生活保護の措置費

この仕組みからは、一般に、補助事業が大規模に展開されればされるほど、地方債が累積していくのがわかる。実際、一九九四年度地方債計画は、国庫補助の交付される補助事業にかかわる一般公共事業債の発行を、一兆九〇九五億円計上した。これは、政府が景気対策として大規模な公共事業の実施を予算計上したためである。前年度に比較すれば、実に三九二八一セント増となっている。

これをふくめて自治体の一般会計が行う事業への地方債発行額は、七兆八九三二億円となっている。九四年度における一般公共事業債発行額の高騰は、一例にほかならない。「世界経済の機関車」であることを求められた七〇年代末の福田政権下では、自治体から「大盤ぶるまいされても消化し切れない」との悲鳴があがった。日米構造協議による内需拡大要請に応えた「四三〇兆円公共投資一〇ヵ年計画」も、地方債発行額の増額によって支えられている。

地方債は、補助事業や直轄事業として実施される公共事業の財源措置にのみ、利用されているのではない。中央政府の歳出削減の財源措置としても利用される。地方債計画で「臨時財政特例債」とよばれるものがそれである。中央政府は、一九八五年度から高率補助金の補助率削減を「暫定的措置」として実施した。八五年度から八八年度にかけて主として対象とされたのは、社会福祉関係の補助・負担率の切り下げであった。

例えば、生活保護の措置費についての負担割合は、一九五〇年以来。国十分の八、自治体十分の二と生活保護法本則によって定められてきたが、これを国十分の七、自治体十分の三に変更した。この社会福祉関係の補助・負担率の「暫定的引き下げ」は、一九八九年にそのまま恒久的措置へと変更されたが(生活保護については、国十分の七・五、自治体十分の二・五として恒久化)、なお一部は九二年度まで「特例的措置」として引き継がれてきた。

臨時財政特例債は、こうした国庫補助・負担率の引き下げ措置の対象となる事業を行う自治体にたいして、補助・負担金の減額相当分を地方債によって面倒みるものである。国の補助・負担率を削減し、自治体に負担をツケ回したばかりか、自治体に「借金」を「強要」するにも等しい歳出削減手法には、当時から多くの批判がよせられてきた。