに所持金が尽きた場合は、この象牙の塔の人の誰かが 僕の代わりに最後まで完成させてくれるはずだから‥


   だから心配しないで‥


 
 続き書きます。あの後、父は すぐにタクシーを呼び抵抗する僕の体を羽交い締めにし、タクシーに無理矢理押し込みました。

 いくら僕が33歳で まだ若いと言っても家に引きこもっているニートが、現役で仕事をしている父に力で勝てるわけがありません。  

  情けなくて涙が出ました


 それで、タクシーに乗り込んでからは みんな無言で
僕はただタクシーの窓から見える懐かしい昼の風景を楽しんでいました。


 数十分程して、タクシーは目的の精神病塔に到着しました。

 精神病棟の外観は一見何の変哲もない、どこにでもよくある風貌をしていましたが、決定的に違うところは、病院の外周を鉄線で張り巡らせていて、それは刑務所を連想させました。  ある事件で、拘留された事はあるけど、檻のなかにはまだ入った事はないんだけどね。


 まあ それはともかく こうして僕は とううとう精神病棟に入れられる羽目になったんだけど父親が受け付けで入院の手続きを済ませている間に、病院を抜け出して近くに放置してあったカギのかかっていない自転車に乗って遠くまで逃げました。


 車の運転の出来ない父は、それ以上追いかける事は出来ず、50m 進んだところで、後ろを振り向いたら ハトが豆鉄砲をくらったような顔をして口をあんぐりさせていました。   ざまーみろです。


 それから僕は何時間も自転車をこぎました。

 ずいぶん遠くまで来たと思います。


 電柱の広告に「貸します、3万まで」とか  

 「即融資、電話一本」とか裏金融業者の広告が貼りついていました。


 家を出るときに お金を持ってこなかったので‥ いや財布を持っていたところで千円札が1枚と100円玉が3枚
、1円玉が大量に入っているだけです。


 僕は公衆電話の前に立ち止まると ズボンのポケットのなかに入っていた10円玉を取り出して一か八か その金融業者に連絡をとります


 何度か呼び出しのベルが鳴った後、ドスの効いた男の人が出ました

 
 ‥そして少々の交渉の後、なんと お金を貸してくれるとの事


  神様は こんなとこにいました、サンキュー



 そして 僕は電話で指示された事務所まで自転車で行き、何やら契約所やら 念書やらを書かされた後、その場で茶封筒を渡されました。


 封筒のなかには4万円入っていました。 僕は そのお金で、安く泊まれる簡易宿泊施設を探したのですが、ネット環境の整ったところは ひとつもなく、あえなく当初予定していたネットカフェに泊まる事になったのです。



 気分は今流行の「ネットカフェ難民」です


 そんな浮かれ気分も束の間で、まもなく僕は これからの行く末についての心配や、不安 恐怖が襲ってきました


  家に電話をかけて父にあやまろうか?とも思いましたが、今回も それは無理みたいです。


 だから当分 金が尽きるまでは昼は街をぶらぶらし、夜はネカフェで朝まで過ごすことにしました。



 その後は みなさんの知っているとおりです


 現在所持金は3000円と小銭少々で もう明日1日ネカフェに泊まったら資金も尽きてしまいます



  なので 僕は明日、ネカフェのPCから家のPCを リモートコントロールして 最後のファイルを取り出して exeを実行してみたいと思います




              それでは、もう寝ます


                        おやすみ 
  

メガザル(瞳の住人)

こんにちは、末期です。

 今日はとうとう最後の日です。

僕は昨日、公言したように リモートコントロールで自宅PCにアクセスし、最後に残ったexeファイルを実行してみました。     しかし‥  「あれ?何も起こらない」

 拡張子は たしかにexeのはずなのに、おかしいです


 僕は今回の事件の全てを解くカギが、このファイルにあると踏んでいました


 ・パンドラの箱の伝説のように、箱を開けると 世のなかの ありとあらゆる悪や災いが起こり、主人公は悲しみます。

 しかし最後に、箱のなかに残ったのが「希望」という名の力だったそうです


 だから僕も 最後の最後で 幸運のラッキーカードを引き当てて、一発逆転の人生が待っていると思ったのですが、どうやら考えが甘かったようです


 これはあとで分かったことなのですが、最後に残った拡張子exeファイルは拡張子が偽装されていて中身はただのpdfファイルだったそうです


 まあ それはよしとして‥。

 思わず肩すかしを食らった僕は落胆の表情を浮かべながて、ネカフェを出ました



  もう此処に戻ってくることはないでしょう。



 外に出た僕はあてもなく夜の繁華街をうろつきます、ふらふらした足取りで‥

 
  どこからともなく若者達の笑い声と ひやかしが聞こえます。 多分僕のことを笑っているのでしょう


 坊主頭に よれよれのTシャツ、顔色は血色が悪くて青白く メガネをかけていて、僕一人だけ この場で浮いてしまっています。


 前方101m先のほうから歩いてくる若いカップル、それも いかにもホストっぽい男性と キャバ嬢でしょうか、長い髪にパーマで ウェーブを付け 派手なメイクをした女が、大声で僕を罵ります


 「ばっかじゃねーの、あいつ。キモいんだよ、死ね」


 
 こうゆう罵倒は昔から言われ馴れていて いつもなら何事もなかったかのように平静を装うことが出来たはずなんですが‥


 ですが、このときは精神的にも限界で 自暴自棄になってて、コイツらを刺してやろうと ダイソーで買った刃渡り15センチの小型包丁を紙袋のなかに隠し持っていました。  


 
  右手を袋のなかに突っこみ しっかりと柄を握りしめています


 何もしらない獲物は 呑気に鼻歌なんぞを歌いながら近づいてきます


 10m‥  8m‥  5m‥


  そして チャンスが訪れます


  3m‥   2m‥   とうとう獲物は僕の射程距離範囲に入りました


 よし、いまだ。



  僕がタイミングを計り いままさに飛びかかろうとした瞬間、僕の動きが止まりました


 自分でもいったい何が起こったのか分からなかったのですが、いつの間にか僕の周囲の人口密度だけが やけに高くて まるで都会の朝の満員電車なみに ギューギュー詰めでした


 
 よく見ると、周りには 見たことのある人達がいます

 混濁する意識のなかで必死に思考を周巡させると、約1週間前に僕が お金を借りた事務所の人でした


 彼らは、僕のからだに何やら冷たくて硬くて鋭利なもので僕の体をいっせいに貫いているのでした


 次の瞬間、僕のからだから ものすごい勢いで血しぶきが吹きとびます。

 その様子が なんだかまるで噴水のようで綺麗です


 僕は口から血で赤く染まった泡を吹きながら、膝のあたりから一気に地面に崩れ落ちました


 そして その数分後‥   



    僕は死にました



 だから いまの僕は僕であって僕ではないです



 上手く説明出来ないけど、僕はいま エクトプラズムのような存在です



  これは死んでから気付いたことなんですが、幽霊ってPCのなかに入りこんで操作が出来るんです




    便利でしょう?w



 いまも こうして僕は幽霊になりながらも、他人のPCに入りこんで、こんなくだらない文章を打っています



  僕は いわば 君達の「瞳の住人」 です



 この状態が 僕が生前一番臨んでいたことかもしれない。  
 だから その意思が天に伝わって 「あの事件」が引き起こされたのかもしれない‥  と思うと全て合点がいくのです


 だから いまはまったく後悔してません



   僕は これからも君達の


   
   「瞳の住人」      ‥なのだから

                             完        

 深夜2時東京僕は無性に泣いた

昨日の夜、僕は いつものように暇を持て余し 象牙の塔に新着メールが入ってないか?だとか 日記にコメントがついてないかだとかを約3分おきにログインして繰り返してたんだ、貧乏ゆすりしながら‥  〔誰か メールちょうらい〕

 で、丁度日付けが変わってから 3回目になる吐き気が襲ってきた頃、僕は自分の体に起きている重大な変化にうすうす気付き始めたんだ


 さ‥さむい〔ぶるぶる〕

 最近急激に夜の気温が下がって いままで家のなかでは、トランクス1丁だった僕は、度重なる眼精疲労と体温の低下で すっかり体調を崩していたんだ


 〔さっきの貧乏ゆすりも その為か〕

 などと、自分で納得したんだけど 本当の1番の理由は オナニーするときにパンツを脱いで スッポンポンになっているからというのは伏せておこう
  〔パンツは自分で洗ってるよ、何故なら たまにパンツに うんこついてるって愚痴られるから〕


 まあ それはよしとして そんな体調の悪い状態ながらも 昼間たっぷりと睡眠をとっているのも手伝ってか 体とはうらはらに意識は はっきりとしていて とても横になる気にはなれなかったんだ

 だから そのまま ネット続行‥

 
 やる事ないし 地域別の小・中学生掲示板に張付いて 中学生の メル友でも作るか‥いっしっし

 と、口を半開きにし ヨダレがだらり 目は眠気と
興奮が入りまじり、まるで死んだ魚のような目をしながら、PCのモニターをひたすら見つめていました

 変質者だな、これじゃあw


そして その数分後か 数10分後くらいの後に
僕に天使の女神が舞い降りました


  まるで夢のようだ〜らんらんるー♪

  イヤッホーィ♪

  
 彼女の名は 舞ちゃん

 歳は 小4

ストライクゾーン ど真ん中ですw


そんな彼女と 2人きりでチャットしました

 僕は 32歳というのを隠して 都内に住む中学2年生で クラブ活動は バスケットボール部、顔は
芸能人でいうと 市原隼人似って友達に云われるんだ‥とか適当に田舎娘が憧れる彼氏像NO.1を言ってやりました

 こうゆうのは 馴れてますw


 で、彼女も そんな僕の偽のプロフィールを疑うそぶりも見せず 

 「へえ、すごいねえ」とか

 「モテるでしょ」とか

女子中学生特有の自分で作った可愛らしい顔文字を これでもか これでもかっていうくらい使ってくれます

 とにかく持ち上げてくれるので、僕も気分が いいです〔俺のターン〕

 この調子なら 少しづつ会話の流れを エロい方向へ持っていけば〔頭のなかはすでに桃色桃源郷ですw〕


そして、僕はタイミングを見計らって彼女にこう言いました

 「おっぱい大きいの?」

 最初、彼女は少し戸惑っていたのか〔なにせ田舎育ちの純粋娘ですから〔僕の想像〕次の書き込みが ありません


 2,3分後 業を煮やした僕が

 「どうしたの?」と声をかけ、すぐ「ごめん」と謝りました


 すると‥  彼女は‥


 「ぷっ〔顔文字〕」

 「ぷはははは顔文字」 で

  
 僕は てっきり彼女は僕の言葉を冗談で言ったと思い笑いで返してくれたんだと思いました

 正直僕は ほっとしました


 が、しかし 次の彼女の言葉を聞いて 僕は全身の血の気が さっと引きました‥


 彼女は「これってセクハラだよね?」

 彼女「いまの発言ログ取ってるから覚悟しとけよぅ」  〔彼女のターン〕


 僕はもう何が何だか分からなくなって 夢なら早く覚めて欲しいと願いました

 そして すぐに PCのlanケーブルを乱暴に引っぱって ぶち抜きました


 さあ、これで大丈夫です

 みなさんも 気を付けてくださいね

 子供だと思って 舐めてかかると 僕のような目に逢いますから‥

 その後、僕が布団のなかにうずくまり まるで雨の日に線路脇に捨てられていた子犬が 介抱むなしく数日後に死んだときと同じくらいに 大泣きしたのは内緒って事にしといて下さい