アメリカは『正常』に戻るのか?

アメリカさんちにとっての伝統的な『正常』思想。


米国債 初の格下げ S&PがAA+に 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
ありゃー、アメリカとうとう下げられちゃったか……(AA略。ということで一つ。まぁ実際にどう影響があるか、というよりは確かにその象徴的な意味の方が大きいんだろうなぁと。われらが日本のように気にしなくたって別にどうとでも生きていけてはいるんだし。ぶっちゃければ「もうその道は日本がかつて通った道だ」感。ついでにいえば格付け会社なんて以下略
ともあれそんな象徴的な意味という点において、これでまたアメリカが『正常に戻る』理由の一つができちゃったなぁと、少しカオスな未来を考えてしまうわけであります。

やめて下さい『正常』なんかに戻らないで下さいポジションな私たち

さて先日、日本の防衛白書が発表されたんですよね。
防衛白書、「中国は高圧的」と強い懸念示す : 政治 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
へー、中国さんが怒ってるんですって。でもここ数年は毎年中国脅威論やってる気がするので、まぁそろそろ慣れてくるんじゃないでしょうか。で、実際それが全て中国向けかと言うとそうでもないですよね。
どちらかというと一貫してそれはアメリカ向けであって、日本はこんなに頑張ってますので是非ともアメリカさんもご協力お願いします。でないと中国がヤバイよ? とも訴えているわけです。そんな態度を確かにアメリカ追従と非難することはできるんだけど、でもそうやって地道な努力をしないとあいつら本当に帰っちゃうから。アメリカさんに帰られたらマジどうしようもない、という危機感がそこにあるわけです。
よく「善意による覇権(笑)」とか「帝国主義」とか揶揄されるアメリカさんなんですけども、それって伝統的なアメリカの立場であるとは決して言えないんですよね。
つまるところ、彼らはほっとくとすぐ『正常』に戻ろうとする。自分の国さえ良ければそれでいい。自分の周りの社会さえ平和ならばそれでいい。自分さえ良ければそれでいい。まるでどっかの島国のようです。まぁ小さな政府大好きな人びとの当然の帰結ではありますが。


アメリカさんちの伝統的勢力 - maukitiの日記
でも書きましたけど、現実にアメリカはそうやっていつだって隙あらば正常=孤立主義に回帰しようとしてきたわけです。
それは19世紀のモンロー主義であり、そしてWWⅠ後のアメリカで「正常に戻れ」と唱えられ、WWⅡは引き篭もろうとしたら冷戦が始まっちゃってズルズルやって、そして冷戦後もやっぱり「アメリカは正常に戻るべきだ」なんて唱えられた結果ユーゴ内戦への介入で見られるような綱引きが行なわれていたわけです*1。その後9.11が起きて次はズルズルと一連の対テロ戦争に巻き込まれることになって、最近になってようやくビンラディンさんも殺してようやく一息つくことになった。
だからネオコンな人びとに見られるような積極的な外交政策って、そうした傾向に対する為に必要な反作用の強さでもあるんですよね。強い理由がなければ彼らは動かない。孤立主義の逆側に引っ張る為に、より強い力・態度でそれを推進しなければならないのだと。まぁそれに振り回される諸外国の人々にとってはいい迷惑な話ではありますけど。


そんなこんなで、ようやく再びアメリカに「正常に戻る」チャンスがまた到来したわけです。
おめでとう、アメリカの伝統的な外交政策を支持する人たち。大変ですね、東アジアの安全保障を考える人たち。
そして一連のアメリカの経済危機は確実にそんなアメリカの『正常』に戻ろうとする機運を後押しすることでしょう。軍事費なんて無駄な金を使っている余裕はないと。確かにその方がアメリカ自身にとっては幸せなのかもしれないけども、しかしアメリカに安全保障を依存している人びとにとっては必ずしも諸手を挙げて賛成できる事態では当然ないわけです。


そんなアメリカさんちの『正常』への回帰なお話でした。