小湊鉄道 票券閉塞 復活
小湊鉄道において、非自動閉塞の一種である票券閉塞が復活しました。
21世紀に入り、はや13年。
非自動閉塞はもはや風前の灯と化しています。
IT技術もどんどん進化している昨今、まさか票券閉塞が盛り返すとは夢にも思いませんでした。
(↑上総牛久にて 2012年5月2日)
詳細を述べますと、2013年3月15日までは・・・
(1)五井−上総牛久:自動閉塞
(2)上総牛久−上総中野:スタフ閉塞
2013年3月16日以降は・・・
(3)五井−上総牛久:自動閉塞
(4)上総牛久−里見:票券閉塞
(5)里見−上総中野:スタフ閉塞
なお、補足すると、上総牛久−上総中野間は1998年までは(4)(5)の閉塞方式であったため、このほど1998年以前の方式に戻った形となります
市原市内の小学校の再編により、里見駅近隣の小学校に統合されることになり、児童の通学の足を確保する必要に迫られたところ、小湊鉄道の列車本数が少なく不便であるため、増発に至ったものです。
※上総牛久−里見間の平日ダイヤ列車本数
2013年3月15日まで10往復→3月16日以降14.5往復
しかし、増発するには設備面の改良が必要。
22.7kmで1閉塞の上総牛久−上総中野間には、途中に里見という駅があり、里見駅の交換設備を復活させて2閉塞に分割されました。
廃止された交換設備の復活自体は、旧国鉄系3セク線などでまれに見られることで、特筆すべきことではないのですが、何を驚いたかというと、非自動閉塞のままで交換設備を復活させたことでした。
合理化省力化のために、人手がかかり保安度も低い非自動閉塞は、ランニングコストが低減できる特殊自動閉塞などに更新されていくものですが*1、里見駅に関していえば、駅員を配置し、その駅員に閉塞扱いを実施させる昔ながらのやり方で対応となりました。
おそらく、列車通学する児童への出改札する必要もあって駅員の配置が必要になり、どうせ駅員がいるのだから閉塞扱いもさせてしまおう、と推察しますがいかがでしょうか。
交換駅化なので信号機も設置必要です。
どうせなら腕木式信号機も設置してほしいところ。
(↑八戸線侍浜駅上り場内 2004年8月4日)
腕木式信号機を設置していれば、車両といい閉塞方式といい昭和の鉄道の再現なのですが、保守がとても大変なので*2、おそらく色灯式信号機を設置しているでしょう。
時刻表を参照しながらWIN-DIAでダイヤグラム(平日)を書いてみました。
上総牛久−里見間は、票券閉塞を生かして続行列車が設定されています。
下り:101列車と1列車、11列車と15列車、23列車と25列車
上り:16列車と18列車、24列車と28列車、44列車と48列車
(ダイヤ上では上り54列車と4列車も続行の可能性ありますが、4列車のために下りの送り込み回送があるかもしれません。)
続行列車を発車させる手順を簡単に書きますと・・・
(1)先行列車にはタマを見せた上*3で通券という紙を渡して出発。
(2)先行列車が閉塞終点駅に到着したことを確認した上で続行列車にタマを渡して出発。
続行便が設定できるのが票券閉塞の利点ですが、弱点としてはダイヤ乱れ時などに、タマのない側から列車を出発させることができない点。
この弱点を解消する方法として、通票閉塞(タブレット閉塞)の採用があります。
(↑交通科学博物館に展示の通票閉塞器 2004年2月14日)
しかし、小湊鉄道が票券閉塞を採用した理由として、おそらく、旧国鉄の長大幹線のように、足の長い長距離列車が大きな遅れを引きずってくることによる交換場所・交換順序の変更が発生する可能性は低い、と判断したからではないでしょうか。
そのいっぽう、里見−上総中野間は、スタフ閉塞なので続行列車は設定できません。
タマが1個しかないため、里見駅を上総中野方に出発した列車が里見駅に戻ってこない限り、上総中野方へ列車を出発させる事ができない
続行列車がない代わりに興味深い事例として、終点である上総中野での折り返しでなく、閉塞中間の棒線駅*4である養老渓谷駅での折り返し列車が7往復設定されていること。
これが自動閉塞ならば、軌道回路と信号機を設置して閉塞を分割しなければ対応できないと思いますが*5、非自動閉塞の一種であるスタフ閉塞であるから、このような折り返しも自在に可能です。*6
このように、小湊鉄道ではとても興味深い事例を復活させました。
私が小湊鉄道を初乗車した2012年5月2日は、里見駅は棒線駅のままでした。
ぜひとも小湊鉄道を再訪して通票の授受などを見てみたいものだと思います。