農業と自由貿易と民主主義

勝っても負けてもダイジョーブ。


農協がTPPに反対する本当の理由 農業人口250万人なのに異様な政治力 WEDGE Infinity(ウェッジ)
ということで――是非はともかく――動き出したTPP参加についてのお話。で、例の如く農業方面の皆さまが大反対をしていると。しかしまぁ特に先進国であればほとんど何処の国であろうがありふれた風景ではありますよね。アメリカだろうがヨーロッパだろうが、貿易自由化の際には絶対に農業分野が頑強に抵抗しようとする。
なのでまぁこの点をして、TPP反対論を推そうとするのは正直あまり筋がよろしくないのではないかと思うんですよね。だってある意味では、そんな反対のやり方は想定の範囲内であり、規定路線でもあるわけだから。どこの国だろうと農家が反対しないわけがない。日本だけが特別なわけでは決してないのです。だからこそ、逆説的にそのハードルを突破する為のノウハウだって既にあるわけで。


――つまり、農家に直接お金をバラまくことによって。


少なくない農業関連の人たちは既におそらくそろばんをはじいていることでしょう。もちろんそれが全てだとはまったく言いませんが、その補償金を釣り上げるために、彼らはその危機をより煽る。そうすれば結果的に「負けたとしても」TPP加盟後に必ず出るであろう農家への補償額を釣り上げることが出来るから。
そしてまぁ上記リンク先でも語られているように、こうして直接にカネが関わるからこそ、その『農業票』は強力であるのです。
民主主義の下での少数派の勝利 - maukitiの日記
かなり昔の日記でも書きましたけど、まぁ当たり前の話ではありますよね。何故少なくない私たちが選挙に興味がないのかって、そりゃ直接に解りやすい形での「メリットが無い」からです。もしあったとしても一人の市民にとっては限りなく小さい。私たちは多数派であるからこそ、一人あたりのメリットもデメリットも小さい。だからこそ「何も変わらないから」と選挙に興味がもとうとしない人たちは(少なくとも短期的には)確かに合理的ではあるのです。
しかしこうした少数派たる農業関連の人たちにとってはそうではないのです。直接的で目に見える形での補償金の高低は、彼らを積極的な投票活動を決意させるのには十分すぎるメリットだから。
もちろん数であれば「非」農業関係者の方が圧倒的大多数でしょう。しかし少数派である農業関係者たちは一つの明確な目的の下に結集し、つまり明確な意思をもって、選挙で『票』を動かすことができる。一方でそんな共通の目的意識など持たない圧倒的大多数は、メリットもない故に、選挙ではしばしば「烏合の衆」となるのです。
小よく大を制す。まぁ物語的には大変美しい光景ではありますよね。
いやぁみんしゅしゅぎってすばらしいなぁ。




ともあれ、結局はその農家に(現在でも既に減反などの補償金として)支払われている金も、そしてTPP参加後に支払われるだろう(色々と迂回された形での)直接補償も、どちらにしても私たちの税金であるわけで。

 米価は減反政策によって維持されている。現在、年約2000億円、累計総額8兆円の補助金が、税金から支払われている。国民は納税者として補助金を負担したうえで、消費者として高い米価を負担している。減反参加を受給要件とした戸別所得補償を合わせると、国民負担は毎年1兆円に上る。

農協がTPPに反対する本当の理由 農業人口250万人なのに異様な政治力 WEDGE Infinity(ウェッジ)

そして、おそらく、もしTPP加盟が決まるとなるとその国民負担は、なんだかんだで変わらないか、あるいは増えることになるでしょう。だってより多くお金を積めば積むほどTPP反対の農業の人たちを説得しやすくなるだろうから。
なのでむしろTPP反対論者の皆さまは「農業崩壊」を云々するよりもそちらの方を批判すべきではないかなぁと。「TPP参加したら補助金が増大するからけしからん!」とか。


ということでこうした農業の面だけを見ると、結局どちらにしても税金が使われるんだから、農業以外にはメリットのあるだろうTPPに参加してもいいのではないか、と個人的には思ったりします。もちろんそれ以外にも色々あったりなかったりするので一概にこの意見が正しいと言う気もありませんが。
みなさんはいかがお考えでしょうか?