説得力とは言葉の中身ではなく人柄

いつもの「にんげんだものしかたないよね」案件。



前川喜平氏の「出会い系バー通い」の真相 吉田豪氏「言い分は8割方正しい」 - ライブドアニュース
8割てなんやねん。
本題であるモリ及び『カケ』のお話は散々どったんばったん大騒ぎしたのでさて置くとして、しかしまぁそうした本題が「出会い系バー通い」報道でかなりミソがついてしまったのはやっぱり事実ではあるのでしょうね。これが無ければもっと盛り上がっていたのは、おそらく、間違いない。
その意味でいうと、上記読売がかなり政府と近い所にあるのも間違いない。権力監視とは一体何だったのか。ただ一方で、そうした(読売あるいはワシントンポストのような)ポジションは逆説的に、フェイクニュース及びオルタナティブ・ファクトという現代マスコミ議論で最重要であろうテーマにおいて、むしろ「信頼できる情報源」と近いところに居るということの証左でもある。だから簡単には割り切れずむつかしいお話なんですよね。情報の信頼性と政府権力の監視は、かなりの面でジレンマに陥ることになる。

 昨年5月に前川氏の出会い系バー通いについて報じた読売新聞はさらに6月3日付の朝刊で、「教育行政トップの人物が違法行為が疑われるような店に出入りすることは不適切であり、公共の関心事であり公益目的にかなう」と、この報道に意義があると主張した。

 前川氏は「読売新聞に報道が出たのが5月22日。その3日くらい前から読売新聞からアプローチがあったが、まさか書くまいと思っていた。そうしたら5月21日に官邸にいる総理補佐官の方から間接的に『会って話がしたい』という趣旨に受け取れるような打診があった。僕は『お前の嫌なことを書かれたくなかったらしゃべるな』あるいは『しゃべったことを取り消せ』という一種の取引かなと思っていた。そういうことがなければちょっと考えられない。元々私の個人的な行動だが、それをほじくってどうするのか」と異を唱えた。

前川喜平氏の「出会い系バー通い」の真相 吉田豪氏「言い分は8割方正しい」 - ライブドアニュース

さて置き今日の日記の本題。前川さんはかなりウブなことを仰って韜晦していますけども、やろうとした意図は簡単に理解できますよね。それこそ今回標的となった安倍さんへも政権批判として日常的に行われている行為でもある。
――発言内容ではなく、発言者自体の信頼性および影響力を貶めたい。
発言内容に反論するのが第一戦略とすれば、第二戦略は発言者の品位を貶めることである。これは例えば裁判のような公議論から、私たちが便所の落書きで言い争うインターネット世界まで、人間社会ならほとんどどこでも通用する弁論における基本戦略でしょう。ある人の過去の発言や行動をほじくり返して「過去こいつは〇〇なんてことを言っていた!」とやって相手の信頼性を貶めるのは、ネット議論では初歩中の初歩ですらある。
だからTwitterなんかで稀によく見るダイガクキョージュのような人たちが「匿名はひきょうだ!」と苦し紛れに叫ぶのはちょっと理解できるんですよね。何故なら相手が匿名であれば、発言内容ではなく相手の発言者そのものへの攻撃というもう一つの基本戦略を用いることができないから。その時点で語るに落ちているだろうというと身も蓋もありませんけど。



ともあれ、こうした「発言者を貶める」手法をまさに全世界規模でやっているのが現代アメリカのCIAやNSAといった諜報分野でしょう。
ビンラディンの「AVコレクション」が騒がれる理由 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
ビンラディンさんの私生活暴露なやり口を見ても明らかで、

2011年にこのニュースが大きく騒がれた際、スレート誌のジャーナリスト、ウィリアム・サレタンが世論調査を元に指摘したことだが、ビンラディンに共鳴する人や信奉者は、民間人に対する自爆テロよりも「ポルノや姦通、男女平等」により嫌悪感を示す傾向にある。

こうした人々にとっては、欧米社会がビンラディンを「テロリスト」と批判したところで説得力を持たない。それよりも、彼を「豪邸に住み、自身のビデオ映りをよくするために髭を染め、米軍に撃たれそうになったら女性の後ろに隠れた、ポルノ愛好家だ」と描写するほうがよっぽど効果的だ、とサレタンは書いた。

一方でサレタンは、「3人の妻と一緒に暮らす54歳の狂信者というのは、隠れ家の中でポルノを最も観そうにない人物だ。このストーリーは論理的に破綻している。しかし政治的には、完璧なのだ」とも付け加えた(ビンラディンは3人の妻や子供たち、複数の側近と暮らしていた)

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最近では機密暴露で『アメリカの敵』となったマニングさんやスノーデンさんにも用いられた手法ではあります。「公の態度とは裏腹に、実は彼らはプライベートでは〇〇だったんやで!wwww」なんて。だからこそ(アメリカや中国といった)全方位の個人情報収集という政策が恐ろしいワケでもあります。何故なら、ほとんどそのまま「いざ」という時にこうして暴露されてしまうから。
かくしてその相手がテロリストだけでなく、政敵やジャーナリストや人権活動家に広がりつつあるのは、まぁ当然の帰結というしかない。
でも仕方ないよね。だってそれが他ならぬ「私たちに」有効なんだもん。
私たちは受け取ったメッセージだけでその説得力を判断するのではなく、かなりの面で発言者の信頼性と評判によって判断する。実際それはかなり合理的ではあるんですよ。だって発言内容そのものだけで判断するには、究極的には無限に専門知識が必要となる。そうしたある種のフレーム問題を私たちは発言者の方を評価することで回避することできている。にんげんの知恵ってすばらしいよね。


だから前川さんの出会い系報道だけを「陰謀だ!」というのはちょっとフェアではない。そんなこと公の人物であれば多かれ少なかれ誰だってやられているし、そしてそれを私たちはある意味「当然の事」として受け入れてきたのだから。


発言内容ではなくその発言した人の人柄でその説得力を判断する私たち。不倫や身内の不祥事な報道もこの系譜だよね。
みなさんはいかがお考えでしょうか?