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2010-11-18

なぜ幼馴染ヒロインは衰退したか?

少し前の話になるが『ゼーガペイン』というアニメを観ていた。そこでまず驚いたのがメインヒロインが幼馴染ということだ。幼馴染ヒロインは近年減少傾向にあり、今やメインに置かれることはほとんどない。


大半の物語において日常/非日常に分けた内の非日常の方がその主たる舞台となる。よくある「巻き込まれ型」の話は、日常にいた主人公が何かをきっかけに非日常の世界にシフトしていくことを意味する。

さて、ここで物語の舞台は非日常となるが、幼馴染は日常にある。したがって物語の進行につれてその登場は減り、いわば「空気化」する。一方でメインとなった非日常の世界においてもしばしば「華」として女性が出てくる。その登場は幼馴染とは逆に非日常がメインになればなるほど増える。特に物語が長期化した場合、読者の中で両者の地位は逆転し得る。


この問題に作り手はかなり苦労していたと思われる。最も有り得る解決法としては、定期的に日常/非日常の切り替えを行うことで主人公が日常を足場にしている事実を繰り返し強調することだ。これは物語が大規模になると日常との距離が開き、難しくなる。

もうひとつは幼馴染が非日常に来ることだ。これはスポーツものならばマネージャーという丁度いいポジションがある。バトルものなら共闘路線か「囚われの姫君」かだ。前者はその展開に至る説明を必要とし、受け手が納得できるものにできるか否かが勝負となる。後者も同じ問題を抱えている。それに加え後者は(メイン視点である)主人公と行動を共にできるわけではなく登場に制約があるのにも関わらず、ここにきて日常は完全に切り離されるという問題も生じる*1


そういうわけで幼馴染ヒロインは非常に難しい。しかし昔の物語は苦戦しつつも何とか帳尻合わせようとしていたのに、最近ではすっかり幼馴染ヒロインを諦めてしまった感がある*2

これは作り手からすれば既に親密な関係にあるよりは出会いから関係をつくっていく方が描きやすい、話が作りやすいということだろう。受け手からすると地域コミュニティが薄れ、幼馴染というもののリアリティが低下し、それよりは持たざる主人公が突如現れた非日常ヒロインに連れて行かれる方が入りやすくなったのかもしれない。


そんな中『ゼーガペイン』が幼馴染をメインヒロインに置けたのは、幼馴染的かわいさをしっかり押さえていたことはもちろん、大規模な話なのに日常/非日常の切り替えがコンスタントになされていたからではないか?

ゼーガペイン』は2006年放送当時には早過ぎて今になって時代が追いついたと聞くが、幼馴染ヒロインがメインを張ってしかも広く支持される作品というのは、まだ時代が追いついていないようだ。

*1:例えば『ARMS』は「囚われの姫君」型だったが、この点で失敗していたように思う。幼馴染というだけで特権的な立場に置かれたカツミよりも、途中まで共闘していたユーゴーの方を好きだった人は多かったろう。このキャラクターの魅力という言葉以上の理由が上記構造から説明できる。ちなみに長期にわたる物語の『ARMS』と比べ、クエストを終えたら日常に戻る短話完結型の『スプリガン』・『D-LIVE!!』では日常/非日常の切り替えが上手くいっていた。特に『D-LIVE!!』は幼馴染ヒロインが出てこないものの、主人公の意識が驚くほど日常にあり続けた。

*2:余談だが『ぬらりひょんの孫』では当初メインヒロインのように思われた幼馴染がどんどん空気化し、作者もそれを自覚しているにも関わらず展開でのケアがされず、ヒロイン不在で進んでいる。

tohritohri 2010/11/20 23:46 瑣末な話なんですが、
>幼馴染ヒロインは近年減少傾向にあり、
は、どのような状態を指しているのでしょうか?

文脈的に
「メインヒロインになるような幼馴染キャラが減った」と読めるか
「過去の作品では幼馴染ヒロインが登場する作品が多く、その中でメインヒロインになるものが多い(が、減少した)」とも読めます。

むしろ最近の作品は複数の属性ヒロインが登場し、その中にはかならず幼馴染ヒロインが
ひとりはいる状態なので前者のように思えますが、
となると、
そもそも幼馴染メインヒロインの作品って過去は多かったのか?
という検証に興味がわきます。
さらには後に続く「巻き込まれ型」の作品において
幼馴染ヒロインがメインヒロインであった事例が多い時期があったのか、
ということに関心がいきますね。
ゲームだとときメモシリーズなど幼馴染ヒロインが一定の人気を持っているようですが
アニメ漫画だとどんなものが代表的でしょうね?

それ以降の
幼馴染=日常の象徴とし、非日常の存在の位置にメインヒロインを置くという話が
多いことなどに関する議論は割とよくわかる話だと思います
最近のは印象だけでなく、数え上げてもそのような作品多いのではないでしょうかね?

mercury-cmercury-c 2010/11/21 19:32 >tohriさん
記事内の「幼馴染ヒロインの減少」は、メインヒロインもしくはそれに準ずるヒロインに幼馴染が置かれることが減ったことを意味しています。幼馴染が出てきても「学校の友達」レベルにある作品も見かけますし。
過去の作品に幼馴染が多かったかはデータを採っていないため分かりませんが、少なくとも日常ヒロインに対してもっと優しかったように思います。日常と非日常の距離の開きが大きい作品ほど幼馴染が出しにくいので、特に少年漫画なんかは難しいときかもしれません。

Vinegar56%Vinegar56% 2010/11/27 19:23 初めてコメントさせていただきます。
大変に興味深く読ませていただきました。
脚注で挙げられている『ARMS』と『スプリガン』ですが、ことヒロインに関しては、『スプリガン』にも『ARMS』と類似の現象が指摘できるように思います。『スプリガン』には幼馴染み設定の山菱理恵がいましたが、連載後期になるにつれ戦闘やサバイバルの能力がない理恵の出番は減少し、理恵より登場は遅いものの非日常パートで共演できる染井芳乃の方が、事実上メインヒロインに近い扱いになっていたように思うからです。
連載後期になるにつれ非日常パートの比重が大きくなり、幼馴染みヒロインの影が薄くなる現象は、少年漫画に広く見られる気がしますね。パッと思いつく所だと『幽々白書』の雪村蛍子とか『ヒカルの碁』の藤崎あかりとか。
そういう幼馴染みヒロインの抱える構造的な問題に対して製作者側の意識自体が変化しているとすると、大変面白いことだと感じました。

Vinegar56%Vinegar56% 2010/11/27 19:46 すみません、『ARMS』のカツミの場合は「囚われの姫君」のポジションなので、日常パートにしか出ないヒロインと同じ現象ではありませんでしたね。

mercury-cmercury-c 2010/11/28 00:00 >Vinegar56%さん
『スプリガン』の芳乃は確かにいいキャラでしたけど、メインヒロインを食うようなタイプではないので「目立っていた」くらいだと思います。ヒロイン要素が薄い作品だったということでしょう。
上でもふれている通り構造的な問題と、読み手の好みの変遷とで話が変わっていったのだと考えています。

ゆうゆう 2010/11/29 05:40 色んな意味で幼馴染キャラが好きな俺が来ましたよ

結局、幼馴染キャラとの恋愛って
ある程度の年齢になるまで、そういう関係にならなかった理由ってのを
作らないと、お話にならないんですよね。
大体は、長年一緒にいたから、今更言い出しにくかったとか
そんな限られた理由が使いまわされるだけになってしまいます。
そしてそれが大半の人にとって飽きられるほどに
大体やりつくされたから、幼馴染のメインヒロインが減り続けていると。

むしろ幼馴染と恋愛させたいなら、作品開始の時点で既にそうなっているのが一番不自然じゃないんですよね。

そうでないなら、肉親と同じような兄弟姉妹と同じ関係であるべき。

ですので自分は、長年片思いし続けたけど、自分から言い出せなかったために、新しく現れた相手とくっついちゃって、派手に失恋する幼馴染キャラが大好きですw
その場合、振った事にすら気づいていないと、なお良いw

逆に、ちゃんと想いを伝えてる幼馴染キャラは、凄い応援したくなりますが
最近のだと、祝福のカンパネラとか

mercury-cmercury-c 2010/11/29 20:47 >ゆうさん
「ある程度の年齢になるまで、そういう関係にならなかった理由ってのを作らないと、お話にならない……そしてそれが大半の人にとって飽きられるほどに大体やりつくされたから、幼馴染のメインヒロインが減り続けている」という視点が面白かったです。
ゆうさんのようにメインヒロインでなくてもOKという、今のポジションが気に入ってる人もいるでしょうね。

烏 2010/11/29 21:13 ぬら孫はある意味、特異じゃないかなあ。
幼馴染にカナちゃんだけなら良かったけど、長年一緒にいて思い出豊富で
身近過ぎる『カナちゃん以上の幼馴染』が居たとも言える(笑)。
”幼馴染のお姉さん”属性と戦闘ヒロイン属性とお姫様属性を全部一人で
持ってってる子が。

 ちなみに、巻き込まれ型ではなく「主人公帰郷型」「ヒロイン帰郷型」
にすれば、過去の思い出補正を持ちつつ非日常属性(日常=作品開始前まで)
のヒロインを作れるので、変則的ながら幼馴染をメインに据えやすく
なりますねえ。”俺の居ない間”に何かあればそれをフックに出来る訳で。

 …根本的なとこで、幼馴染キャラの定義付けをどうするのかによって
変わって来ますな。
『主人公と結構長く傍にいる以外特徴のない無個性キャラ=幼馴染』
 と考えるか、
『主人公と幼い頃の原体験を唯一無二で共有するキャラ=幼馴染』
 と考えるか。
 属性が細分化され過ぎて、傍に居る以上の特性を持たせるとそっちが
先に来ちゃいますもんね。巫女さんとかくノ一とか姉さんとか魔法少女とか
女神様とか女剣士とか素直クールとかメイドさんとか人外の化生とか。
全部大好物です本当にry
 …うん、途中からちょっと年齢制限のかかる幼馴染になってますね。

mercury-cmercury-c 2010/11/30 00:05 >烏さん
幼馴染キャラの定義付けですか。『ぬらりひょんの孫』の場合にはつららは家族に近いイメージもありますが、カナちゃんがいなければ確かに幼馴染キャラで確定ですね。幼馴染というか記事内では広く日常ヒロインにまとめているので、どのみち何らかの属性を加えないと弱い、というのはあるかもしれません。

tokutoku 2011/02/23 23:02 日常キャラの幼馴染が減ったという言い方をすれば、幼馴染が何故ダメで妹だとなぜ良いのか説明できなくなる

mercury-cmercury-c 2011/02/24 22:35 >tokuさん
確かに妹キャラは今も人気ですが、かつての幼馴染と同列のメインヒロイン格に妹をもってきた作品が多いとは思えません。多くはメインヒロインでない妹だから出しやすいのでしょう。また地域コミュニティの薄れから共通の幻想として幼馴染をもてなくなったとすれば、妹ならばよりリアリティをもつという理由でアリなのかもしれません。

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