あいうら11話のあれは、ただのカメラマップではなく、多段背景(あるいはキャラ奥ブック)のフォロー

だ、というのが、審美眼に難ありの私の結論です。

問題のカット↓



まず、注目してほしいのは、この電柱

電柱のポイントは


1、電柱はそれより後ろの背景と独立した動きをしている
 (=電柱の隠れる背景も全部描いてある)
2、電柱は拡大しながらフォローしている。


ということです。
つまり、カメラマッピングで動いているように見せてるのではなく、
明らかに「背景の前を動いている」のです。
これは、一種のブックでしょう。
本来、ブックとは「キャラクター(=セル)の前にある背景美術」なのですが、
この場合は、間にセルを挟まずに、
背景美術が多段になっていると考えられるわけです。


この背景多段を感じさせるものとしては左側の石垣も同様です。


カット頭では、「見えていない部分」がカット尻では見えています。
カメラマッピングでは、「CGガイド」にしたがって絵を「引き伸ばす」ことは出来ますが、
描いてない部分を見せることは出来ません。


つまり、手前の石垣と奥の石垣も独立した背景美術だと見ることが出来ます。



こう見ていくと、ブックとして独立している背景は
1、電柱2本
2、左手前の石垣
3、右手前の石垣
4、アジサイや階段のある中景の石垣と右の奥の石垣
(5、一番奥の背景)


の5つとなっていると考えられる。
これらをそれぞれ拡大しながら動かしているわけだ。
(その上にキャラと傘をさらに重ねている)


そして、その拡大やフォローの速度をそれぞれ変えていて、
カメラマッピング的なことをやっているとしたら、
この部分だろう。
つまり、拡大具合とフォローのコントロール
CGガイドで行っている可能性がある。


あるいは、これを前回の記事にあった、「パース定規」でやっているとしたら、
それはそれで神業だ。



私が最初に感じた違和感、それは「背景がブック化している」ということだったのだ。
しかも、その背景はキャラクターよりも後ろにいる。
ブックとは本来、背景美術を表紙と見立てて「セルを挟む」からブック(=本)なのだが、
これはもはやセルを挟んでいない。
背景を背景で挟んでいるのだ。
もはやブックと呼んでいいのかわからないが、
デジタルコンポジットならではの表現であることは間違いない。


この視点で見ると2話の、

これなんかも、机がそれぞれブックになっていて、その中にセルが入りこむような
相当複雑なことをやっているのではないか、と思わずにはいられないが、
時間が遅くなってしまったので今日はこの辺で。