「殉教カテリナ車輪」飛鳥部 勝則

殉教カテリナ車輪
飛鳥部 勝則著
東京創元社 (2001.7)
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渦中の人・飛鳥部さんのデビュー作、そういえば買ったまま積んでいたのを思い出して、引っ張り出してみました。うーん、図像についての推理部分と、密室殺人についての部分が、なんだか絡み方が甘いようで、肩すかしでした。いや、それなりに面白かったんですけど。飛鳥部さんご本人が描かれた絵が着いている!という部分についても、斬新だとは思うんですが…うーん、なんだろう。自分たち読者は、その画家さんにこの小説で初めて出会う訳じゃないですか。ですから、絵の解釈についても、作中で語られているお話を鵜呑みにするしかないわけで、なんだか知らない作家さんの自作解説、ミステリに置き換えれば自分で書いた作品のトリックと仕掛け、張った伏線の全てを蕩々と語っているのを聴かされているような、そんな痒さがありました。いや、面白いんですけど…佐野美香さんの不思議な魅力や、東条寺桂の純粋な思慕と絵への情熱とか、ラストシーンの切なさとか、いろいろ物語的にも心動かされるところもあったんですけど。それでも何か乗り切れない、隔靴掻痒なしっくり来ない部分が残る作品でした。