物価目標の早期達成、引き続き最重要=黒田日銀総裁

日銀の黒田東彦総裁は26日午後の参院財政金融委員会で
開かれた日銀半期報告で、できるだけ早期に2%の物価目標を
達成するのが最重要課題との姿勢に変わりがないことを強調した。

同時に原油価格が上昇しなければ2015年度をめどとしている
目標達成時期が遅れる点も指摘し、必要ならば追加緩和も
辞さない姿勢を改めて示唆した。

政府は1月に月例経済報告で2%の物価目標達成に
関する表現を「できるだけ早期に」から「経済・
物価情勢を踏まえつつ」に変更しており、
甘利明経済再生担当相も日銀の目標達成時期について、
当初予定の2年よりも余裕を持ってよいと発言。

政府から日銀への追加緩和圧力が
弱まったとの見方が増えている。

このため無所属クラブの中西健治委員が、日銀は
今もできるだけ早期の物価目標達成が最重要課題かと質問、
黒田総裁は「その通り」と答えた。

安倍政権発足直後の2013年1月に政府・日銀が
発表した共同声明では、日銀による2%目標の早期達成と、
政府による機動的な財政運営と成長戦略の実施を
うたっている点を総裁は指摘し、「共同声明は
活きている」と強調した。

黒田総裁は、複数の委員から2013年4月の量的・質的緩和
(QQE)開始時の想定と異なった点を問われ、「原油価格の
急落と、消費税引き上げ後の消費低迷と、円安にもかかわらず
輸出が伸びなかった点」を挙げた。

「昨年夏以降の大幅な原油下落は想定していなかった」ため、
消費者物価指数(CPI)の上昇率は「当面さらに低下する」
と述べた

物価目標の達成時期について、原油が「現状から
緩やかに上昇するなら、2015年度を中心に2%の
物価目標に達する可能性が高い」との公式見解を繰り返し、
原油価格動向で達成時期が前後するのに留意が必要」、
原油価格が下がり続けなければ、今の政策で十分」
などと指摘した。

黒田総裁は2013年4月に現在の量的・質的緩和
(QQE)を打ち出した際に「2年程度で2%の達成」を
掲げており、再来月が本来の達成期限となるはずだが、
日銀は緩やかに達成時期を後ずれさせている。

黒田総裁は「2年程度は2年程度で、(達成時期を)
ピンポイントに決めたわけでない」と解説した。

また「2016年度末までには当然2%に
達している」と指摘した。

金融緩和から引き締めへの出口戦略については
「現時点で発言するのは時期尚早」との従来答弁を
繰り返したが、先に利上げを行い、資産売却は
後回しにする米国の手法は「参考になる」と述べた。

政府・日銀の共同声明について「日銀は声明に
沿って政策運営している」とし、政府に関しても
「共同声明に沿って財政・成長戦略を行っていると
理解している」と述べた。

「日本は債務残高が大きく、国全体として財政運営の
信認確保が重要」と、改めて財政再建の重要性を繰り返した。

金融緩和の為替への影響について「他の条件が
一定なら円安方向に作用する」が、「他の条件は
一定でないため、金融緩和と為替に一定の関係が
常に成り立っているわけでない」と述べた。

金融緩和の副作用については「現時点で期待の
強気化は起きていないが、バブルの懸念がないか
常に慎重に見極めている」とした。

共産党大門実紀史委員が、昨年10月の追加緩和前後に
景気認識が急変した経緯を追及し、総裁は「政策委員会は
合議性なので金融政策決定会合を先取りした発言は
適切でない」と説明した。

日銀は昨年10月31日、大方の市場関係者が
予想していなかった追加緩和に踏み切った。

黒田総裁は3日前の28日に、経済・物価が
2%の目標達成に向けて順調に進んでいると
参院で答弁しており、大門委員はわずか
3日での急変の経緯を質問。

政策の見通しを市場に織り込ませない
サプライズ狙いを続けると、日銀が重要な
発信を行った場合に誰も信用しないリスクが
あると指摘した。

これに対して黒田委員は「趣旨は
よく理解した」と答えた。

10月の追加緩和は、9人の審議委員のうち4人が
反対に回る薄氷の採決だった点でも異例だったが、
総裁は「相当いろいろな議論があり、かなり
激しい議論を戦わせた」と振り返った。

また「好転する期待転換モメンタムの維持が狙い。
デフレマインドの払しょくが遅延するリスクに
対して未然(プリエンプティブ)に対応した」
と説明した。