人類は衰退しました/田中ロミオ/小学館ガガガ文庫

人類は衰退しました (ガガガ文庫)


種としての人類が緩やかに黄昏を迎えつつある時代。代わりに地球には全長10センチの小さな「妖精さん」たちが溢れるようになった。主人公は大学を卒業して、田舎で旧人類と妖精さんたちの仲を取り持つ「調停官」となることに。


一部で有名なエロゲライターの人の小説処女作。私は『加奈〜いもうと〜』『家族計画』『CROSS†CHANNEL』と有名どころしかプレイしてないのでとても信者とは言い難いのですが、まあわりかし好きな人。話芸の面白さからその内ラノベ書いてくんないかなーとは思っていたのですが、意外と早く実現しましたね。気になる文体は、ゲームとあんまり変わらず。いい意味で一昔前のラノベっぽい。とぼけた主人公と妖精さんの掛け合いとか、いい味出してるとはおもうんですけど……でもこれ、メッセージウィンドウに展開されてる状態で読みたいと思うのは私だけでしょうか?なんつうか、作風としてある程度狙ってるところもあると思うんですけど、実際紙の上に並べてみるとちょっと間延びしてるというか。ゲームの方はもうちょっと切れ味鋭かった気もする。


お話のほうは産めよ殖やせよで増していく人口と、それに合わせて旧人類の辿った道をなぞりながら進展する箱庭社会を主人公が神様視点で見守りながら話は進んできます。でも、爆発的に成長する妖精さんに対して、多大な影響を持つ主人公は配慮を忘れていはいけなくて、一歩一歩がわりと綱渡り。でも緊迫感はまるでなし……。齧ったことすらないけど、文化人類学入門といった雰囲気。『食卓にビールを』に似てるってのもなんとなく分かるかも。あっちは物理・生物などがメインですが。ちょっと新感覚。ちらほら黒くなりそうな要素も見受けられますが、あんまりサプライズとかは期待しないで読み進めていきたいです。


……しかし、なんか最近、劇的なことが何も起こらない緩やかな世界の終末とか人類の衰退とか、好きになってきたかもしんない。『ヨコハマ買い出し紀行』とか。