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mezalaのブログ

「共白髪」を聴く

 めずらしきこと。京塚昌子
 9月23日は,女優・京塚昌子の忌日である。
 手持ちの録音のなかで唯一の出演作である「共白髪」を聴いた。

共白髪
中井多津夫:脚本,小林秀雄:音楽.
江口孝夫:効果,久保田幸男:技術,大西信行:演出.(NHK東京局制作)
出演:伊志井寛京塚昌子金内吉男浮田左武郎;青い実の会.演奏:荒谷俊治/フールサンズ・セレナーダス.
初放送:1971-04-18,再放送:1985-09-15{ラジオ名作劇場}.
モノラル 60分.
 夫婦は住み込みのお手伝いさんを実の娘同様に可愛がっている。身寄りはないが気だてのよいその娘によい縁談をと思っていたところ,既に息子が求婚していた。しかし,娘に結婚の意志はないという。すると,娘がかつて赤線で働いていたという噂を妻の耳に入れる者があり……。
 このドラマは,まさに名作と言うにふさわしい。夫婦役の伊志井寛京塚昌子の息もぴったりで,情感にあふれた筋立てをいかす完璧ともいえる演技が光る。純愛と社会通念がすれ違う時代背景を乗り越えてゆこうとする家族と,それを温かく見守る中井多津夫の脚本が共感を呼び,また敢えて娘を登場させないという手法が素晴らしい作劇術を思わせる。
 京塚昌子は佐野高等女学校出身で自分の母の後輩にあたり,「肝っ玉母さん」の時代にはそんな話をよく聞いた。割烹着姿が典型的な日本の母を思わせる人気女優であったが,声の演技も素晴らしくうまいので驚かされる。まさに共白髪まで仲睦まじい夫婦を伊志井寛京塚昌子の黄金コンビで演じられたら,右に出る役者は存在しないだろうと思われるのである。東芝日曜劇場の「カミさんと私」なんて一部でよいからビデオ販売されないものだろうか。「肝っ玉母さん」が出ていないくらいだから無理か。