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僕が線を引いて読んだ所 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2006年05月17日 漢字の効用 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

授業で沢木耕太郎の作品(「『情報』の洪水の中で」という随想)を読むので、この際彼の代表作深夜特急も読んでみようと古本屋で探したら、6冊組945円できれいにビニールに包んであるのが見つかりました。初めて読む作家なので本当はとりあえず1冊と思っていたのですが、思い切って(というほどの金額ではないけど)買って読み始めました。
いやあ、面白い、面白い! もし大学生くらいのときに読んでいたら、僕には単身で外国を放浪するほどの勇気はなかったけれど、少しくらい人生観は変わっていたかもしれないと思いました。
マカオでのカジノの場面は勝負事の醍醐味と、どうしようもなくその魅力にのめりこんでいく主人公の心境がリアルに伝わってきて、一気に読ませます。
ところで、外国人とのコミュニケーションに興味のある外国語コースの生徒に、次の箇所を呼んで聞かせたら、みんな興味深そうに聞いていました。

深夜特急〈1〉香港・マカオ (新潮文庫)

深夜特急〈1〉香港・マカオ (新潮文庫)

言葉については、私にも不安がなかったわけではない。喋れる外国語はひとつもなく、学校で十年間も習ったはずの英語も、頭の中で単語を並べてみなければ、道を訊ねることすらできない始末だ。(中略)しかし、香港にいるうちに言葉についての不安がなくなったのは、英語に対する萎縮した気持ちがなくなったことや広東語のカタコトを覚えられたことより、香港の人とは筆談が可能だということの発見の方が大きかったように思う。英語が喋れる人に対しても、途中で意が通じ合わなくなると漢字で書いてもらう。そこに盛られた意味を想像し、こちらも勝手に漢字を並べると、不思議なほど理解してもらえる。(中略)場合によっては、下手な英語よりはるかに心の奥深いところの、微妙な陰翳までもが伝え合うことができた。私はポケットに、いつも紙の切れ端とボールペンを入れておくようになった。


僕はついでに「漢字文化圏」の話しなどして、「だから漢字もしっかり勉強しようね」などと言って長い雑談を切り上げ、授業の本題に入っていったのでした。