「笑い」と「短さ」

レバーが好きですが、お笑いも好きです。
テレビの「レッドカーペット」というお笑い番組が人気を集めているようですが、僕もほとんど毎回見ています。中にはくだらないのもありますが、最近の若いお笑い芸人の繰り出す笑いはなかなかレベルが高いんじゃないでしょうか。次々に新しいアイデアを繰り出す彼らの才能には感心してしまいます。
ところで、「レッドカーペット」の人気は、お笑い芸人が続々と出て来て、短いネタを見せて引っ込むという構成の新しさに負う所が大きいようです。最近は「レッドカーペット」の後を追って、短いネタを見せる番組が他にも出てきたようです。ちょっと趣向が違いますが、「イロモネア」という番組も(これも僕はときどき見るんですが)、限られた時間でどれだけ笑いをとれるかが勝負という番組です。
そもそも「笑い」というのは「短さ」とは相性がいいんですね。「瞬間芸」とか「一発芸」というのがあるくらいですし、「駄洒落」とか「ジョーク」とかに長さは不要です。言葉で人を泣かせようとしたら、最低でも原稿用紙5枚半くらいは必要になりそうだけど、笑わせるためには一、二行あれば充分です。


さて、お笑いも好きですが、俳句も好きです。だって、俳句も一種のお笑いでしょ。そして、短い。
岸本尚毅氏は、「俳句の中の俳諧―虚子を中心に」(『国文学』2001年7月号)でこんなことを言っています。
…「俳句を俳句たらしめるもの」として「定型・季語・切れ字」が重要であることはいうまでもないが、最も本質的なのはその「極端な短さ」だ。その短さは弱点なのではない。短さを生かす発想があればそれはむしろ表現上の強みになる。では、短さを生かす発想とは何か。短くなければ表現できないものとは…

 短くなければ表現できないものの代表が笑いだ。笑いは瞬間的だ。冗談は間髪入れずに言わないと笑えない。四コマ漫画はたいてい滑稽な内容だ。シリアスな四コマ漫画はあまり見たことがない。ギャグ漫画も総じて短い。喜劇も概して短い。逆に内容がシリアスなものは長い。短詩形にも川柳や狂歌というジャンルがあり、笑いが俳句の専売特許だとはいえないが、短さが滑稽味の表現に適していることは間違いない。

岸本氏のこの論文は、俳句の本質にかなり鋭く迫り得ているものと僕には思われます。ぜひ全文を読んでください。
(…と、ここまで書いて、次に岸本氏の句を挙げておこうと思って『岸本尚毅集 (セレクション俳人 (07))』を広げてみたら、巻末に同じ論文が再録されていました。こちらの方が手に入りやすいですね。)


焼藷や髪二三本たちそよぐ
着ぶくれて鳩に驚く男かな  尚毅