私たちも総力戦というこの世界に片隅に

ホントのことを言ってはいけないパターン。



北朝鮮国民「餓死させないと」=石川知事が会合で発言:時事ドットコム
知事「北朝鮮餓死を」発言撤回| ロイター
うーん、まぁ、そうね。身も蓋もない真実を言っているとは思いますけども、でも公にそれを口にしてしまうのはダメだよねパターンかなぁ。

 石川県の谷本正憲知事は21日、金沢市内で行われた県内町長らとの会合で、北朝鮮による弾道ミサイル発射に関し「(県内の)北陸電力志賀原発を狙う暴挙をするなら、兵糧攻めにして北朝鮮の国民を餓死させなければならない」と発言した。制裁強化の必要性を強調したものだが、物議を醸しそうだ。

http://www.jiji.com/jc/article?k=2017062101167&g=prk

知っているか知らないままでいるか、あるいは是か非かは別として、経済制裁が特に当該国国民生活へダメージを与えるのは明らかでもあるわけですよね。なのでより正確に言えばこれまでも「既に」経済制裁を続けてきた私たちは「既に」北朝鮮国民が餓死していることに半ば手を貸している、のは確実でしょう。本邦でも万景峰号を巡る騒動でもあったように、特に北朝鮮シンパ――とまでは言わないものの現地と繋がりを持つ人たちがそれを非難していたのは、必ずしも間違っているわけじゃないんですよね。
その経済制裁はまず間違いなく国民へのダメージとなる。それを否定する人がいるなら、むしろその人こそウソツキでしょう。



経済制裁の正しい使いかた - maukitiの日記
この辺のお話はつい先日も書いたお話でもありまして。

皮肉なお話ではありますが、つまり『経済制裁』とは権力者より民衆を痛めつけるモノであり、更には孤立国家よりも他国と協力しながら発展を目指す平和国家(民主主義国家であれば尚いい)であればあるほど有効となる。

経済制裁の正しい使いかた - maukitiの日記

もちろん「核兵器開発阻止のために」という大義名分こそありますけども、結局のところ、現代の軍事独裁国家たちはほとんどすべての資源を軍事目的に向けているのも事実でしょう。
というより総力戦の概念が理解された100年前から、戦時中のそうした考え方はほとんど一般的となった。その結果『戦争』とは単純な物理的衝突だけでなく、国家及び国民全体を巻き込んだ経済的・心理的消耗を狙う攻囲戦、という側面も持つようになったわけであります。つまり総力戦である、と。
――逆説的に、だからこそ、「戦争による社会全体の効率化(女性参政権や富の平等化)」が進むという愉快な結果が生まれたりするわけですけど。


狭義の意味で純粋な軍事施設ではない発電所を狙うのも、逆に狭義の意味で核開発に関わっていない一般国民を巻き込む形で経済制裁するのも、悲しいかな目的達成という面ではそこまで間違っていない。
まったくもって殺伐とした世紀末な世界観ではありますよね。


でもまぁそうしているのはもちろん私たちだけではなく、こんなことはヨーロッパやアメリカの現状を見ても一目瞭然ではあります。まさに彼らは対テロ戦争の一環として、ただ軍事施設や政権中枢に関連した場所だけでなく、市場や駅や繁華街やスタジアム等々ソフトターゲットが狙われるようになって久しい。何故ならそうやって相手国民の心理的動揺を誘うことは戦争勝利に近づくことになるし、反対にそうやって国民たちに弱さから目を背けさせ政治家が鼓舞することは長期的な戦争勝利に繋がるから。


街中で重武装された兵士や警察に守られるようになった彼らが半ば常在戦場という世界に足を踏み入れかけているように、まったく無関係な私たち日本でも現代の総力戦という世界の片隅に生きているの変わらない。それを空気読まずに改めて教えてくれる珍発言という感じだよね。


がんばれ国民たち。