大手進学塾と個人塾について

よくある質問に「大手進学塾と個人塾ではどちらがよいでしょう」というのがあります。
この答えは,非常に難しいと思います。それぞれメリットもデメリットもあるからです。
大手進学塾も個人塾もどちらも関わったことがある経験から言いますと,中学受験においては圧倒的に大手進学塾が有利であることは否めません。しかし,高校受験においては,必ずしも大手進学塾が有利というものでもないように思います。
もちろん,個々の塾によって差がありますから,一概に言うことはできないのですが,それでもおおよそは当たっているのではないかと思います。
まず,中学入試で大手進学塾が有利である理由ですが,これは圧倒に多い授業数を確保できることによります。個人塾でも個人指導に近い形で授業数を確保することも可能ですが,ある程度高い授業料を取っても採算が取れないため,個人塾ではそこまで力を入れて指導してくれることはまずありません。そうかと言って,自習を主体にした勉強というのは,よほど高い学力と強い精神がないと無理なので,小学生には望めないことだと思います。また,家庭教師ということも考えられますが,中学受験に精通した家庭教師をつけることは困難であり,よほどの金額を支払わないと無理なので,これは考えにくいことだと思います。
大手進学塾の授業料も個人塾に比べれば高いですが,授業1時間あたりの授業料に換算すれば個人塾よりも安いところも多いはずです。
次に情報量およびテキストが個人塾のネックとなります。
最近は,予習シリーズを個人的にも購入することができるようになりましたので,必ずしもネックにはなっていないようですが,それでも授業カリキュラムに従った模擬テストを受けることができず,どの程度の学習をすれば志望校に合格するかがデータとして蓄積されていない点が不利となっています。また,志望校別に対策授業をすることもできません。
そのため,集団授業が嫌でなければ大手進学塾のほうが有利なのは確かです。
しかし,実は中学受験は,塾側にとっても採算ラインを超しにくいという弱点をもっています。授業時間を確保するために専用の教室を設けないといけないのと,あまり高額な授業単価では生徒が集まらないこと,それに加えてベテランの講師をつけるとなると人件費がかさむことなどがあり,教室のキャパ一杯に生徒が埋まらないと利益を生まないという事情があります。
採算ラインを切りますと,学生の講師を主体にして人件費を削減したり,授業単価を上げたりするようになります。こうなってくると,大手進学塾としてのメリットが薄れてくるようになります。
また,もともと人気の高い難関校への受験を想定してカリキュラムが組まれているため,中堅校を目指す受験生にとっては,そこまで必要ではないようなことまで教え込まれ,多分に消化不良を起こすこともよくあります。
ですから,お子さんの性格や学力,志望校をよく考えた上で選ばれたほうが良いと思います。
次に高校入試ですが,中学受験と異なり,学校の学習内容で入試が出題されることもあり,個人塾が不利になりにくい要素が強いのが一般的です。特に公立高校への進学を目指すのであれば,何も大手進学塾に通う必要は必ずしもありません。小規模な塾であっても,十分指導は可能です。
ただ,ここでも競争という側面を見れば,大手進学塾のほうが有利であると思います。
個人塾ほど面倒見はよくありませんが,やはり長年のノウハウをもった塾のほうが,志望校を突破できるように,うまくレールを敷いてくれます。
ただ,注意してほしいのは,実績に数えられないような学校を志望している場合,ほとんど気にもとめてくれない塾も中にはあるということです。
中学受験と併設している場合は,高校受験で稼がなくてはならないという事情もあり,学力の伸張よりも採算面ばかりを考えている塾もあります。
もちろん,個人塾の多くは開業から数年のうちに淘汰されていく世界ですから,それも考慮に入れなくてはなりません。
また,個人塾は塾長の力量に大きく影響されるので,どのような塾長であるかをしっかり見極める必要もあると思います。
このように,それぞれ一長一短がありますので,それを考えに入れた上で,どのような選択をすべきかを考えられれば良いかと思います。
有名,無名にだけ頼る判断は,あまり適切であるとは言えません。
まずは,ご自身の目でよく確かめることが大事です。
どのようなポイントで確かめればよいかについては,後日改めてお話したいと思います。