五十の舞 その5

 沿道は、応援で埋め尽くされておる。 俺に声援を送っているわけじゃないけれど、声をかけられると自然と、元気になる。 しかし、物凄い大混雑である。 みっちり人が走っておる。 今回は、無理をせんと、流れに任せる気でいる。 それと、うちの職場で、おじさん腰痛、上司足捻挫という悪循環起きていた。 以前だったら、「そんなもんに負けていられるか!」 と奮起するんだが、無理してもしゃーないという気持ちが優先された。 如何せん、人手不足のパツンパツンの職場、ここで俺が怪我すっと、3人負傷者ってことになってしまう。 久しぶりの青梅マラソンを満喫しようではないか! 

 走り始め、河辺の町並みの見ながら沿道の応援を背に走り抜けてゆく、走り抜けるってほど早くはない。 人の波がドンドコ移動しておる感じだな。 高いとこから見ていると、人の絨毯が絶え間なく進行しているのが見えるはずだ。 マラソンで、走っておるという知識がなかったら、そりゃ恐ろしいもんがこっちに向かって進行していると思えるのだろう。 

 走るええじゃないかは、10キロまで纏まって走り、それくらいからバラけて来るんだろう。 それまでは、ダラダラと我慢の走りしようではないか。 前後左右どこを見てもランナーである。 それぞれ色んなことを思って、走っておるんだろう。 徐々に緩〜い登坂になり、徐々に起伏が出てくる。 まずは、折り返しの15キロに向けて走ればよろし、折り返しから先は、又、考えりゃよろし。 

 コースは、ほぼ青梅線と並行している。 市内は、あまり道幅が大きくなく、15000人が走るには、狭すぎる。 走り始め、急に 「全体止まれ!!」 になり、急にスピードが落ちる個所が幾つかある。 急なクランクと、突然の狭小である。 

 走り始め、いきなりのもよおしてきた! しょんべんである。 このところ、レースが始まって間もなく、襲われる事がある。 何だろう、年なのかねぇやっぱ。 以前は、レース途中を抜け出して、トイレに行く連中を 「ちゃんと行ってないから、そーなるんだよ!!!」 と笑っておったが、事前に行っておけば、大丈夫というそーいう問題ではなく、行っておいても襲われるのである。 だからといってだな、水分を摂取しておかんと、やばい事になる、それだったらトイレに行った方がマシなのだ。 走りながらトイレを探すのも大変だったりする、小便を我慢しながら走るのは、へっぴり腰で逃げているような感じだ。 大概、5キロぐらいまでは、何もないのである。 

 周辺を見ながら、へっぴり腰で走る。 立川のときもそーだったなぁ、いきなり走り始めて小便したくなっちゃってさ。 公園内を走っておったから、いずれ出てくるだろうと思っていたんだけれど、コースから外れたところにあって、遠すぎだよ〜〜と、思いながら走っていたらスターと地点に戻ってきて、そこに合ったトイレ駆け込んだ。 おまけに調子よく聴こうと思っていたMP3プレイヤーも走り出して早々に音が途切れ、何故かブー音になってしまった! 取り外して、どーこーすることも出来ずにそのまんまブー音しながら走った。 

 街中を気持ち良く走り抜けてゆく。 レースの楽しみの一つは、普段走ることが出来ん、車道を大手を振って走れることに尽きる。 その日だけは、俺たちランナーが主役な訳で、車や、チャリンコなんぞを気にせずに走ることが出来るのだ。 

 小さい商店街をゆっくりと走る抜ける。 両脇には、応援団が声援を送ってくれる。 ありがとう、ありがとうって感じだ。 この声援が、あとあと苦しくなってくるときに元気のサプリメントになってくれるのだ。 みんな、そうだろうけれど、研ぎ澄まされているからいつもよりも大きく声援が聞こえているんだと思う。 走ってみると判ることだ。