琴浦さんの能力に対する仮説と分析

先日ustに突撃したnishi51さんの
http://togetter.com/li/452235
が非常に面白かった。


何が面白いのか、といえば、
この中に琴浦さんの能力の正体を読み解く鍵が色々と詰まっているからだ。


気になった部分を簡単にまとめると
琴浦さんの能力は、おそらく心の表面のみを読む能力
琴浦さんはゲスな人間の心には触れていないように思う
 その証拠として、真鍋の妄想程度で「エロス」などと言っている。


設定に対する違和感というのは、
設定を読み解くために非常に有効な手がかりだ。
これを元に琴浦さんの能力の謎に迫ってみよう。


●超能力に対する前提
まず、前提として超能力に対するオーソドックスなものを仮定する。
それは
・人間の脳は普段はその極一部分しか使用されず、
 残りの部分を使えることで、超能力が目覚める。


まあ、設定的にはありがちなSF的な嘘ですね。
とりあえずこれを出発点にしましょう。


では、琴浦さんは脳のどの部分を使っているのか。
それについては、
ミラーニューロン」という言葉を使っている人がいて、
なるほどと思ったので、それに倣おう。


ミラーニューロン
wikipedeia
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%B3)
簡単に言うと、
「他の個体の行動を見て、まるで自身が同じ行動を
とっているかのように"鏡"のような反応をする」脳の神経細胞である


例えば、笑っている人を見るとその人の楽しい気分が想起されるのは
ミラーニューロンのおかげだし、
逆に痛々しい傷を見たときに、自分があたかも痛い想いをしたかの様に感じるのも
ミラーニューロンが、他人の痛みを鏡のようにコピーしているからだ。


この脳の機能が高度に進化するとどうなるか。
擬似的に「他人の心が読める」ようになるだろう。


つまり、その外見、仕草、雰囲気、息遣いなどを元に
ミラーニューロンがそこから考えをコピーして
他人の考えを再現するということだ。
(幽白の柳沢がコピー能力で他人の思考を読んでいたのに近い)


なので、厳密にはこれは「心を読んでる」わけではない
「他人の心をコピーしている」だけなのだ。


●脳の再現力の限界
しかし、ミラーニューロンの再現には限界があるという。
それは
自分が経験していないことについての再現力が落ちる」ということだ。


スタンフォード自分を変える教室」によれば、
他人がタバコを吸っているのを見て、自分もタバコが吸いたくなるのは、
「過去にタバコを吸ったことがある人」にのみある傾向であるのだそうだ。


タバコを吸ったことがある人は、他人のタバコを見て、
過去のその経験を再現できるが、吸ったことがない人はそれが出来ない。
同様に、経験や知識がないことに対しては、
スーパーミラーニューロンを持った琴浦さんといえど、再現することは出来ないのだ。


琴浦さんに適用
上記のミラーニューロン進化仮説を琴浦さんに適用してみよう。


まず、冒頭のnishiさんの違和感にはこれで説明がつく。
彼女はあくまで他人の心を外見情報からコピーしているだけなので、
深層心理は読めないし、正確に他人の心を読むことも出来ない。


また、琴浦さんが経験したこと、あるいは知識として知っていることしか
他人の心を再現できないので、
あたかも「変態な人間はいない」かのように見える。
ロリコンレイパーの心理が読めないのは、
琴浦さんロリコンでもなければ、レイプ経験もないからだ、と言える。


琴浦さんの読んでいる真鍋の妄想が中学生レベルなのも、
彼女の性知識がまだ中学生レベルだからなのだろう。


なので、琴浦さんに「汚いこと」を教え込みたいなら錦糸町に連れて行くだけじゃ駄目で、
その身でレイプを体験していただくとか、
幽遊白書の「黒の章」を見てもらうとかしないといけないわけです。

●1話のアバンとミラーニューロン
上記仮説を1話アバンの描写と照らし合わせていこう


例えば、じゃんけん。
これは外見から判断するのは非常に簡単だ。
実際にもじゃんけんのテクニックとして、
「力が篭れば篭るほど、人間はグーを出しやすくなり、
手の形が複雑なチョキは出しにくくなる」というのがある。
この読みをもっと高度にやれば、その手や腕の筋肉から
何を出すかを読むのは容易だろう。


女の子が誰が好きかというのも、
事前の情報があれば、まさに「顔を見ればわかる」だろうし、
コーヒーじゃなくて紅茶が飲みたいというのも
「父親の言いよどみ」と「父親の好み」が分かれば容易だ。



また、再現の限界の部分についても、
両親の不倫のシーンで
「パパ、アキコさんとホテル行くの?」と言っていて、
ホテルに言った後にするであろう、セックスのことについては
読めていないようだ。



これは、「ホテルに行く」という事柄については幼稚園児にも知識があるが、
セックスについての知識はないから、それを表現できなかったと言える。


●動物の心が読めない
また、動物の心が読めないというのも特徴的な設定だ。
テレパシー設定では動物の心を読むことが出来る場合が多々あるが、
琴浦さんはそれが出来ない。


これはミラーニューロン仮説的には、
琴浦さんが猫になった経験もなければ、猫の気持ちと外見に関する知識も乏しかったため、
その心を再現出来なかったといえる。
(もし、琴浦さんが雑誌「猫のきもち」を読み込んだら、猫の心を読めるようになるかもw)

●二人羽織による失敗。
また、二人羽織をして占いをしたときの描写についても思い出してほしい。
彼女は部長の後ろで、相手がよく見えないまま占いを行い失敗している。


そしてこの失敗について「見えないので狙いが」と弁解している。
これも、もし一般的なテレパシー能力であればおかしな話で、
占いを受けてるものの「私は占いを受けている」みたいな心を読めば、
「姿が見える」必要はない。


これはミラーニューロン仮説なら説明でき、
相手を見えないことで、「気配」みたいなものでしか
ミラーニューロンが働かず、そのコピー能力が正常に機能しなかったのだ。


琴浦さんの能力が視覚に大きく依存していることは、
1話アバンでの男の「こっちを見た!心を読まれるぞ」でも表現されている。
細かい描写はないが、この台詞から、
周りの子たちは経験的に琴浦さんの能力」と「見ること」に関連性があることを
把握していることが伺える。




●真鍋との出会い
最後にミラーニューロン仮説による真鍋との出会いの解釈を述べよう。


あの意味不明な紫色の生物の妄想は何を表現しているかといえば、
彼女が真鍋の心をコピーすることに失敗し、
ミラーニューロンが暴走したことを表しているのだ。


つまり、あれは真鍋が考えたことでなく、
琴浦さんの脳の暴走が生み出した幻想なのだ。
琴浦さんは「自分に対する嫌悪」ばかりをコピーしていたせいで、それに慣れ
真鍋の「自分に対する無関心」へのコピーに慣れていなかった結果、
ミラーニューロンが正しく機能せず暴走した。


そして、脳が暴走している琴浦さんに対して
彼は琴浦さんにとって「意外」なことを言う。
「えっ君、誰?」
そして、彼女の脳はさらに暴走し、爆発して
世界の認識の仕方が変わったのだ。
あの世界が割れる演出は脳の暴走によるブレイクスルーなのだ。



●楽しい仮説ゴッコ
こんな感じで、琴浦さんの能力についての仮説を立ててみた。
勿論仮設に過ぎないが、
こういう設定の分析はなかなかに楽しいものだし、
また、新しい見方も出来てよい。
琴浦さんがなぜ森谷さんにあんなに好意を寄せているかも、
この仮説で大体説明できるし、
琴浦さんの「自意識過剰っぷり」も
心を読むという行為があくまで「他人の主観的なコピー」でしかないのだったら
当然の性質とも言える。


そして、アニメを見ている私たちの脳でもミラーニューロンが働いており・・・
という話は長くなってしまったのでまた今度にしよう。