「あの素晴らしい商店街をもう一度」を社会は守るべきなのか?

その正義の度合いについて。


なぜか最近ショッピングモール論(イオン論)やアマゾン論が目に付いたのでまとめとリンク集作る。 - QUIET & COLORFUL PLACE- AT I, D.
イオンモールは文化の破壊か?向上か?…「ショッピングモール論」まとめ - Togetter
ということで、巨大ショッピングモール出店に伴う地元商店街衰退に関しての、面白いお話を見たので、以下いつもどおり適当な雑感。

最近、自分のTLやはてなブックマークで「ショッピングモール論」(イオン論)が目に付くようになりました。これは「イオニスト」という言葉がどこかのメディアに出てきたことなどがきっかけ?のようです。
かねてからショッピングモールは「地方の独自性や文化、中小店の経営を破壊する」という批判の一方「こういう形でないと書店も映画館も地方では生き残れない」などの肯定論もあります。この議論に最近、興味深い論考が多かったので仮まとめをしました。

イオンモールは文化の破壊か?向上か?…「ショッピングモール論」まとめ - Togetter

まぁこの辺りの文化か否か、というお話については、結局のところその先に「そんな人生観を私たちは――税金や法規制といったコストを払ってまで――保護するべきなのか?」という議論に行き着くのだろうなぁと。



まぁ公平に見ればどちらの言い分もそれなりにわかるお話ではあるのです。かつての時代にあったような地元商店街と地元住民が一体化したような「暖かい」地域社会というものに、憧れる気持ちは解らなくはありません。それを『文化』と呼ぶべきかどうかは置いておくとしても、そうした古き良き価値観を支持する人がかなりの数居ることは確実でしょう。
一方で、そうした地域社会に息苦しさを、そして何よりより「安く」て「品ぞろえ豊富」で「(ある程度まで)都市風に洗練された」お店を求める人々だって当然居るわけで。そして現状では、少なくとも完全な自由競争の状態下においては、こちらが勝者となるのはまず間違いないと言っていいでしょう。

「誰だって安くて品数豊富な店で買い物したいに決まってるじゃん」
「私だって産まれて16年 商店街で買い物したことなんかねーし」
「ちょっと当たった機ぐるみ効果にすがってるような こんなクソ商店街が復活するわけねえだろ」
「ばーか 滅びろ商店街!」

イオンモールは文化の破壊か?向上か?…「ショッピングモール論」まとめ - Togetter

ここまでぶっちゃけるのは露悪的なネタですけども、しかし概ね本質をついていますよね。前述した古風な価値観にコミットしないのであれば、そう考えるのも当然なんですよ。しかしそうではない人たちもやっぱりいる。
少なくない人々は古き良き地元商店街の衰退を嘆く。それはまぁ私たち日本だけではなく先進国であればほとんど世界中で見られる、当然の帰結であります。その上で、一部の国あるいは一部の地方自治体では、実際そうした大型店舗の出店を規制し建設を許可しなかったりしてきたし、また現在でも尚その規制を続けている所もあったりする。私たち日本に『大店法』があったように、アメリカにも『ロビンソン・パットマン法*1』なんてものがあったりして、かつての私たちはある程度までの負担するコストが増えることを承知でそれを守ってきた。
商店街の衰退って古今東西、結局そういうことなのです。
つまり、かつてあった商店街の衰退を嘆き、どうにかしたいと考えるのならば必ずここに行き当たる。私たちは現在でも尚、もしそれを保護しようとするならば――「それは地元住民が負担すべきコストで別の場所に住む俺たちが知ったことではない」なんて言うのならば別ですが――一体どの程度までなら追加のコストを支払ってもいいと考えているのか?
つまり私たちが民主主義社会における市民として問われているのは「その価値観は私たちが社会全体で守るべきものなのか?」ということなのです。だからこうした文化か否か論争は完全にポジショントークである、と完全に言い切ることはしませんけども、しかしそうした面は少なからずあると思うんですよね。


「それは重要な価値観である以上、私たちは社会(税金を使って)で保護するべきである」
「それは重要な価値観なんかではない以上、私たちは敢えて社会(税金を使って)で保護するべきではない」


結局こういうお話になるのかなぁと。私たちは古き良き商店街を追加のコストを支払ってまで、それこそ旧大店法や、あるいはロビンソン=パットマン法を使ってまで「保護」していくべきなのか?
みなさんはいかがお考えでしょうか?

*1:反トラスト法の一部。卸売業者が小売業者に対して、同一価格で売ることを義務付けるもの。ただ、現在ではそれを回避する為のPB商品や、そもそも裁判所がそれを全面的に認める判決を出すことは少なく「事実上」機能していない。らしい。詳しい人優しく教えてください。