出崎統の源流としての杉井ギサブロー〜出崎・ウテナ・哀しみのベラドンナ


akitaさんのところでいきなりベラドンナの名前を出しても、
そりゃあ、俺の世界での常識は伝わらないよなぁということで書いてみる


杉井ギサブローという演出家がいる。
有名作品は「タッチ」とか
最近だと「あらしのよるに」とか


いまだにバリバリの現役のアニメ監督だが、
虫プロの創設メンバーとして
戦後アニメの最初期から活躍している人物でもある。
そんな虫プロに入ったのが出崎だ。


虫プロの採用は応募約500人に対して合格3人というとてつもない狭き門。
そこで出崎を合格させたのが杉井だという有名なエピソードがある。
杉井は出崎の貸本漫画を読んでおり、
出崎の採用を強く推したという。


その後の杉井ー出崎は師弟のような関係になる。
出崎が演出というものを始めたのも
この杉井の会社・アートフレッシュに移ってからのこと。
アートフレッシュで出崎は
杉井監督作品である「悟空の大冒険」や「どろろ」でその演出としての才能を開花させていく。


特に「どろろ」は凄い



ぜひ映像を見てもらいたいが、
出崎作品への多い金春智子さんの
http://www.style.fm/as/06_review/dvdnavi07.shtml

グダさんのどろろ
http://d.hatena.ne.jp/nuryouguda/20081013/1223826125
などを参考においておこう。


この出崎統の師匠とも言える杉井ギサブロー
一つの到達点が「アニメラマ三部作」
特に最後の作品である「哀しみのベラドンナ
だ。


かつてアニメスタイル主催で
ベラドンナインパクトのあるシーンを抜粋で放映したら
そのほとんどが杉井の担当パートだったということがあった。


アニメラマというシリーズ自体がそうであるのに加えて、
まさに「映像の原則の破壊」とも言うべき表現の数々が
アニメラマ三部作の杉井パートにはある。
ウテナを見ても、幾原が影響を受けたのは杉井パートの部分が多いだろうなぁ
というのが分かる。
それくらいのインパクト。
そのイメージの奔放さは後の出崎統・幾原・新房と比べても
勝っているのではないかと思わせるものがある。


だが出崎統の師匠・「元祖破壊者」としての杉井ギサブロー
この作品が最後となる。
杉井は70年代前半から10年間ほど日本放浪の旅に出てしまう。
>杉井さんなりに創作活動に対する限界を感じての、漂泊だった。
という。
破壊者としての限界を感じたともいえるかもしれない。


また、この時期はちょうど出崎統の全盛期と重なるのも面白い。
しかも出崎は杉井の帰ってくる80年代後半には、
海外作品がメインとなって日本のアニメ界からは姿を消してしまう。
アニメ史の偶然か必然か。


帰ってきた80年代以降の作品は以前に比べて「破壊者」の色は薄まった。
破壊と再生の両方を兼ね備えたともいえるが、
その中でも「破壊者・杉井」を感じさせるアニメ作品に
銀河鉄道の夜」という作品がある。