「利益のためなら(従業員は)死んでもいい」という経営者たちと、「安さのためなら(従業員は)死んでもいい」という消費者たち

共犯関係にある私たち。



朝日新聞デジタル:「年収100万円も仕方ない」ユニクロ柳井会長に聞く - 経済・マネー
ということでユニクロ会長の愉快なお言葉。

――いまの離職率が高いのはどう考えていますか。

 「それはグローバル化の問題だ。10年前から社員にもいってきた。将来は、年収1億円か100万円に分かれて、中間層が減っていく。仕事を通じて付加価値がつけられないと、低賃金で働く途上国の人の賃金にフラット化するので、年収100万円のほうになっていくのは仕方がない」

朝日新聞デジタル:「年収100万円も仕方ない」ユニクロ柳井会長に聞く - 経済・マネー

しかしまぁこの刺激的なタイトルはともかくとして、よく見れば、彼のこの現状認識がそこまで間違っているのかというと、別にそんなことないんですよね。
利益を出すか――成長するか、それが出来ないのならば死ぬしかない。グロウオアダイ。みんな大好きな「競争」というグローバルな世界における唯一絶対の法。それは労働者にとってそうであるように、企業自身にも当てはまるのです。故に走り続けるしかない。やっぱりおおむね間違っていませんよね。それを「敢えて」「わざわざ」こうして公言してしまうことこそが、彼の彼らしい、ユニクロという企業のユニクロらしさということなのかもしれませんが。
みんな(そこをぶっちゃけてしまうと非難されると)解っているから黙っているのに、何故かこうして堂々と公言してみせるひと。とってもWTF


結局のところ、従業員の給料はその従業員がどれだけの価値を生み出せるかに掛かっているのです。価値を生み出せないのに従業員に給料を出せるわけがない。特にアパレル業界なんてそれが難しいのは明白ですよね。後に続こうとする貧しい国の人たちが一杯居るんだから。
その意味で、このユニクロの会長だけを批判しても仕方のないことではあるんです。だって彼は既存のルールに従っているだけなのだから。
もちろん、ユニクロで買わないことでその反感を示すことだって出来るでしょう。
――じゃあそれでこの会長の元で苦しむ従業員が減るかというとそんなことない。いやまぁ、採算悪化に伴うリストラによって減る可能性はありますけども。目的を達成していると言えないこともなくはない。


ただその代わりに、ユニクロと同じような安い商品を買っていたら、結果的に何も変わらないのが悲しい所ではあります。
おそらく、もしそのユニクロ不買が成功したとしても、同業界の他の経営者たちが学ぶことは「彼のようにバカなことを公で言わないようにしよう」というあたりでしかないでしょう。結局の所「大衆向け」で「安売り」をウリとするお店でそれを買っている限り、根本的な構図としては何も変わらない。消費者の知恵でもある、安くて良いものを買う、というのはつまりそういうことなんだから。
かくして、石を投げて良いのはユニクロだけでなく他の安価な衣服をも買ったことがない金持ちたちだけ、という大変愉快なお話になってしまう。


経営者たちが低賃金の労働者たちを食い物にしているように、私たち消費者は低賃金の労働者を食い物にしている。
もちろんこうしたことが正しいわけでは決してありません。しかしだからといって、前者だけを批判して後者を無視するのは、この歪んだ現状の打開にはまったく役には立ちませんよね。


みなさんはいかがお考えでしょうか?