「みずほ荘殺人事件」仁木悦子

みずほ荘殺人事件
仁木 悦子著
角川書店 (1979.3)
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ノンシリーズの短編集ですが、バリバリの本格から人情話的癒し系サスペンス、作中作の推理を楽しむメタ構造な作品まで、様々。仁木さんの多芸多才ぶりが窺えて楽しい1冊です。個人的には、細かい伏線ががっつりはまる解決が見事な本格である表題作がやはり最高。ときに、しょっちゅう「〜荘」という建物が出て来ますが、決して立派な館や山荘ではなく、庶民なアパートである(笑)ところなんかは庶民派仁木さんらしい感じ。子どもや老人を描くのが巧い仁木さんの作品には、常に弱者たる者への優しい視線を感じるのですが、この辺は自身も体が不自由であった仁木さんならではなのだろうかと愚考する次第。