*「永遠の0」(百田尚樹著)

永遠の0 (講談社文庫)

永遠の0 (講談社文庫)

 知り合いが「これを読みなさい」と押しつけて、東北旅の課題図書に。うむー面白い。とは言え、これらの知識のほぼ80%はすでに小学校時代に知識として身につけている。知っていることばかりだ。そこで、改めて良い小説家とは「知識」よりも「書く内容」だと思わせられる(同様なことは、「物識りな教師」よりも「教え方」の上手な教師の方が役に立つ、にも言える)。
 祖父と思っていた人物は実は血が繋がっておらず、神風特攻隊として終戦直前に散ったことを知らされる。そこから本当の祖父の過去を調べていく姉弟。最初尋ねた同僚からは「戦いよりも自分の命を優先する卑怯者」と卑下され、調査の続行をためらう・・・ところから始まるストーリーは卓越。その後徐々に正しい祖父像が判明していくのだが、それらは全て元同僚の口から語られていく。大本営の汚い報道、軍部の人の命を何とも思わない体質、殴ることしか能が無い上官、軍部内のヒエラルキー、正義の使者きどりの偽善的なマスコミ、戦中と戦後で掌を返すような仕打ちをした同じ町内会の住人・・・怒りの矛先はあちらこちらに向かう。
 結局命をどこまでも大事にした祖父はなぜ特攻に参加したのか? 「読み終えたときに家族を一番に思い出す」というフレーズは、結構良い線いっていると思うよ。戦争を知らない世代にこそ読んでもらいたい作品だと思う。良くこの手の平和を訴える図書が夏休み課題作文になっていたが、おそらくこの作品は、選ばれていると思う。なまじそこらの作品よりもこれを読んでみると良いと思った。