中学入試における素材文について

中学入試で出題される素材文は,難関校の場合には高校入試で出題されるような文章がよく使われています。
小学生には読解が困難だと思われる文章です。
そのため,やたらと難しめの文章を普段から読ませようとする人たちがいます。特に,母親がある程度の教養を身につけている場合には,妙に焦ってしまって,高校入試で出題されているような文章を揃えて子どもに読ませようとしてしまいます。
しかし,当の子どもにしてみれば,良い迷惑です。
確かに,高校入試と中学入試で,同じ作品から文章が使われることがあります。
しかし,同じ作品であっても,引用する箇所は異なっていることが多いのです。
なぜかと言いますと,文章中の語句が難しいのは,語注などで対処できますが,書かれている内容そのものが,小学生に理解できる観念であるかどうかを考慮して文章が選ばれるからです。
同じ作品であっても,具体例が示され,また,説明されていることがらも,そう難しいことではなく,当り前のことが書かれていることが,中学受験で用いることができる文章なのです。
ですから,小学生が理解できない箇所を多く含んだ作品をむやみに読ませると,文章が理解できず,文章に対する拒否反応を起こしてしまいます。
これでは,何にもなりません。
関西地域の中学受験の統一試験日が終わりましたが,来年に向けて,ただやたらと難しい文章を読ませるのではなく,きちんと書かれている内容が理解でき,何が書かれていたかが説明できるような文章が,その子にとって読むにふさわしい文章だと思います。
本の選定は難しいとは思いますが,変な焦りは無用だと思います。
内容をほとんど読み取れない文章をどれだけ読んでも,文章を読み取る力は伸びないと思います。
また,下地となる知識そのものが不足している場合もあります。
私は,それほど難しい文章でなくても良いので,いろいろなジャンルの文章を読むほうが,ベースとなる知識や考え方が身につくように思います。
漫画が読んで楽しいのは,一回読んだだけで,ほぼ書かれている内容が理解できるからだと思います。
同様に,一回読んだだけで内容を捉えることができる文章は,読んでいて疲れません。
ただ,そうした文章は,知識や概念を増やしたり,読解力を高めたりはできないと思います。
一読して,分かりにくい箇所や,何度か読み直さないと何が書かれているか分からないような箇所があるほうが,読むのは疲れますが,その分だけ知識も読解力も伸びるように思います。
しかし,これは良さそうだと思って読み始めても,どうもよくわからないと感じたら,途中でギブアップしても良いのではないでしょうか。もっと読むのに適当な文章があるはずなので,それから読んでいけば良いのではないでしょうか。
そのほうが,意義のある読書になるような気がします。
皆さんは,いかが思われますか。