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2007年01月18日 「自問」することの大切さ このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

mf-fagott2007-01-18

小林秀雄講演』4巻をすべて聴き終わりました。
とにかく面白い!
小林秀雄の文章と言えばどれも難解なものと相場が決まっています。飛躍の多い独得の言い回しは、読み慣れない者にとってはかなり手強く感じるものです。(実際、講演の中で小林秀雄は、若い頃の自分はわざと難しく書くような生意気な所があった、と言っています。)
ところが、大学生を相手にしたこの講演では聴き手を煙に巻いてやろうというような姿勢は微塵も見られません。あいまいさのない平明な言葉で、自分の考えを何とか聴き手に理解してもらおうとするその熱い語り口は、読者を突き放そうとするかのような文章とは印象がまるで違います。
自らを近所の隠居おやじと自認し、「僕の話なんて雑談だから」などと言いながらも、語り出せばその内容は実に深い。今まで、その難解さゆえに敬遠気味だった小林秀雄が、どういう考えの持ち主であったのか、僕はこの講演のテープを聴いてその真髄に初めて触れることができたように思いました。
たとえば心(魂)と肉体の関係についての彼の持論が、現在の進歩した脳科学に照らして耐えうるものなのかどうか、僕にはわかりません。しかし、彼の言わんとすることはあくまで論旨明快・首尾一貫、実にすっきりと納得できるのです。なるほどと納得しつつ深い思索のプロセスを追体験するという経験は、何とも知的な興奮を伴うものです。
8本のカセットテープの中には、小林秀雄の歴史観、科学観、宗教観、教育観など、実に様々な思想のエッセンスがちりばめられています。それらの中から印象に残った部分を取り上げていたらきりがないのですが、『本居宣長』執筆後に行った講演の中の次のような一節は僕の胸にもぐさりと突き刺さってきます。


…真理に達するための方法がプラトンの言う「対話」だ。「対話」を突き詰めると、その純粋な形は自問自答ということになる。この自問自答、特に「自ら問う」というがところが一番大切なんだ。今の教育と言うのは、先生が隠している答えを生徒が当てればいいんです。先生の方も、それで丸とかバツをつけている。その方が先生も楽だからな。今の生徒は答えを探そうとして、自ら問うという力をなくしているんだ。
論語の中で孔子は「これを如何せん」と問うことがないような生徒は教えることはできないと言っている。学問においては、問うということが一番大切なんだ。答えを探すときには頭は働きませんよ。覚えてばかりいなさんな。自分に向かって問うてみなさい。君は自分に向かって質問しているか?…



短くまとめれば、大体こんな調子です。
評論家として大きな仕事を成し遂げた小林秀雄の、確信に満ちた言葉の一つ一つには、学生ならずとも強く心を動かされずにはいないのではないでしょうか。

すいとん大将すいとん大将 2007/01/19 22:39 自分に向かっての質問といえば、映画で観た『太平洋ひとりぼっち』。

この映画では石原裕次郎の演じる堀江青年が、自問自答しているシーンが
重要な役割を果たしていました ← mf兄は御覧になっていますか?

ちなみに小林秀雄は映画の原作本『太平洋ひとりぼっち』を
ベストセラーになる前に、他の知識人に先がけて絶賛したそうです。

mf 兄の上記ブログを読んで、その理由が推察できた気がしました。
もちろん、自分なりの解釈です。

『南アルプスひとりぼっち』など、親泣かせ道楽を経験した者の
我田引水と思っていただいても結構です。

mf-fagottmf-fagott 2007/01/19 23:15 残念ながらその映画は観ていません。「一人ぼっち」では自問自答せざるを得ないわけですね。単独行の山歩きのときも、常に自分自身や自分の中の他人と対話していませんか? 今はいつでもテレビのくだらない番組が退屈を紛らせてくれるから、何も考えずに済むんですよ。孤独な時間というのは貴重だと思いますね。テレビが何も考えない底の浅い日本人を作っている…というのはテレビ嫌いの僕の「我田引水」ですかね。(いい番組だってありますけどね。)

すいとん大将すいとん大将 2007/01/20 05:35 底の浅い人間が番組を作るから、底の浅い視聴者を生み出すのかも。

たとえば、スポーツ番組の実況&解説。
優れた作り手は、視聴者の想像力を呼び覚ます『投げかけ』をしてくれます。

私のブログでも書いたデーモン小暮閣下のゲスト出演した大相撲中継とか。

大橋巨泉は、最近のテレビは「貧乏人のメディアになった」との見解を、
とある本のなかで述べております。

ところで、村上春樹もヤクルトファンだったよね?

mf-fagottmf-fagott 2007/01/20 21:12 村上春樹はどうだったかなあ…
デーモン小暮の相撲解説については、昨年共演したピアニスト伊藤憲孝さんのブログにも書いてありますよ。面白そうですね。
→http://noritakaito.blog18.fc2.com/blog-entry-122.html

すいとん大将すいとん大将 2007/01/21 01:46 伊藤憲孝さんのブログ、さっそく拝見しました。

村上春樹=ヤクルトファンは、エッセイ集「村上朝日堂」の中で
瞥見しただけです。ファンになった理由については書かれていませんでした。

エッセイの中では観客の少ない神宮が舞台。
村上春樹風といえば、そうなのかな?
で、試合を

mf-fagottmf-fagott 2007/01/21 01:48 大将、上のコメント、途中で切れてませんか?

すいとん大将すいとん大将 2007/01/21 06:22 失礼しました。下記・復元します。
「(神宮)で、試合を(観ながら、編集者と打ち合わせしたことなどが書かれてます。)」

mf兄の書棚に『早稲田文学』があったことを、今ふと思い出しました。その頃=20数年前=って、例の『日本シリーズ・大杉ファウルか否か騒動があった頃だよね。つい昨日のことのようだけど。嗚呼、、、