詩人の詩

(前回の清水哲男の話の続き)
それでは、本業の詩の方はどうなのかと思って家の本棚を探したら、『詩の新世紀―24人の現代詩人による』というアンソロジーの中に、「林檎箱、その他。」と題する詩が載っていました。
最初の章には「午前零時」という題がついていて、以下「午前十時」まで、十一の章からなる詩です。

午前零時


生まれたばかりの時刻のなかで
ぼくは死んだ
またいだ林檎箱にひっかけた裾のような
日付を確認しながらね


毛布から少し足指がはみだしているのは
そのせいなのさ
ていねいに名前をつけてきたぼくの全ての約束が
まだ伸びつづけている爪の先でささくれだっている現実も また

いきなり最初の二行にまごついてしまいますが、まあ、先を読んでいるうちにわかるのかも。
でも、次の「またいだ林檎箱にひっかけた裾のような 日付」という比喩もわかるようで、やっぱりわからない。
さらに「そのせいなのさ」の「その」は何を指すのか抜き出して答えよ言われても、僕には答えられない。
「全ての約束が」が主部だとすると、どこかに照応する述部がありそうなものだけど、どこを探しても見つからない。
「現実も また」というからには何かが「現実」と並置されているはずだけど、「約束」に対して「現実も また」なのか…
ほとんど何もわからないまま、「午前一時」になってしまう。
で、「午前二時」から「午前九時」までは飛ばして(僕はとにかく辛抱して読んだけど)最終章…

午前十時


ぼくは生まれた。


逆さまの林檎箱の上で
頭から湯気をたてて
死に向かって。

午前零時に死んだ「ぼく」は、午前十時に生まれた…
ああ、僕にはわかりません。こんなこともわからないで、お前の職業は何なんだと言われてしまいそうだけど、正直言ってお手上げです。どなたか、解説してくれませんか?


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