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2006年07月28日 ゴーガンの村 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

mf-fagott2006-07-28

今カバンに入れて持ち歩いている本は西脇順三郎のエッセイ集『野原をゆく』で、パラパラとめくっては面白そうなところを拾い読みしています。
ISBN:4061960806
今年の夏もまとまった休みを取って遠くへ出かけることはできそうもありませんが、次のような文章を読むと、遠くへ行かなくても人はいつでも旅人になれるのだということを教えてくれます。

 この八月の末頃、ムシャクシャしたので、東京を去って、ヨセから相模川に大体沿って走っている旧甲州街道東京の方へとブラブラ下って歩いた。太陽は勿論未だ熱かったが、風が汗ばんだシャツに触れると秋のことを思った。
(中略)
 村へ降りて見る、至るところで多くの大人子供が笑っている。道端には鉛管で水が引かれている。この村は街道からみると殆ど気づかぬ程のものであるが、実は非常に美しいカーヴをもった谷が湾をなしている。樹木と草花と水流、白い砂地、土地の子供の裸の色などは、どうしてもゴーガンの絵に出ているタヒチーの村である。特に谿流の岸は海岸と等しく、砂の堆積で、一つの砂丘を形成し、エノキや、南洋でなければないような樹が繁り、紫の影を投げている。
 そこは相模川道志川とが合流して実に美しい地域をなしていた。(「ゴーガンの村」)

これは昭和11年に書かれた文章ですが、ムシャクシャしたときにブラブラと歩いて行けば今でもゴーガンの村が見つかるかも知れません。電車に折りたたみ自転車を載せてヨセの駅(今の相模湖駅)まで行き、そこから川沿いに南に下るというのも日帰りのサイクリングコースとしてちょうどよさそうです。

ちなみに、西脇順三郎には「野の会話」と題する次のような詩があります。

  相模川の上流に行ってみなさい
  岩躑躅の咲く頃
  ゴーガンの村になりそうな
  河べりの里が谷の下にある
  そこへ行ってみたい人に知らせるが
  よせから橋本の方へ行く街道から
  こうもりの先で山栗の枝を分けて
  みると そこに小路がかくれている
  だがゴーガンが好きなのは
  あの紅の腰巻やノアノアでない
  あの裸の女の肌の色ばかりでない
  あの原始的な詩情でもない
  ここがルソーと異なるところだ

tomtom_poemtomtom_poem 2006/07/29 23:41  「ゴーガンの村」って、藤野町の辺りでしょうか。

mf-fagottmf-fagott 2006/07/30 20:52 道志川と相模川の合流する地域というと、今の津久井湖のあたりです。今調べてみたのですが、津久井湖ができたのが昭和30年以降なので、残念ながら「ゴーガンの村」は既に湖底に沈んでしまっている可能性もありますね。
藤野はもう少し上流になりますが、ここもいい所です。