*『シャイロックの子供たち』

  阿部サダヲを続けて観る。今度は真面目な銀行員だ。出世欲はあまりなく、軽いジョークで職場の雰囲気を良くしようと頑張っている中堅サラリーマン。しかし人には言えぬ悩みも抱えている。
 一方営業成績で野望を抱く銀行員あり、逆に成績が伸び悩み上司に叱責され自信も何もかも無くす銀行員あり。さりげに出てくる銀行員に柳葉敏郎佐々木蔵之介。大物が出てくれば、やはりというか後でキーパーソンになっていく。橋爪功もしかり。
 そしてもう1つのキーワードがギャンブル。そんなにギャンブルに銀行員がハマるのかぁ? と思ったが水原一平の例もあるしナァ・・・
  池井戸潤作品らしく、最後は勧善懲悪の大団円。2時間ドラマなので多少のご都合主義には目をつぶって。日本でも経済ドラマが映画化されるって言うのは(一昔前なら確実に数字が取れなかっただろうから)いいことじゃないかな。観客側が少し大人になったんじゃないのかな。

 

 

*『ザ・ホエール』

 昨年度のアカデミー賞男優賞受賞作。「W座(長く続いたW座も間もなく終わるという・・・これは悲しい!)」でも無ければ、いくらアカデミー賞受賞作品でも観ることは無かった。(薫堂さんも言っていたが全く同じ) あぁ安西水丸さんのイラスト時代が懐かしい・・・
 物語はまだ40代のチャーリーが肥満症ゆえ心臓病であと1週間の命・・・その1週間を描く。離婚して親権が母親にある娘は、ぐれて停学中。そもそも主人公離婚の原因は教え子の男子大学生との恋愛を選び、まだ8歳の娘と奥さんを捨てたから。その恋人アランも病没。そこから肥満が始まり、もう自力では立てない状態。健康保険も入る金が無い。大学の授業はオンラインで講義しているが、娘との仲は元に戻るのか?
 娘の復活を信じて、エッセーを書けば妻には内緒で遺産をあげると金で釣ってみる。娘は父を毛嫌いしているが・・・
 本作は殆ど部屋からカメラが出ることも無い密室劇(すごく低予算のようだ)。ホエールのような巨体の主人公をひたすら映し出す。そんな2時間だけれども映画としてはちゃんと成り立っているし、結構イイ感じのヒューマンドラマに仕上がっている。(だがもう一度観る、ってことになると腰が重い・・・)

 

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*『死刑にいたる病』

 

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 阿部サダヲが個人的に苦手だ。そのサダヲがサイコパス的な死刑が確定した連続殺人犯を演じるって内容で、キャスティングは適っていると思う。よく死刑囚が獄中から人の心を操る、って話や、獄中結婚って話も聞くが、後者はあるかもなぁとは思うが前者は全く想像がつかなかった。この映画を観ていると、稀にあるんだなぁと思わないでも無い。


 もしかして、私も殺されていたかも知れないんじゃないか?
 もしかして、私は殺人犯の子どもなんじゃないか?
   だからもしかして、私も人を殺めるんじゃないか?


 そんなシーンがいくつも出てくる。最初は(この映画、最終着地シーンに無事辿り着けるのか?)と不安だったが、イイ感じで終盤へと向かう。最後に1コ、(えっ、そうだったの?)と言うシーンも入れてあり、(まぁ映画ならこの一捻りなきゃね)って感じに仕上がっていた。映画館に行くには(阿部サダヲかぁ)と二の足を踏むものの、地上波で(0円で観るには悪いなぁ)って思える内容だった。オナ中で大学で出会う幼馴染みの灯里演じる宮崎優は、最初は目立たないJDなんだが、岡田健史演じる雅也と結ばれるあたりから、急に光る存在になっていくのも、キャスティングのなせるワザか。

 WOWOWで毎週月曜にやっている『坂の上の赤い屋根』も獄中からのマインドコントロールの話。正直こう言う人達とは関わらない人生を過ごしたい

*『ロードムービー(辻村深月著)』

 

 


 昨年観た「かがみの孤城」(を先月地上波で再見)、そのためか手に取ってみた。
 クラスにいるカースト上位の意地の悪さを描いたら辻村深月は天下一品! 今回も嫌な女が出てくる。全国のカースト上位の嫌な女よ、この作品を読んで(これって私じゃん!)と気付き・反省し・二度としないと誓って欲しい。だけど、そういう女って本なぞ読まないだろうから永遠に気付かないんだろうな、きっと。
 短編集で最近見かけるのは本作のように同じ登場人物が大人になっていくことを描けること。読後の解説で初めて知るのだけれど、大好きな『魔術はささやく』と名前が一緒、なんてよくあるある。特に高校生の面倒を見てあげる大学生は『冷たい校舎の時計は止まる』に出ていた青年である。もう何年も経過して忘れてしまっていた。時を超えてこうして集まってみれば、みなもっと貪欲でもよいんじゃないかな・・・

*『箪笥/たんす』

 「映画.com」で「本当に怖い映画30選」の18番目に出ていた韓国ホラー。自宅で観ると合間に夕食入ったり入浴したりで真剣に観ていない。一方映画はというと、あっちこっち、妄想が入ったり過去の描写が入ったりで結局よく分からない。見終えてから少し巻き戻して確認が必要だった。
 結局レビューを読んで、(あぁそういうことだったのか!)と納得する部分もあった。頭の良い人は洞察力がハンパないなぁ、私はダメだ。
 ラスト近く、お姉さんが義母に「出かけていく」と告げるシーンの顔が巧い。最近見た子役ではピカイチの表情だった。人間ってあんなに非道くなれるのか、イジワルになれるのか、そんな顔だ。そんな顔をされたら、こちらも憎まれ口の1つも言いたくなるかも知れない。結局怖いのは霊よりも人間なのかも知れない。お姉さんが家を出て去って行くシーンで、終わっていると、もっと怖さが残るのかも。
 是非色々考えながら真剣に鑑賞して欲しい。

 

 

*『レディ・ハード』『皇家戦士』『チャイニーズ・ウォリアーズ』

  いよいよ明後日アカデミー賞授賞式だ。お洒落でウィットに富んでいてすごく好き。今から楽しみ。WOWOWではそれに合わせて過去の受賞作品を放送する。去年台風の目になったのが『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』だ。カンフーシーンが出てくるので、解説ではカンフーアクションスター、ミシェル・ヨーに敬意を表して、とあった。そんなミシェル・ヨーを、実は私は知らない(意識したことが無かった)。
 WOWOWが授賞式直前にミシェル・ヨー特集をしたんだ。それが今回のタイトル・三作品『レディ・ハード』『皇家戦士』『チャイニーズ・ウォリアーズ』。いずれもWOWOW初上映。そりゃあ知らないわけだ。
  『レディ・ハード』は昔のハチャメチャ香港映画。役柄は香港警察官。英から来た拳法使いの美人警官と、犯罪組織に立ち向かう。最初のアクションシーンにフェアレディZが出てきて、今観てもカッケー!ってのが1番の鑑賞ポイント。
 『皇家戦士』は若き真田広之が日本の警官役。最近は渋い殺陣ばかりだが、格闘シーンでも十分行ける。特にハイキックはよく膝が伸びていて素晴らしかった。そして代々木東京第二体育館、原宿のタケノコ族など、これ日本上映してもいいんじゃね? の香りはする。まぁ配給会社からすればそれってすごくギャンブルで二の足踏みそうだけれど。
 『チャイニーズ・ウォリアーズ』は日中戦争の頃なのかなぁ、悪い日本人VS中国解放運動家。日本人のmetooにはちょっとイヤな内容だ。脚本が雑なのか、コメディ調なのか判断できないが、これも日本公開するには厳しい内容だ。
   どの作品もB級映画、と十把一絡げにしてしまえる作品で、B級ファンには是非観てもらいたい。

 

 

 

*『護られなかった者達へ』


 公開当時は情報番組で阿部寛佐藤健を矢鱈見た。阿部寛は「新参者」の影響なのか、最近刑事役が多い気がする。
 3.11をモチーフにした作品で、考えさせられる内容も多い。「生活保護受給問題」も入っているが、最近はお役所も人権に弱く受給申請は楽だ、とも聞いているが。
 先の2名以外にも大物俳優が出てきて勿体なく感じてしまう。出演依頼がきたら、この監督なら受けても良いな、と感じてしまうのだろうか。『ドライブ・マイ・カー』と日本アカデミー賞を競い合ったと、後から聞いた。この作品の方が日本の社会を問うていて良かったのに、とも思う。『ドライブ・マイ・カー』は春樹らしいが。


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