雑貨屋タイガー


売れすぎちゃって臨時休業 デンマーク雑貨「タイガー」 産経新聞 7月24日(火)

 大阪・心斎橋に日本第1号店をオープンしたデンマークの人気雑貨チェーン「タイガー コペンハーゲン」が24、25日の両日、臨時休業となった。開店直後から想定の2倍近い来店客で大混雑に見舞われ、商品の補充やレジの増設などを余儀なくされたためだ。同店は「欧州では考えられない」とうれしい悲鳴を上げている。

 21日にオープンした同店は、開業前から店外に約400人が列をつくる人気ぶり。店に客が入りきれないため、入店規制を行ったが午後には最大2時間の待ち時間が生じた。

 初日から同店の想定の2倍近い千人以上が訪れたほか、翌日以降も同様の来店客で混雑が続いた。一部の人気商品が売り切れとなった。23日は午後2時までの来店者で入店を打ち切ったが、4台あるレジでは客がさばききれず、レジ待ちにも最大1時間の列ができる事態となった。

 休業期間中に、レジを6台に増設するほか商品も補充。別途、従業員数も増やすという。同店担当者は「欧州では考えられないことで驚いた。来店された方には申し訳ない。2日間で体制を整えたい」と話している。


先月、デンマークの雑貨屋タイガーが大阪でオープンした。イケア、H&Mと最近は北欧系量販店の日本進出が盛んで、更には円高と、タイガーは運を味方につけている。
ドイツでも三〜四年前から急速に店舗数を増やしており、単独店舗ではなく、大型ショッピングモールへの出店が続いている。


欧州のタイガーは、他雑貨屋や1EURショップとの差別化ができている。
雑貨屋はデコレーションや文具ばかり。値段も高く、女性客だけをターゲットにした店も多い。1EURショップは品揃えに変化のない陳腐で安っぽい商品ばかりで、タイガーには敵わない。タイガーは玩具、PC用品、洗面用品、食器等、商品の幅も広く、価格も安く、常に新しい商品を投入しており回転率も高い。


かなり小さい店舗ながらイケアのように入口と出口がはっきりしており、通路は一つで一方通行、全ての商品を見なければレジまで行けない。客は無駄な移動距離が増えるが、売り手が主導権を握るレイアウトは、お客様は神様の日本人には想像できない。
日本のように、売れ筋や新商品だけを前面で売り込むのではなく、全てがお勧めとのことだが、これなら全ての商品に平等に売れるチャンスが生まれる。


中国製が多いのは1EURショップと同じだが、北欧独特のデザインで差別化しており、センスのない1EURショップとは比較にならない。デンマークのお菓子や小物も売っており、異国情緒や物珍しさもある。本国の雰囲気を味わえるとの点は、イケアと同じか。
安い商品群ながら、デンマークという国を前面に打ち出していることもあり、小洒落たイメージを出しており、イケアと同様に、安物でも所有が恥ずかしくない。
この点で、北欧は西欧でも高級路線をしやすい。例えば、中国がいくら高級品を生産したとしても、中国という国が前面に出ると途端に安物となってしまう。


欧州では以上の差別化もあり繁盛しているが、日本でも同じように売れるとは限らない。


ドイツに住んでいると、タイガーが雑貨店では一番センスも良く面白い物が多いので、あれもこれも買ってしまうが、日本に帰る度に100円ショップの中で、なぜタイガーで買ってしまったのだろうと考えてしまうことも多い。量、質、価格で100円ショップはタイガーを圧倒している。日本国内市場は、どの国よりも厳しい競争に揉まれている。


確かに、タイガーには安くてお洒落な商品が数多くあるが、それは欧州内での話でしかない。
100円ショップの中でも、セリアは質と量にプラスした戦略を打ち出している。洒落た雰囲気の店舗も多く、アンティーク風や異国情緒に溢れる商品に力を入れており、タイガーと商品がダブる。


高物価のデンマークの会社故か、価格競争力は弱い。例えばソーラーバッテリーのキーホルダーライトを例としてあげれば、同様なデザインでタイガーが4EUR(400円) 、100円ショップは当然ながら100円。今は円高だからよいが、今後、円安になったらどうなるのだろうか。


日本でタイガーが売れるものは、北欧のセンスでデザインされた小物、それも文具や飾りくらいしかないように思えてくる。
とはいえ、全てが洗練されたデザインともいえない。アジア雑貨も多く、欧米人が考えたアジア風デザインは面白味があって良いが、好みが分かれるところ。中には、そのまま中国から取り寄せたようなデザインや雑貨もあり、欧米人には物珍しさで良いとしても、日本の洗練された伝統デザインに慣れ親しんでいる日本人からすれば、満州風小物など野暮ったい物もある。


最初は物珍しさで売れるとしても、二年後三年後にどう展開するのか。タイガーの、今後に注目したい。
タイガーの積極的な戦略は、日本企業も学ぶべき点が多い。無印良品の店が私の住む町にも有るが、それに続く日本企業はまだない。もし、日本の100円ショップが欧州に進出したのなら、欧州の市場は大きく変わるように思える。
日本の食品メーカーにも言えることだが、世界的な不況の今、円高の今、世界市場を席捲するくらいの意気込みを日本企業には持ってほしい。